ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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僕とキミの包帯戦争。
日時: 2009/10/26 18:10
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

重たい&シリアスです。どうか、見届けてください。

■登場人物■

イザム
23歳。雑貨屋の店主。大人になりたくなかった大人。愛猫のシャーネット・シュレディンガーと暮らしている。物語の語り手。

リク
推定16歳。性別は多分女(声で判断)。美人で、腕に包帯が巻かれている。家族構成は不明。

シャーネット・シュディンガー
2歳。イザムが飼っている黒猫。メス。名付け親はイザムの大切な人らしい。


主題歌

エンディング  http://www.youtube.com/watch?v=1SAEbeaSNeU

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Re: 僕とキミの包帯戦争。 ( No.13 )
日時: 2009/10/26 09:08
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

家、というか雑貨屋に帰るとシャーネットが玄関前でくつろいでいた。どっから外に出たんだろう。
こっちを見て、何の興味もなさそうな顔して、眠たげにあくびをする。
おい、キミの飼い主なんだぞ、僕は。
とはいえ、彼女はあくまで猫だから、人間である僕は少し我慢をする。

今日の開店は、1時からにしよう。
特別流行ってる訳じゃないけど、お客さんが全然一人も来ないというわけではない。
近所の洒落たおばさんが蝋燭を買いに来たり、紳士的なお兄さんが彼女のプレゼントなのか、娘への贈り物なのか知らないけど、ガラスの万華鏡を買いに来たりする。

僕はじっとカウンターでコーヒーを飲んで、そのお客さんが話しかけるまで絶対に声はかけない。
レジに来た時か、物に対して質問された時だけ。
それ以外はじっと、セールスするわけでもなく、ただただコーヒーを飲む。
時々、あの包帯女も来る。
だけど、買うのは決まっていつも「包帯」だ。

僕の雑貨屋は基本的に何でもあり、だから包帯もある。何で?何でだろうね。
ともかくあの包帯女──さっき名前を知ったリクも、お客さんの一人。
でも僕は、彼女が来た時だけ、少しおしゃべりになる。
他のお客さんとは違う、どこか特別な感じだ。

「特別……ではないだろうよ」
一人、呟いてみる。
特別、ではないかもしれない。いや、特別か。
こうして僕が誰かの事を考えている時点で、もう彼女は「特別」なんだ。



「……」
「来た」
店が開店して、5時間後。夕方になりかけたとき、そいつはやってきた。
今日は、マダムなおばさんと、子供づれの男性、小さなシャイな女の子、よぼよぼのお爺さんが、それぞれの品物を買って行った。
そろそろ閉めようかーなんて思っていると、来た。
何で来る?いや、そもそも授業はまだやってるんじゃなかったっけ?

「今日は、授業はこれで終わり。今から家に帰る」
あ、そうですか。
僕は少しぬるくなったコーヒーを一口飲み、
「また、包帯ですか?」
そう訊ねた。
「うん」
「何に使うのかしらないですけど、あなた無駄遣いしすぎです。たかが包帯に」
「何に使うのか知らない〜なんて言ってるけど、ボクの腕を見て大体わかってるクセに」

ドキッとした。
うん、そうだ。本当は包帯は腕に使うんだって知ってた。てか、何で腕に包帯を巻いているんだ?
今、聞く事だろうか。
でも、どうしよう。フリースクールに通ってるくらいだから、少なくともこいつには他人に触れて欲しくない傷があるはずだ。
もし、この腕がそうなら────

「言っとくけど、同情はしないでね」
「しませんよ」
包帯を取って、ビニール袋に入れる。
「聞かないね。どうして腕に包帯を巻いているのかって」
「……はい。聞きません」
「なんで?」
「聞いて欲しいんですか?」
そう言うと、長い睫毛を伏せ、包帯女はしばらく何かを考えて、
「……な訳ないじゃん」
小さい声で言った。

「でしょう。僕も、人の心に土足で入るのは、ヤメにしているんです。……コーヒー、どうですか」
僕が、新しく入れたコーヒーを差し出すと、彼女は微笑んでそれを受け取り、ゆっくりと飲んだ。
「……苦い」
「大人の味、ですから」
「イザムのクセに、生意気」
今日だけは、そういう言動も許そう。
なんだか、疲れているみたいだし。

Re: 僕とキミの包帯戦争。 ( No.14 )
日時: 2009/10/26 09:51
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

         第二章
    猫好きで悪いか、猫好きで!!



時折、いつもと違う表情を見せるから、あいつは怖い。普段は生意気で、明るくて、口が達者なクセに、ふっと違う顔になる。
それがあまりにも、僕の記憶に住む住人と酷似していて、怖くなる。
どうして、だろうね。

「今日は何をしようか」
大の大人が何をしているんだって、怒られそうだ。
休日の真昼間から寝転がって猫と戯れているなんて。
雑貨屋は1時から開店って決めたし、今日はフリースクールも休みだから、ご飯作らなくていいし。
アパートの借り賃も収めたし。
何すりゃいいんだよ。まったく。

そのとき、チャイムが鳴った。
上半身を起こしたところで、嫌な予感がする。
「…………」
「開けなさいッ!」
借金取りか、お前は。いや、僕借金してないし。
頭痛を覚えながらも扉を開けると、やっぱりそいつはそこにいた。
美人っちゃー美人で、腰まである黒髪はキレイで、白い肌に華奢な体で、多分女で。(声で判断している)
左腕全体に包帯がしっかりと巻かれている。

「……雑貨屋は1時からなんですが」
「そんなの関係ないっ」
キミ中心に世界が回っていると思っているのだろうか。すごい勘違いだ。
「昼ごはんは!?」
「……食べてませんけど」
「じゃあ、作るッ!あがらせて!」
「……あなたは僕のかーちゃんですか」

突っ込みをいれるのもバカバカしくなり、僕は降参してそいつを中に入れた。
てか、この子何してるんだろ。
将来の事を考えているんだろうか。だって。
男の家に無防備に一人で女の子がズカズカ入ってくるってどーなの?
まあ、こっちには襲う気はまっっっっったくないけど。はっ!

「……キミが作るんですか?」
「そうだよっ!」
「……」
「嫌そうな顔しないっ!ほら、席につくっ!」
まったく。どーすりゃいいんだ。
ヤバイ。この展開がヤバいぞ。
「…………」
「…………」
大体、なーんでこいつが僕に構ってくるのかも、全然わからない。
ほっとけばいいのに。
つか、そんなに元気なら普通の学校行けばいいのに。部活をして、汗を流し、勉学に励み、恋をして、青春の涙を友と一緒に流せばいいものをっ!

「イザムはさ〜」
「何ですか?」
「………」
「………何ですか?」
「え?何か言った?」
ありゃ。空耳か?
「いえ、何でもないデス」
今、呼ばれた気がしたんだけど。

シャーネットが棚の上から降りてきて、喉を鳴らして僕の方に寄ってくる。
なんて可愛いんだッッ!!!!
「うっわ……猫コン」
「だから、それ止めてくださいッ!結構気にしてるんですからッ!」
「何で、男のクセに“僕”とか、敬語なわけ?ありえないんだけど」
「そっちだって、女の子のクセに“ボク”って言ってるじゃんかッ!!」

そこまで言って、
「……女の子、ですよね」
「……さあ?」
何なんだこの子はッッ!!
不敵な笑みを浮かべて、コンロに火をかけやがっている!
つか、何で家に来たんだよッ!
「何で、僕の所に来たんですか?」
「暇、だったから」
「友達は?フリースクールの」

包帯女の動きが止まった。あ、言っちゃまずかったかな。
う〜ん。
「まあ、もし辛い事があったら、寄ってくださいよ。包帯買いに」
「……そのつもり」
どこか安心したような声。よかった。
ちゃんと子供みたいな所もあるじゃないか。
強がっているだけで、本当は寂しがりやなのかも知れない。だから、僕をこうやってからかっているだけなのかも知れない。



包帯女が作ってくれた味噌汁とロールキャベツは、案外おいしかった。
「ど、どうデスカ……っ」
緊張気味に聞いてくる姿が何だか、愛しくて、
「うーん。中の上」
「な、何それ!!おいしいって事!?」
「普通より、はね」
「そ、その言い方ムカつくなあっ!!」
顔を真っ赤にして、嬉しいのか、恥ずかしいのか、シャーネットとわざとらしく遊び始める。

可愛らしい。
初めて、包帯女を見てそう思った。

「リク」

包帯女の名前を呼んでみる。
ぴくっと反応して、ゆっくりと振り返ってこちらを仏頂面で睨んだ。
「ありがとうございます。おいしかったですよ」
「──────ッ」
小さく声も漏らして、そしてすくっと立ち上がり、
「当たり前でしょッ!ボクが作ったんだから、おいしいに決まってるでしょーがッッ!!」
「…………((汗」

扱いづらいな〜、この子は……。

Re: 僕とキミの包帯戦争。 ( No.15 )
日時: 2009/10/26 15:07
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

     ♪麦藁帽子を被った少女♪


お婆ちゃんが死んで、いつも欲しかった麦藁帽子を
私は被ります。

畑で、土の匂いを嗅ぎながら、お婆ちゃんと一緒に瑞々しい野菜をとりました。

あれが、昨日の事のようです。

今日も、近所の友達と遊びました。
サッカーをして、その後にスイカを食べました。

麦藁帽子を被っていると、その子がとても羨ましそうに見ていました。

得意になって、欲しい?と聞くと、ううんと言われました。
少し悲しかったけど、その子はニコッと笑って、

──キミがかぶっている方が、似合うからね。

そう言いました。
その頃からです。私は、その子がとても好きになりました。
今まで以上に、大切になりました。


        4年 2組 あいざわ りあん

Re: 僕とキミの包帯戦争。 ( No.16 )
日時: 2009/10/26 17:25
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

フリースクールってどんな所なわけ?

そう、包帯女に聞くと、事務的な口調で、淡々と、
「何かの理由で不登校になった子供達の養育施設。授業は午前中で終わる事が少しだけある。寮もあり、それを希望するならばそこに住む事も可能。ただし、家に帰る回数が限られる。寮に入らない生徒は、授業が終われば家に帰る。休みの日は大体日曜と祝日が多い」
そう説明を終えた。

「寮、入ってないんですね」
「うん。まーね。寮に居たって、同じ事だし。でも」
包帯女がこちらを見る。
「食堂の、イザムのご飯が毎回食べられるのなら、寮でもいいけどねっ」
「……」
「でも、そうしたらイザムと会う回数、減るから」
どうしても、聞いてみたい事があった。
他人の心に入り込むのは、あまり好きじゃないけど。

「家、家族はいるんですか?」
明らかに表情が変わった。何か、世界を憎んでいるような、冷たい目。
それを僕に向けて、何かに絶望したように、
「いない」
短くそう言った。
「一人暮らし……ですか?」
「違う。そんなんじゃない。でも、ちょっと違う」

一応、保護者はいるみたいだけど、何だか触れて欲しくないみたいで、追求は止めた。
やっぱり、この子はどこかで泣いている。
普段は笑って生意気だけど、どこかできっと、心が削られていくような。
そんな、気がする。

「また、来てくださいね」
その子は驚いたように僕を見た。
「……キミのご飯、おいしかったし」
「中の上じゃなかった?」
「……まあ、そうだけど」
笑った。
いつもの、あの儚げな可愛らしい笑顔で、笑った。

「また来るよ。ボクも暇だからねー」
いつか、キミが本当に心から笑える日が、来るだろうか。
そして、僕も。
いつか、本当に成長して大きくなれたら、その時は。
一人称を「俺」にしてやる!なーんて。

そんな、叶う事のない夢。
僕が一番わかっているのに。

「イザムも、時々寂しそうな顔するよね」
「僕?」
「うん。今もしてる」
真っ直ぐな目が、僕を見ている。離さない。引きずり込まれそうな感覚だった。
大丈夫。
「そうかな」
「うん。なんかね……子供みたいな目をしてる」
どうして、ガキって察しがいいんだろう。

「大人にも、色々あるんですよ」
僕が“大人”を語るなんて、ありえないって思ってたのに。
「でも、イザムって大人っていうよりは、子供っていう感じだけどね」
「……それ、褒めてますか?」
「う〜ん。どっちだろうね」
「こらこら」

笑いあう。
僕達は、笑いあう。
こうして、あと何回。
キミの笑顔を見ていられるだろうか。

Re: 僕とキミの包帯戦争。 ( No.17 )
日時: 2009/10/26 22:20
名前: 羽夜 ◆RZNKdBQtkc (ID: xYJBB/ey)

実に面白い。否、本当にです
強いて言うなら
感嘆符(!)と疑問符(?)の後には空白を開ける
そして感嘆符が二つ並ぶ場合は半角(!!)

と言う風に。一応これらは基本なので。アドバイスは描写をもう少し入れてみては? 会話文が多い気がするので

主人公猫馬鹿な所でツボりました、最高です。これからも応援させていただきますね


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