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- 白き羽の騎手
- 日時: 2009/12/30 17:42
- 名前: アヤカ (ID: VTrHJ6VV)
消えました……
でも私はこれからも、がんばります。
応援よろしくお願いします。
感想などを頂けたら、感激です!
目次
プロローグ
>>1
第一章 とある国のお話
1キャンバス
>>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>8
- Re: 白き羽の騎手 ( No.2 )
- 日時: 2009/12/29 21:57
- 名前: アヤカ (ID: VTrHJ6VV)
第一章 とある国のお話
2 キャンバス
腰まである黒髪を、赤いリボンで、後ろの低い位置でまとめた少女は、賑やかな街を歩いていた。
彼女の名前はユイ。15歳だ。
紅い目で、周りを油断なく見渡す。
「ねぇねぇ、騎手さん」
抜けた声がユイに呼びかけた。
振り返ると、白に近い銀の髪の男の子がいた。
「これ買ってよ」
彼が指差しているのは、変わった形をした果物。恐らく、この国の特産物だろう。
「レン、私達は遊びに来たんじゃないんだよ」
ユイがそう言うと、レンはぷぅーッと頬を膨らませた。
「それに、こんなに大勢に人の前で、騎手さんなんて呼ばないの」
無理だとは分かっているが、ユイはとりあえず注意した。
今まで散々注意して来たのだ。直してくれた事は、一度もない。
だが、それもそのはず。レンにとって、ユイは『騎手』でしかないからだ。
いくらヒトの姿をしていても、レンはヒトではない。
その事を、改めて感じさせられた。
「ねぇねぇ、騎手さん」
また、レンが呼んだ。
「なーに?」
「今回のキャンバスはどう?」
それを聞いて、ユイは眉を少し潜めた。
キャンバス。
それは、『白き羽の騎手』及び『均衡の女神』が次元を通るため、もしくは、どの『次元』が歪んでいるのかを、調べるために使うもの。
『均衡の女神』の宮殿には、様々な絵が並べられている。
全て、次元へと通じる入り口だ。
歪みが発生している所は、絵が変わってしまう。
そして、その変わってしまった部分を、直すのが、『均衡の守人』——『白き羽の騎手』
ユイの役目なのだ。
- Re: 白き羽の騎手 ( No.3 )
- 日時: 2009/12/29 21:59
- 名前: アヤカ (ID: VTrHJ6VV)
「まずは、絵の間違いが分からないんだ」
キャンバスはいつも、宮殿の奥に保管されているため、均衡の守人は、どこが変わってしまっているのか、分からないのだ。
だが、どうしてそれが変わってしまっているのかを『均衡の女神』が知っているのか、ユイは知らない。
一度聞いては見たのだが、『均衡の女神』は教えてくれなかった。
「絵には、何が描いてあったの?」
レンのその問いに、ユイは腕を組んで、う〜んと唸った。
キャンバスに描かれていた内容を、思い出しながら、それを言葉にしていく。
「真ん中が真っ白で、それを囲むように、水、光、それと大地が描かれている絵よ」
一見したら、普通の絵だ。
これまでのキャンバスと比べれば、それは美しい絵だった。
ユイが今まで、見てきたキャンバスは、一目で歪んでいるとわかるような絵だったのだ。
真っ赤にそまった羽のキャンバス。
ただ黒一色で塗りつぶされたキャンバス。
天地が逆さまになったキャンバス。
そして、その中も、とても歪んでいた。
だが、今回は違っていたのだ。
この街は、どこを見ても人々に賑やかな掛け声や笑顔がたくさんある。
表面上からみ見れば、どこにも次元の歪みはない。
「お花がないんだよ」
「へ?」
不意にレンがそう言った。
とっさの事で、ユイは間抜けな声を出す。
「あはは、騎手さんもそんな声を出すんだね。いっつもは、冷静なのに」
「そんな事はもういいから、はやく言って!!」
顔を赤くして叫ぶユイを見て、レンはまた、からかうように笑った。
そして、その笑顔のままで答える。
「だから、お花が足りないんだよ。ほら、キャンバスには土も、お水も、お日様もあるんでしょう? それなのに、お花がないのは、おかしいんじゃないかなーって、思ったの」
その言葉に、ユイが感嘆の声を思わず漏らした。
レンの発想には、いつも驚かれる。
この子は純粋だから、こういう事が得意なのだろう。
「ほら、ボクをほめてー、ほめてー」
駄々をこねながら、引っ付いてくるレンの頭をクシャッと撫でながら、ユイは言った。
「さぁ、行くよ、レン。この次元の『花』を捜しに」
- Re: 白き羽の騎手 ( No.4 )
- 日時: 2009/12/29 23:18
- 名前: アヤカ (ID: VTrHJ6VV)
「伝説?」
ユイが聞き返すと、宿屋の亭主は頷いた。
とりあえず、聞き込みから始めた二人。
まずは、この世界の事——この国の事を理解するために、旅人を装っておしゃべり気分で街人に近付く。
この国は『バレナイル』と言い、ここ古い言葉で『大地の恵み』という意味だ。
ここの王族では代々、双子の上の子に継がせているという。
理由はよく分からないらしい。
そんなに都合よく双子が生まれるものかと、思うかもしれないが、実際、ども王も双子の兄弟らしい。
不思議な事だとユイは思わなかった。
今までたくさんの次元を巡ってきたのだ。よほどの事でなければ、その世界の秩序には驚かないようになってしまった。
聞き込みしていると、いつの間にか時間が経ってしまい、もう空は赤く染まっていた。
そこで、二人は今夜泊まる宿を探す事にしたのだ。
そして、見つけた宿の亭主が、「ここは滅多に旅人が来ないから、一つ面白い話をしてやろう」と言って、現在に至る。
「それで、伝説と言うのは?」
ユイはなるべく冷静を装っていた。
だが、心の中は身を乗り出して、この亭主に掴みかかりたい程、興奮していたのだ。
伝説とは、必ず何かを元にして創られている。
それは、一つの次元の規則のモノが多い。
なんで、自分はそんな大切な事を忘れていたのだろう。
「ここでは、一度も凶作にあった事がないんじゃよ。少なくとも、俺が生まれてからな」
この事には、さすがのユイも驚いた。
これはもう次元の問題ではない。
自然その物の秩序に反しているのだ。
「実は、これは伝説に深く関わっていてね。実は昔、ここの国は草一本生えなかった不毛の地でね。所がね、ある所から一人の少女が現れたんだ。どこから来たかは知らねぇ。ただ、そいつは大地と空に向かって、歌を歌ったんだ。すると、あっという間に、大地に花が咲き誇ったんだ。あれから、この国は凶作になった事はねぇと言われている」
「歌姫……か」
ユイがそう呟くと、亭主は大きな声で笑った。
「歌姫、他の国の人はそう呼ぶな。この国では、歌を『ハレイル』と呼ぶ』
「ハレイル? どういう意味ですか?」
「さぁな、俺は学無だ。知りたいなら、もっと別の人に聞いてみるといい」
ユイが頭を下げ礼を言うと、亭主は「お安い御用だ」とまた笑った。
「これがお前さん達の部屋のカギだ。本当に一部屋でいいのか?」
「はい、お気遣いありがとうございます」
カギを受け取りながら、ユイはまた頭を下げた。
「そんなにかしこまるな。ここに泊まっていく奴は皆家族だ。俺の事はライヤと呼んでくれ。メシは後で部屋に運ばせるから、それまでゆっくり休んどきな。長旅で疲れただろう」
- Re: 白き羽の騎手 ( No.5 )
- 日時: 2009/12/30 02:20
- 名前: アヤカ (ID: VTrHJ6VV)
部屋に着くなり、レンはベッドにダイブ。そして、そのまま、すやすやと寝息を立て始めた。
ユイはそれをあきれ顔で見る。
そして、部屋を見渡すと大きくため息を吐いた。
「椅子に座って寝ろって意味なの……?」
質素な部屋には、机と椅子、そしてベッドが一つ以外なにもない。
大胆にベッド全体を使っているレン。
起こすのもかわいそうだと思い、今日はここで寝ようと思ったユイは、椅子に腰掛けた。
「光と…大地と水……」
花を咲かす条件は全てそろっている。
なんで、咲かない……
何かが足りないのだろう。
この次元の伝説。
バレナイル、古い言葉で大地の恵み。
歌姫……ハレイル。どういう意味だろう。
歌姫が大地に恵みをもたらし、それで国の名前が大地の恵み……
でも、ライヤという亭主の話だと、不毛の地の時に、もうこの国は出来ていた。
名前はその後、付けたのか?
「ダメだ! 情報が足りない」
いくら情報の断片を繋げても、分からない。
その時、控えめなノックがした。
「どうぞ」
- Re: 白き羽の騎手 ( No.6 )
- 日時: 2009/12/30 00:09
- 名前: アヤカ (ID: VTrHJ6VV)
「失礼します」
入ってきたのは、小さな女の子だった。見た目からして10歳、11歳だろう。
亜麻色の髪をお下げにしている。
とても、かわいい子だ。
手にはお盆を持っていた。
「夕食を運んできました」
「ありがとう。机の上に置いといて」
ユイが微笑みながらそう言うと、女の子は頭を下げてから、部屋に入ってきた。
そして、お盆をユイの前に置いた。
お盆には、大きな皿が三つ置いてあり、その二つが料理だった。
お米の上に野菜の千切りをしいてあり、その上にタレをたっぷりつけた、焼いた肉が乗せてある。
まだ作りたてのようで、いい香りと共に煙が立っていた。
「わぁ、おいしそう!」
ユイは視線を三つ目の皿に映した。
そこには、赤い鬱金香のような形をした果物が盛ってある。
レンが街で買ってと頼んできたのと、同じ物だ。
「あら、これは……」
「こちらは、ここ周辺でしか取られない果物です。旅の方にはめずらしいかも知れませんね。皮ごと食べるのが、一般的ですよ」
女の子はユイが不思議そうな表情をしたのを見て、すかさず説明した。
「そう、ありがとう」
お礼を言うと、女の子は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「す、すみません……いきなり、失礼ですよね」
随分内気な子だと、内心思いながら、ユイは首を横に振った。
「ううん。私はよくこの世界の事を知らないから、教えてくれて助かるよ。ありがとう」
背が、自分より頭が一つ分も違う女の子と目線を合わせながら、ユイは言った。
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