ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 腐った彼は、笑わない。【08うp】
- 日時: 2010/04/03 17:13
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: R3roQ1XX)
あーうー
どうもお久しぶりです、そろそろ厨二病なお年になるんじゃないかと思われるいやそもそも進級出来んのかよどうも宵子でごぜーます。
復旧してないけどまーいっか。リニューアルですぞぱちぱちー、みたいなね!
ではでは、宵子の駄文をお楽しみくだされー
****
story−00 【独白・屋上、青空の下にて】>>1
story−01 【独白・昼間、夢の中にて】>>2
story−02 【腐った平社員は働かない】>>3
story−03 【腐った説明は上手くない】>>4
story−04 【腐った社長は笑わない】>>5
story−05 【腐った正義は許さない】>>8
story−06 【腐ったリーダーは救われない】>>10
story−07 【腐ったヒーローは語らない】>>13
story−08 【腐った痛みは忘れられない】>>14
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.9 )
- 日時: 2010/03/27 23:10
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: bL5odoON)
story−04 【腐ったリーダーは救われない】
「つまりアレか」
赤毛の男が、止まった時間の中で言葉を紡ぐ。
目の前には、ナイフを構えた、敵である自分がいるというのに。
「今俺にナイフを構えているのは———もしかして、チャンスが出来たから、という実に悪質極まりない考えからか?」
止まった時の世界のはずなのに、赤毛の男の舌は流暢に言葉を生み出す。
それが何故かなんて、ナイフを構えている今となってはどうでもいい。———男はすでに、内心で勝利の笑みを浮かべていた。
「もしかして、ナイフだから勝てると思っているか?」
ああそうさ、その通り。
男はその言葉に、そんな思いをこめた視線で、赤毛の男を見つめた。
「あのな」
もう一度、赤毛の男に語りかけられる。
赤毛の男はまだ上半身しか振り返っていない。
自分はこうしてナイフを振りかざしている。なのに、彼からは恐怖が感じ取れなかった。表情が髪に隠れて見えないせいだろうか?
「俺は悪が許せない。だから———」
た、ん、っ———
全てがスローになっているこの世界で、赤毛の男は完全に振り返ると。男は、男は———実に凶悪な笑みを浮かべて————
「———ナイフなんて、低俗なもん……使ってんじゃねえよおおおおおおっ!!」
赤毛の男が、“吠えた”。そして腹の奥底から咆哮をあげる姿を、彼は見た。
次の瞬間、止まっていた時間が動き出す。
時間が動き出した直後————男はいつの間にか、自分の腹を襲っている違和感に気づく。
「……あ、れ……?」
みちみちみち……っ……
男はその時点では、自分の耳に届く音が理解できずにいた。ナイフは手にしっかりと握られている。しかしそれよりも早く、何かをされたということだけは理解出来てはいたのだが。
体は、まだ宙に浮いたままだ。
男は恐る恐る視線を自分の腹———異様な音がする腹部を——ちらりと見、そして———
「うおっ……あがっ」
———地面に叩きつけられた。無論、赤毛の男の“脚力のみ”によって。
赤毛の男は数秒前、その常人より長い脚で———襲い掛かろうとした敵の腹を“打ち抜いたのだ”。本来、蹴りにはそのような表現は存在しないのだが———赤毛の男の蹴りは、まさしくその表現に一番合っていた。
「……ば……けものっ……」
ぐわんぐわんと痛みに揺らされる脳内を酷使し、どうにか先程の情景を思い出そうと必死になるリーダーの男。芋虫のように体を這わしつつ、赤毛の男を罵倒しようとする。が、先制攻撃とばかりに、首根っこを掴まれ、無理矢理立ち上がらされた。
「……っふぐっ……」
「……だーれーがー化け物っつった? 後な、誰が勝手に寝て良いっつったんだよコラ、ああ?」
無理矢理顔を近づけさせられ——そこでようやく、リーダーの男は赤毛の男の顔をまじまじと見ることが出来た。なのにリーダーの男は、表情を強張らせ、黙り込んでしまう。
「……おっおおおおいいいいい……」
「……あ? 話して良いって誰も言って……」
「おっ……お前の“その目”……何なんだよ?」
「あぁ?」
赤毛の男は、リーダーの男の問いに、いかにも不機嫌だというような凄んだ声を発す。
普通ならば、リーダーの男の質問は愚問のように思えるだろう。しかし、今回のこの時ばかりは、当たり前の質問のように思えた。
なぜなら—————
「
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.10 )
- 日時: 2010/03/27 23:14
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: bL5odoON)
story−06 【腐ったリーダーは救われない】
「つまりアレか」
赤毛の男が、止まった時間の中で言葉を紡ぐ。
目の前には、ナイフを構えた、敵である自分がいるというのに。
「今俺にナイフを構えているのは———もしかして、チャンスが出来たから、という実に悪質極まりない考えからか?」
止まった時の世界のはずなのに、赤毛の男の舌は流暢に言葉を生み出す。
それが何故かなんて、ナイフを構えている今となってはどうでもいい。———男はすでに、内心で勝利の笑みを浮かべていた。
「もしかして、ナイフだから勝てると思っているか?」
ああそうさ、その通り。
男はその言葉に、そんな思いをこめた視線で、赤毛の男を見つめた。
「あのな」
もう一度、赤毛の男に語りかけられる。
赤毛の男はまだ上半身しか振り返っていない。
自分はこうしてナイフを振りかざしている。なのに、彼からは恐怖が感じ取れなかった。表情が髪に隠れて見えないせいだろうか?
「俺は悪が許せない。だから———」
た、ん、っ———
全てがスローになっているこの世界で、赤毛の男は完全に振り返ると。男は、男は———実に凶悪な笑みを浮かべて————
「———ナイフなんて、低俗なもん……使ってんじゃねえよおおおおおおっ!!」
赤毛の男が、“吠えた”。そして腹の奥底から咆哮をあげる姿を、彼は見た。
次の瞬間、止まっていた時間が動き出す。
時間が動き出した直後————男はいつの間にか、自分の腹を襲っている違和感に気づく。
「……あ、れ……?」
みちみちみち……っ……
男はその時点では、自分の耳に届く音が理解できずにいた。ナイフは手にしっかりと握られている。しかしそれよりも早く、何かをされたということだけは理解出来てはいたのだが。
体は、まだ宙に浮いたままだ。
男は恐る恐る視線を自分の腹———異様な音がする腹部を——ちらりと見、そして———
「うおっ……あがっ」
———地面に叩きつけられた。無論、赤毛の男の“脚力のみ”によって。
赤毛の男は数秒前、その常人より長い脚で———襲い掛かろうとした敵の腹を“打ち抜いたのだ”。本来、蹴りにはそのような表現は存在しないのだが———赤毛の男の蹴りは、まさしくその表現に一番合っていた。
「……ば……けものっ……」
ぐわんぐわんと痛みに揺らされる脳内を酷使し、どうにか先程の情景を思い出そうと必死になるリーダーの男。芋虫のように体を這わしつつ、赤毛の男を罵倒しようとする。が、先制攻撃とばかりに、首根っこを掴まれ、無理矢理立ち上がらされた。
「……っふぐっ……」
「……だーれーがー化け物っつった? 後な、誰が勝手に寝て良いっつったんだよコラ、ああ?」
無理矢理顔を近づけさせられ——そこでようやく、リーダーの男は赤毛の男の顔をまじまじと見ることが出来た。なのにリーダーの男は、表情を強張らせ、黙り込んでしまう。
「……おっおおおおいいいいい……」
「……あ? 話して良いって誰も言って……」
「おっ……お前の“その目”……何なんだよ?」
「あぁ?」
赤毛の男は、リーダーの男の問いに、いかにも不機嫌だというような凄んだ声を発す。
普通ならば、リーダーの男の質問は愚問のように思えるだろう。しかし、今回のこの時ばかりは、当たり前の質問のように思えた。
なぜなら—————
「……お前の、目……は……何で……何で“紅い”んだよおおおおおおおおおっ!?」
————月を背負った赤毛の男の瞳は、紅く、赤く染まっていたのだから。
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.11 )
- 日時: 2010/03/28 17:43
- 名前: 樹 (ID: 9Q/G27Z/)
こんにちわ!
自分ももうすぐ厨二病になりそうなお年頃の人です。←おいっ
とりあえず、すっごく面白かったです。
と言うか物語が自分のストライクゾーンに的中!みたいな。
緊張感と言いますか主従関係といいますか……いや、この二つは全く似たとことろは無いだろうよ。
いやぁでも、本と緊張感とかすっごくてドキドキしながら読めました。
あとそうですっ、主人公の性格がもろ鼻血ものです。(自分にとって)
これからも更新待っているので、がんばってください!
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.12 )
- 日時: 2010/03/31 10:38
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: AJ/S3SVT)
>>11 樹様
こんにちは^^
お、面白いですか? 有難うございます!
ストライクゾーンに的中されて良かったです←
緊張感とか出すの苦手なので、上手く出せて良かったですー。これからも精進します。
主人公……篠紫野君でしょうか。皮肉屋で冷血な篠紫野君、君好かれてて良かったね!(ちょ
更新は遅めになると思いますが、これからもご愛読ください。
コメント有難うございました!
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.13 )
- 日時: 2010/04/02 09:45
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: zz4.lYYr)
story−07 【腐ったヒーローは語らない】
「暴力について、どー思う?」
クリーム色で統一された部屋の中心にいる青年は———そう話を切り出した。青年の下には、8人の黒服の男たちが気を失ったまま、重なり合って倒れていて、青年の椅子代わりとなっている。
「世の中にはさ、被害者が悪いとか、加害者が悪いとか、そうさせて周りが悪いとか言う奴がいるけどよ」
青年は、自分の下にいる男に語るような口調で話を進めていく。しかし、当然男たちは意識が飛んでしまっているので、青年1人の独白ということになっている。青年は顎に手をあてると、どこか間の抜けた表情でさらに呟いた。
「俺が思うに——————結局、それらをどう判断するか、じゃねぇ?」
しんとした部屋の中で、淡々と言葉を続ける。それはまるで、自分に問いかけているように見えた。
「例えば、昔、人格が変わりそうなぐらい酷いことをされてきた奴が加害者だったら? ものすげぇマゾな奴がいじめを受けてたら?……あ、これは性癖の問題だから、除外か。まぁ、そう考えてみろよ。簡単に価値観なんて狂っちまうぜ?」
そこまで一息に言った青年は、ほっと息を吐いて身体を脱力させた。そして、その締まりのない顔で、へらりと笑み、口を開く。
「……と、ゆー訳でさ。俺がアンタらを殴ったのは、しょうがないと思わねー?」
「そんな考え、言い訳の端くれにもならないと思うわ、遊馬(ゆうま)」
突然、独り言に介入してきた人物は————青年・遊馬に、冷たい言葉を投げかけた。その人物に遊馬は驚きもせず———まるで、最初からいたことを知っていたかのように、視線を向ける。
「つれないなー、杏子(あんね)。昔はもっと可愛げがあったのに」
溜め息混じりに呟く遊馬の顔には、からかうようや意地の悪い笑みが張り付いていた。
「うるさいわね、昔のことなんて覚えてないわ。……それより、少しやり過ぎなんじゃない? 部下に片付けさせるから、そこ退いて」
杏子は明らかな嫌悪を顔に出すと、ぞろぞろと入り口から入ってきた白衣姿の男達に、次の行動を促した。白衣の男達は、無言で8人の男達を、等身大の麻の袋に押し入れ始める。
「おーおー、この侵入者たち、どーすんの? 拷問? サディスティック?」
「……貴方みたいな、低レベルの残念な思考回路と一緒くたにしないで頂戴」
「げふん。まー恐い、杏子ちゃんったら! ……さすがこの都市を牛耳ってる————帝見グループの最高権力者の、帝見杏子お嬢様であられますこと」
と、遊馬はまるで執事のように恭しく一礼してみせた。その様子にかちんときたのか、杏子はぴくりとこめかみを引きつらせ、棘棘しい物言いをする。
「……黙りなさいよ、モルモット、ナンバー0138。別名、遊馬。何、また戻りたいの? …………あの弱かった昔の貴方に」
「………………」
杏子の言葉に初めは大人しく耳を傾けていた遊馬だが————後半になるにつれて、その笑顔が凍りついていった。そして、その言葉に長い沈黙で答えてみせると———ガラス張りの天井から見える、月を仰いで苦笑する。
「冗談じゃねぇっつーの。あんな悪夢、こっちから願い下げだぜ? そんなの、アンタが一番よく分かってるんじゃねーの? ……杏子ちゃん」
「……だから、やってるんじゃない。父さんの研究を、私が引き継いで。……あの……プログラムHALを……っ!!」
苛立ちを隠さずに、杏子はそう言い放つと、ドアへと向かう。その後姿に、遊馬はいつもは見せない動揺と焦りを見せ———声をかける。
「おいっ! だからそのプログラムは……!」
「うるさいなあっ!!」
いつも以上に激昂している杏子に、遊馬は絶句する。そんな遊馬を、杏子は一度も振り返らずに、歩みを進める。そして—————弱弱しく、憎憎しげに言葉を紡いだ。
「逃げた奴なんかに—————とやかく言われたくないよ。……遊馬」
最後に呟かれた“幼馴染”の声を聞き—————遊馬は静かに、瞳を伏せた。
(……ああ、狂ってら。……アイツも、俺も)
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