ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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Time
日時: 2010/08/27 17:58
名前: おはる (ID: fqLv/Uya)



初投稿となります、
どうもおはるです。

他の掲示板で小説を書いておりますため、
更新が遅れる事があります;;
ご了承ください;;

この物語のジャンルはファンタジーとなっております。苦手な方は、お読みいただかないようお願いいたします。

初心者なので至らない所は色々とあるかと思いますが、読んでいただけると幸いです;;

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Re: Time ( No.12 )
日時: 2010/09/13 18:24
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*11

 シエル王国までの道のりは長い。しかし、私達は野宿する道具も持っていなければ、食料も持っていなかった。
 三時間ほど歩いて、私達は道の端に座り、休憩をとっていた。

「……ねぇ、シエル王国って、あとどれぐらい歩けばつくの?」

 返ってくる答えが少し怖いが、私は問う。

「このペースで行けば三日ぐらいだ」

 カイトが腕を組み、目をつぶりながらつぶやく。
 ……私は頭を抱えてため息をついた。

「……仕方ないわね」

 私は立ち上がり、三人を見下ろす。

「テレポートするわよ」
「え? テレポート?」

 ユリカが少し驚いた表情をして言う。

「そう。……でも、テレポートはさっきの瞬間移動みたいなのとはちょっと違うの」
「テレポートと瞬間移動って何が違うんだ?」
「移動する速さとか色々あるけど、簡単に言うとテレポートは遠くに飛ぶ時に使い魔法で、瞬間移動は近くに移動する時に使う魔法ね。今回の場合は遠い場所に飛ぶからテレポートを使うのよ」

 へー、とレンとユリカは感心したように言う。

「だけど、テレポートにはその行き先がどんな所だがイメージしないと行けないの」
「イメージ?」
「そう。たとえば、城に飛んでいくならその城の外装とか……」

 そういうと、ユリカが「それなら」と腰についている小さなバッグをあさりだした。

「はい、これ」

 そう言って私に差し出したのはシエル王国のパンフレット。正確にいえば、旅行のパンフレットだ。
 そこには、城の外装、観光スポットなどの写真が載っていた。

「……うん。これぐらい資料があれば何とかテレポート出来るかもしれない」
「出来るだけ人気の少ない所にテレポートした方が良い。……魔法の事がばれると厄介だ」

 カイトの言葉に私はうなずく。
 
「じゃあ、どこにテレポートすれば良いかしら」
「……教会はどうだ? 人気は少ないだろう」

 カイトの言葉を聞き、私はパンフレットの中から教会の写真を探す。
 あった。普通の教会だ。

「それじゃあ、ここに飛びましょう。……数人でテレポートするのはあまりやった事ないから不安だけれど……。とりあえず、皆、私の近くに寄って」
「……そういえば、何でお前パンフレット何か持ってたんだ?」

 レンがユリカに質問をする。

「さっき、城に向かう時に無料で配布されてたから、もらったの」
「ふぅん」
「まぁ、それが役に立ったわね。……それじゃあ、テレポートするわよ」

 皆がうなずいたのを確認し、私はゆっくりと目を閉じ——指を鳴らした。

Re: Time ( No.13 )
日時: 2010/09/15 21:34
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*12

 どん、と私は芝生の上に尻もちをついた。
 あたりを見回し、他の三人がいる事を確認する。立ち上がり、もう一度周りを見回した。
 人の気配はない。教会以外には、木や草しか見えなかった。
 
「……テレポートできたのか?」

 立ちあがって、イクトが言う。

「そうみたいね。パンフレットで見た通りの教会だわ」

 その時、教会の扉が開いた。レンとユリカが慌てて立つ。
 教会から出てきたのは、金髪のロングヘアのシスターだった。

「……どちら様でしょうか? 何か、教会に用でも?」
「あ、いえ……。そういうわけではないのですが……」
「道に迷ってしまったのです。シエル王国というのは、ここであっているのでしょうか」

 言葉に詰まった私の代わりにイクトが言う。

「確かに、ここはシエル王国です。城下町に行きたいのなら、そこの道を道なりに進んでいけば行けると思いますが……」

 シスターはそういうと、私の後ろ側を指差す。
 私は後ろに振り向く。小さくだが、確かにそこには道が見えた。無駄に教会の敷地内が広いな、と少し思う。

「ありがとうございます。それでは……」
「いえ。……あの、一つ良いでしょうか」

 なんですか、と私は問う。

「……あなた、少し顔に見覚えがある気がするんです。どこかで、会いました?」
「いいえ。あっていません。人違いでは?」

 私は即答をする。
 一応、私は「姫」という立場だ。かなりの間、人前には出ていなかったが、やはり顔を覚えている人はいるらしい。

「——人違いですか。申し訳ありません」
「いいえ。……それでは」

 私はそういうと、足を進めた。

Re: Time ( No.14 )
日時: 2010/09/20 18:47
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*13

 賑やかな、普通の城下町だった。人々は普通に生活をしていて……。

「……この人達は、知っているんでしょう? この世界の時が止まっているという事を」
「たぶんな」

 カイトが短くそう言う。
 時が止まっているという事を知っていて、なお……普通に生活ができるなんて……。

「お前は力も権力も持ってる。だから、そんな事を思えるんだろう。だが、無力な国民達にはそれを知ることができても、救う事はできない。何もできない。……普通に、日常を過ごすことしかできない」

 私は口を閉じる。
 無力、か。

「……とりあえず、城に向かえば良いのか?」

 レンが言う。

「分からない……が、行く価値はあるだろう」
「それじゃあ、城に向かってレッツゴー!」

 テンションが高いな、と私はほほ笑んだ。

*

 数十分、道をまっすぐに歩くと、城にたどり着いた。特に特徴もない、普通の城だった。
 入口の兵士が、私達に話しかける。

「何の用でしょうか」

 何の用と言われても困るな……。

「何の用っていうか……王様に会わせてほしいんだけど……」

 ユリカの言葉に、兵士は首をかしげる。

「何の用もないのにですか?」
「うん」
「……それは無理なお願いですね」

 そりゃそうだろう、と私は思うが、ここで食い下がるわけにはいかない。

「そこを何とか——」

 そう私が言いかけた時——

「侵入者だ! 城に侵入者が……!」

 城の敷地内から、兵士であろう人物の叫び声が聞こえてきた。

「申し訳ありませんが、ここで待っていてください」

 早口に兵士はそういうと、門を開け、城の中へと走っていく。

「……」
 
 私は、開けっぱなしの門に手をかけた。

「行きますか!」

 ユリカの言葉に、私はうなずいた。

Re: Time ( No.15 )
日時: 2010/10/14 22:30
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*14

 城に一歩足を踏み入れた瞬間、私の目の前で一人の人物の足が止まった。彼は持っているナイフを私に向け、

「動くな! さっさと、この城から出ていけ!」
 
 私は苦笑する。
 こいつが、賊か……。
 もちろん、まだ他にもいるだろうが、彼が族の一人ということには間違いはないだろう。
 私の後ろにいるカイト達に、私は言う。

「ここは私がどうにかするから、あんたらは他の所に行ってきなさい」
「りょーかい!」

 レンとユリカは同時にそう叫ぶと、結構な素早さでどこかへ走っていく。

「ま、待て!」
「あんたの相手は私よ? ……カイト、あんたもさっさと行きなさい」
「……」
 
 カイトは無言で走り出した。

「き、貴様……!」
「……どうでも良いけどさ。動くな、って言ってるのに、早く出て行けって言われてもねぇ……」
「黙れ!」

 私は深いため息をつく。

「女だからと言って、容赦はしないぞ!」

 賊が、私にナイフを突き刺してくる。
 私は横跳びをし、攻撃をかわすと、手のひらを彼に向け、

「男女差別なんか、しなくて結構」

 刹那、賊の体が一瞬にして壁に突きつけられる。

「ぐぁ!」

 私は腕を右へと勢いよく振った。私の腕の動きと同じく、賊の体も右の壁へと勢いよくぶつかり、地面に落ちる。
 賊に意識がないのを確認し、私は歩きだす。

「……やっぱり、まだちょっとコントロールに慣れてないわね……。魔法を使うのも、数年ぶりだものね」

 独り言をつぶやきながら、次の獲物となる賊を探し始めた。

Re: Time ( No.16 )
日時: 2010/10/26 20:48
名前: おはる (ID: hjs3.iQ/)

*15

 しばらく歩くと、再び賊と出会った。瞬殺した。——といっても、殺したわけではないのだが。
 ばん、という銃声が聞こえた。この廊下の奥の方からだ。
 私は小走りで廊下を走った。ちょうど角を曲がると、血を流して倒れている賊と、そこに立っている女性——ユリカがいた。
 ユリカは私に気付くと、振り返り、ほほ笑んでこちらを見る。

「あ、リーナ様」
「……殺したの?」
「さぁ……。死んでいると確認したわけではないので、何とも……。まぁ、致命傷は負ったと思いますよ」

 一瞬、他人かと思った。
 あんなにも明るい女性が、銃を持ち、戦闘態勢になると……まるで別人——いや、別人だ。

「あぁ、もしかして私が別人みたいって驚いていますか?」

 私は何も言えない。

「私は私ですよ! ——さ、他の二人を探しに行きましょー!」

 いつもの口調でユリカはそういうと、私の腕を掴んで廊下を走りだした。
 今の口調は、彼女が自然に口から出た言葉なのか。それとも、私に気を遣って……。
 私は首を左右に軽く振った。
 どうでも良いじゃないか、そんな事。今、私の目の前にいるのは、間違いなくユリカという人物。それに、間違いや狂いはないのだから。

*

「……終わりか?」

 手についた返り血を彼はなめた。彼の口に、鉄分の味が広がる。
 
「ったく……。今時、賊かよ……。兵士達仕事しろよ」
「弱い兵士達を集めても意味がないだろう。この城の兵士達は、一人一人の力が弱いのだろう。……というか、お前達は戦闘となるといつも雰囲気が変わるな」
「え? 何、俺の事?」

 レンが自分を指差して不思議そうに言う。

「お前とユリカの事だ。……だいぶ雰囲気が変わる気がする」
「そうか? ……まぁ、戦闘って言ったら殺し合いなわけだから……それなりに真剣にはならないとな」

 その時、部屋の扉が勢いよく開いた。
 二人の視線が素早く動く。

「あ、いた!」
「……何だ、ユリカか」
「っと、結構ショッキングな風景だね……。——あ、リーナ様はちょっとそこで待っていてください!」

 彼らの周りには、血を流して倒れている賊が何人もいた。

「こいつら、いきなり集団で襲いかかってきたんだ。まいっちゃうよなぁ、もう」
「……行くぞ。運よく、王に会えるかもしれん」
「はいはーい」

 やる気のなさそうな声を上げ、レンは廊下へと飛び出した。


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