ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- からっぽMAGIC
- 日時: 2011/01/22 21:37
- 名前: 木馬 (ID: OfqjeFpF)
要所要所に科学的根拠がないものや学術的に間違えた認識のものが出ますが
話の説明上そのほうが分かりやすいといったものが大体なので
その部分に目を瞑っていただければ有り難いですが、詳しく説明など
そういったコメントもお持ちしています。なにぶんアホな子なもので
登場人物 >>10
一話「変わる世界、変わらない日常。満ちる悪意。からっぽな自分
>>1 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7
「隣を歩く者、かつて隣にいた者」
>>8 >>9 >>11 >>12 >>13 >>14
- Re: からっぽMAGIC ( No.1 )
- 日時: 2011/01/02 01:33
- 名前: 木馬 (ID: OfqjeFpF)
六年前、ここ日本で災害が起きた。被害は少なかったようだが
決定的な問題が起こった。それは当時日本にいたすべての人々が例外なく
理から外れた異能、マギを手にした。
それ以来日本国民は世界中からの監視の元で生活してきた。
俺、籠野ユウも例外なく監視されていた。
「ユウさん、起きてください」
朝から部屋の中でじっと空を眺めていると階下から俺鋸とを呼ぶ女性の声
古い扉を開け階段を下りてすぐの部屋へと入っていく
「おはようございます。寮母さん」
そう言って俺は軽く頭を下げ、決められた席へと座る。
すると少し遅れて亜麻色の長い髪を後ろで束ねた見るからに優しそうな女性が
朝食を盆に乗せてキッチンから出てくる
「おはようございます。ユウさん」
彼女は三島サクヤ。俺が住む寮の寮母さんで俺より三歳年上の二十六歳
それ以外のことはよく知らない。俺の監視役ってぐらいだろう。
「今日も能力は使ってませんか?」
これも一応義務なので質疑応答はちゃんとしなければいけない。
だが、この質問の答えはいつも同じだノーだ。理由は一つ。
「使えませんし。無意味な能力ですから」
「そうですか。ならいいです」
こんなやりとりを毎朝繰り返してる。機械的なものだ。
俺が四年前の災害で手にした能力は空間を作る能力。
文字通り三次元の世界に三次元の場所をつくること。そう意味がない。
火を使うとか超人的な力を手にした人物は少なくない。そんな中俺は
凡人から凡人に書き換えられた。恐らく日本で唯一の一般人だ。
朝食を終え着替えを済ませた俺は再び一階の玄関へと向かう。
元来、無気力で無頓着な俺は今年で二十三になる。
髪は適度な長さ視力が悪いため眼鏡は常備。顔立ちは周りからは整ってる
と、言われるが鏡を見て自惚れする気はない。
毎日のごとくスーツを着て同じ時間帯に寮を出る生活。
今は朝の六時、まだ町は眠りについているから人は少ない俺はそれが嬉しい。
うるさいのは嫌いだ。一人でいるに越したことはない。
「じゃ、行ってきます」
俺は籠野ユウ。異能の力をもつ少年少女が通う学校の教師をしている。
彼女はいない。家族は父母と年の離れた妹が一人。
能力は空間を作り出す能力。D-メイカー。
好きなものは、なにもしない時間と串に刺さった団子。
嫌いなものは、昼間の喧騒と焼き魚。
俺は一般人だ。
- Re: からっぽMAGIC ( No.2 )
- 日時: 2011/01/02 08:56
- 名前: ルリ ◆qQ6wK6czCM (ID: yL5wamFf)
題名に吸い寄せられました。
設定がわたし好みです。描写も上手ですね。
羨ましいです。これからも頑張ってください!
- Re: からっぽMAGIC ( No.3 )
- 日時: 2011/01/02 13:52
- 名前: 木馬 (ID: OfqjeFpF)
朝の静けさは好きだ。空気が澄んでいて頭が冴える。
この少しの時間がたまらなく好きだ。四年前、災害が起こった当時
俺は十九、進学もせずに部屋で引きこもっていた。それでも朝だけは外へと出た。
コンクリートの地面を一歩一歩進みながら変わることがない景色に目もくれず
歩き続ける。寮から学校までは徒歩三十分程度の距離。異能の中には
空を飛ぶとか脚力が増大するとかいうものもある。きっとそう言う奴らから
見れば歩いてる奴の気持ちなんて分からないんだろう。
それはほかの奴にも言える。他人ができないことを出来るようになった時
人は人が考えていることを理解できなくなってしまったのかも知れない
そんな哲学じみたことを考えながら学校へとたどり着く
日本でも有数の広大な敷地の中で作られたこの学校は能力を制御する術などを学び
卒業するまでに不安定な十代の少年少女を社会にとけ込ませるために作られた
という名目で今や肩身の狭い日本政府が国際的な配慮のため存在する
日本をアピールするための広告塔だ
「おはようございます……って誰もいないのか」
職員室へと入っても物静かなものだ俺は机に鞄を置き、電気ポットで水を沸かす
新人の義務だろう、俺はこうして毎朝後からくる教員のためコーヒーを用意する
別に苦ではないから飽きずに続けていることだからいいんだが
「せんせー、おはよう!」
再度言う、うるさいのは嫌いだ。これは変わらない事実だ。
だから人の少ない時間帯に学校へと来る。にもかかわらず毎朝俺の静寂は乱される
「帰れ、邪魔だ」
俺は扉を壊す勢いで入ってきた女生徒に向けて冷淡に告げる
「酷いっ! 教え子に対してその物言いは教師として最悪だよ」
知らない。ズカズカと近づいてくる生徒の名は三島シオリ、寮母さんの妹で
亜麻色の髪と顔立ちは瓜二つの朗らかなイメージだがこっちのほうが
質が悪い。明るさは俺の何十倍もあるだろう。多分落ち込むなんてことを知らない
いわゆるアホの子だ
「赤点は教室で自習しておけ、以上帰れ」
「ふんっだ。いいもんね。授業でどうせ会うんだもんね」
それだけ言い残してシオリは去っていく。一体なにしに来たんだ?
会話の中で目的を忘れるあたりアホなんだろう。ちなみにシオリは俺のクラスの
下から数えて六番目の学力だ。そうあんなのがまだ五人もいる
早朝一発目から頭が痛くなった俺はその後コーヒーを二杯も飲んだ。
- Re: からっぽMAGIC ( No.4 )
- 日時: 2011/01/03 01:17
- 名前: 木馬 (ID: OfqjeFpF)
俺は特例で教師になった。そのことの説明はまぁいいだろう。
大学には行っていないし正確には教員免許も持っていない。ほらいるだろ?
多額の医療費を請求する医師免許を持っていない天才医師とか
簡単に言えばそんな感じだ。
俺も教員免許を持っていない。だから厳密には教員ではなく事務員扱いだ。
特にほぼ無能の俺は肩身が狭かったりもする。だからなおのこと事務員扱いだ
そんな細かいことはいい。そんな俺が受け持つの高校三年生の一クラス
副担任はなし、クラス全員で八人。学校の問題児の行き着く終点、3ーD
手に負えない連中の面倒を押しつけられただけだ。給料はそこそこだが
決して多くない上に税やらで結構引かれる。ちなみに俺に転職する気力はない
「ホームルームを始める。欠席はなし。連絡事項は問題行動を起こすな
授業をサボるな。昼になるまで弁当に触れるな、以上ホームルーム終了」
わずか十秒足らずで俺は教室を去る。クラスの連中に関わらないに越したことはない
逃げるが勝ちと言ってもいいだろう。とにかく早足で俺は職員室へと戻り
時刻表を見てまた頭痛がする。一限目の授業は異能学。俺の科目だ。
問題は向かう教室、Dクラスだ
異能学なんて大層な名前だが、とりあえずは自身の異能を制御さえ出来れば
評点上、五は付く。ちなみに制度が変わった今、評定五は何人いても良い
Dクラスの連中は皆五が付いている。そう制御できているがために自由すぎる
それでは異能学とは何のためにあるかと言えば強いて言うなら連中を拘束する術だ
一分一秒でも連中に身動きを取らせなければ学校としてはかなりの利益になる
逆を言えば一秒でも自由にすれば損害になる。ということだ。
「今日の授業は瞑想のみ、以上。馬鹿をしたらお前たちの卒業は絶望的と思え」
実は俺の授業は結構責任重大だったりする。認識は損得の話の延長線程度でいい
そのため俺は五十分間、八人を教室に押し込めている。
「逃げようと思うな。言っておくが卒業できなければお前たちの立場は
囚人並になるぞ。それでもいいなら逃げてみろ」
脅迫理由としては十分だろ、さてこれさえ乗り切ればあとは早いものだ。
後は帰って寝て、またいつもの繰り返し。一般人の一般的な平凡な人生だ。
世界が突然変わってほしいなんて願わなかった俺だからこそ普通のままだった
今もそうだ、できればからっぽな能力なんていらないが。まぁ。このままでいい。
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