ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

回転と僕
日時: 2010/09/13 08:07
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: lD2cco6.)

回転と僕



バンド青春小説ではない。
ちょっと壊れた愛がある。




目次

登場人物紹介(たまに更新) >>12

第一章
プロローグ 回転と僕 >>1
第一話 エルレガーデン>>3>>5>>6
第二話 三年後>>7
第三話 出会いの始まり①>>8
第四話 出会いの始まり②>>9
第五話 出会いの終わり①>>10
第六話 出会いの終わり②>>11

第二章
第七話 恋?>>13



Page:1 2 3



Re: 回転と僕 ( No.11 )
日時: 2010/09/11 20:55
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: lD2cco6.)

第六話  出会いの終わり −②



 「んじゃ、セッションといきますかー」

 桜崎は妙に楽しそうだった。目の前にはパイプイスに座った和義さんがいる。その視線は温かい。
 桜崎を挟んで反対側に、宮木がいる。宮木はベース触りながら、やはり不気味な体勢でベースを構えていた。
 ヒメは、ドラムの前座り無表情でスティックをスティックで叩いていた。
 まじまじと見てみると、なかなかの美少女であると分かる。金髪じゃなくて、黒髪だったら良かったのにと少し思っていると、ヒメと目が合った。
 しかしヒメの方から視線を外し、8ビートを刻み始めた。

 そして宮木が入る。次に桜崎。
 負けてられない——。僕も入る。


 僕の目の前に、一点の光も無い暗闇が広がる。
 空間すべてに桜崎の声が広がって——いや、空間そのものが音と化し、前も後ろも横も、東西南北すべて分からない。
 しかし、僕は確かに音を刻む。それはまるで時を刻むように、せわしなく、力強く。感覚が麻痺するほどの爆音。僕のすべてを狂わせ、やがて冷静にさせる。
 僕の心は、驚くほど穏やかで、静かだった。でも刻まれる音は、すべてを飲み込む狂気に変わっている。なんて心地良いんだろう。
 これが、僕ら始めてのバンド演奏だった。


 僕は彼らを見た。
 誰も、誰も目を合わせようとはしなかった。気付いた。気付かれた。気付かせてしまった。
 僕という人間のすべてを、赤裸々に音に乗せた。
 生々しいほどに。

 「あんたさぁ、名前、なんていうんだっけ」

 そう声を発したのは、ヒメだった。名前は先ほど耳にしたはずだと思うが、改めて聞く、という感じだった。僕は呼吸が乱れたままの声で、応えた。

 「吉川、春臣」

 そういうと、ヒメは険しい表情を崩さないまま、

 「吉川、ね。私は霜月ヒメ。こんなナリだけど17歳」

 年上、という事実には驚いた。しかし仮に27歳だ、というわれても、驚きの度量はさほど変わらないだろう。
 そしてヒメは、険しい表情を一変させ、微笑した。そして言った。

 「こんな最低なバンド演奏、聴いたことない。面白くなりそう」

 それはここにいる全員が感じていた事だった。
 それは相性が悪い、などという生ぬるいものを遥かに超え、生理的な拒絶さえ感じるほどの、濁っていて、理解不能な、四人のハーモニーだった。

 「ヒメの笑顔なんて、久しぶりに見たなあ」

 そういって和義さんは、嬉しそうに笑った。

Re: 回転と僕 ( No.12 )
日時: 2010/09/11 22:47
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: lD2cco6.)

■登場人物紹介


□主要人物

吉川 春臣 (ヨシカワ ハルオミ)
高1。基本落ち着いているが、考えが少しひねくれ気味。ギターをやる。
外見:身長170センチ。目は二重で、鼻が高いが、雰囲気が冴えない。黒髪で前髪が少し長い。筋トレを趣味としているため、ほどよく筋肉質。視力が良い。

霜月 ヒメ (シモヅキ ヒメ)
17歳。春臣や八雲の一つ年上だが、言動に思春期特有の羞恥心が無い。ドラムをやる。
外見:身長150センチ。金髪で、色白。細身。身体に刺青がある。まだ謎が多い。

桜崎 八雲(サクラザキ ヤクモ)
高1。春臣とは同じ高校。ひょうきん者で、愛想が良い。歌とギターをやる。
外見:身長168センチ。黒髪の中に所々茶色が混じる。前髪の部分が少し上に上がっている。タレ目でぱっちりしているが、一重。よく食べるため、がっちりとした体格。

宮木 秀平 (ミヤギ シュウヘイ)
外見:身長183センチ。胸の辺りまで伸びた黒髪は、常に顔を覆っている。姿勢が悪く、異常なほどの細身。

入江 和義 (イリエ カズヨシ)
44歳。ヒメの叔父。見た目とは裏腹に、優しく気さく。
外見:身長175センチ。ヒメと同じく金髪で、腕に迫力ある刺青をしている。少し色黒。腕は女性のウエストくらい盛り上がっている。目はヒメとよく似ていて、ぱっちりしている。が、かなり厳つい顔つき。


□その他

大助 (ダイスケ)
ライブハウスで働く店員。

Re: 回転と僕 ( No.13 )
日時: 2010/09/13 08:01
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: lD2cco6.)

第七話  恋?



 「ここ!ここ!ここ!ここ!ここで曲と一緒に歌もドーンと下げるっ!下げる感じで!なんかズドーンといきなり落下してその地点で前に進んでいく感じっ!そしてそこで俺が叫ぶ!希望も絶望も救出も言葉も存在しない、そんな小さな空間に足を動かし続ける者達、それが俺らだ!」
 「何言ってんだか分かんねえよ。つうかそんな曲ばかりじゃねえか…」

 昼休み。学校の屋上。天気は快晴。
 吉川春臣と桜崎八雲は、こうして時々一緒に昼食をし、ノート片手に曲作りに励む。
 励むといっても、その進行速度は不規則で、一週間で完成してしまう時もあれば一ヶ月もできていない時もある。
 それでも怒る人は誰もいないので、気軽に曲作りに励めているのだ。

 春臣と八雲の相性は悪くなかった。
 けして、とても良いという訳ではないが、春臣が心許せる相手の一人でもある。

 八雲は片手にコンビニエンスストアで買ったサンドウィッチを持ち、立ち上がって大きく背伸びをし、欠伸をするような声で言った。

 「俺らが出会って、もうすぐ二ヶ月だなー」

 季節は夏に近づく。こんな雲ひとつない快晴の日ともなると、肌にじわりと汗が滲むこともあった。

 「それがどうしたってんだ」

 春臣は心底どうでもよさそうに、紙パックのお茶のストローに口をつける。
 八雲は勢いよく振り向き、春臣の隣に座った。

 「あーもう別にどうしたとかねえっつの!二ヶ月だなーそうだなー早いなーこれからも頑張ろうなーって、流れだろうがっ!」
 「え、ああ、そうなのか。わり。うん、頑張ろう」

 八雲は満足げにため息をついて、空を見上げた。
 心地よい風が、二人の横を通り抜けた。耳から聞こえる、生徒達の眩い青い声。

 「なー」
 「なんだよ」
 「臣さあ」
 「何」
 「クラスの女子に告白されたんだって?」

 春臣は一瞬間を置いてから、驚愕した。

 「なんで知ってんだよ!」

 春臣の顔は少し紅潮していた。それを見た八雲は白けたような顔をして、深くため息をついた。

 「噂ってのは流れる為にあるんだぜ」

 お得意の意味不明な一言を発し、普通の男子高校生のように羨ましがった。

 放課後、人があまり通らない校舎の一角に呼ばれ、もしかしたらと思っていたら、案の定「告白」というものだった。
 吉川のこと、前から気になってたんだけど、良かったら付き合ってください。
 目の周りを真っ黒にして、極限までスカートをあげ、爪を伸ばし、髪をしきりに気にしていた。
 今時の、特に目立つ欠点のない、普通の女子だった。仮に春臣と付き合う事になっても、違和感はない。それこそ普通の高校生カップルに見える。

 悪い。今は誰とも付き合えない。ほんとごめん。でも気持ちは嬉しい。
 冷めた男、精一杯の気持ちで断った。

 「でさあ」

 しかしその後の一言は確実に余計だった。
 春臣自身も人生初めての「告られた」を身を持って体験し、少々パニックになっていたところもあったと自重している。しかしそれでも。あれは、ない。

 「好きな人がいるから無理ってどういうこと?」

 好きな人いるからさ、付き合えない。ごめん。
 そういうと彼女は早歩きで去っていった。良かった。上手く断れた。そう思ったのが最初だ。
 もちろん、断るときの決まり文句という他何者でもない。
 好きな女なんて、今のところ、存在しない。

 「いくらパニクってても、臣はそんなこと言わないだろって、俺は思ったんだけど」

 いない、いるなら気付かないはずがない。それは自分を冷静に分析しても尚いえることだ。
 春臣は、他人にも自身にも鋭い。鈍感さなんて欠片もありはしない。
 しかしなぜ、あんな言葉が口から出たのか、不思議でならなかった。
 考えて、考えて、考え抜いた末、この一言にたどり着く。

 「よ、欲求不満だな。お年頃ってやつでしょ」

 欲求不満。瞬時に自身に問いかける。なんの欲だ?何に対して?

 「はあ?じゃあ付き合っちゃえば良かったじゃん」

 仰る通り。春臣は恋愛というジャンルに対して、鈍感なのではなく疎いのかもしれない。そう思った途端、自身に対し虚しさを覚えた。

 「まあ、いっかー」

 面倒臭くなったのか、八雲はへらっと笑ってその話題は終了した。
 思わず、お前は霜月さんが好きなんだろう、と喉元まで出かけたが、なんとか飲み込んだ。

Re: 回転と僕 ( No.14 )
日時: 2010/09/17 23:12
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: lD2cco6.)

なんか全然シリアスじゃないなー。おっかしーな。

あげ。

Re: 回転と僕 ( No.15 )
日時: 2010/09/24 21:24
名前: 95 ◆/diO7RdLIQ (ID: lD2cco6.)

あげん!


Page:1 2 3



この掲示板は過去ログ化されています。