ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ——電脳探偵部—— (帰って参りましたぁ!)
- 日時: 2009/10/31 12:39
- 名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
えっと……消されてしまいました……。
いや、正確に言うとなくなってた。
ショック……。
私は電脳探偵部を始めから書く気はありません。
ので、始めから読みたい人は、↑のURLをご覧下さい。
でも、目次最初っから造り直したかったから、まぁよかった。
これからもっ! 空雲 海共々電脳探偵部よろしくお願いしますっ!
たぶん目次(パート2)
反抗期(あるいはついに人間関係まで足を踏み入れた)
第一部 「電脳」なくてもいいんじゃね?って感じの依頼 >>2-6
第二部 デリート、実行(あるいは子供VS大人) >>7-10>>20
第三部 デリート、実行(あるいは前代未聞の連続デリート) >>25
- Re: ——電脳探偵部—— (帰って参りましたぁ!) ( No.1 )
- 日時: 2009/10/29 16:14
- 名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
目次は「反抗期(あるいはついに人間関係まで足を踏み入れた)」から始めます。
- Re: ——電脳探偵部—— (帰って参りましたぁ!) ( No.2 )
- 日時: 2009/10/29 16:29
- 名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
私達は、あの瓜杉グループの対決から数日後、平穏に時が過ぎていきました。
だけど——平穏な時はやはり長くは続きませんでした……。
「依頼です」
曇先輩の一言で身構える私達。
もうここまでくれば曇先輩がどんなことを言うのかわかってる。
「…………」
曇先輩の頬が引きつる。
私達は今部室(あるいは使われなくなった備蓄倉庫)に居る。
空雷先輩は曇先輩の言葉で体を寝かしていたのを起こし、雨雲先輩はタロットカードを全部落とし、私は曇先輩の目を捉え、様々な準備をみんなしている。
空雷先輩は相変わらずのツンツンヘアーにチェーンがジャラジャラ。
今日は暑いのかネクタイなし。
雨雲先輩は綺麗なポニーテール。黒ぶちメガネに、赤いチェックのリボンはゆるっと絞め、赤いチェックのスカートを履いている。
私は雨雲先輩と同じ。だけど最近髪の毛を切ったから短い。
曇先輩は制服をビシッと着こなし、涼しい顔。
全然変わってないのが、電脳探偵部です。
「今回の依頼は——これです」
そう言い、カーソルを動かす仕草をする曇先輩。
私達は恐る恐るデスクに集まり画面を見る。
「依頼内容のメールは『私の親から暴力を受けています。とっても嫌です。そして親が再婚し、いじめられているので、もう私には居場所がありません。電脳言探偵部の皆さん……助けて下さい』だそうです」
曇先輩がメール内容を言い終わる。
「なるほどね……っていうか、なんかもうちょっとましな物してよっ! 私達瓜杉グループと宣戦布告して怪我だって治ったばっかじゃないっ!」
雨雲先輩が髪を振り乱して言う。
「同感」
私と空雷先輩の声が揃う。
「だから安全な物にしたんじゃないですか。これくらいしかないんですよ、安全な物」
曇先輩がため息交じりで言う。
……今なんて言った?
「『安全な物はこれしかない』……って言った?」
「はい」
雨雲先輩の言葉にあっさり答える曇先輩。
「……依頼のハードル高くなってませんか?」
……私が言うと沈黙するこの場。
みんなそう思ってるんだ……。
「これが最も安全ならしょうがないわね……」
「部活動だもんな……」
雨雲先輩と空雷先輩がいい、今回の依頼はこれに決定した。
その時、私は知らなかった……。
だって……すっごく悲しくて……虚しくて……。
こんな人が今この一分一秒の間に居るんだなって思うと……切なくなった……。
「ゴラァァァァァァァァァァァ!!」
その時、扉を蹴破るものすごい轟音がした。
埃が宙を舞う。
私達は一斉にせき込み、扉の方を睨む。
「何よっ! 一体何があったの!?」
雨雲先輩が目をこすりながら言う。
ちょっと待って! ここに来てるってことは、もしかして——!
「私達が電脳探偵部ってこと知ってる人じゃないんですかぁ!?」
「えっ!?」
私以外の全員の声が揃う。
「ということは——」
「瓜杉グループ!?」
曇先輩の後を雨雲先輩が引き継いで言った。
その時!
「楠 空雷はいるかぁ!?」
大声が部室(あるいは備蓄倉庫)に響き、出てきたのは、ふっくらとした体型で完全にメタボ。
制服は下ががはち切れそうなくらいパンパン。
いっぱいネックレスとつけて、シャツのボタンだってはち切れそう。
ネクタイはしてない。
まさに、
「ヤンキー……」
私がつぶやいた。
ついに瓜杉グループもヤンキーを登場させるか……。
「俺の名前は三年轟 大志(とどろき たいし)! 楠 空雷はいるかぁ!?」
声量があって普通にしゃべってるつもりでも耳元で言われてるみたいに大きい声。
「その前に聞きたいことがあるわ」
雨雲先輩が睨む。
「なんだ?」
「……瓜杉グループの人間が何の用?」
「瓜杉グループってなんだ?」
「とぼけないで下さいっ!」
私が檄を飛ばし、睨む。
「お前……! 俺様に向かってどんな口きいてんだ、コノヤロー!」
そう言い、私に手を上げる。
「ちょっと待った」
空雷先輩がごつごつした大きい手を掴む。
「いきなり暴力を振るうのは、どうかと思うな」
「お前が楠 空雷か?」
「俺がどうした?」
そう言い、手をねじり上げる空雷先輩。
「いててててててってっ!」
そう言い、手首を抑える。
「そんな細腕で俺をねじり上げるとは……」
「細腕だってぇ?」
しまった! 空雷先輩に火がっ!
「落ち着いてください、空雷先輩」
曇先輩が火に水を注ぎ、火を消す。
「曇……」
「どうやら、瓜杉グループの人間ではないようですよ」
「なんでわかるのよ」
雨雲先輩が言う。
「だって——瓜杉グループの人間はそんなことをしません。第一……瓜杉グループのことを彼は知りませんし、電脳探偵部のことも彼が知りません」
それじゃぁ……。
「勘違いってこと?」
雨雲先輩が言う。
「なんだぁー! 違うんだぁー! 最初に言ったの誰よっ!」
「あんただろ!」
私を睨みつけるみんな。
……ようやくあの時の空雷先輩の気持ちがわかったわ……{電脳探偵部の暑い熱い夏休み(あるいは電脳探偵部に平穏な時間はない)参照}。
「瓜杉グループとか電脳探偵部とかごちゃごちゃ話してんじゃねぇーよ!」
そう言い、轟先輩が空雷先輩に一歩踏みよる。
空雷先輩が一歩踏み出し、轟先輩に一歩歩み寄る。
「俺とタイマンはれっ! 決着だっ!」
「なんの?」
空雷先輩がダルそうに言う。
「お前は高校八校もシメたそうじゃねぇーか!」
「そうだけど」
「だがな……真の不良は俺だ! お前なんて奴はこの高校一番の不良なんて言われるわけねぇーんだよぉ!」
プチッ!
空雷先輩の何かがキレたっ!
「俺は気にくわねぇー奴は大体シメるが……こんなシメたい気持ちを持つのは初めてだ……」
背中が凍るほどの低い声で言う空雷先輩。
「表出ろ」
そう言い、窓から颯爽と出て行った。
- Re: ——電脳探偵部—— (帰って参りましたぁ!) ( No.3 )
- 日時: 2009/10/29 16:30
- 名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
……沈黙が続く。
轟先輩と空雷先輩がある程度の距離を取って、睨みあっている。
ここは電脳探偵部の部室(備蓄倉庫)の裏の小さな空き地みたいな所。
誰も居なくて草ボウボウで誰も近寄らないから不良の溜まり場みたいになってる。
「っていうか、なんで雨雲先輩と曇先輩が来てるんですか。それに、私は見たくないのに連れて行かれて……」
私が文句を言っていると、雨雲先輩が言う。
「この学校一の不良を決めるなんて、おもしろいじゃない。ねぇ曇」
「暇つぶし程度にはなりますね」
……魔女と悪魔だ……。
「でも、私を巻き込む事ないじゃないですか」
「ちゃんと空雷が戦うとこ、見ときなさい」
もう充分見てるんですが……。
その時っ!
空雷先輩が一気に轟先輩に詰め寄るっ!
そして空雷先輩の拳が轟先輩の顎を狙う!
そのパンチを避け、空雷先輩の腹部にパンチが当たり、鈍い音がする。
「がはっ!」
空雷先輩がよろける。
「まだまだ行くぜっ!」
轟先輩が言い、飛び蹴りを喰らわす。
空雷先輩の横顔に当たり、そのまま滑りおちた。
「うっ……」
空雷先輩が寝ころんだ所に、足で腹部を何発も打ち込み、生身の悲鳴のような鈍い音が耳に響く。
「がはっ! げほっ!」
空雷先輩の息が荒くなり、吐息する。
「ハァーハッハッハッハッハ! こんな奴が学校一の不良だってぇ? 笑わせるんじゃねぇーよ!」
そう言いもう一発蹴り、空雷先輩が転がった。
「これが空雷なの……」
雨雲先輩がつぶやくように言う。
目は大きく見開いており、驚きを隠せない。
「あの空雷が手も足もでないなんて、おかしいですね」
曇先輩が腕を組んだまま言う。
空雷先輩……。
「これで終わ——」
轟はその後の言葉を言えなかった……。
ギシギシと音を立てて首を掴んでいる。
そして首をゆっくりと持ち上げ、苦痛の表情になる轟。
「『終わり』なんて言わせねぇーよ」
空雷先輩の目がギラリと光る。
その目はさっきの目とは明らかに違う。
そう言ってそのまま地面に叩きつけた。
グシャッと音がし、まるでりんごの果物が握り潰された音がした。
「…………」
痛みで声が出ない。
「さっきは小手調べ。こっちが——本気」
そう言い、一歩一歩踏み出す空雷先輩。
「空雷……」
雨雲先輩の目が輝く。
「くっそぉー!」
轟先輩が起き上がり、飛び蹴りを喰らわす!
「おっせぇー飛び蹴りだなぁ」
「何!?」
飛び蹴りを軽々避け、背後に回る!
「これが本当の飛び蹴りだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
後頭部に空雷先輩の飛び蹴りが当たり、そのまま軌道をずらし脇腹に回し蹴りが当たった。
「がはっ!」
そのまま地面に叩きつけられた……。
「甘ったれた蹴り入れんじゃねぇーよ、コノヤロー!」
そして、そのまま轟先輩はそそくさと出て行った……。
「ったく! 本当に心配したんだからっ!」
「いてっ! 雨雲もうちょっと優しく——」
「黙らっしゃい!」
前にも聞いたことのあるような会話が雨雲先輩と空雷先輩で繰り広げられる。
雨雲先輩が空雷先輩の怪我を治療し、曇先輩はデスク、私は雨雲先輩のお手伝い。
「もう! ほんっとうに変な芝居なんかして!」
「芝居なんかじゃねぇー! ケンカっつーモンは! 相手の力量を図ってやるもんなんだっ! がむしゃらにやったって、結果は出ねぇーんだよ!」
「空雷が『図る』なんて言葉使うなんて。おー嫌だ嫌だ! 明日は雪が降るんじゃないのかしら?」
「お前なぁー!」
空雷先輩が大声を出した後、
「いててててっ!」
背中に手を当てる空雷先輩。
「そんな大声出すからよ、バーカッ!」
「雨雲!」
「あははは!」
雨雲先輩が笑った後、曇先輩がゆっくりと言う。
「夫婦喧嘩は違う所でやってください」
「夫婦じゃなぁーい!」
……雨雲先輩と空雷先輩の声が重なる時点で夫婦だと思いますが……。
「とんでもない邪魔が入りましたが、ここからデリート計画を説明したいと思います。皆さん——」
曇先輩の言葉が止まり、瞳が真剣になる。
「心して聞いてください」
……一瞬空気が凍った。
今回のデリートは波乱の予感になりそうです……(いつも波乱ですが)。
- Re: ——電脳探偵部—— (帰って参りましたぁ!) ( No.4 )
- 日時: 2009/10/29 16:31
- 名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
私達は曇先輩のデスクに集まる。
曇先輩がカーソルを動かし、そのままあるファイルをダブルクリックした。
「これがその内容です。前にも言いましたがこれは人間関係のバグです。犯罪を犯したバグでないので繊細に扱ってください。まず最初に、今日依頼人と会う約束をしています」
「あらそう」
雨雲先輩が言う。
……数秒の沈黙。そして、
「ええええええええ!?」
曇先輩以外大絶叫。
「ちょっと! そんな話聞いてないわよっ!」
「てか、いくら依頼人でも呼び出してもいいのかよ? 電脳丹手部がこんなメンバーですって言いふらしてるようなモンじゃねぇーか!」
雨雲先輩と空雷先輩が興奮しながら言う。
「大丈夫です。彼女は——」
曇先輩が手で耳を押さえながら言ったその時、扉が揺れた。
そしてそのままぎこちなくガタガタと開き、そのまま埃が舞い上がった。
「ゲホゲホゲホゲホッ……」
むせる声。
そのまま人影はゆっくりと歩く。
「ようこそ。我電脳探偵部へ——」
曇先輩がゆっくりと立ち上がり、そのまま私達の先頭に立つ。
その人はうちの制服を着こなしていて、髪が短くメガネを掛けていてどこにでもいる普通のかわいい女の子って感じ。
背丈は私と一緒くらいだから……一年生?
「どうも。来瀬 朱音(くるせ あかね)と言います。一年生です」
やっぱり一年生なんだ……。
「あなたが依頼人?」
雨雲先輩が言う。
「はい。今回もよろしくお願いします」
今回も? この「も」はなんで?
「皆さん、頭にハテナマークが浮かんでいますよ」
曇先輩が言い、そのまま続ける。
「彼女は我電脳探偵部に一度助けられているんですよ」
「ええええええええええ!?」
本日二回目の大絶叫。
「だから面会をさせたんです」
曇先輩が淡々と言う裏腹に、空雷先輩が慌てて言う。
「何の事件だよ?」
「小説を書いていたブログのバグをデリートした事件を覚えていませんか?」
確か、あの時……そう! 私がまだ電脳探偵部に入りたての時っ! {電脳イジメ(あるいは科学の裏にある闇)参照}
「あの時の依頼主——そして現在最年少作家で爆発的大ベストセラーリアルかくれんぼを書いた花巻 朱音(はなまき あかね)本名来瀬 朱音です」
「えええええええええええ!?」
本日三回目の大絶叫。
「あの時の依頼主があの人気のリアルかくれんぼを書いた花巻さんっ!?」
私が言う。
「信じらんない……」
雨雲先輩は目をまん丸くしている。
「そーいえば、あの時ブログで書いてた小説って——」
「リアルかくれんぼです」
「えええええええええ!?」
来瀬さんの言葉で本日絶叫四回目。
「それじゃぁ、俺たちがデリートしなければ、今ブログは——」
「無くなってたかも知れません」
曇先輩が言う。
「信じらんない……電脳探偵部がこんなことに関係してたなんて……」
私が言う。
空雷先輩が来瀬さんに聞く。
「でも、公表してるやつを本にしてもいいのか?」
「それはブログで公開していたということを前提にして売り出したんです」
雨雲先輩も聞く。
「オファーで? それとも投稿?」
「オファーで」
「すごーいっ!」
雨雲先輩と私の声が重なる。
「今回は顔が見えなかったので、文で感謝の言葉しか言えませんでしたが、今回は顔を見て言うことができます。あの時は本当に有難う御座いました」
そう言い深々と頭を下げてお礼をする。
「まっ! デリートしたおかげで人気作家になっちゃったんだもの! やりがいがあってよかった!」
雨雲先輩が言う。
「よかったなっ!」
「よかったですっ!」
私と空雷先輩が言い、来瀬さんが微笑んだ。
「さて——。昔の話をしている場合ではありません。本題です」
曇先輩がキーボードの指を滑らし言った。
その言葉で私達の空気が張り詰める。
「二度あることは、三度あるに限らず、一度あることは二度あるのね」
雨雲先輩が言う。
「今回も、俺たちが全力でバグをデリートするぜっ!」
空雷先輩が親指を来瀬さんに向かって突き出す。
「はい」
来瀬さんが返事をした。その顔色は、どこか悲しそうだった。
「それでは来瀬さん。ある物を見せて下さい」
曇先輩が言い、頷く来瀬さん。
私達は、そのある物を見て大きく目を見開いてしまった……。
- Re: ——電脳探偵部—— (帰って参りましたぁ!) ( No.5 )
- 日時: 2009/10/29 16:32
- 名前: 空雲 海 ◆EcQhESR1RM (ID: u7zbXwTu)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=10918
「これっ……何?」
私が震える声で言う。
制服を捲り上げ、背中を見せる。
それはとても痛々しい傷だった。
何度も何度も殴られ、たばこを当てられ火傷をしたような、刃物の後もあり、くっきりと平手の跡がついている。
「これって……家庭内暴力?」
私が言う。
みんなは何も言わない。現実を……受け入れたくないだけ……。
「これは私の親がやったものです。父からはたばこ、母からは刃物、暴行を受けました」
来瀬さんがゆっくりと言う。
その顔は、悲しみと絶望の色に塗られてる。
こんな状態でずっと小説書いてたんだ……。
……私達の間に重い沈黙が渦巻く。
この沈黙を破ったのは曇先輩だった。
みんなどう反応したらいいかわからない……。
「ドメスティックバイオレンス……DVです。彼女はDVを受けていて体に複数の傷跡があります。それに学校でもいじめを受けているんですよね?」
「はい……」
来瀬さんがか細い声で言った。
そーいえば、私達一年生の間でイジメが起きてるって。それは一年A組……もしかして!
「来瀬さん、何組?」
「A組です……」
やっぱり……。
イジメが起きてるって有名だったのは、来瀬さんだったんだ……。
「私……今、居場所がなくて……本の世界に閉じこもることしかできなくて……」
そう言って、目から雫がこぼれる……涙だ。
「あら……ごめんなさい。私……私……」
そう言って、一生懸命手で涙をぬぐう。
だけど、次から次へと涙がこぼれる。
その時、雨雲先輩がゆっくりと近づいていき、来瀬さんを抱きしめた。
「えっ……!?」
驚きで涙が止まる。
「泣いてもいいのよ……思いっきり泣いて。我慢なんかしなくていい……その抑えてきた涙、思い、それをすべて洗い流して……大丈夫。電脳探偵部はここにいる」
雨雲先輩がゆっくりと耳元で囁く。
その瞬間に、止まっていた涙が勢いよく流れだす。
「うっうっうっうっ……」
そして——、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
次から次へと目から涙が流れる。
それと同時に叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。
それはまるで滝のように——。
滝も同じように轟音を響かせながら流れている。
人間が泣く時も、叫びながら泣く。
「叫び」は滝の轟音。「泣く」は滝の水。
人間が泣く時って……自然から来てるのかな。
その時、
「あーうるっせっ! ウジウジ泣いてんじゃねぇーよっ!」
空雷先輩がその辺にあった椅子を蹴りあげる。
「『居場所がない』? 居場所がないならつくりゃーいいじゃねぇーか! 悲劇のヒロイン演じてるんじゃ——」
「空雷っ!」
その時、雨雲先輩の怒鳴り声が空雷先輩の言葉を断ち切る。
「空雷は何もわかってない! 泣いて泣いて叫んで叫んで……こんなにズタズタになって……。それを『悲劇のヒロイン』だってぇ? そんな事誰も望んでないわよっ!」
「あぁー何もわかってねぇーよ! だって本人じゃねぇーんだもんっ! だがな一つ言わせてもらうけどなっ! お前抵抗したか?」
……沈黙が訪れる。
「どーせ抵抗してなくて俺らに頼ったんじゃねぇーか! 前のバグは別として、今のバグは自分でもどうにか出来る事なんじゃねぇーか? まず人に頼らず、自分で頑張れよっ! 根性見せろよっ! 我慢してるだけじゃぁーナメられてばっかだぞっ! そんな事望んでなくても、お前がそうしてるんじゃねぇーか!」
パンッ!
……風船が割れたような音が響いた。
「サイテー……」
雨雲先輩が低い声で言う。
その瞳には鋭い光が宿っている。
空雷先輩の左頬には大きな手形。雨雲先輩が手を下ろす。
「頑張ったけど無理でしたの方がすっごく説得力はあるよ。だけど——無理して頑張らなくてもいい時だってあるんじゃないの……」
そう言い、沈黙がまた訪れた……。
この掲示板は過去ログ化されています。