ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- バロック〜歪んだ恋愛〜
- 日時: 2011/02/01 15:06
- 名前: うそつき狼 (ID: 2cEGTv00)
プロローグ・・・
ひんやりした空気のたちこめた地下室のパイプベッドに横たわる女性
を見ながら俺は『この女性が目を覚まして俺の顔を見たらどんな反応
をするのだろうか・・・』そんな恐怖に似た感情を抱いていた
口と両手足をガムテープで拘束された寝顔からして美しい女性は
多くの男性にとってリビドーの対象だろう・・・実際俺もそのつもり
で「購入」したハズだった、いくじなしなのだろうイザ目の前にすると
そんな感情は消えていた・・・
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.10 )
- 日時: 2011/02/03 11:35
- 名前: うそつき狼 (ID: yZ7ICI8F)
歪んでいく・・・俺の愛情は醜く歪んでいく・・・そんな実感があった
「また『あっちゃん』が飯作ってんのかよ」
仕事帰りの俺はバッグをダイニングの椅子に置くとリビングのソファー
でテレビを観ている優子に言った
「だって敦子の方が料理上手いんだもん」
すねた様に言う優子が可愛かった
「お風呂用意してきますね」
そんな俺達の様子を見て微笑みながらあっちゃんはお風呂場へ行った
あっちゃんがウチに来て3日、バカみたいに笑って過ごしていた、しか
し確実に歪みは大きくなっていた・・・歪ませているのは俺だった
「あっちゃん17なの?」
食事をしながらの何気ない会話だった
「私の年齢考えたら大体判るよね?」
優子はサラダを盛った皿を俺の前に置いた
「学校は?」
場が静まった・・・あれ?いや・・・3日経って気づくのもアレだが何
で『男に騙された』筈の優子の借金に『妹』が絡んでいるんだ?親は?
親戚は?
「ウチ両親居ないのよ、施設育ちなの私達・・・お金もなかったからね
私も敦子も高校行ってないよ」
優子が流れを断ち切る様に言った
「俺が出すから高校行けよあっちゃん」
「そういうのいいって・・・」
優子の辛そうな顔をわざと無視した
「あっちゃんはどうしたい?」
「それは・・・行きたいですけど・・・」
「ならいいじゃん」
俺は優子のたった一つの願いすら自分のエゴで聞き入れなかった
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.11 )
- 日時: 2011/02/04 01:13
- 名前: うそつき狼 (ID: yZ7ICI8F)
毎朝思う事がある、薄いドアで隔てて夢と現実が隣り合わせに存在して
いる
こんなに暖かい世界もドア1枚で冷たい世界に変わる
「遠藤君はほら生活に余裕があるから・・・」
工場長に呼ばれた時嫌な予感がしていた
「いや・・・俺も仕事がないと・・・」
もう決定事項なのだろう、どうせ足掻いても仕方ない
顔の傷の事で色々言われてたのは知ってる、宝くじに当たっても
淡々と働いている事で「守銭奴」と言われていたのも知ってる
欲しかったのは「金」じゃなかったのに・・・
家に帰ると台所で優子と敦子が楽しそうに料理を作っていた
「おかえり」
優子が鳥のから揚げを俺の口に押し込んだ
『辛くても嫌気がさしても明日へ歩こう』
俺は優子の笑顔を見ながらそう思った
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.12 )
- 日時: 2011/02/04 01:40
- 名前: うそつき狼 (ID: yZ7ICI8F)
朝のファストフード店で俺は求人誌を広げていた、なんとなく二人には
知られたくなかった
「久しぶり兄貴」
声をかけて前の椅子に座ったのは外見は派手になったが人懐っこい笑顔
は少しも変わらない妹の友美だった
「ポテトもらいっ」
勝手に俺のドリンクを飲みポテトを食べる友美に俺は黙って金を渡した
「飯食ってないのか?」
「母さんとアノ男と顔合わせたくないのよ」
友美は遠慮なく買って来ると食べ始めた
「兄貴は?顔色良さそうだけど」
「今女の人と暮らしていてな」
「彼女?」
友美は指についたソースを舐めながらいった
「まぁそんなモンだ」
まさか「買った」とは言えず俺は誤魔化すように求人誌に視線を落とし
た
「兄貴・・・母さんが会いに来いってさ」
「今更会う必要もないだろ」
「私が頼んでもダメかな?」
友美の弱気な言い方が気にかかり俺は顔を上げた
「うまくいってないんだよね・・・ウチ」
隠し事をしている時の友美のクセが出ていた
「高校もさ・・・辞める事になるかもしれないんだ」
「スナックだろ?売り上げ悪いのか」
「アノ男が持って行っちゃうのよ・・・母さんは完全に兄貴をアテにし
てるよ」
暗い顔をしている友美の頭を優しくなでた
「ウチ来るか?」
優子や敦子に会えば明るくなるかな?と思った
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.13 )
- 日時: 2011/02/06 02:46
- 名前: うそつき狼 (ID: yr0rtNnI)
家に帰る前に優子と敦子に口裏を合わせる様に電話してから帰宅、優子
が予想以上に可愛かったのが興味を引いたのか敦子と三人でガールズト
ークに花を咲かせていた、ボロを出さずそつなくこなしている辺り優子
も敦子も役者だと言えた
「友美まだ食べるだろ?」
ビールを出すついでにすき焼きに使う卵を出しながら友美に言った
「うん」
外見こそ「イマドキ」の格好であるが中身は昔のままだった
「向こうの家には電話しておくから今日は泊まっていけよ」
コードレスフォンを手にし隣の部屋へ行き電話をかけた
「なんだいアンタか」
スナックの雑音に紛れ母親の声が聞こえた
「友美こっちに泊めるから」
「そんな事よりアンタお金用意してくれるのかい?」
俺はため息を吐いた
「カワイイカワイイ妹に会わせてやったんだ、多少は色つけて欲しい位
だよ」
「友美の顔を立てて話は聞くよ」
俺は電話を切るともう一度深く息を吐き出した
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.14 )
- 日時: 2011/02/06 11:51
- 名前: うそつき狼 (ID: yr0rtNnI)
東京というより千葉に近い町にある寂れたスナック「T&S」母親はここの
女主人だった、下品で古い内装も下世話に豪華なシャンデリアも昔1度
だけ来た時と変わっていない
「あいにく酒しかないんだ、水割りで良いだろ」
母はくわえタバコで水割りを作り始めた、俺の幼い時の記憶では彼女は
タバコをたしなむ人ではなかった、時は無情に人を変えた
「旦那がさ・・・旦那って言っても籍は入れてないんだけどさ・・・」
彼女は自分勝手に語り出した、俺は薄い水割りを飲みながら現実をかみ
締めていた
「金は用意するよ、それに友美の学費も俺が出す・・・悪いけど流行っ
ているワケじゃなさそうだしね」
俺は水割りを一気に飲み干すと息の詰まりそうな店をあとにした
母親はどうでも良い、友美さえ幸せならそれで満足だ
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