ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 神々の力〜選ばれた者たち〜
- 日時: 2010/12/26 23:03
- 名前: ryo-2-1 (ID: pbINZGZ2)
初小説です!
至らないところもあるかと思いますが
どうぞよろしくお願いします
神の力を手にした若者たちのバトルものにしたいと
思ってます
現時点での登場人物です
柊良介(ひいらぎりょうすけ)
『ガブリエル』に対応している。良介自信は天使間どうしの意思疎通が可能になったらしい。暴走時には『無帰』と呼ばれる天罰が使えるが、詳しいことは不明。
迎久留巳(むかいくるみ)
主人公の幼なじみ。五年前の事件で両親を失っている。
アリス・クロッド
『コカビエル』に対応。天体を司る。天性(オリジナル)の1人。
虚像世界(クライキープ)
スターゲート計画の現時点での最高傑作。実験固体(シリアルナンバー)の1人。対応している天使は『ウリエル』
Dr.桐原
天性(オリジナル)の1人。対応している天使の名前は不明だが、再生を司っているらしい。
柊豪卯
良介の実の祖父にあたる。オペレーション・スターゲートの最高責任者でもある。さまざまなことに詳しいが、自身も適格者であるかどうかは不明。本心を明かすことは良介にも決してしない。
燃えて行きますよー
- Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第10話:神の知恵 ( No.11 )
- 日時: 2010/12/30 15:15
- 名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: Jg8CXhDq)
いっしょに行動する仲間の確認、ついでにやばそうなら加勢してやろうか。そんなことを考えていた虚像世界(クライキープ)だったが、いざ地上にでてみて言葉を失った。
「こいつぁ、ひどすぎるな。こんなむごいことしやがるのはあいつしかいねぇ。」
クライキープはこの惨事を巻き起こしている人物が女性だということが、今でも信じられない。初めてあったときから彼は彼女のことがどうも好けなかった。
あらためてロシア軍の兵士の惨状を確認する。頭が真っ二つに裂けているもの。両腕がぎりぎりまで切断されてかろうじて胴体にくっついているもの。身体中の関節を逆向きに曲げられているもの。決まって同じやられかたをしているものはいない。というか、こんな悲惨なことになっているのに、死んでいるものが1人もいない。
しらみつぶしに兵士にとどめをさしながら、彼は『彼女』に近づいていく。
「そういやじじい。上で戦ってるのが誰かまだ聞いてないんだけど。女だとかなんとか。」
旅支度をしながら良介はさっきから気になっていることをといただす。
「聞きたいのか?こういっては何だがあまり気持ちのいいものではないぞ。」
「まぁおやっさん、いづれいっしょに行動するときがあるかもしれないじゃないですか。一応頭に入れておいて損はないでしょう?彼女のことは。」
「まぁ、それもそうじゃな。・・・・・・・・・・彼女は座天使の長『ラジエル』に対応しておる。『神の秘密』を司どっとるわけだが、彼女の場合、使い方がこじれておってなぁ・・」
一度くぎってからなお続けた。
「あいてを絶対に死なさせない闘い方をするんじゃよ。」
ロシア軍の最後の1人であるデリアは目の前の絶望に何も行動することが出来なくなっていた。今まで彼らはさまざまな敵と戦ってきた。残忍なテロリストをはじめ、訓練のため山にこもって熊と戦うことまであった。
だが、目の前の敵は違う。自分を殺そうとはしない。ただいたぶって自分の快感を満たすためだけに動いている。今も眼球が1つだけになった隊員で遊んでいる。
隙だらけだった。
でも、デリアに彼女を撃つことはできない。そんなことをすれば、生きて帰ることはもちろん、死ぬことさえできないのだから。
「うーん、眼球1つでも見えてるのかしらーー。意識も失っちゃってるしつまんないなぁ。あ、いいこと思いついた。もう1つくりぬいてお手玉でもすれば楽しいかもー!!あたしってあったまいいーー!!!」
隊員のこしからサバイバルナイフを無造作に抜くと、勢いよく顔につきさした。
「ごっ・・がぁぁぁアああああああああああああ!!!!」
見ているこっちの心が砕けそうになる。自分がまだ殺されてないのはこれを見せ付けるためなんだとデリアは悟る。
「あら、あまりの激痛にめがさめちゃった?でも安心して?これからもっといいことしてあげるし、殺しもしないからさ・・」
ごきゃっ、と気味の悪い音を立てて隊員の目から眼球が引き抜かれる。
「あはは、いいねぇその顔!目ん玉ないとかぞんびかよっ☆」
笑いながら彼女は隊員の顔面を勢いよく蹴りつける。一般人ならこれだけで死んでしまうだろう。だが、やはり死んでいない。何だ、あいつはホントに人ナノカ!?
「うわ、これお手玉しにくーい。眼球がこんなにネバネバしてるなんてあたし知らなかったよー」
くる、と彼女はこちらに振り向くと、
「これあげるよ。君の身内でしょ?大切に保管してあげな。あ、でも揚げたらけっこううまいかもねぇ。魚の眼球って栄養素たっぷりなんでしょ!?」
べた、とデリアは顔にいやな感触がはりつくのに気づく。
眼球が顔にあたったのだ。と理解するまで10秒もかかった。
いや、理解なんてしたくなかった。もう彼は限界を超していた。
「う、ぁっぁああああああ!!ふ、ふざけるな!いい加減にしろよぉぉおおおおお!てめぇみたいなバケモンに付き合うのはもう御免なんだよっぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!」
デリアは予備の拳銃を額に押し当てる。これでもうこんな地獄とはおさらばだ。せいぜいこんなばかげた任務を押し付けた上層部をうらみながら死のう。そう思っていたのだが・・・・
スパン、と拳銃が真っ二つに割れた。
火薬が拳銃の中で爆発する。はへんがデリアの顔面につきささる。
「おっ・・・・・ぁぁぁあああああああああ!!」
脳を引き裂くような痛みに耐えながらデリアは声にならない叫びをあげる。
もう彼の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。ずぼんも気持ちの悪い感触に浸っている。
「もう許してくれよぉぉおおお。お願いだから殺してくれ。早く俺をこの世から消し去っちまってくれよぉぉおおおおおおーーーーーー!!!」
彼女がすたすた歩いてくる。デリアの顔に笑顔が浮かぶ。が、
「だーめ。そんなに死にたいならよっぽど殺しちゃうのが惜しいよ。内臓を全部えぐりだして、家畜にくいあらされるまで生かしておかなきゃもったいないって☆」
もうデリアは訳がわからなくなっていた。ただ、彼女は日本刀のようなものを持っている。それだけは認識できた。そんなものに身体を刺してももはや死ねないのに、それすら忘れてデリアは走り出す。
「ぉオアああああああーーーーーーー」
女はさすがに驚き、一瞬動きがとまる。
だが、デリアにはそれだけで充分だった。もともと目と鼻の先に近寄ってきていたのだ。数歩歩くだけで、刺さることができた。
ぶつかった衝撃で、彼女の顔に血と涙と鼻水、汚物で汚れた液体がこびりつく。その瞬間、彼女の顔つきが変わった。
「んな汚れた身体であたしにさわってんじゃねぇよくそヤロオーーーーーー!!!!!!!!!!」
5mほど投げられたデリアに剣で切り刻んだような切り口ができていく。距離は充分離れているのに、だ。
「もぉいい。もォやめだ。せっかく気ぃ利かせて長生きさせてやろうってんのになぁ!?汚物の分際であたしに障ってんじゃねぞぉぉぉぉ!!!」
両腕両足が切断され、胴体もミンチになろうとする。なのにデリアはまだ死ねなかった。
「これが『神の知恵』の力だ!!1cm四方になるまで死なさねぇぞ!!」
そして最後のしめにかかろうとしたとき、勢いよくデリアの身体が内側から消し飛んだ。
「!? だれだァ!!」
「落ち着けよ堕天神知(アイディン・ダウン)。せっかくのいい女がだいなしだぜ?」
役者はそろった。虚像世界(クライキープ)と堕天神知(アイディン・ダウン)との関係は!?
- Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第11話:各々の目的地 ( No.12 )
- 日時: 2011/01/03 15:08
- 名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: cMNktvkw)
神の知恵。それは人間の手では到底実現不可能なことを実現させる力。難病の者を助けることも出来れば、未知の科学技術を生み出すこともできるかもしれない不思議な力。ただし、それは正しい使い方によってのみ発揮される効力。どれだけ苦しくてもなぜか死ねない。間合いは充分なのに、なぜか攻撃があたる。ゆがんだ心を持ったものが扱えば、そういった災厄しか生まない悪魔のような力でもある。
地上で、訪れない自分の死に疑問を抱いたデリアは周りを見回す。すると、今までとはどう見ても別人の絶世の美女がそこにいた。いや、この場合は美少女のほうが正しいかもしれない。とにかく、今まで闘っていた女と同一人物とはどう考えても思えない光景に、しばし唖然とするが、すぐに状況に気づく。
(仲間が来たのか・・・どうりで愛想がいいわけだ・・・)
彼らは何か話し合っているようだが、何のことかデリアには状況が読めなかった。さっきまでの状況とは違いすぎる。
「あれ、クラキーじゃないの。どうしてこんなとこに?もしかして愛しのアイディンのために助けに来てくれたとか?だったら遅かったねー もうあらかた終わっちゃった。でもその好意だけはありがたく受け取って・・・」
「どさくさにまぎれてキスしようとしてんじゃねえぞ三下が。俺はただ仲間の確認に来ただけだっつーの。」
「えー、そんなこと言って〜。『いい女がだいなしだぜ?』とか言ってたじゃなーい。」
「あれは、場の空気にあわせたっつーか。まぁなんだ。」
求愛を示されてクラキーはうろたえる。どうも彼はこの手のことが苦手らしい。
「あれ、クラキーってばそんな気の小さい男だったんだ。私の全てを捧げてもいいって思ってたのになー」
「わかった、わかった。とにかくさっさと出発するぞ。もうそっちの準備はできてるんだろ?」
苛立たしげに尋ねる。
「そだね。でも、目的地とかは教えてもらってないよ?」
「問題ねぇよ。」クラキーは含みのある笑みを見せ、
「目的地は北欧だ」彼らの旅は始まった。
正規ルートの良介、久留巳、クロッドの3人はクライキープたちとは別方向に向かって歩きだした。
「にしても、しらみ潰しに全部の天使をあたるってのも面倒な話じゃないか?もうちょっと有効的な手段があるはずだろ。」
「おいおい良介君。ぐちをこぼすにしては早すぎるぞ?まだ1人目を探してるところなんだから。」
「そおだよりょうちゃん。何事も根気が重要だよ!」
久留巳、お前にだけは言われたくないぞ。
「とにかく、1人目は北海道なんだろ?ここからそう遠くはないし、さっさと先に進むとしよう。」
クロッドの歩幅が広くなる。最初からとばすなと言っていたのはだれだったか・・
「仮にラファエルでもミカエルでもなかったとしたら、その適格者はどうするんですか?仲間に入れるとか?」
「RPGゲームのやりすぎだよ良介くん。それは向こうしだいさ。命がけの闘いにわざわざ巻き込むことはない。」
「でもでも、りょうちゃんみたいにすごく強い人だったら仲間にしたほうがいいんじゃないの?」
俺の質問をとるな、久留巳。
「そういうやつは仲間になりたがるもんだ。それより久留巳ちゃんは自分の力が何か見極めるのが重要だよ。」
「うーん。でもほんとにそんな力が宿ってるのかな?」
「一生発現しない場合もあるみたいだし、気長に待つしかないだろうね。」
すると、周りに変化が起きた。
蚊帳の外に出されて少々ごりっぷくだった良介も、さすがにあわてた様子を隠せない。
「なんだなんだ!?UMAか!?」
「事前に説明しといただろ?これがうちの組織の小型移動要塞の、『バルクジェット』だ。
予想外の展開に良介は!?
- Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第12話:少年の影 ( No.13 )
- 日時: 2011/01/16 13:36
- 名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: ftQm2bwY)
北海道。ロシアとの戦争以前は北方領土以外は確かに日本の土地だった。そしてそれは今も変わらない。
はずだった・・・・・・・・・
『なんだこりゃあ?どうなってやがる?』
男2人が威勢よく目の前の以上に声を荒立たせる。
正規ルートの3人は『バルクジェット』に乗って北海道沿岸まで来ていた。どうやらこの小型移動要塞、水陸両用で燃料を一切使わないとってもエコなものらしい。そんなのがあるなら地下での生活も豊かになるのでは、とも思っていたが、そんな小さな疑問は吹っ飛んでしまった。
「クロッドさん、あれってロシア軍の駐留基地じゃないんですか?ほら、あの旗」
「んなもん見なくてもわかるさ。ありゃ間違いなくロシア軍の駐留部隊だな。装備から推察するに、エリート部隊にそこらの雑魚兵を足した寄せ集め部隊ってとこだろうが、どっちにしろこっちの戦力じゃあお話にもならないな」
まだ寝てる久留巳ちゃんはまだ起こさないほうがいいな、と耳打ちする。
相変わらずこの判断能力には舌を巻くばかりだ。久留巳と2人きりだったら迷わず突っ込んでいたかもしれない。
とはいえ、目的を進めるためにはここを進むしかない。
「どうしますか?他の場所も探して警備の薄いところから侵入するってのが1番現実的だとは思うんですけど」
ここまではごく一般の考え方。小学生にも分かる問題だ。
だが、俺たちの特殊な力にはそんな常識は通用しないらしい。
「俺の能力を君が媒介すればいいよ」
これだ。
もちっとやさしく説明してほしい。こっちは中卒程度の学力なんですよ。
「あ、悪い悪い。君の能力の応用方法の説明がまだだったか。」
1番重要なことだと思う。この人はこうゆうとこには気が利かない。部屋でまだ寝てる久留巳への配慮はできていたのに。
「というか、君の力は他の天使との意思疎通しか現状使い道がないのが現実だ。君はまだ2,3割しか制御できないだろうからな」
「だから僕の力を経由するんだ。天体の動きが分かる僕の能力を君が使えば、さながら人工衛星のように働くと思うぞ」
ふむ、まったく分からん。
とはいえ他の適格者への干渉法は事前に教えてもらっているので感覚的になんとかなりそうだ。
「じゃ、いきますよ」
言葉と同時に目を閉じる。
いくつかある天使の反応から、コカビエルのものを選び、上え上えと伝っていく。
「来た!」
頭に近隣の地図が浮かび上がる。
その映像をクロッドに逆送信する。
「おぉ、だいぶ使い慣れてきてるじゃないか。・・・・・ん、これを信じるなら、警備の甘いところはここが一番まし、か」
こんなちっぽけな島国の1つになぜこんなにも軍隊がいるのかわけがわからなかった。
(もしかして、こっちの情報が漏れてるのか?)
(そりゃあないと思うよ。ロシア側も北海道にいるかもしれないラファエルの適格者を探しているのかも。旅の案内をまかせたら彼以上はいないだろうからね)
意思がつながっているおかげで言葉を出さなくても無線のように交信しあえる。
直接的な攻撃力をもたないとはいえ、これはこれでいい力かもしれない。
(じゃあ、こっから先はゴムボートか何かで進むんですか?)
(それなら問題ない。これは潜水機能もついてるからな)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
しばしの沈黙。
しかもステルスつきだ、と余計な情報を付け足すクロッドとの交信を無理やり切断する。
「ァァァァあああああ!?耳がァァああああ!!」
こんな使い道もあったらしい。こんどクラキーにもやってやろうか。
「と、とにかく久留巳ちゃんを起こしてとっとと行動を開始しよう。日没後に動くぞ」
それから5時間後。
俺たちはみごとに岸までたどり着いていた。潜水機能も問題なく働き、浅瀬からここまではいかにもハイテクそうなボートで進んできた。
横では久留巳が寒そうに震えている。
「む、別に私は寒くなんかないんだよ!」
あれ?俺は顔色を変えたりはしてないはずだが。まぁいいか。ちょっと久留巳をおちょくってやろう。
だが、世界はそんな甘い時間を与えてくれはしなかった。
銃声が響く。
ほとばしる絶叫。
町の中心付近からだ。
「クロッドさん!!」
「分かってる!!!」
「あ、ちょっと置いてかないでよー!」
俺たちはいっせいに走り出す。途中、何度か偵察兵に見つかったが、クロッドのあざやかな体術のおかげでなんとか難なくここまでこれたが・・・・
横のクロッドが双眼鏡をさしだす。自分はちゃっかりもう観察している。本当にこうゆうとこだけは気が利いて困る。
「あ、私もみたいー」
「静かにできたら後でかわってやるよ」
また馬鹿にしてー、と久留巳が騒ぐ。しまった、余計うるさくなったか?
横からチョンチョンと押されて振り向くと、双眼鏡を見ながらクロッドが指を指していた。あれを見ろ、ということらしい。
双眼鏡を覗くと人が3人ほど見えた。ひざまづいて謝る女性と、それに罵声をあびせながら蹴りつけるロシア兵が2人。
「ひどいな・・・・・・」
「感傷的になるのはいいが、俺たちには関係のないはなし────」
いきなりクロッドの言葉がつまる。
久留巳に渡そうとしていた双眼鏡にもう1度目を通す。
「あれは・・・・・・・・・・・・・・・・」
少年だった。年は久留巳と同じぐらいだろうか。しかし、外見とは不釣合いなほど大人な雰囲気だ。へたしたら、いつもへらへらしているクロッドより精神年齢は上かもしれない。
もともとああいう少年だったのか、周りの環境がそうさせたのは定かではなかったが、とにかく不吉なオーラをまとっていた。
思わずロシア兵も1歩後ろにさがったが、かまわず銃口を少年に向ける。
「まずい────」
おもわず飛び出しそうになったが、クロッドがそれを制す。
絶対的優位に立っていたはずのロシア兵の手から銃が落ちる。
よく見ると360度全方位からロシア兵は別の銃口を向けられていた。
おそらく少年の仲間だろう。
そして初めて少年が口を開く。
それはあまりにも短く、簡潔だったが、状況を理解するには充分だった。
「立ち上がれ、北海道の民よ!今こそ侵略者からこの聖地を奪還するときだ!」
クロッドが舌をうち、久留巳は突然のことに驚き、そして俺はただ呆然としていた。
- Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第13話:足がかり ( No.14 )
- 日時: 2011/01/22 13:19
- 名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: 5.T/ANl0)
「ちっ、かってにおっぱじめやげって!」
クロッドが身をひるがえして立ち去ろうとする。
だが、それを止めるものがいた。
久留巳だ。
「私たちが自由になるにはここを進むしかないんでしょ?だったらこの状況を利用すべきだよ」
「そうだ。この反乱に乗じてロシア兵を撃退できれば、先に進むこともできるはずです!」
彼らに加担して状況を巻き返すことが得策なはずだ。こういった駆け引きはクロッドが一番得意なはずなのに、珍しく彼は乗り気ではなさそうだった。
「いくらなんでも分が悪すぎる。それに本当にリーダーがあの坊主なら、結果は目に見えてるさ。だいたい───」
クロッドの言葉がとまる。
その目は久留巳の目を見据えていた。信念のこもった強い瞳を。
「・・・・・・わかった。だがどうする?今の僕たちはハンドガンぐらいしか持ってないんだぞ?やつらに味方したところでいい足手まといさ」
確かにそうだ。彼らとて満足のいく装備を持っているわけではなかったが、ハンドガン一丁で味方するのはいささか心もとないかもしれない。
「じゃあ、俺の力を使うってのはどうです?ほら、クラキーと戦ったときに使ったあの大規模魔法みたいなやつなら」
「あれは『無帰』ってんだが・・・発動条件は少々シビアでな。ガブリエルとウリエル両天使を地上に一時的に引きずり落とす必要がある。まぁ、君たちなら互いに片翼を出した状態になるだけで条件はクリアできるんだが・・・」
「だったら俺がクライキープに頼んでなってもらえばいいじゃないですか!!」
「話を最後まで聞け。クライキープのほうはともかく、トリガーを押す君がまだ不安定なんだ。あの時は補正装置が地下にはりめぐらせてあったからともかく、この状況でロシア兵だけをピンポイントで打ち抜くなんてできない」
世の中は残酷だった。この手には力があるのに、それを使う方法がない。いや、先に進みたいなんてものは俺の勝手なエゴなのかもしれない。だれかを助けるために力を使うのではなく、自分たちのために力を使ってしまうなんて間違ってるのかもしれない。ただ、久留巳の命が関わってくるかもしれないのは事実だ。だったら行動は早いほうがいい。
「そういえばあの少年ここは聖地だとか言ってましたよね?実際はどうなんですか?」
「ん?まぁ、そうだな。確か人が天使と対等な立場に立って神様と話が出来る場所ってのが売り文句だったはずだが、所詮はただの言い伝えだぞ?」
「だったら、俺のテレパシーで地図情報を渡すってのも、できるはずじゃあないですか?」
そう、現状で俺が安定して使える能力は天使同士の意思疎通のみ。とはいえこの地にいるもの全員を天使と位置づけることができるなら味方だけに空から見た情報を公開することもできるはずだ。
「あ、あの人いっちゃうよ。早くしないと。私だけで行っちゃうよ!」
クロッドは1回舌打ちすると、こう切り出した。
「わかった。彼らの中に適格者がいるかもしれないのも事実だ。君の能力もなんとか活かせるだろう。そうと決まれば話は早い。さっさと交渉をしに行くぞ。時間はまってくれんからな」
3人は行動を開始した。
だが、冷静に考えてみれば、この状況を利用しようとしているのは他にもいる可能性は否定できなかったはずだった。
- Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第14話:接触 ( No.15 )
- 日時: 2011/01/22 13:56
- 名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: 5.T/ANl0)
やることが決まった以上、あとは行動するのみだ。
「よし、まずは俺の力を使って交信を試みるってことでOK?」
「問題ない」
「いいよ!」
全員の了解を得たところで前方200mほどのところにいる少年に意識を集中させる。
(やっぱりここにいるやつには力を使えるみたいだな。にしても、あの子は他とちょっと違う気が・・)
とはいえ、迷っていては始まらない。とにかく言葉を伝える。
(えーと、聞こえるかな?そこの少年)
(ッ!? 誰だ?)
どうやら無事無線機の役割は果たせているらしい。クロッドたちに顔でうまくいったことを伝える。
あとは俺がうまくあの子を説得するだけだ。
(待て待て。怪しいもんじゃないって。君に相談があってね)
(・・・・・・・あんたらも俺と同類なのか?)
(ってことは君も何か力を持ってるの?)
いきなりドンピシャで少々あわてるが、今は取り乱している余裕などない。うまくこちらに引き込まなければ。
(どんな力かは知らないさ。ただ、小さい頃からまわりの子と何かが違っていた。それだけだ)
(まだ確証はないけど、君はたぶん適格者だと思う。キリスト教に登場する天使の力の片鱗を扱えるって考えてくれればいい)
(じゃあ、俺には天使と同等の力が宿っていて、それを自由に扱えるってわけか?)
(取り違えないでくれ。人間に宿る力なんてのは天使本体の5%が限界なんだよ。器が小さければ1%未満ってのもありえる)
少年と同時にクロッドにもリンクして、天使に関する情報を引き出していく。こうしてみると、新しく見る情報ばかりだ。
(・・・・・・・・・なるほどな)
たっぷり間を空けてから、彼は深くうなずいた。
そして同時に変化が起こる。
前方の視界が光で埋め尽くされた。
「どうなってんだ。もう力が定着しはじめてんのか!?でもまだ何にもやってないぞ!」
「君みたいなパターンが特殊すぎただけだ。力の定着方法は個人によって異なる。彼の場合は自分の存在を正しく理解することだったってわけだ」
光がだんだん弱くなる。
いや、弱くなるというよりは、一点に収縮されているというのが正しいかもしれな。
「じゃあ、これで私たちの最初の目的は終わったってことなのかな?」
あまりのあっけなさに久留巳がキョトンとする。
まぁ俺の定着を見ていればあまりの温度差の違いに愕然としてもおかしくはない。
「とりあえず、彼のところに行こう!」
誰ともなく叫び、俺たちは一気に走り出す。
「な、なんだかまわりが静かになった気がするんだけど・・・」
確かに、戦場のど真ん中を走っているにも関わらず、隠れていたときよりも銃声がなくなった気がする。
「ってことはそれがあの少年の力ってことだろうよ」
200mはあっという間に縮まった。
立ち込める煙の中に人のシルエットが浮かび上がってくる。
影がこちらに気づき、向こうもこちらに向かって歩き出す。
そして開口一番、
「こんにちは。僕がここの自警団の頭取を務める、足利桂馬というものです」
一瞬、あまりにも気の抜けた言葉に本当にさっきまで話していた少年と同一人物なのか迷う。
が、向こうはそんな気持ちを知ってか知らずか、こう続けた。
「いやー、やっと心おきなく話が出来る人と会えてよかった。これからいろいろとご教授願いますよ。‘ガブリエルさん”」
柔らかい笑みからこぼれる言葉は、どこか裏があるものだった。
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