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鬼紅葉 完結しました
日時: 2010/12/09 07:12
名前: るりぃ ◆wh4261y8c6 (ID: TWKNIdJ1)

初めましてこんにちは、るりぃと申します。

この小説はヤンデレヒロインによる恋愛小説です。
グロ苦手な方・恋愛小説嫌いな方はプラウザバックしてください。

※此処の小説はけして上手ではありません。
私の小説を見て不快に思ったりするかもしれません
下手なのは私が一番分かっております。
コレを読んで尚見てくださる方は、まことにありがとうございます。
下手ですが精一杯書いております。
どうか貴方に気に入っていただけることを心より祈っております。

—————目次

・一章 >>1
・二章 >>2 >>3 >>4
・三章 >>5
・四章 >>7
・五章 >>9
・六章 >>10
・最終章 >>11

———————

イメージソング 『紅一葉』 >>8

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Re: 鬼紅葉 ( No.7 )
日時: 2010/12/01 07:53
名前: 桜音ルリ ◆sakura.bdc (ID: LMPzgpkP)
参照: http://www.youtube.com/watch?v

四章

離れたいと、思っている。
いつかのように、首を絞めてしまおうか。
今のうちに、息の根を止めてしまおうか。
だけど、それすら出来ずに。
私はただこうして……蝋燭の揺らめく灯りに、貴方を見る。
離れたいと、願っている。
なのに。
出来ない……
どうして……
どうしてこんなにも、貴方の命を尊いと思ってしまうのか。
考えては駄目。
その答えに、気付いてはいけない。
何もかも、解っているのに……
今日は翔から極力離れていた。
彼は何度か私を呼んだけど。
それでも、無視して。
手に入れた心の凪は、どこか空虚で。

寂しい。

今日も翔と距離を置いていたら、彼は初めて少し険しい顔をした。

「無視は勘弁してくれないか? やりにくいだろう?」

「……でも。解らないから。」

微かな声でそう答える私に、翔は怪訝な顔をして。
目線でその言葉の先を問いかけた。

「……他人の事は解らなくても……自分の事くらい解ってた。でも今は…自分の事もわからない。」

「……鬼紅。」

「貴方から、離れたいのか……近付きたいのかも、解らない。」

そう答えるのが、精一杯だった。
俯く私に翔が優しい声を出す。

「鬼紅、どうして、命が怖いんだ。」

「教えない……」

「何故だ?」

だって。
そんなの不公平だもの。
貴方が自らを影に染めるなら。
私も貴方に影しか見せない。

「貴方が、何も教えてくれないから……」

「秘密を守るのが俺の仕事だ。」

「だったら、知りたがらない事ね。仕事より、私の心に重みを感じない貴方に、私の闇を知る資格はない。」

翔は少し目を見開いてから、「確かに」と笑った。
自分の心を守るのが、何よりも大事な私も……
貴方を知る資格なんて、きっとない。



夕方ごろから、翔が熱を出した。
多分、怪我の影響だと思う。
ここのところ秋雨も続いていたし、体調を崩したのかもしれない。
私は、彼の隣に座って何度も濡れた布を取り替えてあげた。
どんなに否定しても、私は貴方の飼い主で。
貴方は大事な、私の生きたお人形。
だから壊れてしまわないように、助けてあげなくちゃならないんだ。
少し苦しそうに寝息を立てる、貴方の躯は熱くて。
燃えているみたい。


ふと目を開けると、いつの間にか起きた翔が私を見ていた。
いつものように驚いて身体を急に起こしたら、腕を桶に引っかけて水を溢してしまった。
慌てて拭いていると、隣からくぐもった笑い声が聞こえる。
翔が笑いを堪えているんだ。

「わ……笑うならはっきり笑いなさいよ!! 皆そうよ……私が少しでも失敗すると笑い者にして……!」

「すまん。でも笑い者にしたつもりはないぞ?」

「じゃあどうして笑うのよ!!」

「困った顔が可愛かったからだ。」

なんにも、返答できなかった。
いつもなら「ふざけないで!」って突き放せるのに。
相手が…翔だから?
私の大事なお人形だから…?
なんだか恥ずかしくて、顔が熱くて。
なんにも、言えなかった。

「ずっと、ついててくれたんだろ? ありがとな。」

「…いいのよ…飼い主だもの…。」

「…ほっぺ、触ってもいい?」

小さく頷くと、温もりが頬に触れた。
危険だと、恐ろしいと解っているのに。
……止められない。
翔は、どうしたいんだろうと。
機を織りながら考える。
私のことを呼びつけたり。
私のことを聞いたり。
私に、触れたり。
近付きたいと思っているのだろうか。
だけど、翔のことはなにも教えてくれない。
傍にいても、どこか遠い。
本当に近付く気がないから。
どんなに疑問に思っても、聞くのは無駄だと思った。
私は彼のどんな言葉も、信じきる勇気もないし。
彼が真実を語るとは思えない。
触れても、遠い人。
あの日から初めて、誰かの《ほんとう》を知りたいなんて思ったのに。
考えてみれば、離れようと躍起になった自分も無駄だったんだ。
私がどんなに近付きたかったとしても。
貴方は、遠いから。
きっと、私の腕なんて届かない。


翔を助けてから、もう大分経つ。
少しは、怪我もよくなったみたいだけど。
まだ、私が居なきゃ生きられない。
私は、多分。
翔に此処に居てほしいんだと思う。
怖さよりも、何よりも。
彼との距離を縮めたいんだと思う。
それに、やっと気付いた。
そうと決めたら簡単だ。
彼は近付きたがらなくても。
私に何も教えてくれなくても。
二人に距離があっても。
彼を縛る鎖なら、この手に在る。

Re: 鬼紅葉 ( No.8 )
日時: 2010/12/01 14:41
名前: 桜音ルリ ◆sakura.bdc (ID: xXJv2SqN)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=LYF4gG3lt7A

この小説のイメージソングです。一応。

Re: 鬼紅葉 ( No.9 )
日時: 2010/12/01 15:13
名前: 桜音ルリ ◆sakura.bdc (ID: xXJv2SqN)
参照: http://www.youtube.com/watch?v

五章

昨夜の、出来事だった。
草木も寝静まる真夜中。
何かの気配に起きると、隣に寝ていた翔が「起きあがるな。」とでも言うように肩に手を当てた。
木戸の向こうに、人の気配がする。
神経を集中させて、じっとしていると、翔が急に私の体を抱き寄せる。
次の瞬間、背中の方から何か鋭い物が床に刺さる音がした。
それを合図に、木戸や天井裏から人間が現れ、私たちを取り囲んだ。
明かりは月の放つものしかなくて、彼らの姿は見えないが、その声は町で聞いたものと同じだった。

「くれない忍隊の長、御堂 翔だな。」

「だったらどうするんだ?」

「その命、頂戴つかまつる。」

翔は、特に動じる様子もなく、ただ月明かりに微笑んで。

「この娘は見逃してもらえるか?」

そう言った。
敵は嘲り笑いを浮かべながらそれを了承して、私は思わず翔を見た。

「鬼紅、逃げた方がいい。」

よろりと立ち上がって、木戸から表へ出る。
しかし私は、すぐに引き返してきた。
木戸に近い所にいた男が悲鳴を上げる。
私の斧が腕を奪ったから。
それから私は、何の躊躇もなく斧を振るった。
誰にも、壊させない。
邪魔者は……殺す。


死体は、川へ棄てた。
谷底に落ちていく死体は、いつかを彷彿させるようで。
私はそれらを見送りながら、少し笑った。
夜中襲ってきた連中を、私はあっという間に斧で切り殺してしまっていた。
無我夢中で叫びながら、何度も、何度も同じ体に斧を振り下ろして。
気が付くと、私は翔に抱き止められていて、辺りは一面血の海だった。

「……もう死んでる……! もう十分だ!」

そう言って翔は、私を抱きしめていた。
私はそれをやんわり解いて、複雑な表情の彼を見上げる。
その瞳の、奥まで見るように、じっと見つめて。
まるで幼い少女のようにあどけなく、笑った。

「だめじゃない。翔。寝てなくちゃ。」

「鬼紅……」

「心配しなくても、大丈夫。散らかっちゃったね。一人で片付けられるから寝ていて? 怪我はまだ治りきってないんだから。」

翔を寝かせて、辺りに散らばる肉片を集めた。
もとが人間だとか、殺してしまったとか、そういったことは考えなかった。
ただ私は、たった一つのものを守りたかっただけだ。

「翔、ごみ、外に棄ててくるから。」

そう。ごみだ。
私と翔の間を裂こうとする者は、なんであろうと。
裂かれ、叩き潰され、棄てられる。
ごみなんだ。
だから、これでいい。
これでいい。

Re: 鬼紅葉 ( No.10 )
日時: 2010/12/09 07:01
名前: 桜音ルリ ◆sakura.bdc (ID: TWKNIdJ1)

六章

もう翔の傷は完全に回復してしまった。
でも、翔はなぜか此処を出ようとしない。
鎖はもう解けて焼けてくちはてたはずなのに。
それを翔に聞いたら、翔は優しい笑みを見せながら私にこういった。

「鬼紅を一人にできないだろ?」

ああ私が鎖なのか。
でも、私と違って翔には帰る場所がある。
だから私は……
私は立ち上がると台所に行って包丁を握った。
そして、まな板のうえに自分の腕を置くと、手首めがけて包丁をドン、と振り下ろした。
痛みがきて血が出るのが怖かったから、私は目をつぶった。

暫くたっても、地が噴出す様子はないし、痛みもこない。
恐る恐る目を開けると、そこには怒ったような顔の翔がいた。

「……なんで、こんなことしたの?」

ああなんでそんなに怒った声をだすの?
理由は簡単じゃない。

「翔に、飼われたかったから。」

怪訝そうな顔をする翔をよそに私はべらべらとしゃべりだす。

「だって翔はもういっちゃうんでしょう? だから、私は翔に飼われたい。そうすれば翔と離れなくてすむわ。だから……」

私はそこで一旦言葉を切ると、翔に微笑んだ。

Re: 鬼紅葉 ( No.11 )
日時: 2010/12/09 07:08
名前: 桜音ルリ ◆sakura.bdc (ID: TWKNIdJ1)

最終章(side 翔)

鬼紅の日記はそこでとまっていた。
当然だろう。
死んでしまっては日記を書くことが出来ないのだから。


「私は私を殺して、お人形になるの。」

そしたら飼ってくれるわよね? と微笑む鬼紅を見て、俺は立ち尽くした。
何故俺は鬼紅の心の闇に気づいてやることが出来なかったんだ。
一番傍にいたのは俺なのに。
立ち尽くした俺を見て、鬼紅はふわり、と、飛びっきりの笑顔を俺に見せると、今度は、包丁を自身の胸に突き刺した。
俺は、噴出す血をただただ見てることしか出来なかった。


俺は鬼紅の最初で最後の我が儘をかなえるため、鬼紅を飼っている。
それが彼女の望んだことだから。

完結


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