ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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腐った彼は、笑わない。【08うp】
日時: 2010/04/03 17:13
名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: R3roQ1XX)

あーうー
どうもお久しぶりです、そろそろ厨二病なお年になるんじゃないかと思われるいやそもそも進級出来んのかよどうも宵子でごぜーます。
復旧してないけどまーいっか。リニューアルですぞぱちぱちー、みたいなね!

ではでは、宵子の駄文をお楽しみくだされー

****

story−00 【独白・屋上、青空の下にて】>>1
story−01 【独白・昼間、夢の中にて】>>2
story−02 【腐った平社員は働かない】>>3
story−03 【腐った説明は上手くない】>>4
story−04 【腐った社長は笑わない】>>5
story−05 【腐った正義は許さない】>>8
story−06 【腐ったリーダーは救われない】>>10
story−07 【腐ったヒーローは語らない】>>13
story−08 【腐った痛みは忘れられない】>>14

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Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.4 )
日時: 2010/03/24 19:34
名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: dDqXdW37)

story-03【腐った説明は上手くない】


 実験都市(シミュレーションシティ)。
 そう名付けられた都市は、日本の首都——東京の地下深くに存在する。
 東京の真下に位置するその都市は、今から約30年前に作られた———政府直属、科学発展の為の実験場である。
 実験場、と聞いて嫌な想像をする者もいるだろうが———ここは違う。地上と何も変わりはない。むしろ、実験都市(シミュレーションシティ)の方が快適な生活ができるであろう。
 ……便利だ、という点においては。

 地下では、実に様々な実験———人間の精神や行動、思想さえも利用した、生ける実験が行われている。
 そのせいか、地上と比べて危険が多いのが、ここの欠点だと言えよう。それを理由として土地を安く売る物件屋も少なくはない。

 ここでは、多種多様の実験の産物が、人々の間を行き来し、試用されている。
 例えば、つい最近まで無理だと思われていた、某人気アニメでお馴染みの、人間に付けると飛べるという小型ヘリコプター。
 流石に人間にはまだだが、この都市ではそれを利用した監視カメラなどを製造し、使用している。

 ここでは、都市を東西南北と中央で分けている。
 中央エリアでは主に、東京の管轄下にある特別な政府が、治安や政治を主としてこの街を監視している。数年前と比べれば、十分に安全な区域である。
 ————そんな都市だが、決して良いことだけだというわけではない。
 東エリアと西エリア。
 この2つの区域の治安の悪さといったらない。最近では両方ともが、ヤンキー同士で別のグループを作り、抗争しているところさえ見られる。
 最後に、北エリアと南エリア。
 至って温和なこの区域では、“とある人物”が睨みを効かせているせいか、あまり争いごとが目立たない。
 ここでは主に工業発展の研究などをしており、特に北には機械工場が多い。
 ————このように街は5つのエリアに分けられている。
 
 果たしてこの実験都市(シミュレーションシティ)は、なぜ治安が悪いのか?
 理由は簡単。警察というものが存在しないからだ。
 ここは地下———しかもただの実験場という名目から、地上からはひどく遠い存在と成りえている。
 そのせいか地上———東京の政府からは、10年前から、よっぽどのことがない限り、補助をされていない。
 つまり、ここは無法地帯———いわゆる、悪の溜り場のようになっているといっても過言ではない。
 
 だがしかし。
 この実験都市(シミュレーションシティ)には———およそ7年前程から、“守護神”と呼ばれる、強き者たちが現れるようになった。

 中央には警察まがいの刑事が。
 北には鼠が。
 東には吸血鬼が。
 南には正義が。
 西には情報屋が。
 そのおかげか、7年前から今現在まで、悪が支配する都市とは成りえていないのだ。

 しかし、その実験都市(シミュレーションシティ)が————今日も、じわじわと。
 綺麗に悪に染まりつつあることに———誰も気づかない。

Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.5 )
日時: 2010/03/26 19:50
名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: zbywwA5R)

story−04 【腐った社長は笑わない】


 さて、ここで僕について説明しよう。
 僕の名前は篠紫野(ささしの)。高校2年生だったり。……巷では精神年齢だけがやけに高いガキだと評価されている(らしい)。
 
 「なあ、篠紫野」

 げしっ。
 迷の足の裏が、資料整理をしている僕の背中を押す。
 背中から匂う、ほのかに甘い香り。そしてもふもふという擬音から、迷がフォーク片手に名前を呼んでいることが察することが出来た。

 「おいってば」

 と、背後から迷に話しかけられること2度目。
 さすがに偉そうにし過ぎだろうと思えたので、それを無視したまま、手元の資料をナンバーごとに整理する。
 えーと、これがこれでそれは……と。

 すると、つんつんとまたつま先で背中を突かれた。振り返ると、突然口の中に何かを押し込まれる。熱く、そして甘い香りが口の中に散布された。

 「……っつ!?」

 突然の口内強襲に対して、僕は目を白黒させる。
 喉元を過ぎれば熱さ以下略。ごくりと熱いそれ——ホットケーキを飲み込むと、ほっとようやく一息つく。
 涙目のまま振り返ると、ソファーで優雅な雰囲気を醸し出している、にやにや笑いの上司が視界に飛び込んだ。

 「……ホットケーキ、くれるんなら一言欲しかったんだけどね」
 「平社員は黙って上司が与えるものを貰ってろ、それとも何だ、ん? お前は俺に行動の制限をするほどの権力を持っているとでも言うのか?」

 いつものような傲慢な態度をとりつつ、迷は僕の作ったホットケーキを頬に詰め込んだ。
 もふもふと咀嚼され、ごくりと飲み込まれたホットケーキ。そのホットケーキの行方はどうでも良いとでも言うかのように、迷はフォークと口だけをフル活動させていた。
 口がハムスターのようになっている迷を横見しつつ、僕は大きなため息をついて、その様子を眺め始める。
 僕の視線を感じ取ったのか、迷はフォークの端を唇で挟んだまま、

 「ん? 何だ、欲しいのか。平社員」

 と言い、一口大に丁寧に切られたホットケーキを僕の目の前に翳した。
 そんな何処か子供っぽい動作を目で追いながら、この上司について思想する。

 病葉 迷。
 僕を「拾った」張本人。
 勘違いされてる人のためにも、ここで一応言っておくけど、迷はまごうとなき女の子である。
 茶色に染めた、腰辺りまで伸びたツインテール。主に深紅で構成されてあるブレザーと、膝上の深緑のチェックのミニスカートと黒のニーソックス。
 その女子成分プラス、この上司は顔だけは可愛いときてるので、この性格の悪さは余計タチが悪い……。
 そんな、美少女という数少ない長所も、自分のことを俺と言ったり男らしく行動したりと、様々な原因のせいで台無しになっているけどね……。
 そして彼女は今現在15歳である。本来ならば中学校で勉学に励んでいる年齢なんだけど、迷の事情は特別で————まあ、その辺の説明はまた今度。

 「おいってば、平社員」
 「ぐへひゅっ」

 額にフォークを突き立てられたと理解するまでに、悶絶と床を転がる時間を合わせてたっぷり2分はかかった。
 幸い血は出てないみたいだけど、しっかりと、フォークの先の痕がついている。
 ソファーでくつろいでいる迷に向き直り、自身の額を人差し指で思い切り指差しながら、詰め寄る……!

 「フォークで息の根が止まったらどうする!」
 「気持ち悪い顔で俺を見てたお前はどうなんだ!」

 僕の言葉に逆切れした迷と一緒に、2人して、睨み合う。
 そんな耐久戦が1分程続き、やがて迷の方が根負けして呆れた表情をしてしまった。

 「……はあ、馬.鹿らしい。食い終わったから、その皿片しておけよ……」

 こめかみに手をあてたまま、迷は自分の書斎へ戻る。少し満足気そうなのは気のせいだろうか。

 「はいはい。おやすみ」
 「寝ねーし。仕事があんだよ、平社員。お前もさっさと与えられたノルマはやっとけ。やっとかねーと……」

 ガシャン。

 いつのまに目の前に接近していたのだろう、僕の目の前に上下二連銃身の小型拳銃———デリンジャーの銃口が、僕のフォーク痕の残る額に押し付けられていた。
 ざあーっ。
 体中の血が止まったように、顔から血の気がひいていく、音。

 「……ヤ、るから。そこんとこ———」

 よろしく、と大あくびをして迷は言った。
 僕がその言葉に何度も大きく頷くと、にやりと笑って背を向ける。

 「じゃあな、平社員」

 ばたん。

 小さな背中が扉の向こうに消えた。
 呆けた僕の前には、ほんの少し蜂蜜がついた皿に、「砂糖が足りない」と油性マジックで殴り書きがされたコップが残されていたのだった。


 「…………おい、油性って落ちないんだぞ」

Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.6 )
日時: 2010/03/25 05:48
名前: 六番目の灰ネズミ ◆s1dPr7GiEs (ID: Ocs18kVY)

おもしろいですね…。
これからも読むのでがんばってください!

Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.7 )
日時: 2010/03/26 19:47
名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: zbywwA5R)

>>6 六番目の灰ネズミ様

コメント有難うございます。
お褒めいただいて嬉しいです^−^*
拙い文章だとは思いますが、愛読よろしくお願いします。

Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.8 )
日時: 2010/03/26 20:03
名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: zbywwA5R)

story−05 【腐った正義は許さない】

 人間が宙を舞うところを見るのは、その時、男は人生の中で最初で最後だろうと感じた。
 
 時計の針はすでに深夜を指しているだろうこの時間。
 本来ならば家に帰っている時間に、何故その時男がいたのかなんて、男にとっては愚問だった。
 何故なら男は、この東京の新宿を拠点とした暴力団の一員だったからだ。
 一員とは言えど、彼はその中でもリーダーと呼ばれる、力をある程度持った人間。その為、上の人達から何人か子分のような人間を付けて貰っていたのだ。

 ———どしゃっ。

 さて、と虚空に彷徨っていた男の意識は、砂が崩れ落ちるような音によって、眼前の事態に向き直された。

 視線を自分の周囲に巡らすと、およそ10分前には笑いあっていた仲間たちが、体中に痣や傷を残している姿。その中でも、現在口をだらしなくあけたまま気絶している男は、一番気を許せる人物だった。

 しかしそいつも、今となっては自分に何も答えてはくれない。

 もう一度見回す。……その数、全て数えてると18人。
 ———いや、どしゃりと音を立てて今、新たな被害者として19人目の子分が地面へと沈んだ。

 自分以外の全員がやられてしまった。
 そう思う男の心中は。恐ろしいほど冷静だった。……それは驚愕からか、それとも。

 ——ビルとビルの隙間から射す、月の明かり。
 男はその光で照らされている19人目の——かつて彼が横中と呼んでいた子分——の顔を見て、固まる。
 
 そして考えた。
 先ほどの19人目の始末が終えられた時点で——自分以外の下っ端はやられてしまった。後残るは自分のみだと。

 ————何だよ……何だよッ!?

 そこで男はようやく自分の置かれた状況を理解し、焦りだした。
 ——パニックに陥った男が一番初めにとった行動は、とにかく現状を把握しようと、男はその無精髭が生えた顔で、周りを見回すことだった。

 何故こんなことに?———確か、俺等が気持ちよく飲んでたとこに変な奴が来て……突然ぶん殴られた、からだと思う。
 
 周りに散らばって動かない子分を見ながら、自問自答を繰り返す。
 
 俺が居る場所は?———いつもの俺等が溜まってる廃ビルじゃねぇか。
 じゃあ足元に倒れてるのは?———俺の子分だ。
 
 じゃあ———誰がやった?

 ———男は、この状況を作り出した本人を見ようとし、垂れていた頭をゆっくりと上げた。
 月光で明るい廃ビルの2階。きらり、と割れたガラスの破片と、彼らの血溜りが鈍く光り——

 「……ひ、ひいっ……」

 ———そいつは影を纏いつつ、そこに存在していた。
 各負傷を負った集団の中心に———その男は立っていた。男1人だけが立っていることから、この状況を作り出した本人であることは、どこからどう見ても明白である。
 
 赤い髪に、すらりとした長身。そして右頬を彩る派手な竜の刺青。
 それだけでも目立つというのに、合わせてサラリーマンが着るようなスーツにじゃらじゃらと金属のアクセサリーを付けて、お洒落に着崩している。
 ……まぁそのスーツも、先程の戦闘によってか、少し血で汚れていた訳だが。

 赤毛の男は、鬼のような形相のまま、鋭い眼光で、リーダーと思われる男を射抜いた。
 その眼光にに、リーダーの男は体を強張らせ———ぶるぶると震えだした。

 沈黙の中、かたり、と男が一歩を踏み出す。
 ———やばい、殺.される、かも……!?
 
 危険を察知し、リーダーの男はみっともなく口から唾を飛ばしつつ懇願した。

 「た、頼む……金ならやるから……やるから……! ゆ、許ひてひゅ……じゃなくて許ひて、くだひゃい……!」

 少し噛んでしまったが、リーダーの男は必死になって言葉を紡いだ。そんな男の様子を見ていないのか、赤毛の男はずんずんと男と自分の距離を詰めてくる。
 
 ———たんっ、

 赤毛の男は最後の一歩を踏み出し———リーダーの男の目の前に立った。その瞬間、男の体を恐怖が支配した。

 ———何か何か何かすんすんのんのかよよ!?

 男が混乱した脳内のまま、自分の末路を考え、泣きそうになりながら赤毛の男の行動を見る。

 と、赤毛の男は、じろりとその男の顔を覗き込み、一言だけ声を出した。

 「……ぽい捨ては、禁止だろう?」
 「……は、はぁ……?」

 曖昧に頷き、赤毛の男の手をよくよく見ると、何故か自分達が飲んでいたビールの空き缶が潰されているのが目に入る。

 ———何だ、それだけかよ……!

 男はほっと安堵すると、こくこくと大きく首を上下に動かしながら、その空き缶を赤毛の男から受け取った。

 「ふぃー、じゃ。俺はこれで」

 え? それだけ?
 そう思わせる程、赤毛の男は来た時と性格が180度変わったように、すんなりと何もせず帰っていった。 ……来た時は怒り狂った様子で、突然隣にいた子分のこめかみををぶん殴ったというのに。

 くるり、と赤毛の男が背を向ける。
 その瞬時、リーダーの男の脳内に、チャンスという勝利ともとれる言葉が浮かび———男はそれを、実行に移し————

 ———パーカーのポケットから、使い慣れたサバイバルナイフを取り出す。シャキン、と刃を出すと、刃物特有の雰囲気を、背中越しに感じる。

 笑っている膝を無理矢理押さえつけ、ゆっくりと立ち上がり、ナイフを構える。敵はこちらをちらりとも見ないまま、悠々と煙草に手をつけようとしている。

 「————あ、そう言えばさ……」

 赤毛の男が、思い出した様に呟くと、歩き出そうとした足をとめる。
 そしてリーダーの男を振り返った時。

 「……こンの野郎っ……!」

 ……リーダーの男はすでに赤毛の男にナイフで飛び掛っていた。
 そんな風景を見て、煙草をぽろりと取りこぼす赤毛の男。
 大きく目を見開き、こちらの右手に構えたナイフをぽかんと見ている。

 その姿は、リーダーの男にとって——先程仲間をいとも簡単に捻じ伏せた者としては、随分間抜けな表情に見えた。
 
 「————し、ねぇ——— 」

 ……次の瞬間、雷撃のような轟音が、男の耳をつんざいた———。


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