ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 腐った彼は、笑わない。【08うp】
- 日時: 2010/04/03 17:13
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: R3roQ1XX)
あーうー
どうもお久しぶりです、そろそろ厨二病なお年になるんじゃないかと思われるいやそもそも進級出来んのかよどうも宵子でごぜーます。
復旧してないけどまーいっか。リニューアルですぞぱちぱちー、みたいなね!
ではでは、宵子の駄文をお楽しみくだされー
****
story−00 【独白・屋上、青空の下にて】>>1
story−01 【独白・昼間、夢の中にて】>>2
story−02 【腐った平社員は働かない】>>3
story−03 【腐った説明は上手くない】>>4
story−04 【腐った社長は笑わない】>>5
story−05 【腐った正義は許さない】>>8
story−06 【腐ったリーダーは救われない】>>10
story−07 【腐ったヒーローは語らない】>>13
story−08 【腐った痛みは忘れられない】>>14
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.1 )
- 日時: 2010/03/23 22:25
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: NqI69cgO)
story−00 【独白・屋上、青空の下にて】
「結局アンタは、何も分かっちゃいないんだよ」
———分かった口を利くな、若造が。
彼の喉を、圧迫する。病気かと思えるようなその白い喉は、今では私の手の中で規則的に動いていた。どくどく、どくどくと。
「そうして分かったフリをして、何度自分を騙してきた?」
———黙れ、この溝鼠が。
私が締め付けているその喉だけが、まるで他の生き物のように思えて。ついつい圧迫する力を詰めてしまう。
「アンタはさ、結局は、寂しかっただけだろう? ……俺と同じだ」
———やめてくれないか、同情するのは。
彼の腐った言葉だけが、私の脳内に反響しては、染み込んでゆく。
「全部、壊れてると。可笑しい、狂ってるってさ。まるで、そう、中二病みたいな考え方だ」
彼はそこで、一旦深く息を吸い込んだ。ひゅおお、と掠れた呼吸音と一緒に、私の手の中で白い喉が上下する。
なぜ、私はこの喉を絞めることが出来ないのだろうか?
一瞬だけで良い。一瞬だけでも自分の持てる最大限の力を使えば————彼の息の根を止めることなど、赤子の手をひねるよりも簡単なのに。
何故だ? 何故だ?
「自分以外は悪だと思い込んだり、自分だけは特別な人間なんだと思い込んだり———ね。なぁ、アンタはどう思ってる? 他人のこと、自分のこと」
「…………黙ってよ」
ねえ、もう、終わりにしよう? と。
私は彼に話を持ちかける。彼は濁った瞳を三日月のようにして、口元を歪ませた。
「……ああ、残念だなぁ」
———君とはもっと、早く会いたかったよ。例えば、幼馴染のシチュエーションとかさ。
彼はいつものようなおどけた言葉をつらつらと語ってみせた。そう、いつものような。
「そうだね」
私は優しく笑って、手中に収まった最後の希望に———力を込めた。
優しく、優しく。
だけど一息に逝けるような、そんな————……
—————真夏、午後、屋上。青空の下にて。
彼と私は、笑った。
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.2 )
- 日時: 2010/03/23 22:32
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: NqI69cgO)
story−01 【独白・昼間、夢の中にて】
僕が精神的にもろくなってしまったのは、明らかに両親のせいだった。
子供の頃…とはいっても、今からたった7年前。僕の母親と父親は突然失踪したらしい。らしい、というのは、僕は2人が失踪した、8月16日の午後2時————神社の境内で遊んでいたからだ。
何故失踪するはめになったのか……理由は知らない。
ただ分かっていること。
それは、2人の捜索願が出された時点で、2人がもうとっくに死.んでいるということだけ。……いや、殺.されたと比喩した方が、正しいのだろうか?
———8月16日、午後6時。
彼らは、近くの山奥で惨.殺された姿を、発見された。
ちなみに、発見者は僕の祖父。山の中で愛犬を放して、孫と遊んでいたところ、木に四肢を括り付けられて息絶えた母を見つけたと言う。
そしてその時一緒に居た孫とは……僕の実妹、依澄(いずむ)。依澄は、その時まだ3歳だった。
なのに———彼女は不運なことに、祖父の制止もきかず真正面から母と向き合ってしまい———……。
……あの事件によって、彼女は、壊れた。いや、壊されてしまった。
あの無垢な笑顔と、純粋な心を、奪われた。
そして、僕もあの事件からずっと何処か狂ったままなのだ。ずっと、変わらずに、生きている。
この話も一種の呪縛、だったりして。
- Re: 腐った彼は、笑わない。 ( No.3 )
- 日時: 2010/03/26 19:50
- 名前: 宵子 ◆OKoRSyKcvk (ID: zbywwA5R)
story−02 【腐った平社員は働かない】
「篠紫野、お前の心の引き出しには上司へのマナーというものを仕舞っているのか?」
「すみません、クリーニングに出してます。多分1週間で戻ってくると思うんですけど」
「早く電話かけて今戻ってくるようにしてもらえ」
「いや、一週間後には僕、そのマナーに醤油ぶっかけて汚す予定なんで」
「……その前にお前を血で汚すぞ」
言葉を発した後、病葉 迷(わくらば まよい)は、神経質そうに眉間に皺を寄せた。綺麗な顔が台無しだといつも言っているのに、この上司は。
そう思いつつ視線を迷に送ると、迷はぎっと目を三角にし、怒りの鉄拳を僕の頬に叩き込んだ。その勢いのまま、首はごきりと鳴って180度回った。
「ちょ、痛……」
「なあ篠紫野、扉を見てみろ」
多分、ここで迷の言葉を断れば、この首の捻れる角度が360度になると察し———迷の言葉に素直に従う。
みちみちと筋肉の不協和音を奏でる首のまま、自分の背中越しにある扉に、意識を向けてみた。
僕を二回り程大きくしたような書斎の扉。
そこには、白い半紙に荒々しく筆で「社長への心得」と書かれたものが、セロハンテープで何十枚も無造作に貼られてある。
更にそれに関するもの十枚程度が壁にまで進出しているので、無理矢理貼ったことがわかる。
これらによって、僕は一つの答えを導き出した。
顎に右手をあて、何か思考しているようなポーズを作り、「ふむ」と口を開く。
「……つまり、迷は大雑把だという」
「成程、首が曲がるのが好きらしいな、篠紫野は」
ごきごきっ
……人間の首は270度までは曲げることが可能だということがよく分かった。そのせいで、悲鳴を出そうとしても、喉が圧されて思うような声が出ない。
「……ふん。つまらない駄犬め」
迷は僕のリアクションがないことがつまらなかったのか、首を曲げるのをやめて、ふんぞり返って自分の椅子に座ってしまった。
「お前にはリアクションという単語が欠落しているようだな篠紫野」
ふむ、しかし本当に首が痛い。
迷はリアクションがなかったから面白くない、と捉えているようだけど、それは悲鳴が出ない程痛かったって訳だよ。いててて……。
「……喉を圧迫されてて、悲鳴も出なかったんだよこのサディスティック上司」
「そうかそうかよしよし」
優しく自分の首を撫でていると、迷はそれを満足気に眺めながら、口も開いた。
「まあ良いだろう、今回のは許してやるさ。だからと言って、お前が許されたわけではないけどな。つまり、謝罪。いや、それに見合う対価が必要だろう。……ということで、ホットケーキとコーヒー。作れ平社員」
「はあ?」
命令口調の迷が、ちらりと壁を見やる。
視線を辿ると、壁に立てかけてあるアンティークな時計があった。時刻は———丁度午後3時。一般的にはおやつ時、という奴だろう。
「分からないか? ホットケーキとコーヒーという食べ物と飲み物が。早くしろ。俺は無能は嫌いだ」
「……はいはい。イコールお子ちゃまの我侭ってことだ」
「ぐだぐだゆーな、三下平社員。またの名をただの部下。言っただろ、無能は——」
迷が最後の言葉を紡ぎ終える前に、急かされるようにして書斎を飛び出す。
「こら人の話は最後まで———」……書斎の扉を後手に閉めた。扉の向こうから僕についての罵倒が聞こえるけど……。
それよりさっさとホットケーキを作ろう。
後コーヒーだったっけ? 迷は甘党だから、砂糖とミルク多めで……。
と、そんなどうでもいいことを思案していると、視界の端に、小さな写真立て。古びているが、プラスチックの花で丁寧に装飾されている。
すでにセピア色になっている中に飾ってある写真には、幼き僕と————……
「———分かってるさ」
自嘲気味に、そう呟く。分かっているからこそ、思った。
先程の迷の言葉を数回反復し、自問自答を繰り返す。
「無能は、いらない。だろ?」
迷の皮肉じみた言葉が、聞こえたような気がした。
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