コメディ・ライト小説(新)
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- フローズン・フェニックス
- 日時: 2024/07/09 17:55
- 名前: 飛鳥 (ID: O4DTAsr3)
「目覚め」
むかしむかしのスズメの農村から、全ては始まった。
「チュンチチ」
「チュンチュンチチ」
ーーーーーーーーーーーーーー
朝だ。起きなくては。
外から声がきこえる。
???「チュン助ー!」
ーーー「長老さま、私はチュン丸です!」
長老「ではチュン五郎、チュリンスを呼んできてくれ!」
チュン丸「はい!このチュン丸にお任せください!!」
パタパタとした音が近づいてくる。
チュン丸「おーい!シルフー!長老さまがおよびだぞー!」
シルフ「わかったー!今から行く!」
お気に入りのお守りを持って飛び立つ。
長老「ではチュン十郎、おまえに重大な任務を与えようと思う。」
ーーーゴクリ。
「それはなーーー」
「水稲の刈り取りじゃ!いつものようにチュチュッとやってきてくれ!」
シルフ「はい!」
もってきたお守りを翼に巻き付け、振り回す。稲が揺れ、水が弾ける。その下をすかさずくぐり抜け、水を籠に入れる。
これで今日の仕事は終わりだ。いつものように長老さまの所に籠を届けに行こう。
帰り道、なぜだか心がざわつく。体が暑い。
ーーー落ち着かない。
旅にでたい気分だ。
ーーーーーーーーーーーーーー
「長老さま、私は旅にでます。」
長老「若者は皆旅をしたくなる時期があるものじゃからのう。わしも若い頃はなぜだかわからぬが旅にでたくなったものじゃ。いくなら気をつけるんじゃぞ。」
ーーー思ったよりすんなりと話がすすんだ。
「……お守りは、…五、六、七!全部あるな。」
身支度を整え、お守りたちを持つ。長老さまがくれた少しの食糧と、薬をカバンにつめこみ、飛び立つ。
冷たい追い風が心地よい。このままどこへでも飛んでいけそうだ。
ふと、目の前に黒いもやのようなものをみつけた。何か呻いている。
ーーー目があってしまった。
もやは影となり、こちらに向かってくる。
思わず持っていたお守りを強く握りしめる。
何かが割れた音がした。
頭の中がヒリヒリして、突如文字列が頭の中に浮かんでくる。
ーーーーcharming starーー
気づけばお守りをいつものように一振りしていた。
お守りが光り、影に向かって流星のこどく飛んでいく。
光にあたり崩れ行く影の下をくぐり抜け、落ちていくお守りを捕らえる。
一連の出来事が終わり、呆然としていると、ふと風が止んだ。
疲れているのもあり、一度近くの町によることにした。
ーーーーーーーーーーーーーー
あたりは市場で、色んな種類の鳥たちで賑わっている。
「よう!良いもんもってんじゃねえか」
一羽のタカが話しかけてきた。お守りをチラチラみてくる。
「そいつは昔“クラウズ”たちが鉄鯨を落としたときに降ってきた星の欠片ってやつだろ?そんなに綺麗に光るのはそうそう見つからないぜ?」
「いつも大事に磨いているからね。大切な人からの贈り物なんだ。」
「どうりで綺麗な訳だ。これからも大事にすると良い。」
クラウズーーー名前は聞いたことがある。鳥の中でも特に強いタカやワシが集まり、外敵を倒しているらしい。クラウズが総攻撃を仕掛け、激戦の末「鉄鯨」を落としたのは伝説として今も語り継がれている。小鳥は鉄鯨に食べられてしまうため、みんなが恐れていたものを、とうとう倒してしまったのだから、英雄とよばれている。しかし近頃は、鉄鯨のかわりに謎の生物が突如として現れてきているらしい。もしや先程の影も謎の生物の一種なのだろうか?
「おまえ、旅をしているのか」
考え事をしていると、またさっきのタカが話しかけきた。
「ちょうど良い。おれは今、水トカゲを買いにきたんだが、どこもボッタクリみてえな金額でしか売ってくれないんだ。そこでだ、とっておきの足輪をやるから、水トカゲを捕まえてきてくれないか。最近は妙な生物もいて物騒だし、護身具の一つや二つ、もっていて損はないぞ?」
今思えばお守りしか護身具を持たずに村をでてきてしまった。路銀も少ないし、やることも特にないので、提案にのるのも悪くない。
「それじゃあ、そいつを捕まえてくるだけで良いんだな?」
「そうだ。交渉成立だな!足輪は前払いでやるよ。」
そう言うとタカはどこかへ飛び立っていった。
足輪を受け取り、早速つけてみる。
どうやら金具を握ると足輪から刃がでてくる仕掛けになっているようだ。
なにはともあれ、早速洞窟に出発することにした。
ーーーーーーーーーーーーーー
洞窟に入ると、じめじめとした空気が体を包む。その後、なにかの鳴き声が反響してきこえてくる。
水場を探し、飛び回る。
コウモリもどきはお守りでなぎはらい、蠢く草は足輪で突き刺す。
さらに進むと、ようやく水トカゲをみつけた。
しかし、何かがおかしい。大きい。大きすぎる。これも鉄鯨が落ちた影響なのだろうか、足でつかめるくらいのサイズの水トカゲが、逆にこちらが一口で食べられてしまうのではないかと思う程大きくなって、こちらを睨んでいる。
ーーー戦うしかない。
水トカゲがこちらに噛みつこうとするのをヒラリとかわし、お守りを投げつける。
ーーーcharm strikeーー
お守りは光輝きながら水トカゲの鱗に突き刺さるが、鱗の表面が少し焼けただけだ。
水トカゲが酸を体から放出する。もろにくらってしまい痛い。翼がぬれてしまって飛べなくなってしまった。落下する体からお守りが離れていく。近くの壁に足輪の刃をおしあてながら地面までおりる。足輪はボロボロになってしまった。水トカゲがその体を勢いよく回し、巨体な尾がこちらに向かってくる。こうなれば、自分だけの力でなんとかするしかない。自分の体程ある巨大な尾に、嘴と羽をむける。精一杯力をこめ、尾を切り上げる!
「ツバメ返し」
ーーーーーーーーーーーーーー
目を開けると、目の前には水トカゲのシッポが転がっていた。
水トカゲは身悶え、どこかへ逃げていった。
なんとか勝てたーーーその場に座り込む。
残ったのは水トカゲの尾だけだが、これだけ大きければきっと十分だろう。持ち帰る分を少しちぎり、残りの部分は美味しくいただく。一口たべると傷ついた体が癒えていく。たべ終わった後、お守りを拾って町にもどる。
今日はよく眠れそうだ。
- Re: フローズン・フェニックス ( No.1 )
- 日時: 2024/08/30 22:58
- 名前: 飛鳥 (ID: CtLv2OyR)
「厨二病」
しまった。どうしよう。
ーーー水トカゲをとって町に戻ったのは良いものの、あのタカがどこにいるのかわからない。
仕方がないので道行くものに聞いてみることにする。
「中くらいの大きさで、赤羽のタカを見なかったか?」
ミミズク「知らないな」
フクロウ「鳥探しなら"厨二病"どもに聞くと良い。あいつらは優しいからな、変わってるが。」
フクロウは「闇の使者」と書かれた看板を指差している。
「ありがとう、助かったよ。」
フクロウたちに礼を言い、看板が掲げられた建物へ向かう。
小窓からちらりと覗いてみると、いかにも怪しい単語が書かれた本が並んでいる。
「悪魔の召喚方法」
「邪竜の封印方法~眼~」
「眼帯のかっこいい付け方」
……本当に大丈夫なのだろうか。
少々不安を覚えながらも建物の中に入る。
「すみませーん、鳥探しをしているのですが」
カラス1「ふむ…この闇の使者を頼るとは目が高い…」
カラス2「我らの仲間に加わるのではないのか。嘆かわしい…」
カラス3「して、どのような者を探しているのだ。」
タカの特徴を伝える。
カラス2「彼は我らの作る魔具をじきに買いにくる。しばらく待つのだ。そう我らの悪魔が予言している。」
カラス3「って、うおぉい!それ、俺の作った足輪じゃないか!そんなにボロボロにしやがって!というかなんでタカに渡したはずなのにお前がもってるんだよ!」
「これはタカに水トカゲと交換してもらったんだ。それで水トカゲをとりにいったら、とてつもなく大きな水トカゲがいてな、そいつと戦ってきた時に壊してしまったんだ。」
とってきた水トカゲの尾を見せながら説明する。
「おお!こんなにでかいのと戦ってきたのか!さぞかし俺の足輪は役にたっただろう!こんな怪物を倒すのに使われたとなれば俺も鼻が高い!で、どうだったんだ、やっぱりスパーン!と胴体を一切りか?それとも頭を一突きか?」
「壁に当ててゆっくり下りるのに使った。」
「え?」
「壁にギギギーってして減速するのに使った。」
「は?」
周りのカラスたちがクスクスと笑っている。
「なんだよ、その使い方…折角戦いやすいように火の加護までつけてやったのに…」
しょんぼりとしながら話すカラスがなんだかかわいそうに思えてきた。
「というか加護なんてついていたのか、知らなかった。」
「おお!そうなんだよ!高度な魔法と奇跡論をつかってな!なんとこの足輪には第9魔術論と第7奇跡論の手法も合わさっていてな、近くにある魔力を集めて強いエネルギーをつくり、持ち主の活力によってそれを熱に変える仕組みになってるんだ。本来魔力から生成された熱は持ち主にも伝わって火傷の原因になるんだが、この足輪は持ち主自身の活力を使った熱だから使っても痛くなったりしないんだ!」
「それはすごい。それで、どうすればその加護をつかえるんだ?」
「こいつは魔術とかに詳しくないやつが使えるように、基本の部分は加護にしてあるから、そこらの精霊やら神やらに祈ればエネルギーの通り道ができて使えるようになるぜ」
先程の様子とは一変してウキウキとしながら話している。機嫌が良くなったようで安心した。
そういえば。
「なあ、最初の話し方はなんだったんだ?」
カラスはあわてふためきながら答える。
「あ、あれは仲間内でやってる話し方なんだよ!伝統というかジョークというか!ほら、なんかかっこよさそうにきこえるだろ?」
「そうなのか…」
あまり理解できない。
ガラリ。
扉があき、タカが入ってくる。
「よう!腕輪を受け取りにきたぜー。おお、この間のやつじゃないか!」
挨拶をし、水トカゲの尾を渡す。
「今度のは妙にでかくてな。尾だけだがこれでいいか?」
「もちろんだ。珍しいのをありがとな!」
奥からやたら羽に艶があるカラスがでてきた。
「ご注文の腕輪だ。お望みどおり第11奇跡論だけでつくったわれらの技術の結晶だ。」
「ありがとう。大事に使わせてもらうぜ」
タカは腕輪をうけとり、建物から出ていった。
「なんか凄そうだな…」
その厳粛な雰囲気に思わず独り言をもらす。
「あいつはこれからクラウズの入隊試験を受けてくるんだ。」
そばにいたカラスが答える。
クラウズの入隊試験はとても難しいと聞いている。彼もおそらく、その試験ためにとっておきの腕輪を買いにきたのであろう。
思わず彼の幸運を祈り、眼を閉じる。
ーーー(あちちっ!あついって!)
カラス「おい!おい!お前だよ!おまえ!」
カラスにバシバシ叩かれて目をあけると、カラスが燃えかかっていた。
「おお、すまない。」
「急に祈ったりするなよ!危ないだろ!」
理不尽なことをいいながらカラスは水を被っている。
「祈りっていってもこういう祈りもカウントされるとは思わなかったんだよ、すまない。」
「しかしこれは致命的な欠陥だな…作った側としても見過ごせないな。少しの間こっちで足輪を預からせてくれないか、直してくる。」
足輪を渡すと、「すぐに戻ってくるから本でも読んで待っててくれ!」といい、カラスは建物のおくに入っていった。
- Re: フローズン・フェニックス ( No.2 )
- 日時: 2024/07/07 11:40
- 名前: 飛鳥 (ID: q.asDwjF)
番外編
「お守り」
主人公のもつお守りは、彼が雀の村にいたときにどこからか落ちてきたもの。キラキラと光輝いていたので気に入ってお守りにしている。小さい頃から毎日磨いているので、とても綺麗に保たれている。
長年磨いていたせいか、少し鋭い面があり、投げれば刺さるようになっている。
本編では武器として使われているが、普通にお守りとしての役割ももつ。
他の鳥はお守りとしての効用を重視するせいか、チャーム(効果を求めてつけるお守り)と呼ぶことが多い。
ーーーーーーーーー
感想をもらえると嬉しいです!
作者が張り切るので少し投稿頻度があがります!
また、解説をリクエストしてくれれば、このように番外編で紹介します!
- Re: フローズン・フェニックス ( No.3 )
- 日時: 2024/07/07 13:01
- 名前: 飛鳥 (ID: CtLv2OyR)
「伝説」
足輪を直しているカラスを待つ間に、その辺にある本を読むことにした。
「エネルギー学入門」と書かれた本に興味を惹かれ、読んでみる。
ーーー「エネルギーには加護、魔術、奇跡といった説明可能なものと、ミラクルと呼ばれる説明不可能なものがある。加護は神や精霊の力を使う。魔術は周囲の粒子やエネルギーを使う。奇跡は自分でエネルギーをつくりだす。ところがミラクルは全くの偶然で望んだことがおきる。また、これらエネルギーには論理的に習得・応用が可能なものがある。」
ーーー「……例えば、第1魔術論では空気に含まれる物質などの基礎的な知識が必要とされるが、第9魔術論では生物の作り方や魂の可視化などの専門的な知識が必要とされる。このように、数字が上がる程により洗練された内容になっていく。」
…さすが入門書といったところか、ほどほどの難易度で読みやすい。しばらく読んでいると、奥からカラスがやってきた。
「待たせたな!明確に熱がでるような祈りだけに反応するようにしておいたぜ。ついでに刃もボロボロだったから研いでおいた。」
装飾が増えた足輪を受けとる。
ふと、建物の中の「特製チャーム販売中」や「杖発売開始」の文字が目に入った。
「ここは魔具を売っているのか。」
「ああ、そうだ。足輪が気に入ったのならきっと他のものもあると便利だと思うぞ。」
「そういえば収納具が欲しかったんだ。食糧も多くもち運べなくてな。」
「それなら俺が良いのを作ってやるぜ。対価は岩モドキの目でどうだ。」
「それじゃあ明日にでも取ってこよう。」
というと、「それまでに仕上げておくぜ!」と言い残して工房に入っていってしまった。
今日はもう日も暮れてしまった。良い感じの穴を見つけたので今日はそこで寝ることにする。
村から持ってきた水稲を食べると、これまでの冒険が蘇ってくる。なんだかとても長い1日だった。
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーザワザワとした葉の音で目が覚める。少し寝すぎてしまった。今日は砂漠にいって岩モドキの目をとらなくては。
早速準備をし、砂漠に飛ぶ。
砂漠は個鳥的に苦手だ。強く輝く太陽の日差しは強く、何より暑い。飛んでいるだけでも疲れてくる。現にもう帰りたくなってきた。しかしこんな時に幼い頃からしているおまじないがある。水稲を少し体につけ、チャームを抱き締める。すると、なぜだか少しひんやりとする気がするのだ。元気を取り戻し、岩モドキを再び探す。
ーーーいた。岩モドキ特有の黒っぽい体色、不自然に転がるあの動き、岩モドキで間違いない。足輪に祈りを込め、準備は万端だ。上空から急降下し、一気に仕留める。
空中で一回転し、上昇してから、地面ギリギリまで加速し、岩モドキの頭を蹴りつける。
ガッ!
岩モドキが悲鳴をあげ、粉々に砕ける。しかし、
ドスッ
尾に何か重いものがぶつかってくる。
ーーーしまった。岩モドキの群れだ。数十体に囲まれてしまった。次々に飛んでくる岩を足輪で弾き、チャームでなぎはらう。
ーーーーcharm strikeーーー
チャームを思いきり投げつける。チャームの通り道だけ砂漠の砂の色に変わる。だが再びもとの黒で埋め尽くされる。予備に持ってきたチャームを強く握り、更に力を込める。だが、固すぎて倒しきれる気がしない。何か別の方法を考えなければ。上昇することができれば簡単に倒しきれるのだが。そうか、つまり…
チャームを上に投げる。
ーーーーcharmingーーーーー
チャームは上空でまばゆい虹色の光を放つ。ここにはチャームより光輝くものはない。
そこに、一匹の岩モドキが石を投げる。チャームは砕け、輝きを失う。不意に周囲が暗くなったように感じられる。そして次の瞬間、鋭い光の線が降り注ぐ。
ーーーーーーcharming rainー
光に打たれた岩モドキたちは真っ二つに割れ、残りのものは一目散に逃げていく。
ーーーーーーーーーーーー
岩モドキの目を集め、町に戻る。行きは眩しかった太陽も、今では眩しく感じない。
ーーーーーーーーーーーー
町に戻り、カラスのいる建物へ向かう。
カラスにとってきた目を渡し、新しいポーチをもらう。
しかし脳裏に焼き付いたチャームの輝きが忘れられない。