ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ゆーくんの包帯戦争。(グロ注意)
- 日時: 2009/10/30 15:17
- 名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)
えー、以前書いていた「包帯戦争」がこちらの都合で書けなくなり、ボツになりました。
今回も重く、今まで以上にグロいです。それだけよろしく。
■登場人物■
ゆーくん
この物語の語り手。自称「人殺し」。過去にあった事件でトラウマが多い。「なんて」「とか思ったりして」が口癖。
ヒナト
苗字は岸田。ゆーくんに忠実でそれ以外の人間(特に女子や大人)を嫌う。過去にあった事件でトラウマがある。ゴスロリを愛用している。
画像>>6
- Re: ゆーくんの包帯戦争。(グロ注意) ( No.12 )
- 日時: 2009/10/29 17:33
- 名前: 踊音氷裏 ◆KISSING.c2 (ID: gqZQq2JR)
こんばんは!
幻想しぃちゃん…などにコメしてた氷裏です♪
何だかワクワクします!続きがはやく読みたい…
無理しないていどに更新がんばってください(-ω-*)
- Re: ゆーくんの包帯戦争。(グロ注意) ( No.13 )
- 日時: 2009/10/29 17:37
- 名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)
どうしてあなた様は嬉しいことばかり
言ってくれるのでしょうか((嬉涙
もうこちらは本当に励みになります。
頑張りますので、よろしくお願いします。
- Re: ゆーくんの包帯戦争。(グロ注意) ( No.14 )
- 日時: 2009/10/29 17:48
- 名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)
てくてくと。
身長差のかなりある二人がてくてくと。
12階建てマンションの10階まで来ると、ヒナトが鍵をスクールバッグから取り出す。
チェーンを開き、
「どーぞ★」
「どうも」
先に入った。っていうか、ここは元々ヒナトの家なんだけどな。冷蔵庫でけー。いつも思う。
袋を机の上におき、そこから買ってきたものを次から次へとヒナトに渡す。
「では、ヒナトさん。冷蔵庫に入れてください」
「わかりましたっ。ゆーくん隊長!!」
何だよ、ゆーくん隊長って。
まあ、精神年齢がほぼ小学校の低学年に等しいヒナトに何を言っても無駄なんだけど。
「制服、着替えなくていーの?」
「このまま、このまま!」
はいはい。
どーやらゴスロリにアレンジした制服が気に入ってるみたいだ。
先生に怒られないわけ?それ。
「あたしが作るから、ゆーくんはソファで待っているのだっ!」
「…………」
すごく不安になってきた。
不器用ではないけど、時折変なカンシャクを起こすからなー。なんて。
適当にテレビをつける。ニュースだ。
また、あの話。
あの連続殺人事件の話。
僕はチラリと台所で手を洗っているヒナトを見る。
そしてまた、テレビの画面に目を戻す。
ヒナトが、殺ったのかなー。なんて。冗談でも、笑えない。
「なー、ヒナト」
「何?」
大きな、小動物を連想させる瞳を光らせて、僕を見る。
「殺人犯、捕まらないな」
「あははっ。何言ってるのー、ゆーくん」
ヒナトがひき肉をフライパンで焼く音がした。
「殺人犯が怖いのー?」
「そうでは、ないけど」
「だーいじょーぶっ!もしもゆーくんが殺されそうになったら、あたしが殺してあげるから♪」
そういう事をサラリと笑顔で言わないで欲しい。お願いだから。
しかも包丁を持っている姿で。
でも、少し感心もする。
忘れてなかったんだ。約束。なんて。
アホか、僕は。「殺してあげる」なんて言われて、何感動してんだか。
相当狂ったな。
「何となくだけど、できたよー」
食べるのが非常に怖い。
皿に盛られたハンバーグらしき黒い物体。多分、ハンバーグだと思う。多分。確証はない。
「油、ひいた?」
「ひーてなーい」
ダメだ、こりゃ。
- Re: ゆーくんの包帯戦争。(グロ注意) ( No.15 )
- 日時: 2009/10/30 13:40
- 名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)
ヒナト曰く、完璧な完成品である黒いハンバーグを、僕は口に強引に押し込んだ。
「どう?どう?」
「おいしいよ。ヒナトが作るのは、どれもおいしい」
ヒナトが、本当に嬉しそうにパァァッッと笑顔を輝かせ、僕の両肩に手を置き、
「これからは、ヒナト料理長と呼んでくれたまえ!」
大胆にも料理長と名乗るつもりでいるらしい。阻止しなければ。
「いやー、でも料理長よりもおいしいからさ。料理長だったらもったいないよ、ヒナト」
料理長に申し訳ない。
「むー。だったら、ヒナトでいい。あたしはヒナトなのだっ!ゆーくん隊長!」
その設定、まだ続いていたのか。
やれやれと、箸でハンバーグを崩し、デカイ玉ねぎを口に運ぶ。
何気なくテレビの画面を見て、
「飽きないよね」
ヒナトの声で、目を逸らした。向かい側に座っているヒナトの横顔を見る。
「……………………」
「よく、飽きないよね」
僕はしばらくヒナトの横顔を見て、次に箸でヒナトの皿からハンバーグを奪った。
すぐさまそれに気づき、
「あー!!何するの、ゆーくん!!」
「ちゃんと陣地を見張ってなきゃダメでしょーが」
「むぅ!意地悪しないでよっ、怒るよっ!」
ヒナトが頬を脹らませる。やっぱ、美人だから可愛い。
素直にハンバーグをヒナトの口の前に出し、
「嘘。本当は、ヒナトにあ〜んって食べさせてやりたかったんだ」
なんて。言ってみる。
「嬉しいっ、あたし、ゆーくん大好きっ」
わかったから。
キミが、僕を殺したいほどに好きって事くらい。
小さな口で、ハンバーグを頬張る。おいしそうに食べているけど、多分焦げた味しかしていないと思う。
食べ終わって、皿を洗ったりと後片付けをしながら、「ヒナト、最低限の提出物はきちんとしてろよー」
「学校なんて、行かなくてもいーし」
またそんな事を。
でも、まあそうか。ヒナトは学校に居ても居なくても同じだから。
ずっとぼんやりしているか、寝ているかだし。
「先生に怒られるぞ」
「怒られないもーん。あたしはいい子だもーん」
ソファの上で両手をぶんぶん振り回す。何の踊りだ。
皿を乾燥機に入れて、付けっぱなしになっているテレビを見る。
まだやってる。
ハゲたオッサンが連続殺人犯の凶悪性だとか殺された被害者の無念など、判りきっている事ばかりを延々と話している。飽きないのか、この人。
「………………」
ハッとした。そうか。
さっきヒナトが飽きないねと呟いたのは、このせいか。なーんだ。深い意味はないんじゃないか。
画面に、近くの駄菓子屋が映る。
あそこのおばちゃん、まだまだこれからっていう時だったのにな。
人はみんな、他人事のように被害者に同情したり、加害者を侮辱したりするけど、実際当人達にして見れば、次元を超えた何かが繋がりを求めてくる。
「先にお風呂入るねー」
「うん」
丁度、僕とヒナトのような、絶対的に狂ってしまった歯止めの利かない関係のように。
- Re: ゆーくんの包帯戦争。(グロ注意) ( No.16 )
- 日時: 2009/10/30 14:20
- 名前: 朝崎疾風 (ID: VZEtILIi)
翌日。連続殺人事件がしきりに起こるので、学校が休みになった。自宅待機。とんでもない。なんて。
僕は週に2回は病院に行かなければならない。
まったく。自宅待機なのに。コレで殺されたら誰のせいだよ。いい迷惑だ。
眠たいとぐずるヒナトに、行って来ると言うと、目をパチリと開けて、
「どこに?どこに行くの?行っちゃヤダ」
腕を引っ張られた。
「いつもの病院だよ。ヒナトも行く?」
「行かないっ。今日も行っちゃうの?」
「うん。ゴメンね」
子犬のように僕を見るヒナトを置いて、いざ病院に。
「まーた来たの」
来いって言ったのそっちだろ。
そう悪態をつく気力も無い為、僕は抵当に頷いた。消毒液の匂いが鼻につく。
茶髪を一つにまとめて、黒ぶち眼鏡をかけた僕の担当医である、神垣麗奈先生。
髪がキレイとか言っている割には、そうでもない。普通だ。
眼鏡の奥の目を光らせて、僕の足を軽く蹴る。
「最近、いい男いないわー」
「居たら奇跡ですよね」
嫌味をかましてやった。
今年で27歳になり、バツ1のこの先生は、趣味が男探しだと言う。
「レディに対して失礼よ、キミ」
「いやだな。どこにレデイがいるって言うんですか」
「言ってくれるわね。目の玉くり貫こうかしら」
「却下します。目は二つ合ってこそ、役目を果たすものですから」
さっさと言葉を返すと、先生がボソリ。
「面白くない」
漫才を目指している訳でもないから、面白くもどーでもいいと思う。
「で、今度は何でしょうか。言っときますけど、仕事以外の話ならお受けいたしますが」
アンタ、精神科の医者だろうが。そして僕は患者だ。
「薬ももらいに」
「あー仕事の話ですね。お引取り下さい」
「……………えっと、医者ですよね」
「一応は」
楽しそうにニコニコと笑ってやがる。
「それで患者からお金取るって、最悪ですね」
「どう?これで気分が晴れてこないー?」
「すごく不快になってきます」
もういいだろう。
敬語っていうのは性に合わない。
「早く、薬。早く帰らなきゃヒナトに怒られる」
「相変わらずね。自由がないなんて、一番いやだわ」
「…………薬を〜」
「自由………鳥籠に納まっていないで、もっと自分の翼を羽ばたかせなさいな。青少年よ」
「話、逸らさないで下さい」
この人は、いつもこうだ。
だら〜んとして、何でも適当で、まともに人の話を聞いているのか!と渇を入れたくなる。
先生がカルテをチラッと見て、
「こんなの必要なーい」
と、机の上に放ってしまった。おいおい、いいのか。
「人の話くらい聞け。この似非医者」
「酷いわね、ゆー。アンタ、未来の正義者に今すぐ謝りなさい」
どんな請求だよ、悪の帝王。
「薬ね。わかってる。今出すから」
悪の帝王が不敵な笑みを浮かべた。恐ろしい。
「早く持って来いよ。家でヒナトが待ってる」
「雛鳥のようにお腹をすかせて待っているのかしら?素敵ね。あなた方の理解不能な愛に乾杯っ」
ああ、やっぱり傍から見れば理解不能なんだ。
当たり前か。
どーして僕とヒナトが同棲しているのか、絶対に他人にはわからないだろうから。
「別に、わからなくていいし。判ってもらおうとも思わないし。どーでもいいから薬くれ」
「わかってるわよ。でも、こっちの愚痴も聞いてよ」
「患者に何自分のマイナス思考注入してんだよ」
「ちゅーにゅー」
ダメだ、重症だ。
この悪の帝王は6年前、僕が地獄のような体験から抜け出した時も、こうしてフザけた事を言っている。ブツブツと、ある事無い事全部言って、笑わない僕に話しかけていた。
次から次へと、自分のコンプレックスや、家庭事情、夫の悪口やらその不倫相手の陰口など、本当にどーでも良い事を喋っている。
そして、最後には必ず、「どう思う!?」と僕に問いかけ、僕が素直に「わかりません」と答えると、ニッと笑い、「そうだよね。わからないよね。まだ、お子様だから、ね」得意気に言ってウインクした。
どうしてだが、この人は他の医者とは違う気がした。
第一、先生っていう感じしないし。
「つか、早く薬!!」
「…………まだ、捕まってないわね。犯人」
話を逸らしやがった。ったく。
「まさか、ヒナトっていう事はないわよね」
冗談、では笑えない。それでは済まない。
ヒナトは冗談を本当にしてしまった事があるから。
「それ、ジョークですか?」
「…………さあ?」
悪の帝王が口角を吊り上げて首を傾げた。
「惨殺、ね〜。怖いわね。殺された人なんて、痛みを感じないまま死んじゃったのかしら」
何も、答えなかった。
「早く、帰りたい」
「…………そうね。薬、出すわ」
悪の帝王が椅子から立ち上がり、隣の部屋へと消えた。狭い病室で僕は一人、何も考えずに座っていた。
3分くらい待って、悪の帝王が白い紙袋を手に持って、
「じゃあ、これ。説明はいつも通りだから、なし」
「どうも」
受け取ろうとすると、ひょいっと袋を持ち上げられた。
「………あの」
「あなたは、今幸せかしら」
どうしてそんな事を聞くんだろう。そんなに不幸面しているのだろうか。
「何で、ですか」
「私は今、離婚してるけど幸せよ。でも、キミは不幸せかなーって思うの。無力な卑猥な子供で、それ故ワガママなお嬢さんのお守りをしているし」
幸せか不幸か、なん人によって違うのだろう。
「幸せ、ですよ」
本心か、嘘か、冗談か、本気か。
そんなの、関係ないしどーでもいい。
「そう。ならいいわ」
帝王は何を言いたかったんだろう。
薬を受け取って、僕は病室を後にした。