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ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜
日時: 2010/09/11 16:23
名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
参照: http://ameblo.jp/snowjack/

時間が取れたので小説の投稿を再開しようとした時にここを見つけました、無駄にキャリアだけはあるライトな新人です、よろしくです。

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Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.9 )
日時: 2010/09/16 22:27
名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)

 「あっ、やっと来てくれたね! ゆ〜き〜、暇つぶしが出来tぶごあっ!!!!」
 「あは、あはははは……」
 「誰も見学来てなかったのか……ダッシュで来たのに」
 「まあまあ美穂ちゃん、こんな後に来たのに優先的に出来ることに感謝しようよ」

 希苦笑い。迎えてくれたのは茶髪の快活な、いや快活だったが飛び道具で悶絶した(チョークが部室奥から射出された)女生徒。彼女のほか何人かは道着に名札をはってある。彼女は二年の『近衛有須』(このえありす)、背は低いが先輩としてのオーラが出た頼もしい人だ。

 「うぐう、まあこれは何時もの事で……うちは強い部だったんだけど、去年のごたごたで色々あって……とにかく、今年のインハイで結果を残さないと最悪二次元コードになるわけだから、非常に有難いのね」
 「は、はぁ……(どんな部なんだここ)」
 「だからだからっ、一発でもいいから撃っていって欲しいのねっ。よその強豪校は一年間弓にも触らせてもらえないとことかあるみたいだけどっ、うちは入る前から先輩のアシスト付きで撃てるからお得なのねっ!」
 「はぁ、そうなのね……じゃない、そうなんですかっ!?」

 そんなに語勢を荒げる必要はなかったのだが、先輩相手にその言葉づかいはさすがにまずかったとすぐに訂正する希。それを耳にして、先輩はますます笑顔になる。

 「礼儀正くて良い子が見学に来てくれたっ。ささ、二人とも道着に着替えてね」
 「「はい……」」

 言われるままに部室に案内され、別の先輩から道着の着用の仕方を教わる。やはり剣道に近い着付けの仕方で、上はともかく下はかなり手古摺(てこず)る。しっかり結ぶのには時間がかかった。

 「はいはい、それじゃあ次のステップに……」
 「ううう……恥ずかしいよぉ」
 「見てるこっちのセリフだよそれは……」

 美穂の言う通りだ。希の体格は女性用としては最大のサイズになる(男子用もあるがそれを異性間で使いあう行動は禁止されているらしい)。加えて胸の大きさが加わると足りないのである、サイズが。

 胴回りは少しゆとりがあるだけに何か新手の客引きになっている。希は鏡で見た自分の姿をぶんぶんと振り払う。それ以上突っ込むとセクハラになるので、有須はもう一人同級生の人を連れてきて四人で練習場へ向かう。

 「へぇ〜、広いですねぇ」
 「そりゃあ有る程度の距離が無いと存分に乱れ打ち出来ないね」
 「乱れ打ちって……これ的にちゃんと矢を当てる競技ですよね?」
 「のんちゃん、考えたら負け」

 早速肩慣らしに大量の矢をむんずと掴みかかる先輩を軽く無視する二人。まあそれはいっぺんに撃つ為ではなく二人のためだったみたいだが。いや、自分らの真っ当な視線が無かったらどうなっていた事か。

 「さてさてのんちゃん、何はともあれ射出してみよう」
 「う〜ん、まあ……じゃあ、お願いします」

 有須先輩は型を教え、その形状を保たせたまま希の後ろを支える。

 「おっ、実際見るより触った方が分かりやす」
 「ひゃうっ!!」

 かなり強く弓を引いていたせいか、いまのショックで矢がまっすぐに放たれ、見事に的の真ん中に矢が突き刺さった。

 「あ……ああああっ!!!!!!」
 「うぉう、私のハンドパワーがのんちゃんのおっぱいに作用した故とは言え初心者がこの距離から狙い撃ちかぁ……」
 「……………ん、美穂ちゃん、どう?」
「無理……何この弓かったい……」
 「まあこれは初心者にしては結構強く張ってるから……気にしないで」
 「み、美穂ちゃん……大丈夫だよっ、すぐ出来るようになるって」
 「どうせ私にはハンドパワーを受信できる高精度のアンテナはついてないですから」
 「「うぐっ……」」

 先輩二人が吐血しそうになっている。何だろうという思いより先に美穂の下らない話に赤面する希。

 「でもこれいいな……」
 「第一希望がここだってんだから教えとくけど、実際入部してくれたら年中弓ばっかり撃つってわけにはいかないよ。準備運動して、走って、イメトレして、」
 「気に入らない奴を狙撃するね」
 「んなわけあるか。そしてジェスチャーの構えの狙撃対象が私なのか有須」

 この人中々いい人だ。有須先輩の茶髪に対して春の草原を思わせる緑のつやつやした髪。日本人にもこんな色が似合うんだなぁと素直に感心させてくれる。

 「まあ半分は正解だけどね」
 「気に入らない奴を闇討ちするね」
 「はい0点。まあ結構他にもやるけど、合宿やったり他県の高校と親睦会やったり色々楽しいから、是非入部してくださいな。私は『小池夕貴』(こいけゆうき)、よろしくね」
 「旧姓は『如月夕貴』だけどね。ほら、以前大ヒットしたグループ『WISH』の月夜(つきや)さんの隠し子」
 「まあ、飲み会の席で一回くらい聞く話だから、別に隠す必要もないけど」
 「飲み会有るんですかっ!?」
 「「「そっちか」」」

 以前栄華を誇った5人組、ただリーダーが不治の病で脱退、その後ソロ活動にそれぞれ移行していったのは記憶に新しいところだ。月夜は双子の兄陽太(ようた)と歌手やら何やらやっているが、最近奥さんと破局したとか、そうか母方について行ったか。という話は置いといて。

 「それじゃあ、そろそろ時間なので……ってうわぁああああっ!!! 時計が止まってるよっ!!!」
 「美穂ちゃんに全部任せてたのにっ! 役立たずっ!!!!」
 「そんな理由で無能呼ばわりされたの初めてだよ。それじゃっ、私ら行きますんで!!」
 「あっ、それじゃあっ!」
 「また今度な〜」
 「また今度ね」

 深く一礼し、すたすたと道場を後にする。そして先輩の姿が見えなくなる……と。

 「「走れぇええええええっ!!!!!!!」」

Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.10 )
日時: 2010/09/17 20:19
名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)

 「ふう、危ないっ……じゃあ、私はあっちなんで、ばいばいのんちゃん」
 「うん、バイバイ」

 寮の前にはたくさんの人だかりが出来ていた。受付で名前を言うと何かカードを渡される。後で使うらしい。

 そう言えばさっき自分の時計は確認しなかったけど、全然時間は大丈夫だ。つまりは策士策に溺れると言うわけか。多分時間が余っていたらのんちゃんはのろのろしてただろうという美穂の読み。それに気づいて少し殺意が……もとい、悪意が芽生えた。

 「まあ、いいか……あっ」

 江藤小夏が居た。とても近寄りがたい雰囲気を醸し出しており事実周囲に認識されつつもそこだけぽっかり穴が開いていた。

 かといって自分もそこに行こうとは思わないけれど、その端正な顔立ちは希の目を釘付けにした。これで頭も良いのだから頭を下げる以外にない。何か冤罪でも謝ってしまいそうだ。

 (何か毒の強い人だな……ずっと見ていたいのに、見てはいけないようなそんな感じ)

 そう、彼女は自分にとって手の届かない人物だった。高嶺の花、そこにたどり着く道具も技術も自分にはない。

 『時間になりました、今から入寮式を始めます、しかし皆さん、この催しを退屈なものと思っていた事と思います』

 アナウンスの声はやたらと若い男の声。その声が続けた。

 『先程配ったカードに書かれたコードの部屋へ、入り口の地図を頼りに向かってください。入ってきた生徒の学生番号を備え付けのPCに打ち込むと、部屋の生徒の学生番号が全員分揃った時に入寮手続きが完成します、早く揃った部屋には景品があるので、皆さん頑張ってください』

 ……一部の生徒は足早に歩き出した。全員が我先にと駆け出してくれればこういうイベントも潤滑に回るのだけど、そうも言ってられないらしい。

 希も軽い気持ちで歩き出した。間違いなく最初にゴールなどできないだろうけど、ルームメイトにこういったイベントが好きな人がいると困る、そんな人に迷惑をかけたくはなかった。

 「素敵な出会いが待ってますように……」


 〜数十分後〜

Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.11 )
日時: 2010/09/18 07:24
名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)

 「わキャアァアアアアアアアーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 最悪あの学校並みに入り組んでいると思っていた希の期待は大幅に上書き修正させられる結末となった。何だこの寮、あらゆるところにトラップが仕掛けられている。

 先程は化け物に襲われて命からがら(希の相手の化け物はもっと命からがらな大怪我を負わされた)逃げてきた所だ。あんまり急ぎすぎて、何個かトラップを破壊している。

 「何、何なんだよぉ……きゃうっ!!!」
 「痛っ!! ……あ、やっと外れた!」

 希が縄に引っ掛かって盛大にすっ転び縄を引き裂いてしまったお陰で一人の女の子を助けてしまったらしい。死ぬほど痛そうな足を引きずり何とか彼女は立ちあがった。

 「すいません……おかげで助かりました」
 「いたたたた……いえ、こちらこそごめんなさい」

 黄色の長髪を一つに束ねた彼女は首からカメラを提げている。真面目そうな顔立ちだ。希は立ち上がって、落としてしまったカードを拾おうとすると彼女が頓狂な声を上げた。

 「そっ、それ私と同じ部屋っ!!」
 「え、そうなの?」
 「はい……もう場所の目星は付いてますので、一緒に行きませんか?」

 静かな笑顔で彼女は右手を差し伸べた。希はその手を取り握り返す。

 「私、椎名郁美(しいないくみ)って言います」
 「私は巫上希って言います、私方向音痴なんで、よろしくお願いします。で、実際どの辺ですか?」
 「あ、この角をまがった先ですよ」

 曲がった先には部屋がずっと並んでいて、一番手前の部屋のようだった。部屋の前には名簿が付いている。一人分だけ○が付いて……

 「『江藤小夏』っ!!!!???」
 「やばいです、早く入らないと殺され……ひゃうっ!!!!」

Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.12 )
日時: 2010/09/19 08:08
名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)

 吸盤付きのおもちゃの矢が希の額に命中し希はひっくり返った。
扉の先にはさっき使った弓を無造作に放り投げ両腕を組んだ女の子が仁王立ちしている。

 郁美と希の制服は灰色だが、彼女のは黒だった。そう言えば入学式の日のあの人も黒い制服を着ていたっけか。男女の差はあるものの、同じタイプの制服のようだ。

 「何はともあれ遅いっ!! 私は負けるのが嫌いなの、さっさと学生番号の入力済ませて!!!!」
 「猫かぶり……」
 「うるさいっ!」

 郁美の言い分は尤もだったが、この催しの趣旨から言って彼女の言い分も尤もだった。それでいて、この問答無用の絶対的上下関係。二人に残されている道は一つ。

 ちゃちゃっと学生番号を入力する二人。認証が済むと、ページが別のところへ飛んだ。真っ白で清潔なページ、その真ん中には『第一回新生生徒会会報』の文字。中を見てみると、とどのつまりは生徒会に入りませんか?の下りだ。

 小夏は右手の爪を噛んでいらいらいらいらしていた。寒い、さっきまでハードに運動していたはずなのに熱気も冷めてしまっている。

 「あのボンクラ、私たちに細かい雑用全部させてこんな下らない真似を……」
 「え、江藤さん……?」
 「別に小夏で良いからっ。とりあえず、各人の荷物を仕分けるよ」

 部屋の奥には各人の荷物と、朝送ってもらった希の漫画が置かれていた。途中まで袋から出され、裏返って積まれている。小夏が読んだみたいだ。

 ……と言う事に気がついて、希は青くなる。何か言われそうだ、いや間違いなく。結構好きな作品だけに、批判されるとかなり落ち込む、

 「あの……読んじゃいました、か……??」
 「ああ、それ貴方のか……別に普通。さ、早く自分の分を取り分けて」

 それで終わった。サバサバした人だ。その一言で全員が作業に取り掛かる。自分に同じ事は絶対にできそうにない。毅然とした振る舞い、それが今すべき事項であるから誰も文句は言わない。それを分かって彼女は動いている。

 優等生の仮面をかぶった唯我独尊な、それでいてやはり真面目な彼女。自分とは対極にある雲上人。

 「ところで……何で黒い制服着てるんですか?」
 「ああ、これか……この学園の高等部、既に生徒会に所属してる人間が何人かいてさ。その生徒会の生徒はこうして特別な服を着るわけ」

 小夏は用意していたかのように補足してくれた。この学校は規模など諸々の事情から生徒会が二つに分けられており、明確な規則は無いものの文化系部活動は白、体育系部活動は黒の生徒会に所属し、それに応じた制服を着る事になっている。

 当然どちらかの生徒会執行部に所属する以上制服も決定される。彼女は黒生徒会の一員と言う事だ。

 「まあ部活動の決定期間は来週からだし、今灰色の制服じゃない一年は生徒会か変人かどっちかってことだけどね」
 「はぁ……」

 そうこうしているうちに荷物を仕分けして、余った段ボールを紐でくくって立てかける。ベッドはあるのだけど、荷物置きに使っているので今夜はとりあえず横に三枚布団を敷いて寝ることにした。三人ともパジャマに着替え、小夏を真ん中に置いて、右に希、左に郁美。

 希が電気を消そうとすると、一つだけ余った机が妙に気になった。この部屋は四人部屋なのだ、だから机も四つ用意されているのだが……とても寂寞とした雰囲気。誰かもう一人くらい入ってきてくれないものだろうか。

 「それじゃ、消しますよっ」
 「にしても椎名さん、そのカメラどっかに置かないの?」
 「私の分身ですから、それに郁美で良いですよ、敬語も無しで」
 「うん……よろしく」

 希は布団に入りこみ、静かに眠りについた。どこまでも深い闇の中へ、底の届かない沼地に足を取られるようにゆっくりと、しかし確実に……

Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.13 )
日時: 2010/09/20 02:44
名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)

 『あれ、ここは……』
 「これで終わりだ……」
 「あんたに何が分かる、てっぺんでふんぞり返ったお前らに、末端の気持ちがわかってたまるか……いっ、嫌ぁああっ、どうして……私はまだ死にたくないっ!!!!」
 『嘘、美穂ちゃんっ……いや、止めてぇええっ……』

 荒涼とした、今はもう錆ついた外装の目立つ工場。希は地に這いつくばり、遠くで前進ぼろぼろの、何かで体を引き裂かれたような傷の入った高木美穂を見ていた。そして自分のすぐ斜め前には……短剣を手にした今朝の男子の姿が。

 何だこの状況、自分は何でここに這いつくばっているのかさえ分からない。全身には何の痛みも感じない。夢だからだろうか。だがそれでいて、体は全く動かなかった。

 どんなに動かそうとしても小指一本動かせない。両者のダメージから、こんな状況を見せられれば明らかに加害者と被害者など明らかだ。その手にした刃物が何に使われたのか、彼はまるで返り血を浴びてはいないものの、刀身にしっかりついた血が誰のかなど聞くまでもない。

 『美穂ちゃんを……』



 「美穂ちゃんを殺さないでぇええぇえええええええーーーーーーっ!!!!!!!!!」



 「はぁ、はぁ……っ!!!? こっ、小夏ちゃんっ!!!!!?????」
 「うぐ……っ」

 朝目が覚めると、希の胸がこれ以上ないくらい強烈な圧力で小夏を押しつぶしていたらしい。夢の内容に対抗しようとしてものすごい力を出してしまったらしい。そんな様子を郁美は呼吸を荒げて撮影していた。

カメラの光が連続しているから動画なのだろうけど……と朝のよく回らない頭でも今の状況がどういうものか二人とも瞬時に判断し、次の瞬間同時に。

 「「撮影ストォオオッップ!!!!!!!!」」


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