ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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熱血教師と死神様
日時: 2010/03/01 14:21
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

こんにちは、海鼠デス。
この小説は一応2作目です。

1作目は消えてしまったんです…
いつか書きなおすので宜しく願いしますv




あんまり得意じゃないんですけど
チョイ恋愛を取り入れようと思っています。
んじゃ、人物紹介行きます↓↓↓

**北条 紫堂(14)♀**
 死神の血を持つ中学二年生。
 ある事件がきっかけで心を閉ざしてしまった。

**高橋 秀彦(25)♂**
 新米教師。
 何事にも本気でやり遂げる熱血教師。

**福田 春(14)♂**
 大阪弁丸出しで紫堂が好きな中学二年生。
 雷神の血を持つ。陽気で綺麗好き。

**後藤 純(14)♂**
 春の親友。一見クールだが抜けたところもある。
 風神の血を持つ、中学二年生。

**五十嵐・F・輝馬(15)♂**
 女の子に見えるが本性は鬼のように怖い執事。



**etc..**




Epilogue>>03
第01話>>04
第02話>>06
第03話>>08
第04話>>10
第05話>>12
番外編>>13
第06話>>16
第07話>>20
第08話>>22
第09話>>23
番外編>>24
第10話>>25



コメくれると励みになります^^
         

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Re: 熱血教師と死神様 ( No.12 )
日時: 2010/03/01 12:51
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第05話

ピタリと風が止まっていて
いつの間にか夜になっていた。

「…片付いた。」

本棚にきっちりと本を並べて、
達成感で胸がすっとするように暗示をかけた。

『何もできないくせに—…!』

あの時の、北条の叫び。
…夢に出た北条そっくりの人もそう言っていた。
俺は何もできないのかな、無力なのかな…?

「おぉ、結構片付いたなぁ。」
「高彦さん、意外と綺麗好き?」

ドアを勢いよく開け、
大阪ッ子2人が入ってきた。

「これ、差し入れ。」

純が紙袋の中に手を突っ込んだ。
何かを探しているようだ。

「もー、あれほど整理して入れろ言うたやろ!」

「っさいなぁ…。」

眉間にしわを寄せ、純は呟く。
何かを探る手は急に止まった。

「コレコレ、クリームパン。
 今日はコレが高彦さんの晩飯!!」

ナイロンの袋に手のひらサイズの
クリームパンがぎっしりと入っていた。

「ちっこいくせに結構旨いんよ。」

「ありがと、助かるよ。」

「やべ、もうこんな時間。
 早く帰らないとチビラム来るぞ。」

純は春の背中を押して急かした。
そそくさと部屋を出る春を確認してから
純は俺の耳元で囁いた。

「…紫堂のことは気にせんでえぇ。
 ……俺たちが何とかするから…。」

それだけ言うとすぐにドアノブに手を伸ばして

「明日の授業よろしく。
 あんまし頭良くないから、お手柔らかに。」

頭を指さして、純は部屋を去って言った。
彼らから貰ったパンを口に入れる。


——よく考えたら俺って人に頼ってばかりだ。
このパンも、北条のことも…。

『貴方はあの子を守れない。』
『何もできないくせに。』

無力な自分。解決してくれるのは自分以外。
…夜は嫌いだ、自分の悪い所ばかり見つけてしまう。

「強くなりたい…。」

一人で呟いた。
拳を強く握って、ゆかを殴りつけた。
こんなんじゃ北条を守れない。
俺はまだまだ未熟だ…。

壊れていく俺の心に五十嵐さんの声が響いた。

「貴方のことを信頼している。」−…

俺のポジティブ思考は始まった。

そうだ、俺は『信頼』されていた。
過去のことなのかもしれないが…。

俺は1度北条を『信頼』させた、『笑顔』にさせた。
それぐらいの力を俺は持っている!

俺は強くなれる…。
拳を上に突き上げた。

「強くなって、守ってやるから!
 あの時みたいに、笑顔の北条にしてやるから!」

少し照れくさかった。
でも、本気でそう思ってる。
恥ずかしくなんかない。


気がつけばもう深夜の1時。
俺は布団の中にもぐった。
電気を消すと、自分の血液が体に流れる音がした。


…誰かのすすり泣き声が聞こえたのは気のせいか?

Re: 熱血教師と死神様 ( No.13 )
日時: 2010/02/09 17:48
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)


番外編

真夜中。
私は何も考えないようにする。
…夜は悲しい時間だから。

きっと、春も純も寝ているだろうな。
なんだかとっても暇だ…。

皆の部屋がある校舎裏を
一人歩くのは久しぶりだ。
だって、ココを歩くのは嬉しいことがあった時だけ。
しばらく嬉しいことってあんまりなかった。
あの人の…。『お姉ちゃん』せいで。

「あーぁ、私の馬鹿。
 なんでやなこと思い出しちゃうのよ!」

左目の上に巻かれた包帯の上に手を押しつける。
キリキリとする痛みは強く、悲しい気持ちが
おさまっていくのを感じた。

…窓から光が見える。
ココは…。高彦の部屋?

「ふふ、パンなんか食べちゃって…。
 あそこのクリームパン美味しいのよね。」

私は呟いた。
高彦に話しかけるかのように。

窓を覗くと、真剣な顔をした高彦がいた。
さすが熱血教師。
明日の授業のことでも考えてんのかな?

「強くなりたい。」

高彦の口からそんな言葉がこぼれた。
床を強く強く殴りつける高彦が見える。

『強くなりたい』—…。
私と同じこと思ってる…?

私は壁にもたれ、
背中をこするようにズルズルとしゃがんだ。
高彦の部屋の窓からこぼれる光をじっと見つめた。

『我慢してないで言えよ』

窓からの光がゆがむ。
勝手に大粒の涙がぽろぽろと出てくる。
止まる様子はない。

…今日はもう寝よう。
ココは危険だ、高彦の『優しさ』に触れてしまう。
また、あの苦しい気持ちになって痛い目にあう。

その場を去ろうとする私を
高彦は待ってくれなかった。

「強くなって、守ってやるから!
 あの時みたいに、笑顔の北条にしてやるから!」

「…ッ!」

もう我慢できなかった。
『勝手に』涙が出るんじゃなくて
意識して出してしまう。

高彦の言葉ひとつひとつが糸になって
私の心を締め付けるようだった。
とても痛い、苦しい。



誰にも気付かれないように
ゆっくり歩いて自分の部屋についた。
それでも涙は止まらない。

布団の中にもぐった。
ぬくぬくとしていて、私を守ってくれるようだった。

それでもさっきの出来事を思い出してしまう。
掛け布団を力強く握った。

夜はどんどん深い闇色に染まって行く。

Re: 熱血教師と死神様 ( No.14 )
日時: 2010/02/09 17:57
名前: 雛罌粟 ◆FzxQRce/bY (ID: nLPrrFyW)

初めまして^^

お話読ませて頂きましたm(_ _)m
とても引き込まれますね〜、次が楽しみです(笑)

よろしければ私の小説にも遊びに来て下さいね。

ではではヾ

Re: 熱血教師と死神様 ( No.15 )
日時: 2010/02/10 16:09
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)


雛罌粟sありがとうございます(´`*)
久しぶりのコメントなので凄くうれしいですv

雛罌粟sの小説は斬新で読みやすいです。
これからもちょくちょく覗いていきますねvvv

Re: 熱血教師と死神様 ( No.16 )
日時: 2010/03/01 12:56
名前: 海鼠 (ID: HiDlQ61b)

第06話

「…ぅし!」

今日は、とてもすがすがしい朝だった。
こんな気持ちは、初めて先生になったとき以来だ。
学活と、数学と…。今日は4時限で終わりなんだな。
俺は体育専門だし、数学苦手だけど、
不安というより、楽しみでしょうがなかった。





「はざま——ス。」

教室に一番乗りしてきたのは純だった。
俺が黒板の下でしゃがんでいるのを、
純は気が付いていないようだ。

「おはょ、後藤純!」

純はカバンから教科書を出す手を止めこっちを見た。

「…び—…っくりした。」

そんなに驚いていないように見えるが、
純なりにビックリしたようだ。

「高彦さん、方向音痴ちゃうんや。
 教室の位置がよぉ分かったなぁ。」

「だろ?よく言われる。」

「初めの頃、俺全然分からへんかった。
 この学校、寮とか教室があって広いからなぁ。」

純とそんな会話をしながら、
俺は数学の授業の準備を続けた。
別に教材を使うというわけでなく、
俺が数学が苦手だから復習しているだけだ。

「じゅ———んッッ!!」

そう叫んでドアを勢いよく開けたのは春だった。
息を切らして、服装が乱れている。

「なんで先に教室いるねん!
 一緒に行くって約束してたやんけ!!」

「誰かさんが寝坊するからなぁ。」

春は純の頬をつまむ。
『やめぇ。』と笑いながら純も仕返しした。

「おい、福田春。
 新学期早々服装乱れちゃいかんぞ。」

「ええねん、ええねん。
 紫堂に直してもらうから。」

「紫堂がお前の相手するわけなかろうが。」

ここの学校の生徒は面白い子ばっかりだな。
ついつい準備するのを忘れてしまう。


「…はょ。」

教室に風が吹いたようだった。
北条が静かに教室に入る。
純と春は普通にあいさつを交わし、
北条に話しかける。

それが俺にはできない。緊張してしまう。

顔が熱くなり、どうすればいいかわからなくなる。
昨日俺が一人の時に言ったあの言葉。
北条は知らないんだよ…な?
もし知っていたら…。
そう思うとどこかに逃げだしたくなる。

知っている訳ない…はずだ。

「何?
 なんか隠し事しているの?」

北条は真顔でそう言った。
こんな様子じゃ、多分知らないだろうな。

「あぁ…、っとぉ……おはょ。」

もっと気の利いた事言えねぇのか…、俺は。
そんな後悔した俺に北条は『笑った』。
何も言わず、ただただ笑っていた。
俺はそんな北条に見とれてしまった。





生徒数3人の学校は、始業式を体育館でしなかった。
教室での簡単な式だった。

「…いつもここの学校の始業式って何してんの?」

「そやな…ぼけーっとして、終わり。」

純が頬づえしながら言った。
春は背伸びをし、北条は窓の外を見ていた。

「じゃあさ、自己紹介しよっか。
 高彦さん、初めての授業だし…。
 神の力とか、よくわからんやろ?」

春は心配そうに言った。

「大丈夫、昨日徹夜したんだぞ?
 
 確か…、純は風神の後継者。
 春は雷神の後継者だろ?違うか?」

純と春はキョトンとした。
俺はあえて『死神の後継者』の名前を言わなかった。
そんな気配りをしているのに気付いているかにように
北条は呟いた。

「私、『死神の後継者』、ね。」

北条の右目がこちらを睨む。
俺は焦った、言葉が出ない。

「かっけ—!
 惚れなおしたで!紫堂ッッ!」

無神経なことを言った春を注意しようと思ったが
そんな心配はなかった。

「もぉ、変態!
 寿命縮めるわよ?」

北条は笑っている。純も春も。


この子達は、皆の力をお互いに認め合っているんだ。
だから、喧嘩が起ったりトラブルが起こらない。
しかも北条は笑って過ごすことができるんだ…。

始業式が始まったばかりだが、
もうこの子たちのいい所を見つけてしまった。
…本当に今日はすがすがしい朝だ。

なんて一人で感激してしまった。

「で、今日は何すんねん?」

「そりゃあ、始業式に決まってるだろ。」

当たり前のように言ってみたが、
春は驚いた顔で言った。

「『始業式』〜!
 ムッチャ懐かしい響きやなぁ。」

そのあと、純がため息交じりの声で続けた。

「この学校にはそんな式は無いんよ。
 人数も少ないし、…第一面倒くさい。」

『面倒くさい』という言葉が少し気になるが、
人数が少ないという理由には納得した。

「1時間目は学級活動…。
 いつも学活は何してんだ?」

「自習。」 「昼寝。」 「散歩。」

純、春、北条と
生徒三人は順番に答えた。
本当に学校なのか?ココは…。

しばらくの沈黙が続き、
その空気を切り裂くかのように純が言った。

「…高彦さんは俺らの力の事どれくらい知っとん」

「っとぉ…。……全然知らないなぁ。」

「じゃあ、学活はそれや。
 高彦さんが俺らのこと知らんのはあかんしな。」

純は、指でパチンと音をたてた。
その瞬間、ドアが静かに開き風が教室に入ってきた。

「うゎ、寒ッ…!?」

気がつくと目の前にいたはずの純がいない。
『こっちや。』と声がしたのは…、上から。

「う…浮いてる!?」

純はふわふわと浮いている。

「これが俺の『風神の血』の力。
 こーゆー風に、風に乗ることができるんや。」

純は教卓に飛び乗る。

「でも乗れるのは7,8秒程度。
 時間になったら飛び移らんとあかんし、
 風がなかったら自分で呼ばんと、…面倒や。」

『すげぇな』と関心する俺の頬に
バチッと静電気が流れる。

「純だけが凄いんちゃうで!
 俺かて、指差した所に静電気が作れるんや!」

「せやかて、お前雷出せんやろ?」

「うっさい!今修行中なんや!」

「修行て何や?」

春は、からかう純に指差して静電気を出す。
それの仕返しに純が春をつねる。
『笑いながら』だから喧嘩ではない。
仲がいいふたりだな…。

「…あきれた。
 朝っぱらからよくするわ。」

北条は座ったままだった。
この子は『死神の血』の持ち主だから、
俺に力を見してくれないんだな…。

そんなこと持っていると
北条と目が合ってしまった。


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