ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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Program
日時: 2011/02/11 11:20
名前: 故 ◆KJbhM1uqv2 (ID: QSygN.Tt)

はじめまして故と申します。

という、語り方でわかるかもしれませんが久しぶりに戻ってまいりました(否、知らない方わからない方には関係ないのですので特に気にする必要はないです)


なんか他のに似ていたらごめんなさい。

《注意書き》
・更新がある日突然止まる確率があります。(努力はいたしますが)
・グロくてスプラッタなものにどうやらなりそうです。

 以上のことが本当に嫌な方はUターンお願いいたします。


最後に
暇な方、駄文かもしれませんがどうぞごゆっくりしていってくださいね。
忙しい方、たまには愚者の戯言でも聞いてみませんか?

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いろいろ ( No.2 )
日時: 2011/02/18 19:56
名前: 故 ◆KJbhM1uqv2 (ID: QSygN.Tt)

まず最初に、読もうとしてくれた人感謝!


そして、すみません。NO.0のパスワードを忘れてしまいました。
ということで、そこに書く予定だった連絡代わりにここを使います。

《連絡》
特に無し。いつかオリキャラを募集することになったらここに書くかも。

《目次》
Prologue >>001

私の不幸なる日常
#0.#1 >>003 #2 >>004 #3 >>006 #4 >>007 #5 >>008


《キャラ紹介》

三上 照佳 (Shoka Mikami)
この話の主人公(予定ww)いつでも強気な感じだけれど、実際に強いわけではない。友達思いの中学2年生。
自称、特段に何かが出来るわけでも、得意なわけでもない普通の女の子。
他称、頼もしくって信頼できる子。

野田 具美 (Tomomi Noda)
クールでかっこいい少女。刀を背負ってるのが似合うと何故か言われているが実は運動は全く出来ない。
成績は結構よくって意外と冷静な子。だけど、ツンデレ

磯部 花梨(Karin Isobe)
お嬢様で天然な可愛い子。だけど、言っていることは無意識なのに残酷。空気が読めない子。


《単語紹介》
いつか更新すると思う。

私の不幸なる日常 ( No.3 )
日時: 2011/02/20 12:58
名前: 故 ◆KJbhM1uqv2 (ID: QSygN.Tt)

#0

——言い訳になっちゃうかもしれないんだけれどさ、私は好きだったんだよ? あんたのこと友達だって思ってたんだよ? だから、あの時あの瞬間正直裏切られた気がした。

#1

 もしも、もしも二次元じゃなくて三次元という名の現実にパンを加えたまま走っている少女がいたとしたらどう思う? いやいやいや、そんな人いるわけないじゃないかなんていう突っ込みはなしね? ストレートにそんな人がいたとしたら貴方はどう思うのかなぁという問であって、その存在について肯定したり否定してもらいたいわけじゃないの。
あくまでも、そんな人がいたとしたら……という話なわけで、まじめに電柱柱に頭を叩き込んで死ねとかそういう意見が欲しいわけじゃないの。


 え、矛盾している? ならばもっと簡潔にきこう。貴方はその人に対して「変だなぁ」と思うか「痛い子だなぁ」と思うか「別にそんな人がいてもいいんじゃないかな」と思うか「むしろ自分」と思うか、まぁそんな感じでいわゆる「だから、どうしたの?」的な生産性のない答えを期待していたわけ。


 それで問が大分長くなってしまったけれど、あなたはどう思う?


 私はさ……うん。何もいえないな。コメントするという行為自体が間違っていてそれはそれで一つの心霊現象として認めちゃっていいんじゃないかなとか、そんな気がしてきちゃった。


 だってその人はあまりにもお約束的すぎたから。パンを食べながら走る。それならまだ一昔前の少女の憧れ(?)による暴走ですんでしまったのかもしれない。しかし、この場合その人は塀を越えるという本気の学校への近道をしようとして、しかも其処からお約束どおりの転落。で、その転落したところで受身を取れなかった可哀想なイケメンの位置に私が存在した。本当に運が悪い。さらに、たちの悪いことにその少女は一昔前のセーラー服に三つ編みという王道パターンの見た目。なのにだ……驚くほどのブスさだったわけ。


 三次元では中々にありえないブス少女。太ってたり痩せすぎたりスタイルが悪いわけじゃないのに、漂ってくるはブスオーラ。私は現実には本当に見るに耐えないほどのブスなんて存在しないと思っていたが、実際にいないわけではなかった! どっかの学者が絶滅したはずの生物を見つけたとかなんとかニュースでやっていたけれど、その学者はきっとこんな気分だったのかな? と私は思う。否、ブス少女に失礼かもしれないけれど。


 さて、現実逃避を止めよう。この少女にどいてもらわないと私も一緒に遅刻してしまうからね。べ、別にあんたと話がしたいって……本気でしたくありません。見た目で人間を差別するなとかいいますが、残念ながらここまでひどいと話しかけること事態がイジメなんじゃないかって思えてしまうし。所詮言い訳なんだけどさ。


「えっと、どいてもらえないかな?」


 私はそういわれてはっとしたのかすぐに私の上からどく。ふぅ、太ってはいないって言っても私だって普通の女の子だからこの重さは意外ときつかった。ああ、全身がだるい。とりあえず、必要なことだけ聞いてしまおう。


「どうしてこんなに急いでたわけ?」


 私はそう聞いただけなのに彼女は恥ずかしそうに俯きながら手をもじもじさせる。一個一個の動作がぶりっ子みたいでなんかいらつく。ぶりっ子じゃなくってブスっ子なのに。
 そして、彼女はいざ口を開こうとして銜えているトーストの存在に気づき、手を解いき右手にスクバ左手にトーストという不自然極まりない格好になった。


「お姉ちゃんがお弁当忘れちゃったから届けなきゃいけなくって……。でも、お姉ちゃんの学校へのルートってこれしか知らなくて。だって、お姉ちゃんがいつもこのルート使うから」


 美、美声。まさしくロリ声。神様が見た目を優遇しなかった代わりにそのマイナス分をすべて声にまわしてしまったほどの美しいロリ声! すごい! 私は天使……いいや神様にあったのか? この子の場合みた目を気にしてしまったら終わりだ。この見た目じゃなくて声だけならもう完璧に美幼女だ。美少女じゃなくて。ただ、こんなんだといじめられなかったかが少し心配。


 しかも、お姉ちゃんって呼ぶんだよ? 自分の姉のことを。だって見た目的にはこの子中学生でしょ? それならば本当にレアな子だよ。パーフェクトにいい感じな子だよ。さっきまでブスっ子ブスっ子思っててごめんなさい。私は貴方の美声に降伏しました。


「な、なら。お姉ちゃんって何処の学校に通ってるの?」


 つい、美ロリ声っ子の役に立ちたくなっていってしまった。もし私と同じ学校だというのなら届けてあげたくなってしまって。こんな裏の裏の近道ルートなんて危なっかしくてしょうがない。いつも命が危険にさらされているこのルートなんて、私の知ってる限り具子くらいにしか使えない。だって、塀の上歩いたり屋根の上を歩いたりするんだよ? 確かにものすごく速いんだけどさ、そんなルート使う気になれるわけないよ。まぁ、実は別ルート、そもそも別の学校っていう落ちもありえるんだけど。


 ただ、彼女はどうしてここまでこの危険ルートを使ってこれたんだろう? うん、謎だ。


「お姉ちゃんの通ってる学校は……千鳥第四中学校だったと思うの。ごめんなさい、確信がもてないや……」


 ロリ声と合わせて美ロリ声っ子はぺこりと小さく礼をする。うん、できたらこのまま顔を見せないで会話がしたいな。声を聞くと幸せなのに顔を見た瞬間なえるっていうのをあんまり繰り返したくないからさ。


 それで、千鳥第四中学校って今言ったね? 私とおなじ中学校って言ったね? 幸せ者の姉貴はわが中学校にいるって言ったね?


「よし、私が弁当届けてあげる。ちょうどおなじ中学校だし。だから、お姉ちゃんの名前を教えてもらっていい?」
「ありがとう! えっとお姉ちゃんの名前はのだともみっていうの。あ、私はかおるって言うんだよ?」


 それにしても声とセリフはあってるにしても、年とセリフはあってないなぁって思……え?


 今何、この子野田具美って言ったよね? あのクールビューティーにして日本刀が似合う女具美っていったよね? あれ、私の友達の妹だったってわけ? この狙ったような偶然の中でこれはなんなの? 運命とかそういうのだったの?


 とりあえず、私の聞き間違いだった確率もあるしもう一回聞いてみよう。


「お姉ちゃんの名前は野田具美っていって、二年B組の女の子。クールな冷静少女だよね?」
「うん。全部あってるよ。じゃぁ、このお弁当ボックスもってって!」


 ……遺伝子ってなんなんだろう? そんな事を思いながら私は彼女の左腕にかかっていたお弁当ボックス(幼稚園で見かけるようなゆるーい熊ではなく、リアルで北極にいそうなくまのプリントつき)をもらう。う、これ私の持っている弁当箱の二倍くらいの重さじゃない。見た目はおなじくらいなのに。弁当の中に何いれてんだろう? 箱自体は私の記憶の中では普通のキティーちゃんの奴だったはずなんだけどなぁ。
 まぁ、弁当箱は受け取ったしとっとと学校に行ったほうがいいのかな?


「じゃぁ、また会えたらね」
「うん」


 美ロリ声っ子——かおるはそう言うと、手を大きく振ってくれた。やっぱり、見た目もロリっ子ならすばらしいなと思う。けれど、しょうがないか。私は手を振りながら学校に向かって走り出した。後ろをむいていても電柱にぶつかるような馬鹿はしない。
 その時、かおりはふと何かを思い出したのか焦ったような顔をして、叫んだ。


「今日お姉ちゃん誕生日だから、ちゃんとお祝いしてあげてね! あんなお姉ちゃんだけど誰もお祝いしてくれないと泣いちゃうから! だって、お姉ちゃんのお友達なんでしょ?」
「うん。お祝いしてあげる。心のそこから」


 ……忘れてた。否、初めて知った。彼女の誕生日なんて。今日だったんだ。今日の朝、かおるちゃんと会えてよかった。

私の不幸なる日常 ( No.4 )
日時: 2011/02/20 13:03
名前: 故 ◆KJbhM1uqv2 (ID: QSygN.Tt)

#2

——キーンコーンカーンコーン

 典型的な学校のチャイムがなり響く廊下で私はまさに全力疾走を続けていた。まぁ、つまりは遅刻なんだけどチャイムはまだ半分しかなっていない=あと半分のチャイムの間に教室に滑り込めれば遅刻回避というわけで、そこは必死にならないわけには行かなかった。

 たかが遅刻くらいかもしれないけれど、私のクラスの担任怖いからね……今時体罰とか時代遅れと私は思う。しかも、廊下でバケツもって立ってろだよ?

 否、私たちには授業を受ける権利があるからさぁそれは駄目なんじゃないかなとか反論すればあいつは「人生の勉強だ」と叫ぶ。こういわれてしまうともうあきれてしまい反論する気も失せ、なんだかんだで罰を受けることにと……。余談だけど、この体罰教師は教職12年目に突入してしまっているらしい。よくPTAとかになんか言われなかったものだ。


 と、そんなことを考える前に遅刻しないように走るかその言い訳を考えなきゃ。あの担任は確かに体罰教師だが、幸いなことに一方通行な感情をふりまく熱血教師ではなかったから、一応言い訳があれば聞いてくれる。もしかしたら向こうとしては言い訳を聞いているのではなくて、死ぬ前の遺言を聞いている気分なのかもしれないけれど。

 まぁ、そんなのどっちでもいい。私はバケツを持って廊下に立ちたくないだけ!


——コーンカーンキーン……ぎぃぃ!!


 よし、間に合った。席はこの場合幸いにも一列目の教師の目の前。あと二音くらいの間でも滑り込むことは可能!
 もともとこの勝負の分かれ目は軋んだ嫌な音をたてる扉を開けることが可能か、不可能かにかかっていて、遅刻したとしてもここで到着できれば体罰教師は努力したとか何とか言って罰を軽くしてくれる確率もあった。


 なんていう風に私は軽く油断していたわけだ。まさか、まさかここであろうことかあんなドジを踏むとは思っていなかった。正確には私が悪かったんじゃないって言い張れるようなドジを踏むとはね……。


 私は恨むよ、野田具美! あんたが教室の一列目それも扉に一番近い席に座っていて、わざとかなんなのかは知らないが体操着の袋を扉の目の前に転がしっぱなしにしていたという事態を。そして、黒板の隣の掲示板的な場所の前に、前回の掃除で机を置いたあんたを。その上にたまたま花瓶と素敵な花を置いたこのクラスの誰かを!!


 いってしまえば私はその体操着袋に躓いて、引っかかって転び、そこにその机があってそれを軽く揺らし、たまたま机の端においてあった花瓶が宙を舞い花を左右に散らし、花瓶とその中の水と花の一部が私の頭上に落ちて、もう片方の花の一部などが重力に反し体罰教師の頭上にいきそして……。


 どんなに格好よく描写しようと事実は一つ。馬鹿な私は転んでから水とガラスまみれになり、体罰教師は運命のいたずらか花まみれになったというわけ。しかも、私のほうはまだ不憫だとしても教師の方には不満がたまっている上にその姿があまりにもこっけいだったから——


「先生……花が花が花が……うぁっはあっは!!」
「ちょっとなんだ、これ! うける。まじうける」
「そーえばさー、この前ね先生結婚したんだってさぁ。花子って言う人と。花屋の人みたいなんだけどさ、この姿見てやりたいよね! どんな反応するかな?」
「汐、ちょっと言い過ぎだって」


——教室は文字通り爆笑の渦となり、先生はその現実を捉えられないのかぽかんと口を開けっ放しで茫然自失状態。私は水浸しになったままで、ことの元凶——具美の方を見る。そもそも、私が遅刻しかけたのだってあんたが弁当忘れてそれをかおるちゃんが届けにきたからなんだよ!


 という風なことをこめてにらみつけると、彼女は何時もはほとんど笑わないくせに小さく、口の中だけでくすっと笑う。私をまるで馬鹿にして哀れみ、同情しているような微笑を浮かべながら、くすっと。しかも、手元では筆箱に入れっぱなしにしているカッターをいじくっている辺り、私なんて道端に生えている草と同レベルにどうでもいいといわれているようで、なんかむかっとくる。


 美女が微笑むと美しいというみたいだけれど、この黒い長髪のクールビューティーが笑うと嫌味にしか見えない。その微笑に含まれている成分からだけじゃなくて、もっと根本的な彼女の性格からしてもそううとしか見えないような成分構成なんだろう。


 あぁぁ嫌だ! ここで怒られるのは絶対に私なんだ。どんなに私が悪くなかったとしても、遅刻しかけたのは私だし間接的にも花をぶちまけたのは私。ここに神様の運命のいたずらが絡んでいようがいまいが関係ない。神様は裁けなくて、目に見えてこの事態を引き起こしたのは私なんだから。


 平安貴族が羨ましくなった。何でも呪いのせいに出来るから。雨が降らないのも日照りが続くのも、天皇が死んだのも雷が落ちてきたのも、みーんな誰かの怨霊とか誰かの呪いで片付けられちゃうから。
 本当の殺人事件が起こって、そこで殺された人から見ればいい迷惑かもしれないけれど、結局その時代ではそれがルールだから。みんな生まれた時からそう信じているから、否定できない。否定できる要素がないし、否定すれば呪われて、それで死んでしまえば死んだことが肯定となってしまう。難しいったらありゃしない。


 閑話休題、まだ朝起きてから一時間ほど。それだけの間にこんなに現実逃避をする必要はない。
 なんて思っていたら、落雷した。私の耳に、大きな声が。


「な、な、な、何をやっている三上! さっさとこれを片付けろ!」


 声、無駄に大きいんだよ! 頭に響いて割れそうじゃん。こんなに近くで必死に叫ばないでよ! 迷惑じゃん。
 言葉には出さないけれどそう叫びたくなって、でも叫んでもしょうがないしこれを片付けないわけにも行かないから、教室の端の雑巾賭けまで歩き出そうとしたその時……。


「あ——……」


 体罰教師の馬鹿。ガラス製の花瓶が落ちてきて、それが割れて無事な人間がいるか。少なくともガラスのせいでどこか傷を負うに決まってて、それのせいで私が——。


 血が足りない……。

私の不幸なる日常 ( No.6 )
日時: 2011/02/20 13:08
名前: 故 ◆KJbhM1uqv2 (ID: QSygN.Tt)
参照: ……他の人の作品にコメしたい→反応してくれるか怖い(ジレンマ)

#3

「だ、大丈夫かな、かな?」
「何故、ひぐ○しのレナのまね? それよりも、どうして私もつき合わされているんだ?」
「友達でしょ?」
「どこが……」


 何か声が聞こえる。二人の少女の声が、頭に木霊してガンガンと響く。耳元で喋っているのかな? それにしてもどうして二人の声が耳元で。しかも、私は今どこかで横になっているみたいだし、妙に温かいし。背中と腕の裏側がひりひりと痛むし。なんなんだろう?


 怪我でもしたのかな? それで何かあって倒れて、保健室とか。うん、それが一番ありえるし現実的。ただ怪我の原因は……思い出した! 教室で思いっきり転んでそこで花瓶が落ちてきたんだっけ。で、血が足りなくなって。そうそう、そうだった。でも、だとしたら今は授業中で二人が保健室に何でいるのかな? もしかして、私が昼休みまで寝込んでましたとか、そういうことなのかな? ——夜眠れなくなりそう。


 まぁ、いつまでも目を瞑っていてもしょうがないからとりあえず起きよう。ゆっくりとまぶたをあげてゆくと、知らない茶色く汚れた天井が見えた。次に目に入るは薄い桃色のカーテンと灰色のカーテンレール。で、三番目が……。


「あっ起きたよ。生きてるかしら?」
「生きてなかったらおきねーよ」
「え、でもこの前の恋の解剖の時はいくら切ってもひくひくしてたし……」
「それは痙攣っつーんだよ。そして、恋の解剖ってなんだ? どこをどう解剖するんか?」


 無関心な顔をしながらもベッドに座っている黒い長髪の美少女と、二つのくりくりした目で私を覗き込む茶色の天パの可愛い子……具美と花梨が目に入る。まったく、私がこんな大怪我(といっても良くわかんないけど)を負ってるのにのんきなものね。まぁ、そこが二人のよさだし、なんかそれを見ると痛みとか普通にどっかとんでっちゃうしね。花梨のボケすぎたボケに具美の突っ込み。切れ味が最高。いいもの見たって感じだよ。私も巻き込まれよう。


「恋の解剖っていうのは、恋の中の成分の確率(?)を測定することじゃない? 例えば、ツンデレとノーマルな男子の場合は1%愛、2%嫉妬、97%意地だね!」
「おい、それはひどすぎだろうが! 愛が1%って愛じゃねーよ! そして、起きて一言目がなんで心配してくれてありがとうじゃなくて、そんなどうでもいいようなボケなんだ! ちょっとだけ優しい上向きの眼差しで‘あ、ありがとう’とか言ってくれるのを期待してたのに……ってそれもきもいだけか」
「もう、具美はボケるのが下手よ! あなたは突っ込みだけでいいのよ」
「っさい、花梨」


 クールビューティー具美、天然お嬢様花梨を目の前にして完全敗北。それにしても、この人たちは私を元気付けるためにこんな馬鹿な会話をやっているのか。それとも最初はそういう狙いがあったけれど、途中からそれはじめたのか。または、そもそも私が怪我して保健室にきたっていう事実を忘れているのだろうか?

 ——絶対三番目だ。ちょっと失望した。この二人を見て間髪無しに三番目だって判断しちゃった自分に。否、逆にそれ意外のことがあるほうが奇跡なんだけど。この二人に心配されても、それは世界の滅亡を示しているような気がして怖くて怖くてしょうがないし。


「んで、調子はどうか? 今、なんか知らねーけど保険室の先生が出かけててさぁ、ったくガラス突き刺さって大変な生徒に、適当に消毒して包帯巻いただけで彼氏とデートに出かけるとか色々とありえねーと思うんだけど」
「うそっ! あの先生に彼氏いたの? 絶対、花の二十代が終りかけているのに彼氏の一人も出来ずに焦ってるんだと思ってたよ……。その彼氏ってだれなの? 私が知ってる人なのかな?」
「花梨、その前に照佳の怪我を心配してやれよ」
「いーつもすまないねー」
「それは言わねー約束だ……なに言わせてんだ!」


 クールビューティーっていうのは見た目だけで、中身はやっぱり馬鹿だけど男勝り。そのギャップに萌えるのかもしれないけれど。


 それにしても、保険の先生彼氏いたのか……、捨てられないといいんだけど。あの人、見た目とかその編はともかく根はちゃんとしたいい人だからさぁ、幸せになってほしいっちゃなってほしいんだよね。でも、男の人としてはああいう人なんか疲れそうな気がする。色々とまじめだしきっちりしてるし、バリバリ働いているし。デートで教職さぼる人の何処がまじめできっちりなのかはよくわからないけど、今日はきっと例外なんだ!


「で、そんな冗談いえるんだから完全復活してるよね?」
「え、否まだいたいかもったったった……」
「照佳……うそっぽすぎるよ。ていうか、わざとなのよね!?」


 ちっ……あの体罰教師の授業は午後だから、このまま苦しんで早退するか、保健室のお姫様のままでいたかったのに。まぁ、こんな塩素のにおいのする真っ白い部屋、さぼれるわけじゃなかったらごめんだけどさぁ。花梨ったらそこは突っ込まなくていいのに、私がわざとやっているのを気づいているのならば。昔っからかりんはそういうところあるけれどさぁ。


 例えば小学校の頃担任への嫌がらせで、机の中をめちゃくちゃにした男子がいたんだけどさ、そのころみんな担任が嫌いだったから、みんなで犯人のことを知らないふりしようとしたことがあったんだけど、花梨ったら犯人摘発しちゃってさぁ。まぁ、家がお金持ちで可愛いからはぶろうとしてもはぶれなくて、今みたいな腐れ縁になってしまったんだけど、よくKYとか言われてた。


 まぁ、今回のことは昔のこととは質も状況も違うけど、とにかく花梨は空気読めない。其処が天然っぽくてかわいらしいんだけど、見た目が普通だったりつり目だったらこの子は成立してない気がする。


「じゃぁ、次の時間からでるね?」
「……わかったよ。次はなに?」
「五時間目で担任の授業」
「うぇ! さぼろうと思ってたのに」
「精々運の悪さを恨むのよ」
「花梨、それ似合わないから!」

 運が悪い……その通り。その悪役じみたセリフはどこまでも似合わないけれど、今日は本当に運が悪い。運悪いって嘆くだけで今日一日終っちゃうのかな? 否、何かあった。そう、ただの不幸な日じゃなかったはず。今日の朝会ったかおるちゃんがなんか言ってた。すごく重要なことを……。


「あ! お弁当。具美、お弁当ちゃんと受け取った?」
「ああ。お前が持ってきてくれたの確かに受け取って、さっきたべおわったけど、それがどうかしたか? お前が転んだせいで思いっきりひっくり返ってたけど」
「ふーよかった。私が遅刻したのもこのお弁当の生だったから、それで具美に届いてなかったらもう悲劇だったよってあぁぁ!」
「どうかしたのかしら? 気が狂っちゃったのかしら?」
「お前の思考回路の方が狂ってる!」


——そうだ、今日は具美の誕生日ってかおるちゃんが朝言ってたんだった。それで、学校ついたら花梨にそれを知らせて、二人で具美お祝い計画でも立てるつもりだったんだ。幸いにも花梨は私の右隣だし、授業中はなしてても一列目って実は見えにくいから中々ばれないしね。一個気になるところがあるのなら、具美が花梨の右隣だってことなんだけど、そこはあんまり気にしないでおこうって。


 どうしよう。この空気からして花梨は誕生日のこと知らないし、具美もどうでもいいっておもってる。だけど、お祝いしなければ可哀想だし……もういいや。悩むのが面倒くさいし言ってしまおう。


「ねぇ、具美」
「なんだ? っていうか、どうしてベッドの上で正座をする?」
「え?」


 あ……本当だ。なんか無意識に正座をしてしまったみたい。どうしてだろうか? もしかして、まじめなことを言おうとしてついとかそういうこと? これについても気にしない方向でいこう。


「あ、気にしない方向で。それでさぁ……」
「誕生日おめでとー!!」
「セリフが取られた!?」


 うそ、この雰囲気で何故乗り込んでくるわけ? しかも、私と具美が話している間に横からって花梨、ある意味その度胸すごいよ! もう涙が出てくるほどすごいと思うよ。私がこんなに迷ったというのに……。
 でも、もっとすごいのは具美の方。私たちがそんな事を言っているのを見て顔は茹蛸のように真っ赤に、目といえば猫のように真ん丸く大きく見開いている。私たちが誕生日を祝ってくれたのが意外なのか、知っていたことが意外なのか、まさかとは思うけど怒っているのか私にはわからないけれど、なんかちょっと嬉しい。なんだかんだで結局はクールで無表情な具美をそんな顔にさせたこととか。


「あ、ありがとう……」


 具美はそう本当に小さな息のような声で言うと、どかどかと大きな足音を立てながら保健室から出て行ってしまった。保健室の床は白いタイルで、彼女の上履きの音が鈍く響く。


「デレてたのかな?」
「お願いだから空気を読もうよ!」

私の不幸なる日常 ( No.7 )
日時: 2011/02/18 18:59
名前: 故 ◆KJbhM1uqv2 (ID: QSygN.Tt)
参照: ……他の人の作品にコメしたい→反応してくれるか怖い(ジレンマ)

#4

「それでさ、二時間目の英語で先生がHe is praying for the basketball game. っていう例文を読んだの。それで帰国子女の子がそれじゃぁバスケットボールの試合について祈っていることになります。正しいのはHe is playing for the basketball game. です、って言って大喧嘩になったの。で、結局英語の先生の方が正しかったんだけどね、みんな帰国子女のこの味方になるから、世の中って不条理だなぁって」
「……どうでもよくない? っていうか、どうでもいいよね!」
「世界なんてどうでもいいことであふれてるんだぞ!」
「かっこよくまとめた!」


 なんだかんだで具美が帰った後も花梨は保健室に居座っていた。本人曰く「教室にいても暇だし、具美もあれじゃぁからかって遊べない。∴私は保健室に居座ってやる」という、どこか間違った証明をしていた。

 それで、∴のマークが茶畑の地図記号に似すぎているのかいないのかで口論になって今に至ってしまっているのだけれど……え? そんなことは生きているうちで知らなくていいし、考えるのも無駄? 確かにそうかもしれないけれど、世界なんてどうでもいいことであふれているんだ! という花梨の意見には同意するわけで、別に知りたい理由とかそういうのはあんまり気にしない。


 どうせ生きているうちで交わす会話の中で覚えていることはほんの少し。昨日の朝、妻と会話したか思い返せば実はいってらっしゃいさえもいってなかったりする。次に相手とあって話すときにおなじ話をされてても気づけないことだってあるし、逆に自分が話したということを忘れもう一度おなじ話をしていたりする。


 むしろ、教室の半分をしめる少女たちが交わす会話なんてもっと不毛なものの方が多いじゃない。


 誰と誰が付き合ってる? 誰が誰を好き? あの二人が絶交した?
 知らなくて存する話じゃないけれど、無駄に古い情報によって周りを困惑させたりしてしまうような話、知っていてどうするの?

 色物の事件のニュース、アイドルのスキャンダル。
 私は話している意味がよくわからない。だって、違う星に生きている人のことなんて興味ない。

 あの人がかっこいい? あの人がかわいい? あの人をいじめよう? あのブランドいい感じ? あんたの筆箱がかわいい? だから?

 長いものには巻かれろというかもしれないけれど、あんな意味のない社交辞令を繰り返すような人とはあんまり話したくない。すごい疲れるから。相手に合わせていないといけないから。


 昔はあの渦の中にいたことだってあった。それで、渦の外に生きている人を地味に馬鹿にしたり、私たちは仲良しなんだとか言い張ってみたり。だけど、学校がちょっと変わったりクラス替えがあったりするだけでもう二度と話さなかったり、気づいたら相手を嫌っていたり。
 昔は大好きだったパパが、今では鬱陶しくてしょうがないような感覚とは違う。私はパパがいないけれど、きっとそうなんだと思う。


 考え方が狭い? そうかもしれない。排他的で内向きな性格? そう捉えることも可能。他人に興味がないって、生きて行くのに辛いよ? 生きるのが辛くない人なんて見たことない。生きるってことは逃げられないってことなんだから、苦しくないわけがないんだって。前へ進むことが嫌じゃない理由なんてあるはずないんだって。


——キーンコーンカーンコーン


 本鈴まであと十分という予鈴が電気さえついていない保健室にも平等に鳴り響く。チャイムが鳴り始めるときに「ポコっ」というスイッチを入れる音がするのがなんかスイッチを押すのが手動っぽくて可愛いと思う。どうでもいいんだけど、これはイギリスのどっかの教会のチャイムの音らしい。詳しいことは知らないんだけれどね。


 ただ、兎に角そろそろ教室に帰らなければ。保健室でいつまでも寝てたかったけれど、具美に授業出るって伝えちゃったからね。よし、行こうとか何とか花梨に伝えようと思いさっきまで彼女が座っていたところを見ると、何本か細かい皺が走っているだけで彼女本人は座っていない。

 すると、今度は小さく端が開いているカーテンの向こうからカサカサというシャーペンをはしらせるような音が聞こえてくる。ちょっと気になったので、私はゆっくりと上履きに足を入れ靴紐をしっかりと結んで立つ。一瞬めまいがして、足から力が抜けてゆくような気がした。けれども、倒れる前にベッドに手を着き倒れずにすむ。と思うと今度はガンガンと頭が痛くなる。まるで、朝俯いて本をずっと読んでいたときみたいだ。だるい体に鞭をうって二、三歩動くと体が大分安定してきた。途中途中頭が痛くなるけれど、それも大分ひいてゆく。


 やっと普通の平衡感覚が戻ってきて歩けるくらいになった時、カーテンの間から花梨は文字通りひょっこり現れた。その、ひょっこりというのはブレザーのリボンがあるところから上だけがカーテンの隙間から覗いていて、それがなんとなくモグラがひょっこり現れたっていうのを想起させたからなんだけど。


 そして、私が立っているのを見ると、まるでお化けを見つけてしまったように目を見開く。私は普通に唯立ち上がっただけだというのに。まぁ、しばらくしてちょっと太ももの裏辺りが痛くなってきたけれど、なまってきているだけだろうし其処まで気にする理由なんてないでしょ? もしかして、足とかにでもガラスの破片が刺さっていたのかな? そういえば、太ももってずっと布団にもぐりっぱなしだったから怪我してないか確認してないよね?

 そういえば、この簡易ベッドに松葉杖が立てかけてあったけれど、もしかして私よう?

「えっと、何で歩けるの……かな、かな?」
「歩けるから歩けるんじゃない?」
「不毛な会話は止めようよ!」


 珍しく花梨のほうからふざけた会話が打ち切られる。それほどに驚いたみたいだ。まったく、足の骨が折れたとかそういうわけじゃないんだよ? 唯単に皮膚がガラスで切れちゃっただけじゃない。どうして松葉杖なんかが必要なのかむしろ私が理解できないよ。理解できない私がおかしいのかもしれないけどさぁ。


「つまりは、松葉杖いらないんだね? 優しい友達の花梨ちゃんが肩を貸してあげるっていうしぅちゅえーしょんは実現できないんだね!?」
「どうしてそんなに必死なの? しかも横文字がひらがなな発音だよ!?」
「気のせいだよ〜」


 花梨はへらへらと笑う。どうやら私を自らの理論に従わせることを諦めたみたいだ。うん、諦めってやっぱり肝心だね! と、おっとっと。あのことを聞くのを忘れるところだった。


「どうして、さっき私の簡易病室から出て行ったの?」
「ほら、授業に戻ることメモに書いておこうって思って。先生が帰ってみたらもぬけの殻なんて怖いじゃない」
「帰ってくる確証ないけどね?」
「さすがに帰ってくるでしょ」


——私たちはこう平和で日常をもうしばらくだけ続けていたんだ。


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