ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜
- 日時: 2010/09/11 16:23
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
- 参照: http://ameblo.jp/snowjack/
時間が取れたので小説の投稿を再開しようとした時にここを見つけました、無駄にキャリアだけはあるライトな新人です、よろしくです。
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.4 )
- 日時: 2010/09/11 22:09
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
「やっ、やばいよもう……すいませんっ、遅れましわきゃうっ!!!!」
彼女の他にも遅刻者はいたらしい。教室に飛び込んだ希は一番後ろの席に座ろうとしていた人に思いっきりぶつかって押し倒してしまった。
「いたたた……ごっ、ごめんなさい!!!」
「いや、良いんだけど……もしかして、巫上希さん?」
「あ、はい、そうですけど……あっ、すいませんいつまでもっ!!!」
希が押し倒したのは少しガラの悪そうな背の高い男の人で、そんな危険な香りのする人を自分は押しつぶしていたのだからそれはもうスーパーダッシュで離れると言うものだ。
「もしかしてさ……教室間違えてない?」
彼は外見に似合わない優しい声で後ろを指さす。そこには……しっかりと5組の文字が。彼女のクラスは6組なわけで、階段登って右か左かの差なのだけど、人間は左に曲がる方が得意なので。
だからってそりゃないだろとか言わないでほしい。と言うか何で新入生の彼が自分の名前とクラスを知っているのか……などと考えている暇は毛頭ない。
「あっ、あああああっ!!!!!!!」
希は立ち上がると埃を払ってまた走り出すのだった。数秒後廊下から彼女の頓狂な声が響いてくるのだが、まあそうでしょう。短距離をあんだけ加速すりゃあ。
「……まあ結構あれな人だとは思ってたけど」
「楽しそうだったな、あんた。んで……どんな感触?」
「初対面の名もなき人にそれを聞かれるってどうよ……」
彼は最前列の一番左の席に着くと、隣の奴にそんな事を言われた。首にはカメラをぶら下げている。撮影趣味の人ですか。
「おお、悪いな。俺、木口裕也(きぐちゆうや)、趣味は写撮(写真撮影の事)です、よろしくそしてあの希少種胸はどんな感触だっt」
「名乗れば良いってんじゃないの」
呆れ顔で彼は、クラス42人が全員灰色のブレザーを着ている中一人だけ漆黒のブレザーに身を包んだ彼は……思い出を反芻し少しだけにやけた。
「それはいいんだが……さっさと挨拶済ませろ、もう全員終わってるんだ、自己紹介」
「あ、はい……」
彼は教壇に上がる。ただでさえそのおっかない風貌に皆敬遠しがちだったのだが(下らない話をネタに食いついた裕也は別として)、さっきの一件で少し空気が和らいだらしい。
「あの、本来なら最初にあいさつしないといけないのですが……これから一年間、よろしくお願いします」
「5組1番、秋原珪(あきはらかい)です」
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.5 )
- 日時: 2010/09/13 00:53
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
にしても、この体育館は広い。普通科だけとは言え大体800人くらい居る一年を全員収容してまだまだ余裕があるって、式典以外でいつ使うんだこんなだだっ広い面積。館内で野球でもやるつもりか、などと自嘲気味に頬杖をついてみる。
とりあえずこんだけ高級感の漂う場所では妙に肩肘張ってしまい眠れるはずもないわけで、ただただ退屈な入学式を希は消化していた。
と言うかマジで辛い。睡眠薬と興奮剤を混ぜて作った自白剤を飲まされた犯罪者の気持ちが妙によくわかります。誰か助けてと希は隣をちらと見る。あ、寝てたこの人。
恐らくこの妙に緊張する学校でもこんな図太い人とはうまくやっていけそうな気がすると思っていたら壇上の偉そうな先生が降りた。次に進行のアナウンスが入り、一組の女生徒が登壇する。透き通った声で話しだす彼女。目が一発で醒めた。
「……として、新入生代表挨拶とさせていただきます。新入生代表、江藤小夏(えとうこなつ)」
(綺麗な人だなぁ……)
希は素直にそんな事を考えながら退屈な挨拶の時間を消費していた。つやのある黒いストレートの髪、ぱっちりした目、すらっとしたボディライン。
それに比べて……半年ほど前にわけあって止めたものの、小学生のころから続けていた柔道のせいか背も高いし全体的にがっちりした体格の自分。筋肉もそう簡単に落ちてはくれないし。
そう言えば最初は好きな男の子と仲良くなりたくて入ったものだ。その子とは結局ある試合で大勝してしまい背骨の骨を折ってしまって以来疎遠だけど。
「それでは新入生のみなさん、後ろから退席して下さい」
1〜20組の全員をしっかり収容できる体育館だが、ちゃんとした入口は一つしかないのでかなり脱出に時間がかかる。そんな時だった。
とんとんと肩をつく感触。希が振り返ると、あらかじめ用意されていた指にほっぺをつつかれて派手にほっぺが潰れた。
「あはははっ、流石は稀代の天然娘。1か月ぶりだね、のんちゃん」
「美穂、ちゃん……美穂ちゃんなの!?」
「うん、しっかし凄いよね、他県なのに会うなんて、のんちゃんの成績なら地元の有名な公立校受けると思ってたのにさ」
高田美穂(たかだみほ)、希と同じ中学校で、以前いじめられていた希を庇ってくれたたった一人の友達。自分が悪いのは分かっている、それでも彼女は守ってくれた。
そんな彼女とはもう会えないと思っていたのに、こんな偶然……
「嬉しい……誰もこっちに知り合いいないと思ってたから」
「う、うん……そ、そんなきらきらした目で見られると」
「ん?」
「あ、あの……恥ずかしい、と、言いますか……」
「ひゃうっ!!!」
何でしょうこのもわもわした感じ。多分この二人は同じ墓に入るのだろう。皆さん、お花は百合をお供えください。
「じゃっ、じゃあ! 私7組だから、また今度ね!!」
「あっ……」(と、そろそろ私も行かないとな)
最奥だったら後ろの生徒がほとんど抜けてしまってから出れば良いが、中途半端な位置でまごつくと非常に迷惑なことになるので自重しておく。
「さてさて、私も……っ」
振り返ると、二階の窓から太陽の光が差し込んできた。綺麗に磨かれたガラスの窓はこう言う時には害悪でしかないのだけれど。もう目に入るだけで暑いというかちくちくする。
「眩し……」
左手で光を防ごうとして歩みを止めてしまったら、後ろの人につかえてしまった。軽く謝って、少し早足で体育館を出た。
「きゃうっ!! ご、ごめんなさいっ!!」
「あ、ああ……すまんな、オレかて拙かったわ」
次は前の人につかえてしまい、また気まずい事に。同じクラスの人なのだろうが、申し訳ない事をしてしまった。だが彼はにやけているようだし……深く考えないことにした。
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.6 )
- 日時: 2010/09/15 07:52
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
「う〜ん、迷った」
休み時間に美穂と部活動見学を一緒に回ろうという約束をし、待ち合わせの場所を職員室前掲示板にしたのであるが、諸々の諸事情を終わらせて彼女は早速迷ってしまっていた。
この学園、とても綺麗な外装で過ごすには非常に快適なのだろうけど、彼女のように方向感覚の残念なことになっている人にとってはある種のラストダンジョンである。事実彼女は右往左往していた。た
「ううう、最初っからこんな難易度のダンジョン無いよ……ぁっ」
突然の出来事だったが、彼女の分別が言葉を飲みこませた。彼女の眼に映っていたのは大量の荷物を持ってよろよろしている秋原珪の姿。長身で強面の彼が、何だか可愛らしく見えて、自然と言葉が出ていた。
「あっ、手伝いましょうか?」
「あ、今朝の……いや、大丈夫。さすがに女の子の助けを借りるわけにも……」
「いいえ、大丈夫です。鍛えてましたんで」
「鍛えてましたって、いやそんな、大丈夫なんでっ、うわっ!」
「っと。いや、今日のお礼ですっ」
バランスを崩して荷物を落としそうになった所へ素早く反応し全ての荷物を救済する。結構落とすと危ないものもあったので、珪はほっとして、少し照れた。
「ごっ、ごめん……助かった。でも、少し、借り作りすぎたかな……」
「いっ、いえ……あ、あのっ」
何だか急に恥ずかしくなってしまった希。あまり異性と良い思い出のない彼女は自ら努力して男子と関わりを持たないようにしていた。
だから今朝少し会っただけの、しかもあんなバカみたいな出会い方をした彼に。何だかとても恥ずかしくて。希は静かに座りこんで、顔を赤らめ俯く。
「あっ、すいません……そっ、それじゃあ」
自分でも迷惑な話だというのは分かっているのだけど。自分から手伝うと言っておいてなんだが、これ以上居るのが気まずい。
「ああ、うん……ありがと、荷物」
「いえ……あっ、職員室ってどこですか?」
「職員室は……この廊下を真っすぐ行って、階段登って二階に来たら、そのまま左に曲がって直進、つきあたりを左かな」
「あ、はい」
「それじゃ、俺はもう行くんで」
荷物を安定させると、彼は再び歩き出す。希も言われたとおりに歩こうとして……大切な事を言っていない事に気がついた。
「あ、あのっ!」
「ん?」
「あのっ、ありがとうございましたっ!!!」
「ああ……うん」
バランスが悪いなりに、振り返って明るく笑顔を返す彼に、彼女は一礼してからゆっくりと歩いて行った。
だが階段の一段目を踏みしめたとき。希の視界が白くぼやけた。とっさに歩みを止める希。こんなところで転ぶのは洒落にならない。ぼやけた視界を拭おうと腕で目をこする。
それは涙だった。拭って初めて分かるくらい彼女は意図せず泣いていたのだった。拭っても拭ってもそれは止まらず、後から後から流れてくる。
(あ、あれ……どうして?悲しくないのに、何でこんなに涙が……)
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.7 )
- 日時: 2010/09/15 21:35
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
「あ、やっと来た」
「えへへ、ごめんごめん。だって迷うじゃんこのラストダンジョン」
「やっぱり誰の感覚でもこの学園はラスダンなの……?」
珪の助力により先に来たのは希だった。上の会話を聞く限りではどっちが希だか分からないだろうが。
職員室は教師が多いだけにかなり広い。となれば職員室前の廊下に設置された掲示板も当然ものすごく広くなるのだ。そこを使ってこの時期は部活動の紹介をしている。
ここに来ればまあ、(ほぼ)全部の部活動の詳細を知る事が出来る。基本的には優秀な成績を残している部活が広く面積を使え、成績のふるわない弱小部や活動してるのか危ういマイナー文化部は使える面積が少ない。一番小さいと二次元コードと言うひどい扱いだが(ちらとでも見てもらえるから入部の可能性もあるわけで、こんな手間のかかる真似をされると当然ながら入部してくれる人も少ない)。
そんなところにやってくる人間の理由は9割がた一つしかない。残りの一割を拡大すると好き好んで職員室に用事のある人など、興味のある先生がいる女生徒8割、興味のある先生がいる男生徒2割、二つを四捨五入せずにあまった枠に諸々のカテゴリが入る。
まあ空気の百分率のような話で、色々記述できないものがあるので割愛させていただく。
「へぇ、色々なのがあるんだね。あっ、茶道部なんてどう?」
「無駄な脂肪がつきそうだから……パス、かな」
「美味しいところに脂肪が付いてる癖に……」
「なっ!?」
「う〜ん……ここどうだろう?」
「近いね……でもなぁ」
「何?美味しい脂肪が邪魔ってか」
「そういう事ばっかこんなとこで言わないでよぉ……」
美穂が勧めたのは、ダンス部(ストリートダンス系統)。まあ見学だし……と軽い気持ちで二人は行ってみる事にするのだった。
- Re: ICONO−C−LA『S』ME 〜世界が止まるまで〜 ( No.8 )
- 日時: 2010/09/16 08:37
- 名前: 羅月 (ID: u.TmsjkF)
「し、死ぬ……」
「無理、恥ずかしい……」
「あの殺人ダンスを完璧にコピーした上にあんだけ男の注目をひけるのはあんただけだよ……」
美穂は息切れでかなり動悸がまずい事になっており、希は予想外にテンションが上がってしまった事でかなり怪しい醜態をさらしてしまった。
いや、希が悪いわけではないのだけど、先輩が『とりあえず動きやすい服装の方がいいから』と半分悪ノリして上半身は体操服、下はジャージを着せて基礎的なダンスを踊らせたのである。
体操着とジャージは上下一式がSHRの時に配られていたものを使った。まさか初のお披露目がこんな事になるとは思っていなかったけど。
「先輩の人、『あんだけ人目を惹けるしあんだけ踊れるなら是非入ってほしい』って言ってたね。だって2,5×4枚プラス戸のちっちゃいガラス4枚に男の顔が一面張り付いていたんだから」
いや、長い時間に過ぎた自分らも悪いけど、情報の伝播は恐ろしい。
「ふう、長い事いて客引きしたからってスポーツドリンク一本ずつ貰えたのは良かったけど」
「まあ、尋常じゃない汗かいたし……あっ、今何時のんちゃん?」
「ええと……五時半だね……ってうわぁああっ!!!!! 入寮式が六時半からだよ美穂ちゃんっ!」
「しょうがない、一番の候補にしてた弓道部に行こうじゃないか若人よっ!」
「了解っ!!」
この部は一番近いから選んだのであって、長居する予定はなかった。二つだけしか見られないというのは勿体なかったけれど、一番見たいと二人で意見の一致したこれだけは見ておかないといけない。
同じ武道にして、割と実生活に影響を及ぼさない弓道は、希の過去を知る美穂と希の共通の理解によって承諾された部活。希の基礎的な筋力はすぐに戻るだろうし美穂もあまり力は無いものの物覚えが良いのですぐに上手くなるだろう。
ただし、さっきのダンスは希の基礎体力により彼女に軍配が上がったのだけれど。元々二人とも運動神経は総合的に高い。大体何でもこなすのだ。
この掲示板は過去ログ化されています。

