ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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      ワタシとアナタ。
日時: 2011/03/25 23:59
名前: 葵 (ID: LR1GMCO/)
参照: 貴女が死んでも,私は泣けない。

初めまして。
シリアス・ダーク小説に来たのは初めてですので,ご指摘お願いします。
書き方とか,色々…
あと,コメくれたら私嬉しくて今なら泣けます,いや,マジです(((真顔

では,荒らしと宣伝と私が嫌いな方以外は下にどうぞ。


▼本編
一個 >>001.>>002.>>003.>>006.>>007.>>008.>>009.>>018.>>023




▼お客様
N2様・銀弧様・稚瑠.(*´ω`*) 様・ハルナ様


本編へどうぞ。

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Re:       ワタシとアナタ。 ( No.7 )
日時: 2011/03/09 19:20
名前: 葵 ◆ufwYWRNgSQ (ID: LR1GMCO/)

何故私は,信じると一言言えなかったのだろう。
警察からの事情聴取などが終わり,私はパトカーで家に帰る事になった。
勿論,運転手は先程の警官だった。
他の警官は全て事件の事について聞き込みに行っており,皆いないらしい。


「また俺で,すいませんね…」

「貴方,落ちこぼれなんですか?」

「お,落ちこぼれって…。しかし,そうじゃ無いとは否定は出来ません…」


ズーンと効果音が付きそうな位,深夜さんは落ち込む。

車はちゃんと運転してるし,まぁ良いか。
深夜さんを見ていると,少しだけ愛美を忘れる事が出来る気がする。
……にしても,先程深夜さんが言っていた意味が,よく分からない。
何故いきなりそんな事を…?
まさか深夜さんは,此の“心臓狩り”の犯人を知っている…?
幽霊だと言う事も…全て理解している…?


「深夜さん」

「ん? 何ですか?」









「貴方は………“心臓狩り”の正体を知っているんですか?」


深夜さんは黙り込む。

嗚呼,もう直ぐに家に着いてしまう。
深夜さんが確実に何かを知っているのは,分かっているのに。
愛美の仇を取る為には,知る必要がある。
万が一深夜さんが私の味方をしてくれたら,私は愛美の仇を取れる。
深夜さんは仮にも警察だし,情報も色々と得る事が出来るだろう。


「知りません。しかし,人間でない者が犯人だと言う事は,分かっています」

「貴方も…見える人なの?」




「…はい。うっすらとだけですが。警察は職業上そういう非科学的な物を認めてはいけないのですが…」


仕方ありませんよね,と深夜さんは呟く。
家は目の前。

非科学的な物,と言われれば,確かにそうかも知れない。
科学で何とか解明出来る様な話では無いから。
皆,多分初めはそうだろう。
見たという現実から目を背けている奴等も,いるかも知れない。
認めるか認めないかは,本人次第でどうにだってなる。


「…雛菊さん,でしたっけ?」

「はい」

「貴女は………友達を殺した“心臓狩り”に,復讐したいとは思いませんか? 憎いとは思いませんか?」




憎い。
憎いよ。
とても憎い。
愛美を殺した“心臓狩り”が,とても憎い。

___復讐?
果たして其の行為をして,愛美は喜んでくれるのだろうか?
きっと死ぬ寸前は,恐ろしかっただろう。
“死”を見つめ直す直前は,生きていて最も怖い時間の内に入るとも言われている。
愛美,貴女は……復讐という哀れな行為を犯す私を,醜いと思う?

私は深夜さんの問い掛けに,静かに頷いた。
深夜さんは悲痛そうな笑みを浮かばせ,車を止める。


「貴女が“心臓狩り”に復讐をすると言うのなら,俺はどれだけでも協力しましょう。もう,人は殺されるべきじゃない…」


どうでも良いと,思っていた。
私以外の人間全員,関係無いのだと思っていた。
私だけが悲しい訳じゃない。
“心臓狩り”によって命を失った奴等の親族全員,悲しいんだ。
踏ん切りがつかなかった私の心に,遂に踏ん切りがついた。






「深夜さん,私…“心臓狩り”の犯人を倒したい」



そう私が言うと,深夜さんは嬉しそうに笑った。

Re:       ワタシとアナタ。 ( No.8 )
日時: 2011/03/09 21:50
名前: 葵 ◆ufwYWRNgSQ (ID: LR1GMCO/)

其の日は結局,細かな事は話し合わずに終わった。
メアドをお互いに交換し,近い内にまた会う事を堅く約束して。
早く戻らなければ,偉い人に怒られるのだと,深夜さんは呟いていた。
深夜さんの怒られている図が安易に想像出来る。
あの人,優しそうだけど頼りにはならなさそうだ。


「愛美…私,貴女の仇を取る。そして,皆が安心して暮らせる様にするから」


ずっと前に愛美と撮りに行ったプリクラを見ながら,私は呟いた。
愛美だけが笑ってて,私は無表情のプリクラ。
余り良い思い出では無かったが,次また撮りに行こうと約束した。
プリクラの中の愛美が,とても幸せそうに見えたのは,私の気のせいだったのだろうか?


———————————


次の日には,愛美のお通夜が行われた。
写真の中の愛美は笑っていて…少し私には眩しい位だった。
愛美の棺の前で静かに手を合わし,黙祷する。
愛美のお母さんの目の下は赤く腫れ上がっていて,更には鼻も赤い。
先程まで泣いていた事を物語る。

ごめんね,愛美。
泣けない私を怒らないでね。
貴女の仇を討ってから…泣きたくなったら,泣くから。

よく見てみると,彼方此方に警察がいる。
愛美が“心臓狩り”によって殺された,被害者だからだろう。
お通夜の終わり頃には恐らく,警察による通達がある筈だ。
夜中に道を出歩くな,と。
辺りを見回すが,深夜さんはいない。


「あの」


一番近くにいた警察に向かって声を掛けると,警察は少し怪訝そうな顔をした。
其れに動じずに,私は話を続ける。


「深夜 秀一という警察を知りませんか?」

「…お嬢さん,アンタ彼奴の知り合いか?」

「はい。一応は」


其の言葉に警察は眉を潜める。

どうやら,深夜さんは本当に警察内では厄介者扱いされている様だ。
だが,曲がりなりにも深夜さんも警察なのだから,一応役には立つだろう。
頭の回転は悪そうだが,其処は私がカバーすれば良い。
多分警察なのだから,一通りの武術は出来る筈。


「彼奴は警察に向いてない。正直,綺麗事ばかりを並べる奴さ。人を殺したく無いからと,銃さえ持たない。警察はそういう事が仕方無い物なのによ…」


ブツブツと小言を漏らす警察を放置し,私は其の場を後にした。

涙の匂いがする彼処は,苦手だ。
私は泣けないのに,皆が泣けるのが,羨ましく感じる。

…でも,良かった。
深夜さんが,普通の警察と違う人で。
心の底から,此の街を平和にしたいと考えている人で。
あんな,下衆みたいな奴等じゃなくて。





不意に,後ろから車がやって来た。
クラクションを鳴らされたから横に避けるが,まだ鳴らし続ける車に苛々が募り,私は振り返る。
見慣れない車に乗っていたのは,深夜さんだった。


「ごめんなさい! 仕事が中々終わらなくて…。メールしたんですが,そう言えばお通夜だと言う事に気付きました」

「別に良いですよ。携帯……嗚呼,圏外でした,すいません。……なんか,変な感じじゃないですか? 一応深夜さんの方が年上なんですし,敬語を使う必要は無いですよ」


車の助手席の扉を開き,中に入りながら言う。
深夜さんは,はははと笑いを溢す。


「俺の周りには,俺にキツく当たる奴等ばっかだったから…嬉しい。新鮮な感じすんな〜」

「私的に今の方が良いと思います。……余り,深く考える必要はありません。深夜さんがおかしいのでは無く,銃を持ち慣れてしまった,彼方の方がおかしいのですから。銃とは,簡単に人間の命を奪える物。だから怖いのです。其れを持っているからと,力に頼るのは間違っていると思います」

「やっぱ,雛菊ちゃんで良かったなぁって今更思った。…ありがとうな」


少しだけ照れ臭そうに,深夜さんは笑った。

武器などと言う,哀れな物を持つ人間の末路は,凄惨な物だ。
人を守る為に作られた筈の物が,少しずつ人を殺す為の物に変わっている。
武器を持ったからと力を振り翳し,簡単に命を奪う奴等。
腐っていると,いつも思う。
けれど,いつも私は巻き込まれたく無いが故に,知らんぷりを続けていた。







___もう,あの頃の私じゃない。

Re:       ワタシとアナタ。 ( No.9 )
日時: 2011/03/12 15:08
名前: 葵 ◆ufwYWRNgSQ (ID: LR1GMCO/)

「で,雛菊ちゃんに策はある? 俺は無策…」

「勿論考えて来ましたよ。以前其の…“心臓狩り”の犯人には接触されましたから。“心臓狩り”の犯人は———」





「ちょ,雛菊ちゃんストップ!」


話の途中,深夜さんは車を止めてまで,私の前に手を出した。
深夜さんは頭を抱え,ちょっと待ってね…と呟く。


「つ,つまり,雛菊ちゃんは犯人に会った……って事?」

「はい。学校にいた時に,向こうから来たんです。少女の声でしたから,多分目撃情報は間違っていないと思いますよ」


先程渡された書類に目を通しながら,私は言う。
書類をパラパラと捲って行く途中,気になるページを見付けたから,戻った。

綺麗な茶髪に,白い服を纏っている少女。
声は高めで,顔は不明。
身長は低め。
___目撃情報より。


「………にしても,目撃情報って…変ですよね」

「ん? どうして?」

「幽霊ならば,姿を消せるんじゃないんですか? 意外に幽霊って,不憫なんですかね…」

「確かに…。そうしなければならない事情があった? ……いや,自らの存在に気付いて欲しかった…?」


考え込む深夜さん。

茶髪に,白い服の少女。
覚えが無いと言えば嘘になるけど……うっすらとしか覚えていない為,よく分からない。
…断言も,出来ない。

ズキリと頭が痛み,思わず頭を押さえる。
深夜さんが不安そうに,私の顔を覗き込んで来た。


「大丈夫?」

「………大丈夫じゃないと言った所で,何ともならないでしょう。其れにもう…平気ですよ」


心配を掛けさせる訳にはいかない。
どうせ,深夜さんとは此れきりの関係なのだから,余り親しくならない方が良い。
じゃなきゃ…離れた時に寂しくなる。
だからもう深追いしない様にと…前に決めた。
苦しくなるのは私で…深夜さんじゃない。

覗き込んで来た深夜さんの顔を,グッと押し戻す。
深夜さんは苦笑いを溢し,先程までの話に戻した。


「結局,雛菊ちゃんは犯人と接触した訳かな?」

「はい。顔とか…姿とかは見ていませんが,声だけは」

「何かを言いに来たんだよね? 犯人の言い分は?」

「………よく,分かりません。聞き取れない程か細い声で…でも,余り此の事件に関わるな,と」


深夜さんは目を丸くさせる。


「君にだけ? 何故君にだけ,そんな事を……?」

「分かりません」


……嘘では無い。
今の私に,“心臓狩り”の正体は分からない。
其れに……“心臓狩り”の目撃情報と,私の記憶にある彼女が,同一人物であるという事実も,分からない。
万一彼女が“心臓狩り”ならば,彼女は…彼女は死んでいるという事だ。





「___もしかして,“心臓狩り”は雛菊ちゃんの旧い知り合いなのかも知れない。雛菊ちゃんを殺したくないから,前もって忠告した。声だけしか聞かせなかったのは,姿を見せたら気付かれるから。目撃情報を出していたのは,雛菊ちゃん………君自身に“心臓狩り”が殺されたいから…かも知れない」

「……馬鹿じゃないんですね,深夜さんは。実は私…今思い出したんですが,彼女の声…聞き覚えがあります」


深夜さんは嬉しげに表情を輝かせた。

…認めたくない。
彼女はあんな酷い事を,簡単に出来る様な人では無かったから。
其れに…彼女が死んでいるとも認める事になる。
茶髪に,白い服。
彼女に全て該当する。


「けれど…心の何処かで,彼女じゃない事を祈っている私がいるんです」


当たり前だと言わんばかりに,深夜さんは頷く。

出来れば彼女でない事を祈るが,多分あれは彼女だ。


「名前は,覚えてる?」

「………分かりません。覚えているのは,憂と言う名前と,声だけです。顔すらちゃんと分かって無いんです」


頭が,痛い。
深夜さんは頭を押さえ,髪の毛をグシャグシャと掻き毟る。


___ねぇ雛ちゃん!___

___憂ちゃん,どうかしたの?___

___はなれちゃっても…私のこと,忘れないでね!___

___わかってるよ! 雛ちゃんを忘れたりしないよ!___

___本当!? 約束だよ!___


約束…。
そう,言っていたのに。






「もし憂が“心臓狩り”の犯人であるなら,私は…容赦無く彼女を倒せる………自信がありません」

Re:       ワタシとアナタ。 ( No.10 )
日時: 2011/03/12 18:40
名前: 葵 ◆ufwYWRNgSQ (ID: LR1GMCO/)

結局其の日はもう家に帰された。
“心臓狩り”を倒せるかどうかは,私にかかっているから,真剣に考えて欲しいと深夜さんは言っていた。
恐らく,“心臓狩り”は私に倒して貰いたいのではないか,と…。


「そんな筈無い,そんな筈無い…。彼女は憂じゃない…」


呪文の様に…譫(うわ)言の様に其れを繰り返す。
ベッドの上にゴロリと寝転がり,布団を頭の上まで被った。
睡魔がまた襲って来る。
私は其れに逆らわず,静かに目を閉じた。


———————————


私の前で,幼い頃の憂が泣いている。
周りは全面黒い空間。
憂の白い服が,黒い空間によく映えている。






「嫌だよぅ…………」


何が嫌なのか,体育座りした状態の憂は手で顔を隠しながら,泣き続ける。

何が嫌なの?
分からないよ,言ってくれなくちゃ。

憂に近付き,憂の頭を撫でようとした。
けれど,憂に触れる事は出来なかった。
憂が………憂の体が少しずつ,半透明になって行く。


「う,憂ッ!? どうして…! どうして,触れないの!?」


声すらも憂には届いていない。












「一人ぼっちは……嫌だよぅ………」


そう憂が言い終えたと同時に,憂の体は完全に消えてしまった。

何が,どうなって…?
憂は一体,何が嫌だったんだろう?
一人ぼっち?
憂………私が転校してから,貴女に何が起こったの?






「彼女はね,一人ぼっちなんだよ」





不意に鋭い声がして,私は振り返る。
聞き慣れた声…愛美の物だった。
愛美だと分かっているのに,私は足を進める事が出来ない。


「ずっと,ずっと一人ぼっち。此の暗い空間の中,長い間ずっと一人ぼっちだった。だから彼女に悪魔が囁いたの。人間なんて,脆いの。心の隙を付かれたら,呆気なく壊れちゃう」

「………憂は…死んでいるって事…?」


愛美はニコリと笑みを浮かばせた。
私は,其れが肯定なのだと感じた。
憂は……やはり死んでいた。


「彼女は生きたいが為に,血で手を染めた。其れがいけない事だと理解していたけれど,そうせずにはいられなかった」






「………ッもう,良い…」


分かったから。
憂が罪を犯した事。
理解したから…………。

………憂,貴女には綺麗でいて貰いたかったのに。


「決心は,付いた?」


ニコリと笑う愛美を,悪魔だと思えた。













「もう,良いの……。憂は殺人に手を染めた…。私は彼女を___殺す」






___其れデコそ,雛菊ダわ___


そう言って笑った愛美は,本物の愛美だったのだろうか?

Re:       ワタシとアナタ。 ( No.11 )
日時: 2011/03/14 18:45
名前: 銀弧 (ID: NTjYMQnF)

どうも、コメントいただいた銀弧です。
グロさシリアス度、すごいですね。
私には到底できません。

一つ質問ですが、葵さんは幽霊とか信じますか?


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