ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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Blood Lily ■グロあり■
日時: 2009/12/23 13:19
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

死神の話です。やっぱ死神スキですね。

■登場人物■

ノエル…17歳 今は滅びた修羅の血を継ぐ少年。ムードメイカーだが、性格が豹変する事もある。

リリー…15歳 人間の魂を破壊する、任務に忠実な少女。感情を失くしている。

トト……16歳 年の割にはやや子供のような性格。リリーに憧れている。「死神」だが人間らしい。

ラズ……17歳 無口で無表情な少年。感情が無いようにも見えるが、そうではない。

シヴァ……18歳 短気で怒った時が一番五月蝿い。死神の中で最年長であり、時折仲間を叱る。

フィーロ……28歳 司令官で、人間だが死神を処刑道具とは思っていない。

シャーネット……?歳 反政府組織キラーの一人。人間を「玩具」だと称している。

ジーモ……18歳 シャーネットの鎌でもあり、世話係。唯一武器化できる人間。

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Re: Blood Lily ( No.1 )
日時: 2009/11/24 13:21
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

        断章
    星達は私を見てほくそえむ



──人間は 死ぬ直前に一つの後悔をする。


私はリリー。苗字は孤児な為か、無い。
でも、別にそれでも構わない。そんな事はどうでもいい。
肝心なのは、任務に忠実であれ、という事。

明けない朝が来ない、永遠に闇に閉ざされた夜の世界
ディスカニア。
その経済中心区にある、生まれつきに備わった人間とは違う、“異常”な能力を持つ少年少女を集めた、孤児院がある。

<血肉を争う子供たち>

そう一般人に知れ渡ってしまっている、その孤児院で私達“死神”は暮らしている。
死神、と言っても死んでるわけじゃない。
持っている力が、死神のようなものだから。
それぞれの特殊能力を持つ巨大な鎌を使いこなし、罪人の命を抹殺する。

私達は、死神。 ただの、処刑道具。

Re: Blood Lily ( No.2 )
日時: 2009/11/25 11:35
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

         第一章
      血肉を争う子供たち


朝が来ない、永遠に暗闇に閉ざされた世界ディスカニア。
その経済中心区に、一般人は決して近寄ってはならない、生まれつきに「異常」な力を持った少年達が収容されている孤児院がある。
彼らは皆から「死神」と呼ばれ、「血肉を争う子供たち」というレッテルを貼られている。
鉄格子が張られ、人が近づかないような禍々しい雰囲気を放ち、普通は聞こえるはずの子供たちの声も聞こえない。

      
        処刑道具


その「異常」な力も持つ子供達は一生大人になれず、国の罪人を裁く道具として扱われていた。
力──百年前に発見された、自身の体から巨大な鎌を召喚し、人間の魂を抹殺するという、「死神」のような力。
それを発見した政府は、その子供たちで罪人を裁こうという使い道を発見した。
そして、表向きは「孤児院」裏では「監禁」という名目で、力を持つ子供たちを集めている。


薄暗い部屋の中で二人の年幅のいかない人間が用意をしていた。
「そろそろだな。ったく。今度は何やらかしたんだ」
悪態をついた、黒髪で血のような赤い切れ目を持つ美形の少年───ノエルが白い手袋をはめながら立ち上がる。ヴィジュアル系の服を着こなし、髪をかきあげる。

「書類によると、強盗殺人だって。三人もあの世逝き」「わーお」
ノエルの質問に答えた、透き通るような蒼白の長い髪に、銀色の瞳を持つゴスロリの服を着た少女───リリーが面倒くさそうにノエルの肩を借りて腰を上げる。

「もうすぐで時間ね。ノエル、足引っ張らないでね」「俺、眠いから後でいい。先にお前が殺れ」
リリーはそれには答えず、左手を床に平行に伸ばした。
すると、床から魔法陣が浮き出して、どす黒い光が放たれる。窓などないのに風が吹き、魔法陣からは巨大な鎌が現れた。

Re: Blood Lily ( No.3 )
日時: 2009/11/26 13:54
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

「相変わらず、スゲーの持ってるねぇ」
ノエルが感心したように言った。
リリーの手には、彼女より長さのある漆黒の鎌が握られている。
「ディオネアスの鎌……だっけ?」「違うわよ」
リリーが苦い顔で反論する。
ディスカニア教典に伝わる、死神・デイオネアス。
史上最強の死神と伝えられ、彼らのような「異常」な子供たちは皆、ディオネアスの子孫だと言われていた。
その中でも、リリーは「異端」として9歳から12歳までの時、「危険人物」として監禁されていた事がある。
理由は、鎌だ。
「変な噂は呆れるわ」「全くだ。同感だね」
リリーの扱う鎌はそのディオネアスの持つ鎌と非常に酷似している。
そのため、彼女は第二の死神だと恐れられ、あまり人と接する事はない。ノエルや少数の奴らは別だが。
ノエルも同じ様に、自らの鎌を持つ。
彼も監禁されていた事があり、リリーとは昔馴染み、牢獄の中のお友達というわけだ。
「時間だ。行くぜ」
「実に面倒くさいけどね」


           †

処刑は、公開処刑だった。
死刑囚は政府を裏切り、反政府に手を貸した大罪を持つ、ジェームズとワード兄弟。
警察官の立会いの元、広場にリリーとノエルが現れる。面倒くさそうなリリーと、殺す気満々のノエルが視界に出てくると、一気に会場が盛り上がる。
「あいつら、知ってるか?牢獄に危険人物だって監禁されていた奴らだぜ!」
「あんな子供まで……世の中どーなっちまったんだい」
「死神っ!裏切り者を殺せっ!殺せっ!」
「無残に!残酷に!殺してしまえっっ!!」
普段は「死神」に関わらない人間も、国を裏切った重罪だという事でいつになく気がたっている。

「まったくもって悪趣味だわ」「人間なんて、そうなんだよ、リリー。俺らは人間のどす黒い部分を知ってんだ」
ノエルが舌を出す。目が快楽に飢えている。
(悪趣味ね、ノエルも)
殺すことに快楽を覚えているノエルを、リリーは気づかないフリをして黒く塗った爪をいじってみる。
気を紛らわせようかと思ったが、無駄な仕草だった。
『静かに!静粛に!!』
スピーカーから男の声が聞こえる。
リリーは顔を上げ、人間共は一気に静まった。早く殺す所を見たいのだろう。

『今から、国家公務を剥奪し、政府の情報を反政府組織に売った大罪として、ジェームズ・アンソニー、ワード・アンソニー兄弟の公開処刑を行う!』
わぁっと歓喜が高まり、地面が揺れるほどだった。
『処刑を行うのは、“死神”としても危険人物だと見られている、リリー・デリックとノエル・デリックの二人だ』
ノエルが呑気に、「俺、苗字違うんだけどな〜」と一言。リリーは何も言わず、心の中で突っ込んでいた。
『では、先にリリー殿。ジェームズ・アンソニーに裁きの手を!』

人間が「やっちまえ!」「殺せ!」と叫んでいる。
「うっせ」
ノエルがしかめツラで耳を塞いだ。
リリーは金属製の椅子に座り、チェーンで固定されているジェームズの前に立ち、冷酷に見下ろした。
彼は酷く恐怖に怯え、尿をもらしている。
「た、た、たすけっ、やだっ、すけっ」
必死に助けてと訴えているが、声になっていない。
リリーは聞かなかった事にした。

「残酷に殺せッッ────!!」
「わかってるわよ」
リリーがため息交じりに呟き、鎌を振り上げる。
「私の力は、とても残酷だからね」
独り言。
そして、一気にジェームズの心臓へど鎌を振り下ろす。
「ッッ」
痙攣。
そして、
「あがあああああああっっああああああああっ!!$%&&$&%(%##$#$’%&’)’&$)’#”((’!!」

凄まじい悲鳴、というよりは音を発しながら、大動脈から溢れ出る鮮血をリリーに浴びせながら、男が壊れ始める。
リリーの鎌は、残酷だ。
心臓を幾度と刺しても、絶対に死なない、死ぬ間際に人間に絶望と苦しみ、恐怖を与える鎌。
ジェームズの体から、全ての血が抜けても彼は呼吸しているだろう。
死なせてくれと、懇願しながら。
リリーは無表情で、無言で苦しみ以上の感覚を味わっている男を見ていた。

見ている人間は、「おぉっ!」と歓喜している者も居れば、あまりの壮絶さに嘔吐しているものもいる。
リリーをやはり本物の死神だと非難しているものもいるが、彼女は気にしない。
やがて血は全て体から抜け落ち、臓器も体の穴からドロドロと出てき始めた。
脊髄反射で痙攣しているジェームズは、かすかにまだ息をしており、何か叫んでいる。

「や、やだっ!やだぁぁぁぁああっ!」
その横で、次の処刑されるワードが泣き叫んでいる。兄の無残な姿を目の当たりにし、一気に恐怖と焦りが上り詰めたのだろう。
「安心しろって、おっさん」「ぎゃっ、やだっっ!」
「俺とリリーの嗜好が違うから♪大丈夫だって〜」
ノエルがニコッと死刑囚に話しかけるのをリリーは横目で見た。
そして、
「っ」
鎌で最後の一撃。ジェームズの息を確実に止める。
「早く処刑して。私がこういうの嫌いだと、知っているでしょ?」「あいよ」

無邪気な笑顔でノエルが返事をし、鎌をワードの頭部目掛けて振り下ろした。
「…………悪趣味ね」
静かにリリーがそう言った。
ワードの頭部が飛び、首から上がなくなる。
ノエルはそこに鎌の先端をいれ、かき混ぜるようにしてぐいぐいと臓器を押し出す。
ノエルは笑っていた。
「おっさん、脂肪たっぷたぷだな。おい。何食ってたんだよ」
死体に話しかけている。
その肩をリリーが軽く叩き、「早く帰ろう。この場所は嫌いだから」退場を促した。

Re: Blood Lily ■グロあり■ ( No.4 )
日時: 2009/11/27 17:37
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

「お、おつ、お疲れさまですっ!」
「…………………」
リリーとノエルが廊下を歩いていると、二人の「死神」と出くわした。
一人はくるくるにもほどがある長い金髪に青空を映したような碧眼の少女───トト。
無表情で、気の抜けた翡翠色の瞳でリリーを見つめる顔立ちの整った少年───ラズ。
トトは緊張気味にそう言い、ぺこりとお辞儀した。
その意図がいまいち分からずにいたが、一応リリーも軽く頭を下げた。
「俺、もー疲れちった。ラズ、後で風呂入ろうぜ」
「……いいけど、俺も仕事あるから」
リリーが反応する。
「また処刑の仕事?」「ん?あー、違う。最近反政府組織の動きが活発だから、その調べでさ」
「せ、せ、僭越ながら、私はそのお手伝いなのですよっ」
トトが顔を真っ赤にさせて一生懸命喋る。
「うん。そっか。頑張ってね」
「………………っっ」
トトが感激した目でリリーを見つめる。
「やっぱ、リリーは格好いいです!さっきも見てたけど、残酷で、でも表情一つ変えないなんて、凄いですよぉっ!私も早く感情を捨てたいですっ」
「…………捨てない方が、いいと思うけど」
「へ?」

トトの首がきれいに傾けられる。
「感情を捨てない方がいいと思うの。大切なものを失った時、ソレに気づかないまま行ってしまうから」
精神年齢が幼いトトは、その言葉の意味がよくわからずにいた。
「それも、偉大なる母君の言葉か?」
ノエルが茶化したように訊ねる。リリーは顔色を変えず、「あの人は、母親ではないと思う事にしたの」と言った。
少しだけラズの顔が曇ったが、リリーはそれに気づかないふりをした。
「私、もう今日の仕事は終わったから。部屋に戻ってるわね」

立ち去るリリーを横目に、
「リリーは、大切なものを失くしたわけ?」
無邪気にトトがノエルに訊ねる。
「ん?知らね」
「ノエルは、昔馴染みなんでしょ?」
「興味ねーし。それに」
「それに?」
「俺が踏み入っちゃいけない場所だから。あいつの」
トトが目を見開く。
口をポカンとあけ、驚いている。
「す、すっごーい。ノエルって、人の気持ちがわかるんだねぇっ」
「おい。おい。どういう意味だそれ」
「言ったとおりの意味だよっ♪」
トトが感心したようにうんうんと頷く。
「そおかぁ。踏み入っちゃいけない場所なんだぁ。リリーは格好いいけど、格好よくないんだね」
「…………ちょい違うと思うけど」
適切な突っ込みを入れたラズの発言は、無視された。
トトは目を輝かせながらリリーの去った方向を見る。

「さすが、シンシアさんの娘だねー♪」
「………………関係ないと思うけど」

Re: Blood Lily ■グロあり■ ( No.6 )
日時: 2009/11/29 10:12
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

濁った藍色の空を見上げ、はぁっと息を吐く。
白く、温かい息が空に浮かび、消えた。
「さみー」
ノエルがかなり巻いたマフラーの先端を弄くりながら呟く。
「なんで、半そでなのよ」「ファッション」
その、冬の朝に不適切な格好を横目で見ながら、呆れた顔でリリーが突っ込んだ。しかし、それも容易に返される。
リリーは長袖の黒いいかにもゴシックなワンピースに白い耳あて、赤い手袋に黒いブーツを履いている。
「俺にはこのファッションがあってるっつーの」
首元に豹柄のマフラー(トト曰く蛇みたい)に、髑髏を真ん中にあしらった腕むき出しの服に、銀色のチェーンを繋いだジーンズという、ノエルらしい服装。

二人は冬の朝(夜が明けないため、一面闇)に、任務として外出許可が下りている。
任務は、最近活動が活発してきた反政府組織の撲滅。
厳重な政治を営む政府にとって、独裁社会を虐げる反政府は目障り。
しかも、その反政府組織には「死神」が関わっている噂もあり、政府が必死で存在を突き止めている。
「ったく、トトとかにやらせろよ。どーせ暇だろ、あいつ」「さっさと歩きなさい」「つか、何で?なーんで馬車で行っちゃいけないわけー」
「“死神”だから」
リリーの適切な答えに、ノエルが特に反応も無しに、「そーね」と返事をした。

「シンシアさん、元気ー?」
突然の質問。リリーはしばらく考えて、
「知らない。会ってないし。会いに行けばいいじゃない。そんなに好きなら」
「いやー、あの人に近づいたら危ない気がして。つか、好きじゃねーよ。何て言うの?ちょー興味わくーみたいなぁ〜」
無視。
さっきから一般人の視線がこちらを向く事に、リリーが若干の鬱陶しさを覚える。
「死神」が街を歩く事は、さほど珍しい事ではない。しかし、やはり関わりたくないのだろう。
子供を隠したり、家の中に逃げ込んだりする。

「しっかし、反政府組織なんてどこに行けばあるわけだよ。おっめー、この広い国土でそんなん探すわけ?」「ない」「だろーねぇ。面倒くさがりだけど、任務には真面目なんだよねぇ」
「からかってる?」
「もち♪」
ノエルの腕に刻まれている赤黒い刻印をチラッと見て、スルーした。
映像が頭の中に流れ込んでくるのを、必死で抑える。
多少の嘔吐感がこみ上げてきたが、こほんと空咳をして逃した。
「雪、すげーなー」「っ」
ノエルの言葉で、初めて雪が降っている事に気づく。「いつから、降ってるの?」
「ん?けっこー前から。…………知ってた?」
「気づかなかったわ」

ノエルが何か言おうとして口を開きかけたが、それはため息に変わった。白い息が消えるのを見ながら、
(感情、失くしてるんじゃなくて、失くしてるって思い込んでるだけじゃねーの?)
「何よ、黙り込んで。そんなに可笑しい?」
「……可笑しいね」
「何がよ」
「リリーが」
「…………………………………」


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