ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ぢんせいのプリズム。
日時: 2010/03/15 16:40
名前: アキラ (ID: BLbMqcR3)

          
            .
コウノ  トオヤ
河野 十夜──年齢は知らない。 たぶん二十代。 変な店で働いてる。 不思議な人。

キサラギ アカネ
如月 朱音──17歳 私 なにもない人。 一人暮らし。 どうでもいい。

Page:1 2 3



Re: ぢんせいのプリズム。 ( No.10 )
日時: 2010/03/16 17:17
名前: アキラ (ID: BLbMqcR3)

                    .


ニュースでは教育なんちゃらが必死でいじめとか、現代の子供の精神を演説してるけど、聞き流した。

今日から学校は始まって、朝一で体育館に生徒全員が集められ、朝礼が行われた。
半分寝てたけど。

殺された坂東ミナの葬儀は遺族だけでするらしく、みんなで黙祷を捧げた。 

ホームルームは教師のおごそかな話で終わり、坂東 ミナの机の上には花瓶が置かれていた。


「つかさ………んでこんな事になったんだろ」
「今日も2限目で授業終了でしょ?」
「迷惑だよなー正直言って。 テスト近いのに」

教室にはまだブルーシートが張られていて、私たちは空き教室での待機になる。
口ぐちに不満を呟く奴らを、特に気にも止めずに見ていた。

「杏奈も、ショックだろうねぇ」 杏奈、という言葉に反応する。

「あいつ、学校もう来ねぇのかなぁ」
「ワルい奴らとツルんでるんだろ?」
「一年の夏から来てねーんだとよ」

へぇ……かなりの不良ちゃんなんだ。
まあツルんでる奴見れば分かるけどさぁ。

「テメェら杏奈の事噂すんじゃねーよっ!」

隅で固まっていたケバい女子らが怒鳴る。
杏奈信者か。

「ウチらだって…………混乱してんだから……」
「杏奈の彼氏………ぶっちゃけ杏奈と付き合ってるのかどうかも分からないんだから………」

「はぁ!?」  うっさいなー、男子。

「え、待てよ。 男がどーのこーのでリコが殺したんだろ?」
「杏奈の彼氏をリコが盗って、問い詰めたミナが殺されたんだろ? なぁっ!」

「杏奈は付き合ってるって言ってたけど、正直ウチら顔もよく知んねーんだよ。 リコと杏奈しかそいつの顔知らねぇんだよ」


…………。



えっと。




杏奈はAくんと付き合っていたけど、Aくんは付き合ってるつもりはなくて。

リコがAくんと付き合ってる事にキレたミナがリコを問い詰めて。  んで殺されて。


杏奈はAくんと付き合ってると思ってた…………。



修羅場だねぇ。

Re: ぢんせいのプリズム。 ( No.11 )
日時: 2010/03/16 17:30
名前: アキラ (ID: BLbMqcR3)

                     .



私が思うに、人間に感情なんてものがなければいいと思う。
感情があるから人間は怒ったり悲しんだりするんだろうし。

感情さえ無くなってしまえば、ロボットみたいになって誰も傷つかずに幸せに暮らせるって思うのに。

別に、幸せを求めてるワケじゃないけど。



7年前、私の目の前で両親は死んで、一時期私はニュースで悲劇のヒロインとして大体的に報じられた事がある。

テレビをつければ私の両親の顔が映り、近所の住宅の映像が流された。

幸せなんて、一瞬で壊されていく。 心も、なにもかも。
奪われて、もがいて足掻いているのに、届かない。
目の前は真っ暗で、私は何故か今も生きている。



「それ、双葉高校の制服かな?」

声をかけられて、薄暗い路地裏で振り向いた。
私と同じぐらいの女が立っていた。

「はい」  「そう。 あなた、ここの近くに住んでる?」  「………一応、このアパート」

アパートを見上げて、そいつが微笑む。

「死神は、いるかな」  「………あ?」

死神?
    ………あの、死神?
メルヘンですか?

「私を愛してくれる死神はいる?」  「……いねーと思う」  メルヘン通り越して危ない人じゃん。

関わり合いになりたくないから、無視して歩こう。
……腕を引っ張られた。


「大好きな死神はいないの? どこにも? 本当に?」
「……………」  「ふぎゃっ」

蹴りをいれてやった。 壁にソイツは激突し、頭を抱えながら呻いている。
つか、どうすりゃいいのよ。

「死神………いないだろうねぇ」
「いるいるいるいるって! 絶対いる!」

無視。
不審者が何か言ってるけど急いで階段を上がって自分の部屋のドアを開ける。

鍵をかけて、チェーンもする。

「…………なんだ、今の人」  ホラーかよ。

Re: ぢんせいのプリズム。 ( No.12 )
日時: 2010/03/19 12:55
名前: アキラ (ID: BLbMqcR3)

                   .




季節外れの梅雨のせいで、湿気が多い。
カビ臭いバスタブをリセッシュで臭いをやっつけながら、さっきの女を思い出す。

たぶん、私と同じ年くらい。 幽霊みたいだった。
死神死神って言ってたけど、今時そんなオカルトみたいなの、誰も信じてないだろうな。

オカルト宗教の一員とか?

「いやー無いだろうなぁ」  独り言を呟きながら、制服を脱ぐ。
天気予報がかかっているかも知れないので、適当にニュースにしてそのまま置いておいた。

事故やら殺人やらの報道が流れて、またうちの学校のニュース。
いい加減飽きるだろ。

「………………しにがみ?」

殺した伊佐坂 リコが詳しい動機を話し始めたらしいけど、それが何故か、 『死神』 らしい。

アナウンサーに釘つけになる。

「少女は、死神が私に舞い降りた等と況実しており、警察側は精神が安定していないと判断し───」

死神が、舞い降りた。

死神なんて、オカルトだ。
実際にいるワケじゃない。 決まってる。

さっきの女も死神を捜していた。 
彷徨いながら。

「居るワケ……ないだろ」

でもなんでだろう。 なにか、引っかかる。
何か、思い出せない。
死神という存在を、大分大昔に私は……あ?

「いやいや。 居るワケないって、だから」

思いなおせ。 死神なんて人間の空想が創った架空の存在なんだから。
居るワケないだろ。 ぬぅ。

こういう時、アイツならどう答えるだろ。

死神なんて、いませんよ。 ………言いそうだなぁ。
でも、なんか否定はしなさそう。

「……………死神は、いないと思うんだけどなぁ」

Re: ぢんせいのプリズム。 ( No.13 )
日時: 2010/03/19 13:16
名前: アキラ (ID: BLbMqcR3)

          
.


            ⅴ


不思議な人だとは、思ってたの。
心に響くような低く、落ち着いていてそれでいて、とても不思議な声色。

その見た目からも、人間と判断するには等しくなくて、最初はドキドキしたりもした。

声をかけられて、ナンパとは何か違う、もっと紳士的にこう聞かれたの。


       
      人生を終わらせたいですか?



驚いた。 どうしてこの人は私が考えている事を見ぬけたんだろうって。

だから、そっと頷いて 「終わらせてくれる?」 って聞いてみた。 正直怖くて、死ぬなんて絶対に苦しくて、本気で死ぬ気なんてなかったの。

だけど、その人は静かに頷いて、私の人生を終わらせる前に、ある女の子の情報を教えてほしいと言ってきた。

私が分からないと言うと、その人は悲しそうな顔で静かに去って行った。

何故だろう。 私は何かいけない事をしたの?
やだよ、置いていかないで。
殺してくれるんでしょう? なのにどうして?

どうして?

これが愛なんだ。 愛しい彼は私に死をもたらそうとしてくれた。
彼は、死神なんだ。

私の魂を奪う代償として、その子の情報を求めてきたのに。
彼が愛しい。 愛しすぎて胸が裂けそう。

捜せ、彼を。 私の大好きな死神を。

Re: ぢんせいのプリズム。 ( No.14 )
日時: 2010/03/20 10:19
名前: アキラ (ID: BLbMqcR3)


                       .


           ⅴ



「死神なんて、いないよね」  「どうしてそんな事をお聞きになるのですか?」

そいつは、少し困ったような顔で聞き返してきた。
大人の味のする、苦めの珈琲をカップに注ぎながら。

「私は、いないと思う」  「……そうですか」

出された珈琲を飲む。 変わらない味に、少しだけホッとした。

「十夜は、どう思う?」  「私は、信じる人の世界には存在すると思います」 「………ふむ」

やっぱ否定はしないんだ。

「十夜って、なんか懐かしい感じがする」
「そう、ですか?」
「うん。 会った事あるっけ。 私と」

ある気がする。

「あなたが覚えていないのなら、会ってないと思います」
「…………やっぱ、会ってるんだ」


Page:1 2 3



この掲示板は過去ログ化されています。