ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 妖センチメンタル
- 日時: 2010/06/14 17:50
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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未熟者っすが、どうぞよろしく(@_@;)
──これは、ぼくが笑わない鬼嵜さんを笑わす話……じゃあないよな。
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- Re: 妖センチメンタル ( No.14 )
- 日時: 2010/06/19 16:34
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
ちょい上げ
- Re: 妖センチメンタル ( No.15 )
- 日時: 2010/06/19 16:47
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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テストが終わった。
一応、今日は午前授業でテストだけ。
昼前には全員部活無しで帰る事になる。
言っておくが、ぼくは勉強はできない。 頭は良いけれど。
そんな言い訳を頭でしながら、鬼嵜の方を見る。
………ってあれ??
いないんだけど、いないんだけどおっ!!
まだ先生の話終わってないのに、お帰りになった?
テスト終わったらソソクサと教室出て行くから、トイレかなとは思ったけど。
号令の後、ぼくも一人で教室から出る。
早めに出たから、靴箱には誰も居ない。
…………はずなのに。
「遅い」 「………」
鬼嵜が居た。
靴箱で、ぼくを見ている。
「鬼嵜……帰って無かったのか?」
「お前に、頼みごとがあったから」
ぼくに? 頼みごと?
こういうシチュエーションは、女子が好きな男子に想いを伝えるラヴラヴ的妄想の塊みたいな感じだけど。
違うらしい。 チッ。
鬼嵜は。
ぼくに近寄って、金色の瞳を光らせ、言った。
「私に、“笑顔” を教えてくれ」
……。
………。
いや、笑えばいいんだけじゃん。
「は?」 「笑わせて欲しい。 私を」 「……笑えば、いいんじゃない?」 「それが出来ないんだ」
何を言うかと思ったら。
「笑わせてくれ」、だと!?
笑いのセンスの一欠けらもないぼくが。
「えっと……んじゃ、笑えよ」
「そういう意味じゃなく、“楽しい” という気持ちを教えて欲しい」
「はいい?」
ますます意味不明だ。
楽しいを分からせろって……無茶だろ。
「いや、人それぞれだろ、そういうのは」
「お願いだ。 私はまだ、“完全” じゃないっ」
鬼嵜はそう言って。
ぼくの胸倉を掴んだ。
「私は、“人間” になりたいんだ」
「………え?」
どういう意味だ?
そう聞こうと思った時。
「テル殿、私からもお願いしますのよ」
「白刃……」
白刃が靴箱の影から姿を現した。
天真爛漫な笑顔ではなく、どこか暗い表情で。
「テル殿……こう言っては信じてもらえないかもしれませんが……」
「なんだよ。 言ってみろよ」
言いにくそうな白刃。
何度か指でスカートをいじった後、彼女は。
白刃 季節は、こう言った。
「私たち、人間じゃありませんのよ」
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- Re: 妖センチメンタル ( No.16 )
- 日時: 2010/06/20 09:26
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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むかーしむかし。 今から数百年ほど前。
ぼくらの住むこのちっせー田舎町に、鬼が住んでいた。
鬼たちは、人の負から生まれた 「影鬼」 という狂気に満ちた妖怪を倒す為、鬼嵜家を始めとし、白刃、零国、愁乱、奏磨の五つの鬼の一族で戦いを挑んだ。
……らしい。
その五家のトップである、純血の鬼の一族、鬼嵜家で、女鬼が人と交わり、子供を宿した。
純血の鬼である血筋に、人の血が交わってはいつかは鬼の血は途絶える。
それを恐れた鬼嵜家の鬼たちは、
女鬼を、虐殺した。
しかし。 違ったのだ。
女鬼は、自らの赤子を、その他の四家に託していた。
赤子はその四家の一族に大切に匿われ、鬼の血も引いている事から、数百年の時を眠って過ごした。
赤子の姿で。
「その殺された女鬼の名は、タヅク。 鬼嵜の生まれで、由緒正しきお嬢様なのですのよ」
そして。
「そのタヅクが必死で四家に託した赤子が……、和笑なのでしてよ」
「はい、ストップ」
靴箱じゃアレだったから、近くのファミレスに移動したわけだけど。
続けようとする白刃は不満そうな顔で口を閉じた。
「なんですの」
「えっと、待てよ。 そうなら鬼嵜は数百年前から生きていて、鬼の血を半分引いている……って事になるぞ?」
「そう言いましたのよ」
しれっと言ってくれるな白刃。
いきなり鬼とか言われても。
ぼくのイメージの鬼って、赤色でしましまのパンツ履いてるイメージがっ。
鬼嵜はさっきから普通に……表情一つ変えずに、アイスティーを飲んでる。
「え……、マジで?」
「マジマジ大マジでしてよ? 和笑の瞳が金色だとおっしゃっていたのは、テル殿ですのよ?」
言って。
思い出した。
金色だ。 鬼嵜の目が、金色だ。
そう言えば。
鬼嵜の目を見た時、動けなかった。
あれ、一時的な驚きのせいかと思ったけど、違ったのだ。
「……信じてくれないのなら、別にいい」
鬼嵜は静かに言って、ぼくを見た。
……あれ?
目が、黒色だ。
「ただ、お前なら……他の人間とは違う気がした」
「和笑……」
鬼、なんて。
居るワケない。
だけど。
だけど。
それじゃあこの二人は何者だっていうんだ。
「信じられないのなら、証拠を見せましてよ」
白刃はニッと笑って、フォークで手を貫いた。
「は?」 「静かになさって」
思わず大声をあげてしまった。
血が流れる。
フォークを抜き、血をナプキンで拭きとる。
傷口をマジマジと見てしまった。
「おい、大丈夫なのかよ」
「心配なさらなくて結構でしてよ」
白刃は平然としていた。
そして、ぼくの心配は無駄になった。
まるで、三日間の植物の成長を早送りしたかのような、傷口の治り。
血はついているが、完全に塞がった。
「マジで……」
「私はただの先祖返り。 白刃家の鬼の血が返っただけの器ですの。 でも、和笑は純血なる鬼と人の子。 怪我の治り具合も、寿命も、私とは比べ物にならないのですわ」
鬼嵜 和笑は、人じゃない。
白刃 季節も。
「なんで、ぼくに話したんだ?」
鬼だなんて。
信じられないような話を。
「お前だけだ。 私の目を、キレイだと言ってくれたのは」
「…………」
この野郎ォォォッ。
なんか、ちょっ、なんか可愛いんですけど!!
相変わらずの能面だけど!!
「………わーったよ」
しょうがないじゃないか。
可哀想な鬼さんに、笑顔を取り戻すくらい容易い。
「用は、鬼嵜。 お前に楽しいと思わせればいいんだろ?」
「ああ」
「いいぜ。 覚悟しとけ」
「さすがですわ、テル殿! 女々しい顔立ちだけど男らしいギャップに萌えを感じましてよっ」
何故か白刃が飛びついてきた。
………まあいいか。
- Re: 妖センチメンタル ( No.17 )
- 日時: 2010/06/20 16:34
- 名前: 風水 (ID: PA3b2Hh4)
鬼の歴史は深い……。
和笑、かなり辛そうですね(-_-)
鬼と人の子だからでしょうか…
- Re: 妖センチメンタル ( No.18 )
- 日時: 2010/06/22 17:25
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれません。
和笑は今まで、何を見てきたのかをちょっとずつ
書いて行きます(>_<)