ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- MAGOSU-始まりの心-
- 日時: 2009/10/07 00:42
- 名前: J*A*M ◆UB7kDnf7Bo (ID: ErINZn8e)
マゴス、それは魔術師において最も位の高い神官とよばれるもの。
僕たちは父さんの思いを、伝えたかった事を知る為に西の魔女へと会いに行く事を決心した。
★初めまして、以前モバゲーで書いていたものを修正しつつこちらで書き進めたいと思います。
表紙絵は現在第2期のMAGOSU-双月の扉-で使用しているものですが雰囲気をつかめればと思います。
http://081.in/hirohiroshi/i/magosubig2.jpg
■主な登場人物□
■ヒバリ・ザナンザ(16)
:イリスの双子の兄。気が強く意地っ張りの頑固者、ただイリスとの喧嘩で勝った事がない。身長が低いのがコンプレックス。怖いものはジャスミン。
■イリス・ザナンザ(16)
:ヒバリの双子の弟、何事にも臆病でヒバリの無鉄砲なところにいつもヒヤヒヤしている。世話好きでおおらかな性格。怖いものはジャスミン。
■ジャスミン・ヘンドリネック(19)
:ザナンザ家とは馴染み深くマルクス村に来た時から1人、家族構成などは謎。腕のいい彫刻師と有名でいつも仕事に追われている。
■ミスガ(18)
:東の国、リーム村の生き残り、魔女との契約でファミリーネームを失った。ヒバリをいじるのが好きで何かあればちょっかいかけるお調子者。
■アルシア・シャクソン(??)
:アルの遺跡で倒れている所をヒバリに助けられた、未熟ながらも魔術師としての力を持っている。
■マリア・ブラック
:ライオンとの合成獣、文字では表記不能な程の美しさには誰もが認めるが、目的達成のために手段を選ばない、ローゼンの部下。
■リリソン・ナンシー
:狼との合成獣、まるでしっぽのように動くながいみつあみと目尻のほくろが生前の可愛さを物語っている。ローゼンには忠実で性格はヒバリとぶつかるほど似ている。
(´・ω・`)よかったら感想とか待ってますvv
■もくじ□
>>1 第1話「朝焼けの炎」
>>16 第2話「着けば都」
- Re: MAGOSU-始まりの心- ( No.10 )
- 日時: 2009/10/04 13:00
- 名前: J*A*M ◆UB7kDnf7Bo (ID: ErINZn8e)
「お……おう」
そういえばというように、ヒバリは思い出すと参ったようにため息をつく。
今朝は寝起きそうそうイリスが泣いていて、いつもみたいに髪を結っている暇さえなかった。
もちろんイリスも同じだ。
「俺、冷静になんねーと、とりあえず……何か理由があってこの村が襲撃されたはずだ……」
ヒバリは腕を組んだ、そしてをソファに足を上げ縮こまっている。
「でもなんで?」
後頭部からジャスミンの声が突き刺さる。
「だから……」
「あの人達何か探してるみたいだったね」
ジャスミンはおもむろに天井を見上げる。
「でも、この村に軍人が探すような宝物はねえよな……」
あっという間に2人の頭はいつものように後ろでひとつに
束ねられた。
少々寝癖があるものの今は気になんてしていられない……。
というよりこの状況が気になって仕方なかった。
さっきよりは動揺が薄れたものの軍に怒りを売るような事をこの村がした覚えもなければ、そうしむけた記憶もない。
あれから幾日が立っているのか、どれくらいの時が進んでいるのか、まったくもって分からなかった。
イリスはだんだん現状を把握しているようだが、あの時見た物のショックは大きいのだろう。
必要最低限の言葉しか発する事ができなかった。
ヒバリも人の事は言えなかった、なんせ自分の父親でもあるのだからだ……。
父親が無惨な姿などになって……。
昨日の夜、最後に見たのは珍しく2人の頭を撫で回し、いつも通りおやすみと言った時だ。
ヒバリとイリスの部屋から出て行く背中を覚えている……。
あの場を一刻も早く連れ出していなければ確実にイリスは壊れていたに違いない。
ヒバリはひざの上で拳をぎゅっと握った。
「兄さん……ボクどうしたら……」
ソファで肩を落とすイリス。
その後ろで棚に向かって黙りこくるヒバリ。
イリスの瞳に輝きはない。
「さぁ……俺だって何もわからない」
ヒバリはおもむろに目の前の丁度頭上辺りの段に手を伸ばす。
ただ単にイリスの顔を見たくないだけの行動でもあった。
目の前には見覚えのある赤ワインのような色の古い書物がある。
「ん?」
よく父さんが読んでいた何かの本、しょっちゅう手に持っていたから確かだ。
まだ小さい時の記憶だから字を読めなかったが今ははっきりと分かる。
「真実の……泉……」
- Re: MAGOSU-始まりの心- ( No.11 )
- 日時: 2009/10/04 13:01
- 名前: J*A*M ◆UB7kDnf7Bo (ID: ErINZn8e)
その本を片手にソファに戻ると、ほこりをはらってパラパラとページをめくった。
黄ばんだ紙を見るとこの本はかなりの年月愛読されていたのだろう。
「なんだ……これ」
ヒバリはページをめくる手を止めてまじまじと見た。
本なら普通は中に文字があるものだが……。
ヒバリは何度か本の背表紙や他のページを確認するように見る。
半分から後ろはまったくの白紙だ。
「日記……いや、違う」
ヒバリの声に近くで本棚を物色していたジャスミンが反応する。
「何かあったの?」
そしてヒバリの側に寄って来た。
イリスも興味津々にソファから2人の方に顔を覗かせている。
「……これ」
ヒバリは2人に見えるように少し高くあげて本をパラパラとめくった。
「日記だよね……ちょっと変だけど」
イリスは身を乗り出して来て横目でのぞくとそう呟いた。
「イリス、お前……」
イリスに気づいたヒバリは心配そうに訪ねた。
「兄さん、大丈夫だよごめんね……ちょっと」
あからさまにない元気を振り絞ろうと少し笑ってみせるが、逆にそれが心配を煽る。
ヒバリは顔を日記に戻すと喋りだした。
「途中から父さんの字でなんか書かれてる」
「ちょっと読んでみてよ」
「……ああ」
ヒバリの本をパラパラとめくる動作は丁度真ん中あたりで止められた。
「お前がこの本を開いたという事は最悪の事態になったようだ」
ヒバリの口からは文字を読むような、ぎこちない喋りが出て来る。
そして3人はこの文章を見て普通ではないことに気がついた。
- Re: MAGOSU-始まりの心- ( No.12 )
- 日時: 2009/10/04 13:03
- 名前: J*A*M ◆UB7kDnf7Bo (ID: ErINZn8e)
3人は顔を見合わせた。
驚きを隠せない、そんな表情をしている。
「何……これ」
ジャスミンは眉をひそめた。
「……この部屋の施設は好きに使うといい、この部屋は簡単には見つからないだろうまぁ、ここに逃げ込んだということはもう私も居ない頃だろうな、この本も選択したということはやはり、村は消えた頃……」
「……兄さん」
イリスはぎゅっとヒバリの服をつかむ。
それに答えるようにヒバリはイリスを引き寄せた。
2人の表情はとても穏やかとは言えない。
「お前達のことだ、どうせ両方生きているだろうどうかこの事を西のカウゼンに住まう樹海の魔女に伝えて欲しいきっと力になってくれるだろう、そしてここに書けない機密も彼女なら教えてくれるだろう……検討を祈る」
あとのページをめくるがペンの跡しか残っていない。
どうやら年月が経ち消えてしまったようだ。
ヒバリは動揺を隠しきれないのか震える手でゆっくりと本を閉じた。
「……どうするの?」
ジャスミンの震える声が聞こえる。
「どうするもなにも……なぁ」
ヒバリはイリスに答えをうながす。
後ろでソファに身を乗り出すイリスはヒバリを顔を合わせる。
「うん、ボクは賛成」
「……賛成って……あんたたち……まさか」
「ずっと此処でうじうじしてるわけにもいかねーし……なんか凄い事起きそうだし……」
そう言うヒバリの表情は少し複雑なものだった。
ヒバリは苦笑した。
「こんな最悪な事もうごめんだよ」
ジャスミンはそう言うイリスの寂しげな横顔を見て何も言葉が出なかった。
ーー
ヒバリは恐る恐る入り口の鉄の扉を押し上げる。
その瞬間ぶわっとほこりが舞う。
ヒバリは何度かくしゃみをした。
「へっくし!」
そしてツンとした少し冷たく、ぬるい風が鼻をつつくと再びくしゃみが出る。
外は穏やかだ。
景色に似合わず紺色の空に星が散りばめられて、あの惨劇などなかったかのような平和な夜空だ。
ヒバリは目の前に舞うほこりを手ではらいながら地上に出た。
「大丈夫?」
ジャスミンは下でヒバリに安否を訪ねる。
「もう、いないらしいな」
ヒバリはあの本を片手に立ち上がると、あたりを見回した。
続いてジャスミンとイリスが出て来た、2人とも言葉が出ないのかただただ、村を見渡していた。
この家もそうだが綺麗に焼けこげて何が起こったのかわからない状態だ。
そして天井は吹き抜けとなっている。
「生き残ったのあたしたちだけ?」
「……まさか」
「あいつらが、連れてったんだろう……」
「ねぇ、あんたたちはどうするの?」
ジャスミンは聞きづらそうに言う。
というよりわかっている答えを聞くのが嫌なだけなのだろう。
ヒバリは振り返らずに答えた。
「……どうするもなにも、急いで本の所に向かう」
そういってヒバリは寂しそうに笑う。
- Re: MAGOSU-始まりの心- ( No.13 )
- 日時: 2009/10/04 13:04
- 名前: J*A*M ◆UB7kDnf7Bo (ID: ErINZn8e)
ヒバリは崩れた家の中から何かを探し出す。
瓦礫が崩れる度に舞い上がるほこりにうるさいほどのくしゃみが聞こえる。
イリスも着れそうな物や使えそうな物を集め始める。
そして雑音が2人の間に響き渡る。
「兄さん、きっとこの村の惨劇には理由がある……ボクもそう思うよ」
「……ああ」
ヒバリはほこりを嫌そうにはらいながら適当に答える。
次第に不安そうなジャスミンはヒバリの後ろに立った。
「ちょっと……本当に行くの?」
その質問にヒバリは作業を続けながら答える。
「ああ」
ジャスミンは呆れたように2人を見る。
腰にあてた手が元気なく落ちた、そしてその手はそのまま額を押さえる。
「何があるかわからない……西に行った所で意味があるのかすらわかならない……けど、俺達にはしないといけない、父さんが俺達に何かを伝えようとしてる……そんな感じがするんだ」
ジャスミンを納得させるためかヒバリの言葉は慎重だった。
「……ヒバリ」
「兄さん……」
そしてヒバリは元気よく立ち上がると袖をまくった。
「イリス……朝になったら出発だぞ!」
振り返るヒバリはそう言うと元気そうないつもの笑顔を見せた。
「あっ……うん!」
2人は止めてい手を再度探し物へと戻る。
あいにく夜だが月明かりで暗さの邪魔はなかった。
そして静寂に混ざる雑音にかき消されそうなジャスミンの声が2人の耳に届いた。
「あたしは、都に行く……あんたたち臭いから出発の前に川で身体洗いなさいよ」
ジャスミンは一方的にそう言うと、他には何も言わずにその場を去っていった。
「っ、ジャスミ」
ヒバリが呼び止めようと呼んだときには、既に走って行って声の届く位置ではなかった。
というより多分聞き入れてくれそうにもなかった。
ヒバリの無意識に伸びた手がゆっくりと落ちる。
この村が何故襲われたのか知る由もない。
だが知らないといけない気がする……。
平気ではないが、それよりももっと大事な何かが……。
「兄さん……大丈夫だよ」
心配そうな顔をするヒバリに後ろで黙々と動いていたイリスは手を止めて言う。
「あぁ」
しかしヒバリの声に元気はない。
「ジャスミンは強いからそれに……職人だもん、十分やっていけるさ……」
イリスは気を使うようにそう言ってにっこり笑った。
それにつられるようにヒバリも笑顔になる。
- Re: MAGOSU-始まりの心- ( No.14 )
- 日時: 2009/10/04 13:04
- 名前: J*A*M ◆UB7kDnf7Bo (ID: ErINZn8e)
夜明け間近に2人は川に居た。
川で1人髪の毛を濡らしているのはイリスだ、パンツ一丁で気持ち良さそうに川の真ん中に立っている。
そんなイリスをよそにヒバリはさっきから本のあちこちを調べていた。
「この本を選んだ理由なんてねえのに……」
難しい顔をしたヒバリは大きなため息をついた。
「兄さん! 何してるの? はやくおいでよ〜!」
すっかり普通のイリスに戻ったようだ。
ヒバリがイリスに気づくと目を輝かせて手招きして待っている。
「お、おう!」
ヒバリは本を閉じてその場に置くと服のまま飛び込んだ。
きっと明日からはいろんなことに見舞われるだろう。
しかしもう決めた事だ、この村の惨劇を明かすまでは帰ってこない。
ヒバリは決意をしたあの時そっと自分の中にそう誓いを立てた。
そしてもう1つ、イリスは絶対に自分の命にかえてでも守り通す。
何かが起こりそうで嫌な予感がずっとしているのだ。
ヒバリは明るい夜空を見上げるとゆっくりと深呼吸をした。
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