ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Blood Lily ■グロあり■
- 日時: 2009/12/23 13:19
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
死神の話です。やっぱ死神スキですね。
■登場人物■
ノエル…17歳 今は滅びた修羅の血を継ぐ少年。ムードメイカーだが、性格が豹変する事もある。
リリー…15歳 人間の魂を破壊する、任務に忠実な少女。感情を失くしている。
トト……16歳 年の割にはやや子供のような性格。リリーに憧れている。「死神」だが人間らしい。
ラズ……17歳 無口で無表情な少年。感情が無いようにも見えるが、そうではない。
シヴァ……18歳 短気で怒った時が一番五月蝿い。死神の中で最年長であり、時折仲間を叱る。
フィーロ……28歳 司令官で、人間だが死神を処刑道具とは思っていない。
シャーネット……?歳 反政府組織キラーの一人。人間を「玩具」だと称している。
ジーモ……18歳 シャーネットの鎌でもあり、世話係。唯一武器化できる人間。
- Re: Blood Lily ■グロあり■ ( No.23 )
- 日時: 2009/12/16 18:02
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
第二章
リリー&ノエル
朝になると、雪はおさまっていた。一面真っ白の世界を、二人の死神が歩いていく。
「任務終了だな」「早く帰りたいわ」
白い地面に足跡を残し、元来た道を急ぐ。
「あの子・・・・・どうしたかしらね」
「知るかよ、人間なんてどーでもいい」
アニーに別れを告げず、明朝に出発していた為、心配しているかもしれない。
「帰ったら、また・・・・・・処刑かしら」
「しばらく休日がもらえるだろうなぁ」
「だといいんだけど」
「ぎいいいぃっ!ギャアアアアアアアアッ!」
奇声を発しているのはトトだった。
足で地面をガンガンと蹴り、両手で頭を抑えている。帰ってきたリリーとノエルが、その光景を見て唖然とした。
ラズが隣でトトを悲しげに見下ろしている。
「・・・・・名前を、呼ばれたの?」
静かにリリーが訊ね、無言で頷く。
「嫌あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!ぎゃ、あ やあああっ!!・・・・・・・・がっ」
嘔吐しながら、トトが苦しげに息をする。
「トト、大丈夫だから」
ラズが話しかけ、トトの背中を擦る。びくっと痙攣し震えた体が納まっていく。
「・・・・・・・はーっ」
最後に長い息を吐き、トトが気を失う。ラズは体を支え、器用に背中におぶらせた。
「慣れてるわね」「慣れてるからね」「拒絶反応みてーなの?」
ちょんちょんっとトトの頭をつつきながら、ノエルが訪ねる。
「うん、自分の名前が嫌い・・・・というか、トラウマなんだって」
- Re: Blood Lily ■グロあり■ ( No.24 )
- 日時: 2009/12/16 19:58
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
ぐったりしているトトをしばらく見つめる。
「トラウマ・・・・・ね」
自分自身でも驚くほど乾いた声が出た。リリーが自分の喉を押さえる。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?)
「俺、トト部屋で寝かせてくる。司令官には、言っておいて」「了解」
部屋から出て行く二人を見送り、リリーが短く息をつく。
「感情が、ホントに無くなったと思ったか?」
「っ」
ノエルの顔を見れず、俯いた。しばらく呼吸を整えて、何も見ないように目を閉じた。
「感情なんて、無くしたわ」「そう思ってるのは、お前だけだろ?」
図星、かも知れない。リリーの表情が一瞬だけ曇る。
ノエルもそれに気づき、視線をリリーからトトの嘔吐物にずらした。
「お前は、いつだってそうだ。人間じゃなくて『死神』として自分を認識してきた。いつだって、シンシアの言いつけを犬みてーに守ってきた」
『シンシア』という名前に、リリーが反応する。
ノエルを睨みつけ、彼女にしては珍しく苛立ちの混じった声で、
「あの人と私を重ねないで」
脳裏に浮かぶ、色素の抜けた長髪。長い睫毛。
その人物像をかき消すように、リリーは歯軋りをする。
「重ねて、ねーよ」
少しだけ焦りのこもった口調。ノエルの視線が、リリーに戻る。
小刻みに震え、こちらを見ている白髪の少女。
「重ねてるわ。私を見る目も、あの人を見る目だった。どうかしてるわ」
「・・・・・・・・・・・五月蝿い」
感情を抑え、飲み込む。何の味もしなかった。
あの地下で監禁されていた日から、何かが変わってきている。
ノエルが、『4年前の惨劇』を起こした日?
それとも、リリーが生まれた日から?
おかしくなっていく。
「もう部屋に戻るわ」「これ、どーすんだよ」
嘔吐物を指差すノエル。そちらを向かずに、「ラズが何とかしてくれるわよ」リリーが返事する。
そのまま、部屋から立ち去った。
残されたノエルが、苛立ちを抑えきれずに壁を思い切り叩く。
拳から血が流れ、床と壁を染めた。
「・・・・・・・・・・・・ちげーよ、糞」
そんなんじゃない、と言い訳をしている自分が腹立たしい。
リリーの言っている事は、当たっている。
依存している。シンシアに。
彼女の母親に。
普通、『死神』は一生子供の姿で、何年か生きていたら能力に犯されて死ぬ。
しかし、シンシアだけは大人の姿となり、奇跡的に妊娠し出産もした。生まれたリリーも『死神』だった。暗闇と孤独を好む、少々変わった人で、自ら望んで監禁生活を希望した。
- Re: Blood Lily ■グロあり■ ( No.25 )
- 日時: 2009/12/18 16:58
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
「誰があんな、変人女・・・・・」
嘘。虚像。偽り。
シンシアはそんなもので出来ているような人間だった。
「・・・・・・・・・・あーもう!」
ゴミ箱を蹴る。ガゴンッといい音がした。
「何だよー、ったく!」
髪をかき上げながら、部屋から出る。冷たい廊下。処刑場の裏舞台。そこは、たった一つの家。
虚しくなるほど、その形はないけれど。
†
処刑の時間がやってくる。
今日の罪人は、強盗殺人。一家全員を惨殺した男性二人組みの処刑。
「これは、公開処刑じゃない。密室で行ってもらう」
「わかりました、フィーロさん」
処刑場の司令官である、フィーロが悲しげに眉を下げる。ここでは数少ない、『死神』を処刑道具と考えていない人間だ。
茶色の短髪に、優しげな顔だち。
任務を言い渡す時に、心苦しそうな顔をする。
「リリー、ごめんね。死神の数が少ないから、オフまで仕事させて」
「いえ、大丈夫です」
簡潔に答えるリリーを、複雑そうな表情でフィーロが見送る。傍で任務を聞いていたノエルが、リリーの後姿を見つめながら、
「あいつって・・・・・・・・何かこー。何つったらいーんだろ。あー、えーと・・・・・・だあぁぁぁぁぁっ!」
気持ちがこんがらがり、ノエルがくしゃくしゃに頭をかく。
フィーロが苦笑して、呆れたようにノエルの肩にそっと手を置く。
「まぁ、あんまり考えすぎ無いようにね」
「・・・・・・・・そっすねー」
視線を、ノエルの左腕に刻まれている刻印に移す。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
痛々しい刻印。魔法円のような柄。
『修羅』を抑えるため、ノエルが監禁される前に刻まれた、傷跡。
「ノエル、その後調子はどうだい?」
「あ?フツーっすけど」
「そ。なら、いいや」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダイジョブだから」
そう言われ、フィーロが固まる。
あどけない笑顔で、ノエルが親指を突き出す。
「俺は、ダイジョブだから」
「・・・・・・・・・・・・・・そっか」
(強がっているはずなんだけど、ね)
あえてそれ以上何も言わず、フィーロがその場から離れる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺には、あの兄貴の血が流れてるんだぜ?」
独り言。鼻で笑う。自分の血筋を、否定したい。
血を全部抜いて、誰かのと交換したい。
「無理、だけどな」
悲しげにノエルが笑う。誰にも見られたくない、弱気な顔。
任務を終え、返り血を浴びたリリーが戻ってきた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・・」
ラズとばったり会い、そのままお互い無言でシャワー室に向かう。
「何人処刑したの?」「・・・・・・・三人」「こっちは二人よ。どうして罪人は少なくならないのかしら」
ラズは答えなかった。
その代わり、少しだけリリーをチラ見して視線をすぐに前に戻す。
「トトは?」「大丈夫。落ち着いて、今はもうフィーロが手を焼いてるよ」
愛想笑いもせず、「よかった」短く返事。
「そういえば、昨日ノエルと軽く言い争いしてたね」
「聞いてたの?」悪趣味、とリリーが付け足す。
「違う。聞こえてきた」
ラズがちょいちょいっと耳を指差す。
「聴覚、いいから」
「そうだったわね。大丈夫。ちょっと心外な出来事があっただけよ」
(どーせ、シンシアさんの事なんだろうけど)
察しがいいラズが、的中した。
しかしそれを確認する事もなく、男性用シャワー室に手をかける。
リリーは隣の女性用。
「リリー」「何よ」「ノエルと、仲良くしてやって」
ばたん。
戸を閉めて、姿が消えた。リリーはボーッとその場に突っ立って、
「・・・・・・・・・・・仲良く?・・・・・仲良くねぇ」
何かを考えていた。
- Re: Blood Lily ■グロあり■ ( No.26 )
- 日時: 2009/12/18 17:14
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
「今、何て言った?」「だから、ラズに言われたの。ノエルと仲良くしなさいって。考えてみたら、私達って、仲良いのかしら」
食事の時間。部屋に運ばれた食事を食べていたノエルは、ポカンとして隣に座るリリーを見ていた。
先ほど、同じくトレイを持ってノエルの部屋に来たリリーは、無言でノエルの横に座り、「私達、仲直りするのかしら?」と聞いてきた。
ノエルにしてみれば、意味不明。
しかし、大体分かってきたのか、苦笑している。
「あー、要は俺と仲良くしてーの?」
「・・・・・・・?仲良くの意味がわからないの。ラズは仲良くしろって言ってたから、仲良くするべきなのよね」
「要するに、仲直り?」
「そういう事かしら。ん?でも、仲直りってどういう意味?」
常識の無いリリーが首を傾げる。
「お前、ホントに反省しているのかどーかわかんねぇよ」
「ハンセイ?失礼ね。私は半生まで生きてないわ」
「そーゆーんじゃねぇよ」
ノエルが手で口を塞ぎ、こみ上げてくる笑いを必死で抑えた。
訳がわからないリリーが、怪訝そうな表情でシチューを口に運ぶ。
大きすぎるニンジンが噛めず、少し眉をしかめる。
「ま、いーや。うん、ラズのいう事はよく聞くんだな。一つわかった」
「私も、一つわかったわ」
「何が?」
口から取り出したニンジンをスプーンに乗せ、ノエルに向ける。
「ここのシチューのニンジンは、大きすぎるって事よ」
†
どこか、薄暗い倉庫の中。人の死体が転がっていた。
悪臭。血染められた床。
安楽椅子に座る、一人の『キラー』。
その傍らで、一人の少年が面倒くさそうに御伽噺を読んでいる。
「んーで、シンデレラは幸せになりましたー。めでたしめでたし」
キラーは無表情で、どこか一点を見つめて黙りこくっている。
「どした?何かさっきから元気ねーけど」
「つまんない」
色素の抜けた明るい短髪を振り回し、キラーがため息をつく。
「なーんで世界ってこんなにつまんねーの?」
「さぁ。死神がいるからじゃねえ?」
黒い長髪に派手なメイクの少年が、どっちでもいいという風に答える。
「反政府の独裁社会になったらさ、人間で遊べるから面白いのに」
「政府側は、俺らの動きを死神で監視してるからねぇ。だから、ほら。アンデットの大量発生も、あの二人の死神に阻止されたじゃん」
「あぁ、あいつら・・・・・・・・・・・・」
脳裏に浮かぶ、白髪の少女と黒髪の少年。
キラーがニヤリと笑う。
「そろそろさぁ、ファーザーのために人肌脱ごうか」
「ガンバレやーい」
- Re: Blood Lily ■グロあり■ ( No.27 )
- 日時: 2009/12/19 08:54
- 名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)
第3夜
反政府撲滅計画開始
早朝5時。
ディスカニアは永遠に夜なため、朝という感じはしないほど、辺りは暗い。安い値段で購入できる電灯が町全体を照らす。
死神養育所=処刑場=孤児院という公式が出来上がる、一般人は公開処刑でしか立ち寄らない、中心都市にある処刑場では、鐘が鳴り響いていた。
これが、金槌にベルを何度も打ち付けるような不快な音で、一瞬で目が覚める。
「だーっ、もう!うっせーな、この音っ!」
ノエルが耳を塞ぎながら上半身を勢いよく起こす。
「起きた、起きたっつーの!さっさと止めよ、この糞鐘っ!」
ぐわ〜ん、と一番大きな音がして終了。
「ノエル?おはよう・・・・・・・」
迎えに来た、既に身支度を済ませたラズが、部屋で完全に気絶しているノエルを発見。
「・・・・・・・・・・何、してんの」
「頭いってー」
トトが長いローブを着ながら部屋から出る。裾が廊下に擦れているのもお構いなし。
ニット帽を被り、身震いする。
「こりゃ、まだ雪降ってんじゃねーのかぃ?」
窓がない為、確認できない。スリッパで廊下を高速移動開始。
丁度、リリーもいつもの服に着替えて部屋から出てきた。そして、
「・・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・」
奇妙な動きのトトを後ろから発見し、眉をしかめる。
その少し後ろから、ラズが何かを背負って歩いていた。聞かなくてもわかるが、
「ラズ、何それ」
聞いてみた。
「ノエルだよ」「・・・・・大体想像つくから、経緯は言わないでいいわ」
こくりとラズが頷き、自分より身長の大きいノエルをズルズル引きずって行く。
リリーは一緒だと思われないように、少し離れて歩いた。
「リリー」
名前を呼ばれる。振り返る。
反射的なもので、自分の名前で反応しない人間はいないだろう。
「シヴァ」「すまん、遅れた。任務からおっせーお帰りでな」
約1ヶ月ほど会っていない、同じ死神。
銀色の細い髪に黄金色の瞳、耳と口にかけてチェーン型のピアス。少し化粧をしているのか、瞼が蒼い。
「昨日の夜遅くに到着だ。ったく、ねみーのに鐘で起こされちまった。糞」
短気な性格のため、ノエルに対する恨みが多い。
「で、どう?ノエルの野郎、ちょっとは大人しくなったか?」
「・・・・・・・・・・・・いいえ」
「がっ!もー、止めてくれよ。俺マジうるせーの嫌いなのに」
(怒った時のシヴァが一番五月蝿いんだけど)
心の中でシヴァの言葉を否定し、何気なく視線をずらす。
「リリーは、変わらないねぇ」
「・・・・・・・・・・そう?」
「何か、髪が伸びたぐらいしか無い」
「あぁ、そうね。身長も伸びたけどね」
スタスタと歩き去っていくリリーの後姿を見ながら、シヴァが唖然。
「ぜ、全然気づかなかった・・・・・・・・っ!」
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