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- 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破
- 日時: 2010/02/22 19:24
- 名前: Kリン (ID: ovGM7bao)
こんにちは!!!
結構前にかいたことのある失われた皇女ですが,
パートⅠが消え,パートⅡは続きとして書いてもわかりにくかったので,一から書き始めたいと思います。
今まで見ていてくれた方,本当に申し訳ありませんでした。今回はきちんと書いていきます。
初めて読む方も気軽に見ていって下さい!
皇女や皇帝一家はロシアの皇族をモデルにしています。
それでは....
- Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.12 )
- 日時: 2010/03/07 18:45
- 名前: Kリン (ID: ovGM7bao)
11月2日
今日は僕の家だけでなく,国中が大忙しだった。
なにしろ偉大なるハトルスアの娘の誕生日なのだから。とくに,アレス国では10歳は,初めての2ケタの年ということで,盛大に行われるしきたりだった。
僕の父さんも朝早く宮廷に出向いていた。
母さんも皇女への贈り物を届けるために,いろいろ従者と話していた。
僕もいくことになったので,朝からワクワクしていた。そしてアリアナへ贈るものをはやくわたしたかった。
『いつもそばにいるから』とかかれた宝石箱のカギで,宝石箱は母さんのはからいでエメラルドやルビー,サファイヤなどで飾り立てた銀のコンパクトなものだった。
僕は赤い絹の布でつつんだそれを大事にガラスの箱にいれ,箱に入れた。
箱のリボンを結んだ瞬間,胸が歓びでいっぱいになった。
母さんが赤いコートをはおった。
「いきましょう」
*
「ハルトくん」
午後3時,宮廷に到着した。
廊下でナターリアと出会い,ナターリアは無邪気にわらった。
「お久しぶりね。妹を喜ばせてあげて」
僕も笑ってうなずいた。
実は,僕とアリアナは誕生日が同じだったので,短剣—アレスでは10以上でないと剣を持ち歩いてはいけない決まりだった—を腰にさげていた。
短剣といっても,銀製の高価なもので,僕は自慢に思っていた。
幼い頃から剣の練習は丹念にしていたんだ。
「あら,あなたも10歳なのね」
ナターリアは意地悪っぽく微笑む。
僕は胸をはってお辞儀をした。まるで父さんのように。誇らしげに。
ナターリアもまた貴婦人らしく会釈して微笑みながら歩いていった。
母さんはその様子をみて,
「皇帝陛下の皇女様たちはみんなお美しいわ」
「アリアナも?」
「ええ。あの子はそのうち姉妹のなかで一番美しくなるわ。って....呼び捨てはダメよ」
「あ,うん」
母さんは微笑みながら僕の頬にキスをした。
- Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.13 )
- 日時: 2010/03/08 20:02
- 名前: Kリン (ID: ovGM7bao)
それからどれくらい時間がたっただろう。
アリアナが金銀の煌びやかなドレスを着て入場すると喝采が起きた。「皇女様万歳!」の歓声が響き渡り,ホールが壊れんばかりだった。
アリアナは恥ずかしそうに会釈をした。
これにまた喝采が起きた。
その後,各貴族の祝いの言葉が述べられ—父さんも大臣ながら本名はヴァロン伯爵という大貴族だったので例外ではなかった—そのたび,アリアナは嬉しそうに拍手をしていた。
『ヴァロン伯爵』が祝いの言葉,そして贈り物を贈ると,アリアナは伯爵に飛びついて抱擁した。
伯爵もそれに答えた。
そして,豪華絢爛な大舞踏会が催され,皆踊りに踊っていた。アリアナも満足そうだった。
アリアナは僕を見つけると目を輝かせて走ってきた。
僕も笑顔で彼女を迎えた。
アリアナはもっていた包みを僕に渡した。
「あ,あの,ハルトに誕生日プレゼント....」
僕はそっと包みを開いた。
中にはアストリア石という—王族だけに与えられる当時最も高価と呼ばれた秘宝—七色に光る石の腕輪だった。
光り輝くアストリア石をダイヤモンドやエメラルドが飾り立てていた。アストリア石の前ではどんな宝石も引き立て役に過ぎないのだ。
そうとう費用を費やしたと思えるそれを,アリアナは当たり前かのように僕の腕に通した。
「それにはあたしの意思が入っているの。
あたし達が離れ離れになってもきっとその石が導いてくれるでしょう。あたしがハルトのことを思っているときは,いつでもそれはあなたの腕で光っているわ」
僕は感激のあまり,彼女を見据えたまま動けなくなってしまった。
「本当にいいの?」
「ええ。ハルトだけにつけてほしい」
「ありがとう。何があってもはずすことはないよ」
「うん。どうぞお願い」
僕もリボンの箱を彼女に差し出した。
アリアナは幸せに満ちた顔でそれを開けた。
中には,銀色の卵の形をした宝石箱—イースター・エッグ—が煌いていた。エッグにはアレスの風景が描かれていた。先端のふたを開けると小さな時計が針をうっていた。
アリアナはカギにかかれた『いつもそばにいるから』という言葉を見ると嬉しさのあまりか目が潤んでいた。
そしてそっとカギをまわすと,小さな金のエッグは中から出てきて,そこからミニサイズの純白の白鳥が現れた。
白鳥はさも生きているかのように首を動かしていた。
目は彼女と同じセルリアンブルーだった。
アリアナはほとんど半泣きで僕を抱きしめ,そして髪にキスをした。僕は飛び上がってしまったが,彼女を抱擁した。
「ハルト...ホントに有難う!!!」
「僕もだよ......」
アリアナが去った後も,僕はその腕輪にじっと見入っていた。腕輪は光っていた。
午後8時
舞踏会の熱っぽさはいっこうに冷める気配はなかった。さすがの僕も疲れ果ててバルコニーに出ていた。
アレスの夜は寒く,もちろん僕はコートをはおっていた。
「お前は....ヴァロンの息子か」
ふいに,太い声が茂みのおくから聞こえた。
- Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.14 )
- 日時: 2010/03/11 17:32
- 名前: Kリン (ID: ovGM7bao)
「誰だ!」
僕は短剣を少し抜いて茂みの方に向いた。
正体不明の謎の声はやはりそこからしていた。
「ヴァロンの息子かと聞いている...」
「たしかにそうだ!お前は誰だ!!」
僕は恐怖心と闘争心に燃えていた。
それは明らかに人間の声ではなかったんだ。重く,がさついたような声だけでも僕の恐怖心を動かすには十分だった。
「名など,脆くて不必要なものだ.....。
だが,お前には覚えてももらわなければならない...」
茂みから立ち上がったその姿に僕は息を呑んだ。
「お前は........」
真っ黒い大きな図体に真紅の瞳。
毛深くて,牙は闇の中でもギラギラと光っていた。
「俺は,見た目はただの獣....。だが,真の闇神の使いだ...........」
「お前,本体は魔物だろう。なぜ狼などに...」
僕の腕は化け物を見据えながら震えていた。
けれど,そこから逃げて立ち去る気にはならなかった。
「俺は実体のままだ。お前たち人間には狼に見えるだけだろうが....」
「僕に何の用だ」
狼は黙って僕に近づいてきた。
そして牙を光らせると宮殿に目を向けた。
「この国には巨大な力を感じる。
皇帝をはじめ,皇后,皇太子,そして皇女たちはそうとうの魔力を持っているだろう....
とくに...」
「とくに...何だ」
僕はとても恐ろしい予感がしていた。
不気味な狼は大きな口を開く。
「第七皇女,アリアナは,祖母,そして世界一の魔女とも呼ばれる皇太后マリアをしのぐほどの魔力を持っている」
僕は耳を疑った。
皇太后マリアの莫大な魔力は周知のとおりだった。
時間を止めることもでき,未来そして過去をも知ることができるもはや世界の頂点に立つ,マリア皇太后を,孫のアリアナがしのぐとは....!
「何の話だ!!そんなこと....」
「そんなことが,残念ながら現実なのだ。
アリアナだったらこの世界を手にすることだって容易なはずだ」
- Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.15 )
- 日時: 2010/03/11 17:51
- 名前: Kリン (ID: ovGM7bao)
「いずれ......5年のちにはこの国にも革命が起きる。皇女の魔力も何もかも,それによって失われてしまっただろう..........」
「お前!皇女に対してなんて無礼ごとを!!!!」
狼はニヤリと笑った。僕は恐ろしくて足がすくみそうだった。
「革命は自然と起きるのではない......。
ヴァロンの息子よ...。
この世界の神となる資格のある偉大なかたによって起こるのだ......」
「誰だ!それは」
「.....それは教えまい。いずれ知ることとなる。
それより.....お前は皇帝一家を救いたくはないのか?」
僕は言うまでもなかった。
「もし,革命など起きることがあれば.....!!
僕は命をなげうってでも救ってみせる!」
「そうだろう。忠実なことよ。
だが残念ながら皇帝一家は一人の例外以外はみな死ぬことになっているのだ.......」
僕は狼を睨んだ。いつでも襲えるように。
狼は続けた。
「その例外の一人は,お前が決められるのだ」
「何だと?」
「お前はその権利を世界の決まりごとによって与えられているのだ。だから,皇帝一家の運命はお前がにぎっている..........」
「お前が皇帝か,皇后か,皇太子かあるいは第七皇女を選んだら,その人物だけが生き残ることが出来る」
「五年後....その日までに決めておくがいい......」
狼は不気味な笑い声を上げて僕を見据えた。
僕はあまりに急なこの忠告にとまどいを隠さずにはいられなかった....。
狼はいつのまにか消えていた。
そして,天上のどこからか,
「忘れるな。五年後だ。ヴァロンの息子よ。
五年後には必ずまた我等が現れ,この国は壊滅の道をたどるだろう.......。それまでに決めておくのだ。お前の守るべき者を.......................」
ガハハハハハと恐ろしい笑い声が響き渡る。
気付くころには僕は草の上で倒れていた。
ぼんやりと僕に向かってくる人が見えた。
アリアナだった。
「ハルト....。ハルト?!」
アリアナは僕を起こした。僕はとめどもなく流れてくる涙をおさえる事はできなかった。
たった10歳の僕に何が出来るだろうか。
これから起きるという恐ろしい出来事に。
僕が救えるのはたった一人だなんて........!!
- Re: 。○*失われた皇女*○。 改訂版!!パートⅠ参照1000突破 ( No.16 )
- 日時: 2010/04/14 21:48
- 名前: Kリン (ID: ovGM7bao)
その夜,彼女に連れられて僕は家に帰った。
母さんは全てを知っているような顔をして泣きじゃくる僕を迎えてくれた。母さんは寝室に僕を送りながら,耳元で呟いた。
「今日はもうお休みなさい。そして忘れなさい」
僕はベッドに入ってすぐに深い眠りに落ちた。そのときは,母さんのその言葉を気にはとめなかった。とりあえず,忘れよう。何もかも。明日からは,全部元通りだ。絶対に。そう信じた。信じるしかなかった。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
翌日,アリアナが心配して使者を送ってきた。僕は気分がよくなかったので,母さんが出てくれた。使者が帰ると,母さんは寝室へやってきた。
「ほら,皇女様からこんなにいただいたわ」
大きな包みにはさまざまなものが入っていた。お菓子やらなにやらに,一つだけ手紙が交じっている。
『親愛なるハルトへ
気分はいかがですか?昨日はとてもびっくりしました。きっと何かあったのね。また元気になって宮殿に着てくれるのを心待ちにしています。
アリアナより』
たどたどしい字でかかれたその手紙の上に僕は思わず涙をこぼす。
「アリアナ..............」
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