ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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MIRAGE
日時: 2011/06/21 12:43
名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: EdkNSjYc)
参照: http://pksp.jp/kiriduki/

どうもこんにちは、もしくはこんばんは。霧月 蓮と申します。もう一つの方も完結してはいないのですが、また新しいものを書いてみようと思います。
今回もファンタジーです。魔法使いや死神、吸血鬼、堕天使など色々なものが出てきます。まぁ小説用に本来の意味などを変えているものがほとんどで御座います。

あとは英語などに弱いので、間違いがあったら教えてくださると助かります。脱字、誤字についても同じくです。
更新は非常に遅いです。気長にまってやってください。参照のところにもまったく同じものがおいてあります。

タイトルの意味は、蜃気楼、幻術です

目次

プロローグ:壊れたココロ>>1

第一の魔法劇〜誤解、回り始める歯車〜

第一話:誤解時々責任>>2
第二話:誤解時々平和>>3
第三話:誤解時々行事参加>>4
第四話:誤解時々戦闘>>5
第五話:誤解時々悪龍龍菜>>11
第六話:誤解時々魔道書使い>>12
第七話:誤解時々天才>>13


!お知らせ!

あまりにも設定が雑だったため、一度更新を停止させていただきます。

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Re: MIRAGE ( No.9 )
日時: 2010/10/26 15:06
名前: シェフ ◆Yequ3Gjbig (ID: Xgilb50Q)

て言う事はDQとかFFとか好きなんだ!
俺は好きだぜ

Re: MIRAGE ( No.10 )
日時: 2010/10/27 18:47
名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: vsXGN6AE)
参照: http://pksp.jp/kiriduki/

>>シェフ様

そうですね、ドラクエは大好きですよ
ファイナルファンタジーはあんまり分からないです(汗)

Re: MIRAGE ( No.11 )
日時: 2011/03/29 20:00
名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: 0iVKUEqP)

第五話 誤解時々悪龍龍菜

 「七罪……ねぇ」
 悠花と蓮の会話を聞いて小さく呟く少女がいた。日の光を浴びて輝く偏り少し長いくらいの銀色の髪に右目を隠すように巻かれた布。見えている左目は透き通った青の瞳で、薄いピンクの短い浴衣のようなものを着ている。少女の名前は龍菜リュウナで“龍ノ一族”の生き残りである。
 「馬鹿らしいなぁ……このボクが人間の言うことを聞くわけがないじゃないか」
 龍ノ一族というのは魔法使い達がいなかったころ差別や非常に低い地位にいたものに自分たちの使う技術を教えた者たちの一族のことで、龍の技術が完全に魔法と呼ばれる現在になって、残っているのは西洋のドラゴンと東洋の龍、両方の血を引いた龍神ノ一族だけであった。それも生き残っているのは東洋の龍の地を強く受け継ぎ龍神と祀られてきた龍花リュウカと西洋のドラゴンの血を強く受け継いだ龍菜……後一人は東洋の龍と人間が交わった末に生まれた禁忌の子。
 そのうちの西洋のドラゴンは七つの大罪の憤怒に当てはまるものだ。七罪というのは簡単に分かるであろう、七つの大罪のことを短く言っているだけである。人間に解き放たれるということはその力を最大限に出せるようにしてもらう変わりに解き放った人物に従わなければならなくなる。いわば“契約”のようなもののことだと思ってくれればいい。まぁ大抵の場合は開放した力を従わせることが出来ず、自らが開放したものに潰されて終わるなんていうことが多いのだが。
 龍菜はさも楽しそうに笑った。その視線の向こうにいるのは、水の龍を作り上げそれに攻撃の指示を出す琉華の姿と、無言で魔法を展開させ水の龍を一瞬にして凍りつかせてしまった望の姿。蓮と悠花は龍菜の視線には入らない微妙な位置で口論を続けている。龍菜は小さな声で言う。「愚かな人間共……今の繁栄があるのはいったい誰のおかげ?」と。それは人間からは想像できない寿命を持った魔法使いからでも果てしなく感じる時間を生きた、者の言葉。
 龍菜は見た目は人間である。それは人間とまじ交わって生まれた子だからと言うわけではない。単純に本来のドラゴンの姿だと人間に攻撃されるのだ。大きな力を持ってはいるがドラゴンとしてはまだ子供で、使える魔法も少ない。まぁ魔方陣無しで魔法を制御できる点は魔法使いに勝っているのだが。それでもごく稀にいる“化け物”並の力を持った奴の相手をするのは少々酷だ。
 だから人間の姿をして生活をしている。そうすればほとんどのものは気付かずに人間だと思って接する。その辺も魔法で仕組まれているだけなのだが、並大抵の魔法使いでは感じることもとくことも出来ないようなものなため自然に生活を送ることが出来る。もっとも人間の姿で生活することを提案したのは龍菜の兄である龍花が人間とトラブルを起さないためにしたもので、初めの内は龍菜も反抗していた。
 しかし、“化け物”並の力を持った人間……まぁ正しく言えば自らの一族の中で唯一、流の血と人間の血を引く禁忌の子に右目を抉られてしまったのだ。流石にそんな経験をするのはもう嫌だったのだろう。それ以来は人間の姿をして生活するようになっていた。

 「おい、そこのガキ邪魔だ」
 グッと龍菜の肩を掴む者がいた。それは体格のいい中年で、ニタニタと不気味な笑みを浮かべている。龍菜は僅かに首を傾げた後、相手が自分の肩に触れていることに気付けば低く舌打ちをしてその手を払った。中年もその時点で言葉だけに切り替えて龍菜を押して強引に避けようとしなければ良かったのだ。しかし中年は龍菜を思いっきり押した。いくらドラゴンの血を強く引いていると言っても、子供は子供だ。人間の姿になっていることでその分、腕力等も人間に合わせてあるし、重さについても同じだ。あっけなく押されて尻餅をついてしまう。
 それが気に入らなかったのだろう、龍菜は鋭く中年を睨みつける。中年も中年だ。子供に睨まれたのが気に入らなくて「ああ、んだお前。喧嘩売ってんのか?」と言った。嗚呼、そんなこと言わずに黙ってその場に座ってしまえば龍菜も手を出したりはしなかっただろう。
 「喧嘩? おっさん何言ってんの? これは喧嘩じゃない。ただの一方的な殺戮ワンサイドゲームだよ。今の王族と、Sランクの様な、ね」
 龍菜はそう言って妖艶なる笑みを浮かべる。いつの間にか望と琉華の戦いは望が優勢の一方的展開を迎えていた。中年は馬鹿にするように笑って魔方陣をつむぎ始めた。それでも龍菜にとっては無駄な作業にしか見えなかった。
 「……馬鹿だなぁ。一方的な殺戮って言ったじゃないか」
 タンッと軽やかに魔方陣を完成させて呪文を呟き始めている中年の目の前に移動して、右手を相手の胸、正確に言えば心臓のあたりを狙って伸ばした。刹那龍菜の爪が鋭く伸びて中年の胸を貫く。完全に中年を貫いた爪には紅の液体が滴って地面へと落ちてゆく。あまりにもあっけなく終わってしまった遊びに龍菜はつまらなそうに息を吐き手を振るう。爪についた紅の液体が浴衣を汚したがその辺は気にしないで置く。
 近くにいた者たちは脅えて声を上げる。それに気づいた蓮は悠花を一旦放置して龍菜の元に走ってきた。もとよりこんな状況に出くわすのには慣れているのだろう。何の反応も示さずに脈をはかり呼吸を確かめた後龍菜を睨み付けた。
 「死んでる……犯人はお前?」
 蓮が問いかけるとほぼ同時、龍菜は地面を蹴って飛び上がる。そして「うん、だったら何なんだろうね?」と言って飛び去っていく。その姿を見て蓮は静かに呟く。「悪龍、龍菜、だな」と、静かでどこか悲しそうな声で……。

Re: MIRAGE ( No.12 )
日時: 2011/04/10 20:21
名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: APpkXS4D)

第六話 誤解時々魔道書使い

 いつの間にか琉華と望の決着はついていた。琉華が余所見をしていたから注意のつもりで放った雷は容赦なく琉華に直撃した。本気ではないつもりだったのだがあいにく琉華は水を大元とした複数属性の魔法使い。どうやら雷をはじめ電気系統の魔法には弱いようである。一撃だけで泡を吹いて気絶してしまった。龍菜が起した問題を片付けながら見ていた蓮は情けないとだけ呟く。
 その後も淡々と試合は続いていった。輪廻は蓮の自体により不戦勝、優希は相手が女子にもかかわらず本気で潰しにかかり勝利。続いては春と月乃の番であった。月乃と春はあらかじめタッグとしてエントリーしていたので、二人一組での戦いである。それなのに表示されたのは一人の少年だけ。どうやらSランク魔法使いらしいが、見た限り月乃と同等かそれより少し上ぐらいの年齢のようだ。あのガキなめてやがる、なんて言う風に月乃が騒ぐのを輪廻がいいから、サッサととっちめて来いなんて言う風に言ったため、月乃と春しぶしぶフィールドに向かった。
 戦力で言えば月乃と春の方が数的に有利なはずだが、対戦相手の少年……オレンジがかった茶髪に、透き通った橙の瞳の少年、風蓮 要(フウレン カナメ)はいかにも余裕だと言うようにぱらぱらと本を捲っていた。服装は琉華と殆ど同じもので違いといえばズボンが半ズボンだということぐらいであろうか? 前髪はサイドで二つに分けて金色のピンで留めていた。
 「お初にお目にかかります姫様。ボクは風蓮 要、と申しますのです、どうぞ宜しくなのですよ」
 フィールドに現れた月乃と春に対し要はやんわりと笑みを浮かべてそう言った。あまりのよゆうっぷりにイラついたのか、普段温厚な春までもが「つっきー、あいつ潰そう。徹底的に」なんて言う風に言っていた。月乃もその言葉にあっさり頷いてやる気満々。結局潰しにかかる理由はむかつくから。……子供など総じて単純なものである。
 審判の声が響くと同時に動き出したのは春であった。目にも留まらぬ速さでいくつもの魔方陣を展開し、さらさらと呪文を紡ぐ。低い地響きと共にいくつもの木が姿を現した。
 「大いなる大地、原初神ガイアよ、我が魔力を糧に力を与えたまえ!!」
 それを見た要は僅かに首を傾げた後、手に持っていた本の一文を静かに指でなぞった。要がなぞった文字は赤い光を発し、ユラユラと要の周りを漂っている。静かな、それでいてはっきりとした声で「燃やせよ炎、全ては大いなる炎と鍛冶の神、へパイストスの力のもとに」と呟けば一瞬にして現れた木は焼き払われてしまう。春の方もあくまで要の属性を調べるために出しただけのようで抵抗するような素振りも、慌てるような素振りも見せない。
 「つっきー、なんか分かった? 春的には多分炎属性だと思うのだけど」
 春が手を要にむけながら言う。月乃は小さく首を振り「いや……妙だよ。コイツ春ちゃんの出した木々を燃やすほどの魔法を発動するほど魔力を作ってない……。呪文の形式もCランク以下しか使わない補強用のものに近いよ」と言った。小さな声で「何者だよ」なんて言う風に呟くのは蓮に回復してもらって、のんびりと見学中の琉華である。

 「……貫け光よ、大いなる光の女神、アグライアの名のもとに」
 再び要が本の一文を指でなぞる。それとほぼ同時に文字がまばゆい光を発して、要を取り巻く。そして次の瞬間には光線となって春と月乃を襲った。慌てて月乃の出した盾に防がれるも、目潰しにはちょうど良かったようだ。春も月乃もしばらくは何も見えなかったようである。
 再び、ほんの一文を指でなぞろうとしたとき、月乃が叫ぶ。酷く冷静さの欠ける声で「お前何者だ!? Sランクに光属性と炎属性の両方を持った奴がいるなんて聞いていない」と。それを聞いた要は薄笑いを浮べて、腰に手を当てる。それは挑発……まだ分からないのか? とでも言うかのように月乃たちを嘲笑う。嘲笑いながら、月乃と春の目が回復するのを待つのは隙を突いたりするつもりはないのか、ただの自分は単発属性ではないということを証明するためのデモンストレーションのつもりだったのか……。
 フウッと要がため息をつけば本が何ページか勝手に捲れた。また一文をなぞる要を見て今度は春が叫ぶ。月乃とは違う伝えるための言葉ではないもの。……呪文である。一言、言葉を紡いでいくのと同時に幾重にも魔方陣が展開されていく。それを見た要は誰に向けるわけでもなく、あんなに多重に魔方陣を使ったら魔力の消耗が半端ないだろうにと呟いた。
 「さぁて、一応正体を明かしておきましょうか? Sランク唯一の魔道書使い、なのです」
 発動されたのは無数の蔓が自然に関する様々な属性、主に水と光を纏って襲い掛かってくるものであった。単純な術式だな、要はそう判断して呪文も唱えずに魔法を発動させた。叩き落される蔓が朽ちるのを見た後、ポンッと自らの持っている本と叩いた。
 魔道書使い……これは多くの場合が魔力を作るのが苦手、もしくは何らかの理由で魔力を作れないものがなるものである。だからと言ってそのような人間なら誰でも慣れるわけでもなく、その物体に込められた魔力を上手くコントロールする才能が必要となってくる。多くの場合は専用の魔道書を使うものが多い。本来この手のものが使う魔道書というのは、属性ごとに魔法名と発動方法、呪文が並べられているもので、発動方法を実行しなければ、上手く制御することは出来ない。しかし、要は発動方法の部分をすっ飛ばして魔法を制御しているのだ。
 本来そのようなことは出来ないはずであるが、要は違う。事実、春が現せた木も魔道書の文字をなぞって呪文を唱えただけである。そんなもので魔道書から発動する魔法が制御できるわけがない。要は物質に宿った魔力の引き出し、コントロールすることに非常に長けていた。それ故に魔法使い最弱といわれる魔道書使いでありながら、Sランクに身を置いていた。他にも魔道書使いも属性に縛られてしまう。普通の魔法使いのように三つまで、なんて言う制限では無いが、必ず使えない属性が出てきてしまうのだ。要にはそれがない。魔道書に載っている属性ならば全てを扱えてしまう。それ故に人々は要のことを天才魔道書使いと呼び、それなりに敬意を払っていた。

Re: MIRAGE ( No.13 )
日時: 2011/06/18 15:38
名前: 霧月 蓮 ◆BkB1ZYxv.6 (ID: EdkNSjYc)

第七話 誤解時々天才

 「はは……なるほど。通りで魔方陣を展開したりしないわけだ」
 吐き捨てる様に月乃が言う。要を捉えるその目は鋭く、獲物を狙う鷹のようだった。要が僅かに苦笑いを浮かべ小さく頷いたかと思えば、再び魔道書が一人でに捲れ始める。月乃はすばやい動作でポケットから小さな黒い棒を取り出して声を上げる。規定に沿って印を結ぶと同時に琉華が僅かに顔を顰め「あのお嬢が使ってるの、強制暴走の術式をアレンジした強化術式……ですね」と横に無表情で立っている蓮に向かって言う。
 「ああ。恐らくは暴走する恐れがあるから杖を使うのだろうな。黒いの形式は配布される物と違うが杖だ」
 平坦な口調でそう言い、手に持っていた携帯に視線を移す蓮。どうやら先ほど龍菜が起した問題の処理が続いているようである。それでも直接出向かなくていいだけましだ、そう自分に言い聞かせて淡々とメールでの報告をこなしていく。琉華も手伝うといったのだが、実は琉華、機械全般が苦手である。琉華が触れた機械は冷蔵庫、レンジ、テレビを除いては全て壊れてしまうのだから、メールでの報告を琉華にやらせれば仕事が増えるだけである。
 「要もそろそろ本気を出すでしょうかね」
 すっかり話し言葉を業務的なものに戻せば琉華がそういう。僅かに顔を上げた蓮に「気持ち悪いから俺といるときはタメ」といわれて小さく手を上げた。
 「大いなるオリンポスの神、破壊をつかさどるアレスよ、我に力を」
 凄まじい風があたりを吹き渡った。普段魔法の発動ぐらいでは反応を見せない蓮でさえもが驚いたように顔を上げて、フィールドを凝視。要を中心として君が悪いくらいの魔力が渦巻いていた。蓮も魔道書使いが渦巻くほどの魔力を放出することは知らない。縫いとめられたかのように、ただただ呆然と要を見つめる。ただでさえ、蓮と要は仕事上でパートナーを組むことはないのだ、お互いがどのように魔法を使うかなんてほぼ知らないに近かった。分かっていたのはただの魔法使いだということ、ただそれだけ。
 「おい……やばいぞ。要の奴お姫たちを本気で潰す気だ」
 琉華が声を上げた。蓮はあわてたかのように右手を振り上げ声を上げる。「大いなる最高神ゼウスよ、今わが魔力を糧に守護の力を授けたまえ!!」と。本来その魔法にあった神や精霊に力を借りるべきなのであるが、今回は最高神ゼウスに力を借りた方が早いと考えての行動だった。強引に術式を構成して、客席全体に防御壁を作り上げる。
 「姫のほうは何とかなるだろう。いざとなったらリミットを発動しろ」
 蓮はそう指示を出して優希の方へと駆けていく。優希たちとはまだ面識は無いがとりあえずこの場では王族の保護が優先だ、特に後を継ぐ可能性が高い王子達は、そう考えて走る足を速める。

 瞬間、ガクンと空間が揺らいだ。足元が大きく揺らいだことでバランスを崩して蓮は転倒した。それは月乃や春も同じことである。要はニコリと笑って次々と呪文を紡いでいた。おかしいと小さく呟いて琉華は要の様子を眺める。僅かに濁った瞳と不自然な風……そこで琉華は蓮を引き止めるべく声を張り上げた。
 「止まれ蓮!! 狙いはお姫じゃない、お前だ!!」
 魔法使いは広範囲に魔法を施すとき、その術式の難易度によって自分の防御が手薄になる。現在の蓮のように馬鹿広い会場の観客席全体を守るような術式を発動すれば余計であった。蓮は防御壁の向こうにいるから平気なようにも思えるが、実際のところ防御壁は指定された物を守るためにしか作動しない。つまりは蓮が“自分以外の観客達”と設定してしまえば蓮の防御は何もないと考えても問題ない。
 勿論蓮の場合地位が、地位なため対魔法装備も強力な物を使っていた。しかし完全に魔法をシャットダウンできるかといわれれば、答えは否である。必ず取りこぼしが出るし、運が悪ければ威力さえ弱めることが出来ずにそのまま魔法を食らってしまうこともあった。
 要は笑みを歪め、蓮のいる方に手を向けて、何かを呟いた。琉華のいる位置からではよく分からなかったが、きっと“殺す”ための術式であろう。咄嗟に琉華は魔方陣を描き始める。他の魔法使いに比べて描くスピードも速い、しかし要は呪文だけで魔法を発動してしまうのだ、どう頑張ったところで適うはずがない。
 「っ!?」
 光が炸裂した。思わず息をのみ蓮の方を凝視する琉華。琉華は蓮と組んで仕事をすることも多かったため蓮の弱いところをよく知っている。気付いていないときの奇襲なんて言うのはもっての他だった。大体蓮は一つのことに目を向ければ他の事が目に入らなくなるような奴である。それ故に、何度も大怪我をしているし死に掛けたことだってある。そんなことが起こらない様にする、それが琉華が蓮と共に動く理由の一つだった。
 フッと煙が霧散して消えた。煙なのだから消えるのは当然なのだが、一瞬にしてまるで何事もなかったかのように消え失せた。そこに立っているのは長い髪の毛を風に靡かせた蓮の姿。どうにか間に合ったかと安堵の息を吐いて蓮に駆け寄る。その際きちんと要につけてある首輪……リミットを作動させる琉華。
 リミットというのは強制的に力をCランク程度の物まで下げる物で、別名は首輪。Aランク以上のものには必ずつけられていた。発動については任意であるが、暴走を感知した場合は勝手に作動することもある。勿論他者の手で強制的に作動することも可能であった。
 一瞬にして攻撃を防御する魔法を展開した蓮を見て近くにいた人々は言う「彼こそが天才魔法使い、か」と……。


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