ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 天狐の妖刀
- 日時: 2010/04/17 15:39
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
/御挨拶
どうもこんにちは、そして初めまして。絹世と言います。
妖刀とか九尾の妖狐とか好きなもんなんで、そんな感じの小説を書かせて頂きます。
作者はまだまだ未熟なもので、色々と見苦しい部分もあるかもしれませんが暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。
〆目次-Index-
第一篇 天狐少女の迷走
序章/ある物語の開巻劈頭 >>1
第一章/妖怪の少女と人間の少年 >>5 >>6 >>9 >>11
〆お客様
みどりのみかん様 right様 はるか、様
- Re: 天狐の妖刀 ( No.9 )
- 日時: 2010/04/15 21:09
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
3.
***
目覚まし時計を見ると、時刻は午前七時。
カーテンの隙間から差し込んできた朝日で、東條は目を覚ました。
ベッドで寝そべっている中、考える前に身体が自然と横を向いていた。——昨夜、詩世が居座っていた場所だ。食べ終えたパスタの皿とフォークだけが、片付けられる事なく床に残されている。
確かに、あの少女は此処に居たのだ。
(……居るわけねえよな)
そう、居るわけがないのだ。何せ詩世を追い出した張本人は、東條自身なのだから。
東條は昨日着ていた服を脱ぎ捨て、新たなTシャツとズボンに着替える。そんな東條が次に取る行動は洗面。廊下に出てすぐそこにある洗面台の蛇口を捻り、これでもかという程の冷水を、じゃばじゃばと顔に浴びせる。
それでもやはり、東條の気分は晴れない。
(……はあ)
罪悪感とは少し違う、何かもやもやした嫌な気分。
部屋に戻り、ぼすっと音を立てベッドに腰をかける。どこか憂鬱な気分の中、ふとカーテンから差し込む光を見て呟く。
「……人は日光を浴びないと鬱になるという」
***
財布だけをズボンのポケットに突っ込み、東條は家を出た。理由は単純に気分転換だが、特に行くあてがあるわけでもない。そういえば人って朝日を浴びないと鬱になるんだっけかー、という豆知識を思い出しての事。普段ならそんな雑学知識は気にしたりはしないのだが、今日は何となく縋ってみたくなったのだ。
ぶらぶら、ぶらぶらと東條は七月下旬の空の下を、アテも無く歩いて行く。アスファルトの道を、目的の無い空白の頭のまま。
そして東條は国道へと出た。そこで自分が朝食を取っていない事を思い出し、近くのコンビニで朝飯でも買おうかと考え付く。ようやく東條にも明確な目的地と言うモノが出来た。
だが、それでも分からない。
やはり、分からない。何故自分が今ここまでもやもやした気分なのか。自分自身の感情の筈なのに、その正体が一向に分からないのだ。
はあ、と小さく溜め息をつく。ああ、溜め息をつくと幸せが逃げるんだっけと迷信めいた豆知識を思い出す。
「あれー、東條だー! 一昨日ぶりー!」
何だが暗い気分の中、不意に後ろから聞き慣れた明るい声が聞こえた。後ろを振り向くと、一人の小柄な体格の少女が手を振りながら此方へと駆け寄って来ている。
化粧が必要無い程度に整った顔立ちは、童顔でくりんとした幼い感じの大きい目が特徴的だった。髪型は緩いウェーブのかかっていて、横髪が少し長めなダークブラウンのボブヘア。ノースリーブの白のパーカーにホットパンツで、足の部分は紺のハイソックスにスニーカーというラフな格好。
絹谷初音(きぬたに はつね)。
東條のクラスメイトで、よく東條や桑原とつるんでいる。そんな東條からしてみれば、今見た初音の格好は結構意外だった。
初音はこう見えても、絹谷財閥という財団の第二子であり長女なのである。別に財団の娘だからってそれらしい格好をしろとは言わないが、財団の娘という事にどこかお嬢様のようなイメージを感じていたりした東條なのだ。
初音は此方までやってくると、東條の隣に並ぶ。
「よう絹谷、一昨日ぶりだな」
「いぇっさー! 一昨日ぶりなのであります軍曹!」
「へへっ」と笑う初音。相変わらずな初音に東條も思わず「へへっ」と笑ってしまう。
「ところで東條ちゃんはこれから何処に行くのさー?」
「んー、コンビニに朝飯買いに」
「東條はバリバリ家事出来たじゃん」
「いや、何となく」
「ふーん、へえー、そー」
「……何だその適当な返事」
初音はにやりと笑い、
「おやおや、東條は無気力脱力系キャラはお好みじゃないかね?」
「……お前は行動の読めない不思議ちゃん腹黒ロリキャラだろ」
「むむっ、不思議ちゃんとは何かね? 俺ぁ本能のまま行動してるだけだぜい?」
「そういう言動を人は不思議ちゃんと言う」
「へえー」
その後に二ヒヒと笑みを作って見せた。
いつも通りの他愛ない話、軽口の叩き合い。この変哲も無い日常のやりとりが、東條にとっては憂鬱な気分を一時的に晴らす。
- Re: 天狐の妖刀 ( No.10 )
- 日時: 2010/04/15 21:13
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
新キャラ・絹谷初音登場です。めだかボックスの不知火半袖+とらドラ!の櫛枝実乃里÷2みたいな感じでしょうか。
因みに私のハンドルネーム「絹世」(きぬせ)は、メインヒロインの詩世の「世」と絹谷初音の「絹」からきています。
- Re: 天狐の妖刀 ( No.11 )
- 日時: 2010/04/17 15:42
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
4.
しかし、現実味の無い現実は容赦なく東條に纏わり憑く。
「そーいや東條さー」
「ん?」
「さっき見掛けたんだよねー、変な娘」
「変な娘?」
「うん。遠くからだったからよく分かんなかったけど、ケチャップを被ったみたいに真っ赤だった」
その時、一瞬初音の表情に陰りが見えた。
「……ふらふらしてたから、血かもしれないけど」
「…………」
「変な娘」、「ケチャップを被ったみたいに真っ赤」たったそれだけの言葉で東條は嫌な予感がした。いや、それに加え「ふらふらしていた」とは何かあった事は確実。おそらく初音は分かっていながら、ケチャップなどと言っているのだろう。
初音に悪意は無い、只見た事を話しているだけだ。だがその次に発せられる言葉は何かもやもやした気分に追い討ちをかけるが如く、東條に突き刺さった。
「コスプレしてるみたいな感じかなー、何かの動物の耳に九本の尻尾。お姫サマみたいな着物でさー、凄い可愛かったよ?」
その少女の事を思い出してなのか、初音はにひひと笑う。
それと反するように、東條は最初何を言われたのか分からなかった。——いや、分かりたくなかった。だが、分かってしまう。
自分の知っている人物の中では、たった一人だけしか当てはまらない。
詩世。
つい昨日会ったばかりの、一人の少女の名。出会い方から全てが現実味の無い、二次元から来たのかと思うようなそんな少女。
「…………」
何かあったのだろうか。
「それで……って東條!? どこ行くのさ!?」
気づいた時には、自分は走り出していた。
未だに自分の感情の正体も知らぬまま、一人の少女を探し出す為に。
約四百メートル離れた雑居ビルの屋上。一人の少年が座り込んだ状態で、やる気なさげに欠伸をし双眼鏡から目を離した。
腰のガンベルトから二丁の装飾銃のうち、一つを取り出し放り投げてはキャッチする。
見た目から察するに、少年の年齢は十五、十六というところか。格好は七月の下旬の服装からすれば、かなり異様だった。台形の形をした黒の帽子に黒のマフラー、黒のコートに黒の手袋。更には黒のショートブーツと真冬にでしか着ないような格好。先が少しツンツンした黒髪と全身黒ずくめで、吸血鬼のような赤い目だけが漆黒の中で気だるそうにしている。
少年は後ろに立つ少女に、振り返りもせずに問いかけた。
「……で? アレが今回の標的の『天狐』とか言う奴?」
「……あの少女は標的ではない、只の高校生」
少女は外国人のようだったが、イントネーションは完璧だった。短い少女の言葉に、少年は「へえ」と適当に相槌を打った。
その少女は思わず見惚れてしまう可愛さだった。腰まで伸びる艶やかな銀髪に、全てを見透かすような澄んだセピア色の瞳。肌は外国人特有の白さで、手足は恐ろしい程に華奢。服装はノースリーブの黒いワンピースで、スカートの部分はバルーンスカートのようになっている。靴はニーハイブーツ程の長さがある黒の編み上げブーツと、そこまではどこか人を寄せ付けない雰囲気を持つ、恐ろしい程の美少女。
しかしその服装には西洋の甲冑のパーツがばらつかせたように着用されており、纏っている白いマントは甲冑のパーツの一部を肩につけて固定している。両手の肘からは同じく甲冑を着用しており、左眼の目元の下には「Ⅳ」と刻まれていた。
それに加え、少女は片手に銀の杖を手にしていた。全長百四十センチと、少女の身長の軽く半分以上の長さ。銀の杖の先端には不思議な文字が刻まれた銀の石がついており、同じく銀色の六枚の花弁のような物が石を包み込んでいるという、呪いにでも使うかのような魔術めいた杖。
少年と違ってどの季節でも、人込に溶け込む事など不可能であろう格好。端から見ればコスプレでもしているのかと思う。
「……じゃあ、本物の『天狐』とやらは何処いったんだよ? 確か白夜(びゃくや)の奴が取り逃がしたんだろ?」
面倒臭そうに問いかける少年に対し、少女は機械の如く淡々と答える。
「取り逃がした、けれど天狐に傷を負わせる事は出来た。天狐は逃走、白夜は追跡。問題無い」
少女がそう言い終えると同時に、少年は手にしていた装飾銃をガンベルトへと収める。そして片手に持ったままの双眼鏡をもう一度目へと持っていく。
少年が双眼鏡から見るのは、ダークブラウンのボブへの少女と話していたかと思えば、急に走り出した一人の少年。
「神器、それも“村正”の契約者がどこにでもいそうな高校生だったとは思わなかった」
「……そう、クレイグも最初は普通の人間だった筈だけれど」
「…………」
返ってきた少女の言葉は、的を射ていた。少年——クレイグは言葉に詰まる。
クレイグはガンベルトに収まっている装飾銃へと、視線を向ける。確かにそうなのだ、自分も最初は只の人間だった。
しかし“神器”の契約者となったのは『魔術師』になった後。つまり、普通の人間ではなくなってからだ。“神器”の契約者が魔術師でも無い只の人間である事は、例外と言われる程に少ない。それも只の人間が契約すると、“神器”の持つあまりにも強大な魔力によって身を蝕まれ、最後には死んでしまう事が殆ど。
と、いう事は。
「あの男は魔術師なのか?」
クレイグは、少女に自身の率直な疑問を投げかけた。考えてみると、クレイグはあの少年の事に関してはまったく聞いておらず、単なる普通の人間なのかと思っていた。でもそれが、クレイグの思い込みなのだとしたら。
しかしクレイグの予想と反して、少女は小さく首を振って言う。
「あの少年は只の高校生、魔術とは何の関係も無い」
- Re: 天狐の妖刀 ( No.12 )
- 日時: 2010/04/17 15:58
- 名前: みどりのみかん (ID: O9GTNW/u)
おぉ
久々に見にきたら更新されてるじゃないかっ
新キャラ達の登場!
なにやら企んでいるようで。
天狐が登場していますが、他の妖怪とかも登場するのですかね?
続きが気になって仕方がありません!!
頑張ってください。
- Re: 天狐の妖刀 ( No.13 )
- 日時: 2010/04/17 16:10
- 名前: 絹世 ◆baKUMl0gkI (ID: YpJH/4Jm)
>みどりのみかん様
久々に更新しました← クレイグ好きの作者ですry
はい、天狐以外の妖怪も登場させる予定です。何が登場するのかは、ネタバレになるので言えないのですが。
またしても応援有難うございます、頑張りますね。
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