コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

君はまるで狐の子
日時: 2025/05/06 14:39
名前: 翠 (ID: B9PxCLY9)

春の風が私の顔を撫でる。その風は優しく私を包み込んでくれている。

ツー…
自転車で坂道を下る。顔にあたる風が冷たくて気持ち良い。
私は高2の神谷かみやゆう。ごく普通の女子高生だ。

優 「…っと。」 
自転車を駐輪所に止めて歩き出す。
いつも少し早く学校に来て、外の庭園で本を読むことが日課だ。
あそこは誰もいなくて、しかも涼しい。最高の場所。
…でも今日は誰かいるようだ。しかも一つしかないベンチにちょこんと座っている。
優 (見ない顔だな)
そう思いながら少し間隔をあけて隣に座る。
何も言わないのは変かな、と思い優は声をかけてみることにした。

優 「こんにちは」
??「…こんにちは」
優 「私は神谷優です。よろしくお願いします」
守 「…金森かなもりまもるです。…よろしく」
優 「よろしくお願いします!」
挨拶は終わったので私は鞄から本を取り出して読み始めた。

Re: 君はまるで狐の子 ( No.3 )
日時: 2025/05/07 17:24
名前: 翠 (ID: rRbNISg3)

誰も来ない、静かなあの場所へと向かう。
ここで守くんと出会ったんだっけか。なんであんま仲良くもないのにつけてきたんだろう?
ただの嫌がらせ…?

優 「…ッ…」
なぜかわからないけど涙が溢れだす。
優 「私だって…!私だって人間なんだよ!」
自分に言うように叫ぶ。ここは誰もいないから、聞かれる心配もない。
優 「なんでこんなに優劣があるの!?」
優 「もうこんな世界なんて大嫌いだ!」
自分の想いを叫ぶ。ここは誰もいない…と思っていたのだが。

ギュッ… 
優 「…え?」
自分の体の周りが暖かくなる。誰かに抱きしめられている。
振り向くと、そこには守くんがいた。髪で顔がよく見れない。
守 「…さようなら、って酷い」
走ってきたのだろうか。少し息が切れている。
守 「俺、なんか悪いことした?」
私は驚いて声も出ない。でも守くんは続けた。
守 「この世界が嫌いなら、俺が好きにしてやるから」
何か聞いたことがある言葉。
??「優をいじめる人は嫌いになってもいい。だけどこの世界は嫌いにならないで」
誰の言葉だっけ…?思い出せない。でもなんか似てる…。

私の声の代わりに私の泣き声が響き渡る。
守 「泣くな。もう優は泣かせないって決めたんだ」
また…。似てる。
??「優は俺が守る。もう絶対に泣かせないからな」
優 「私ッに関わってもいいことなんてない…っ」
やっと話した。話せた。
守 「俺にとっては優の存在全てが生きる意味、なんだけどな」
優 「どう、いうこと…?」
守 「…優。はっきり言うぞ。今、優はいじめにあっているだろ??」
守の目が怒っているような目に見えた。
優 「な、んでそれを…?」
守 「そんなの、見てわかるさ。いつも放課後の掃除とか優が全てやらされているだろ」
図星。なんで分かったんだ…。
守 「これからは俺がいる。俺を頼ってほしい。」
優 「頼ってい、い…?」
守 「当たり前だ。もうずっと俺のそばから離れないで」
優を抱きしめる腕の力が強くなった。

Re: 君はまるで狐の子 ( No.4 )
日時: 2025/05/08 16:55
名前: 翠 (ID: rRbNISg3)

私、霊に憑りつかれましたっけ?
学校に行く足取りが重すぎるんです。いつもより。
きっと昨日、あんなことがあったことと、守くんとなんかいい感じになったからかな。

モブ「優ーちゃん!」
あー。この言い方は分かってる。なんか押し付けられるんだ。
優 「な、なに?」
モブ「今日ね、私、家の用事があって放課後残れないんだ~」
優 「あ、うん。分かった。掃除、私がやっとくね」
また、だ…。もう慣れてるけれど。
いつものように同じ返事をする。「ありがと!」という声の後に聞こえるのは「チョロいわ~」だ。
守 「俺、今日用事ないし、手伝うわ」
優 「!?」
私なのか分からず、あたりを見渡す。
すると、守がふっと笑う。
守 「あなたですよ、優さん?」
はい、その笑顔反則です。
優 「わ、私?」
守 「うん。今日何もないし暇だから手伝うよ?」
優 「そんな、悪いよ~」
無理に笑う。守くんにも本当の笑顔を見せられない自分に腹が立つ。
守 「…昨日、俺に頼るって言ってくれたじゃん」
拗ねたような言い方と顔。
私はそんな守くんを断ることも出来ず、「そんなに言うなら…。よろしく!」と言った。

「ずっと一緒に居たいんだよ、気づけ…」
と守が呟いた。

Re: 君はまるで狐の子 ( No.5 )
日時: 2025/05/09 16:29
名前: 翠 (ID: rRbNISg3)

ー放課後・掃除の時間ー
誰もいない静かな教室で守くんと二人きり。
教室に春の風がふき渡る。暑くもないが寒くもなく丁度良い風だった。

守 「…いつも、ああなの?」
守が心配するようにこっちを向いて話しかけてきた。
優 「うん。でももう慣れたから大丈夫!」
大丈夫なわけない。本当は辛いけれど、断ることが出来ないのだ。
守 「ねぇ…。優」
苗字呼びではなくなっている。私の事を見る目も、変わっている気がする。
優 「ん?どした?」
守 「本当は辛いでしょ?」
優 「ッ……」
否めない。だってそうだから。やっと気づいてくれた。
守 「昨日、あそこの庭園で叫んでたこと、本当でしょ。」
優 「……」
頷くことしかできなかった。嬉しさと、何故かわからないけど懐かしさがこみあげてくる。
守 「俺には、本音を言ってくれるんじゃないの?頼ってくれるんじゃないの?」
いつもの守くん…ではない。
優 「そんなの…、できっこない!」
優 「私は!ずっと誰にも本音を言わないで生きてきたの!それを会って2日目の人に話すわけない
   でしょ!」
思わず口走ってしまった。
守 「っ…。まだ、気づいてくれてないんだ」
あまりにも声が小さくて口が動いているのと、悲しい顔をしていることしか分からなかった。
守 「いや、そう。優の言う通りだ。でも1つ違うことがある」
優 「なに?」
守 「俺は、ずっと前から優に出会っているからね」
守 「それだけ、伝えたい」
そういうと、テキパキと掃除を終わらせ帰ってしまった。
静かな教室にちょこんと残った私。
優 「守くんと、出会ってた…?」
疑問しかなくなった。

Re: 君はまるで狐の子 ( No.6 )
日時: 2025/05/10 14:19
名前: 翠 (ID: B9PxCLY9)

いつものように毎朝庭園に行き、本を読む。これはずっと続けている。
昨日の出来事があってからは行くかどうか迷ったけれど、やっぱり行くことに決めた。

ー庭園ー
優 「ま、守くんっ…!」
か細い声で呼びかける。いないと思っていた人間がいたのだ。
守 「………優」
光のない眼でこちらを見る。
優 「あのっ、昨日はごめんね、私、何もわかってなかった…」
守 「いいんだよ、別に。分からせようと思った俺も悪かったし」
いつもの積極的な守はどこへ行ってしまったのか。
優 「…。それでね、一つ伝えたいことがあるの」
優 「私、12歳の時、記憶喪失になって、1部の記憶が戻ってないんだ」
親と妹にしか、言っていないことを初めて他人に伝えた。
守 「…っ!?」
守 「本当、なのか…?」
優 「うん…。ちょっと事故に遭っちゃって。頭を強く打ったのが原因らしい」
守 「そうか…。でも生きていてよかった」
優 「ありがとう。それと、記憶を戻すことはできるみたい」
守の目が輝く。
守 「そうなのか!」
優 「そうなの!」
守 「その、記憶が戻った時、優からの返事が聞けるんだな」
守の顔が赤くなった。
優 「返事?」
守 「いや、まだ分からなくていい。ちょっとずつ思い出していこう」
優 「うん。」

Re: 君はまるで狐の子 ( No.7 )
日時: 2025/05/14 16:13
名前: 翠 (ID: rRbNISg3)

記憶って、どうやったら思い出せるのかな。
って考えるけれど分からない。
優 「(´Д`)ハァ…」
思わずため息が出てしまった。授業中なのに。
守 「どうした?溜息なんかして」
こそっと話しかけてきた守。
優 「あ、いや、なんでもない」
守 「そうか」
といって元の視線に戻す。
本当はなんでもなくない。早く記憶が戻って守くんが言う〝あの返事″のことが早く知りたいのだ。

先生「はい、では優さん、ここを読んでください」
急に言われたので固まっていると、守が「ここ」と教えてくれた。
優 「おじいさんは山へ鉄砲を持って登っていきました……」
よく考えたら普通これ幼稚園とかで読むやつだよね。と思いながら席に座る。
そして教えてくれた守くんにもお礼を言った。
そうすると、殺人的な笑みでこちらを見た。眩しい。かっこいい。


Page:1 2



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。