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僕とキミの包帯戦争。
日時: 2009/10/26 18:10
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

重たい&シリアスです。どうか、見届けてください。

■登場人物■

イザム
23歳。雑貨屋の店主。大人になりたくなかった大人。愛猫のシャーネット・シュレディンガーと暮らしている。物語の語り手。

リク
推定16歳。性別は多分女(声で判断)。美人で、腕に包帯が巻かれている。家族構成は不明。

シャーネット・シュディンガー
2歳。イザムが飼っている黒猫。メス。名付け親はイザムの大切な人らしい。


主題歌

エンディング  http://www.youtube.com/watch?v=1SAEbeaSNeU

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Re: 僕とキミの包帯戦争。 ( No.1 )
日時: 2009/10/24 16:37
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

         序章
    となりにはいつも、きみがいる



僕の隣で、無邪気に笑っているキミ。
キミに出会ったのはいつからだろう。
ずっと前のような気もするし、そんなに昔の事でもないように思える。
でも、何がどうあれキミはとても温かく、残酷で、愛しくて、無邪気で、冷酷で、悲しかった。

心がズタズタに切り裂かれようとも、体をバラバラにされようとも、キミは僕の隣でいつも笑っている。
どうしてそんなにキレイに笑えるんだと、僕が問うたら、キミは消え入りそうな儚い笑顔で、汚いから、必死でキレイに笑っているんだと答えた。

キミはいつも、いつも、いつだって夜に咲く花のように、闇の中歌う天使のように、神を冒涜する聖女のように、悪魔に魂を売った歌姫のように、ただただ、人間の愚かさを噛み締めていた。






どうか、キミがもう一度、キレイに笑えますように。

Re: 僕とキミの包帯戦争。 ( No.2 )
日時: 2009/10/24 16:55
名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)

         第一章
     包帯を無駄遣いしないように


黒く、毛並みの柔らかなシャーネットが、僕の頬を温かい舌で舐める。
目を開けると、その愛らしいしっぽが見え、そして鳴き声が聞こえた。
「おはようございます」
「にゃ〜お」
甘えたような鳴き声で、僕に擦り寄ってくる。

くそっ、何て可愛いんだッ!
そのままギュッと抱きつこうとすると、スルリと逃げられてしまった。
まったく。やっぱりそこは女の子か。
同い年くらいの男に抱きつかれたら、いやだろうな。
猫相手に何を思っているんだか。
自分で自分に突っ込みを入れてみる。

時計を見れば、もう昼だった。
日曜日とはいえ、寝すぎた。大人失格だ。子供らしい。
台所に行って、かつおぶしを取り、お皿にいれてシャーネットに差し出した。
本当はスーパーで売っている缶詰の方が栄養はあるらしいけど、僕は絶対に誰が作ったのかわからない缶詰を愛しのシャーネットにあげたりしない!!
断じてッ!!

「イザムって、猫コンだよね」

そうある女の子に言われた事がある。
何だよ「猫コン」って。シスコンならぬ、猫コン……。笑えねーよ。
「上手いか?」
そう聞いても、ガツガツ夢中で食べている彼女は答えもせず。
もう少しお行儀欲食べようよ、お嬢さん。いくら猫とはいえ、女の子なんだしさ。

僕はクローゼットから服を取り出して、パジャマを脱ぎ、着始める。
もうそろそろで、ボランティアに行かなきゃ。
数ヶ月前から始めた、近所の「フリースクール」の食事係のボランティア。
こう見えても、料理は得意な方だからな。うん。

ボランティア、だから給料が入るわけじゃないけど。
フリースクールの料理当番のおばちゃんが、骨折したとか何かで。
僕も行かせてもらうことになった。
今日は何を作るんだろう。豚汁?
ん?多分だけど和食じゃない気がする。洋食かも!

そう思えば少し楽しいけど、実際はあそこは戦場のようだ。
心に傷を負った子供達の、虚ろな目。
アブナゲな雰囲気がこっちの神経まで威嚇してくる。
半分がいじめで不登校になった子だと聞いていたけど、最初はもう吐き気がして帰りたかった。

そりゃ、明るい子もいるっちゃいる。
でも何だか僕には、無理して明るく振舞っているとしか思えない。
そう思う僕も僕かーなんて。

「じゃ、行って来ます。シャーネット」


          ♪

その子に会ったのも、フリースクールだ。
運命というか必然っつーか、偶然というべきなのか。
そいつはじっと僕を睨んで、突然に
「アンタ、長生きできないよ」
そう突拍子もない事を言われた。

なーんで初対面の子供にンな事言われなきゃならねーんだ!って思った。
当たり前だ。いきなり人様のおキレイな顔を指差して何が長生きできない、だ!けっ。
ツンデレというのか。あーそうですか。

そのムカつく女は俺を潔く下の名前で呼び、馴れ馴れしくタメ口で喋り、僕の事を猫コンだとか、根性なしだとか散々言いまくった。
ムキ〜ッ!
何てガキだ、ちくしょ〜〜〜〜〜!!!!

でも、時折見せる寂しそうな表情は、幼い子供を連想させる。
僕が帰ろうとすると、
「帰るんだ?」
って妹みたいな目で僕を見る。止めてくれ!
そんな甘えたような子供さんのような目をしないでくれ!!
本当に悲しい顔をするから、困る。

どうしていいのか、わからなくなる。 


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