ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 俺と悪魔の百年戦争
- 日時: 2011/04/27 22:00
- 名前: 凡(ぼん) (ID: dB4i1UE/)
★お知らせ★
さきや殿にベリアル様を描いていただきました!!>>29
‡どうも、凡といいます。はじめましてだと思われます。よろしくっ!
ひとまずタイトルどおりの内容ですね(笑)いろんな悪魔が出てきます。たまに天使も出てきて、場合によっちゃあ神様とかフツーに出てきます。まさに神出鬼没な小説になりますが、暖かい目で見守ってやってくだせぇ!なにぶん、自分はまだまだ半人前の未熟者なんで…っっスマン!
‡ダーク・シリアス系小説にうpすると決めたものの、全然シリアスな雰囲気じゃないタイトルになってしまいました。ほんとに、他の書き手さんが神レヴェルに文才ありすぎな方ばっかりなのでこの時点で負けだと思ってます。凡の文章力はこの程度だと覚えておいてください!要注意!
‡基本、荒らしとか中傷コメとか…精神的に厳しすぎる鬼批評コメなどもお断りさせていただきます。スマン。自分がこんな立派な掲示板立てるほどの書き手ではないことは自分自身がよーくわかっておりますんで、そこんとこよろしくおねがいしやす。
‡ファンタジー嫌い。バトるの嫌い。グロいの嫌い。長編嫌い。うp主が嫌いな方はリターンすべき!読んでても不快にさせてしまいますので危険!
当てはまらなかった方は、よろしかったら気軽に読んでやってくだせぇ。こんな凡ですが、構ってやっても良いぜ!って方はコメくださるとありがたい。ファンタジー好きな友人も絶賛募集中です。
‡たまにオリキャラ募集とか、ある程度書き溜まったら人気投票なんかしてみたいと思う(←これ、一回やってみたかったw)お付き合いくださる方は、わたしの神です、イエスマイロード!
‡長ったらしい前置き、スミマセンっした。読んでくださった方、お疲れ様です。暇なときにでもまた、訪れてくださいな!このページには登場人物とか、物語の話数のリンクを貼るつもりです。アレですね、トップページというやつですね!更新通知も書いておきます。
最後に改めまして、よろしくお願いいたしますっ(・ω´・ 凡)ノ
-‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‡現在ここに訪れてくださった神‡
朱音 ◆c9cgF1BWc. 様!
-‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
2011/03/27 05:14 更新 2話.理由 >>14
-‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
序章.『憎悪の在り処』
【>>1】
…面影の残る彼に、すべてを重ねていた。ああ、所詮これはただの錯覚。
1話.ビンから始まる物語
【>>4】【>>5】【>>6】【>>7】【>>8】
2話.復讐のベリアル
【(>>1)】【>>9】【>>10】【>>12-13】【>>14】
3話.
-‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
†Side Story(ネタバレになるかもしれない危険物。本編に載せられないけど、凡がノリで創った小説。本編以上に手抜き&雑ですが、読んでいただけたら、ちょっと本編が楽しめる作品…だと思うw)
憎悪の在り処②
【>>11】
*2話のリンクページ9、10あたりから読んでいただければちょっとは面白くなるかも…。
- Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.8 )
- 日時: 2011/03/20 01:16
- 名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)
家に帰って、重い足で二階に上がる。部屋に入ると、制服のままズドン、とベッドに倒れ込んだ。ああ、疲れた。冷たいシーツがほどよく気持ちいい。俺は枕に顔をうずめてそのまま眠りにつこうとした。別にいいだろ?今日はなんだか身体がだるいんだ。いや、気分が悪いって感じか。まあ、つまりは俺はどうしようもなくむしょーに眠いってことだ。ふう、と本日何度目かも知らない溜息を吐く。片手でネクタイを緩めた。寝返って天井を仰ぐ。白い壁。意識が遠のいていく。視界がぼやけてきた。俺は睡魔に抗うこともせず瞼を閉じる。対照的な黒の世界に、こんばんは。
—-----------キィイィィン—-------------
耳鳴りか。俺もよほど疲れているようだ。今日はもうこのまま眠ってしまおう。毛布を引き寄せて、軽く胴にかける。本格的に寝始めようとした、その時だった。
—-----------キィイィィン—……ドッ!!!!-------------
ハっと目を覚ます。ベッドが、鈍い音と共に揺れた。さっきからの妙に響く高音は、耳鳴りじゃなかったのか?俺は何が起こったのかもわからずに、ふと気配を感じて顔を横に動かす。
そこには、ギラリと黒光りした、刃—---------……
「は…?」
俺は寝ぼけているのか?ここは夢の中か?なんだ、これ。俺は一瞬、そのまま固まってしまった。刃といっても、普通の調理用ナイフなんてものじゃない。れっきとした戦闘用の、剣だった。昔、写真で見た日本刀が思い出される。こんなもの、なんで俺の部屋に…というか、何でベッドに突き刺さってんだ。
俺は状況がつかめないまま、慌てて飛び起きる。確かに、この目に映るその剣は、まるで俺を狙ったかのようにベッドに垂直に突き立てられている。もし俺がもうすこし横に顔を向けて寝ていたら…。考えたくないな。
あたりを見回した。なんでこんなものが急に降ってきたんだ。俺の部屋…というより、俺の家にはこんな危ねえものなんて置いてないはず。両親が持ち帰ってくる骨董品はあふれかえっているが、ヤバそうなものは親がちゃんと博物館とかに寄贈してるわけだし。
俺は恐る恐る、その剣の刃に触れてみる。本物、だよな。そっと指で撫でると、丁寧に手入れされたような滑らかな手触り、そして冷凍庫にでも入れられていたかのように冷たい感覚。ごくり、と唾を飲む。これはプラスチックとか、玩具の類のものではないと、素人の俺でもわかった。
いや、本当の問題はこんなものが何でここにあるのか、だ。誰かがこの部屋に入ったのだとしか思えない。でも、窓はきっちりと閉めてある。玄関は二重ロックしたし、中に誰か入っていた形跡などなかった。それに…この剣が刺さる直前まで気配がなかった。どういうことだ?
「チッ……今日はなんなんだよ、次から次へと…—!?---ゴホッゴホッ」
急に咳き込み始める。今回は、一段と、かなり苦しい。驚いた拍子によるものだろうが、やはり簡単には止まらない。両手で口元を抑え込んだ。咳の振動で体全体が震える。くそ、吐き気もしてきた。
ようやく、息を整えることが出来ておさまったが、まだ息が荒い。ふう、と深呼吸する。胸やけはするが、いったんは落ち着いた。しかし、安心したと同時に気付く違和感。両手の手のひらを見る。赤く広がる粘り気のある液体。これは—----血…?
そんな、ばかな。だって、でも…これは咳き込んでいた時に口を押さえていた両手についた血だ。呆然とする。これは、俺が吐いた、血なのか。
すると、突然のことだった。急に背後に禍々しい殺気。俺は気が動転しそうになるのをどうにかこらえて、バッと振り返る。俺の部屋の、ベッドとは対照位置にあるドア。そこに、奴はいた。
漆黒のローブに、フードを深くかぶった男。いかにも妖しい雰囲気。俺は後ずさりながらも、声を振り絞って叫んだ。
「あんた、誰だよ!強盗か?」
急に現れた男に対し、驚きを隠せない。さらに、よりにもよって俺が吐血している状況に。が、怖気づいては駄目だ。少しでも弱みを見せれば相手の思うがままになってしまう。俺はそいつを見据えながらも、心臓の高鳴りを感じていた。殺されるかもしれない。どうやってこの男が部屋に現れたのかもわからない、が、この剣は奴のものだろう。そうすれば全部納得がいく。
どれだけ時間がたったのだろう。俺も、その男も長いことお互いの様子をうかがっていた。緊張感が張り詰めるなか、男はそっと、その全身を包むローブから腕を出した。その瞬間、俺のベッドに刺さっていたはずの剣がひとりでに、勝手にガタガタと震え始める。
信じられない。その剣はベッドから抜け、空中を飛んでそいつの手に戻った。
俺は息をするのを忘れるくらい、この光景が信じられなかった。ありえないし。こんなこと、どうやっても説明つかないだろ。何も言えずに、俺はただ目を見開いていた。男は、俺のさまをからかうように、フードから唯一見えている口を歪ませ、嘲笑う。それが最後だった。
突風。しかも、俺の部屋の中で。反射で目を閉じてしまったが、その風はすぐに止んだ。しかし、再び目を開いた時にはそこには誰もいない。あの男の姿も、ベッドに突き刺さっていた黒剣も在りはしなかった。いっそのこと、夢か何かであると思いたい。いや、本当にこれは夢なんじゃないか。ちらり、とあの黒剣が刺さっていた場所を見る。
そこには、あきらかに傷んでほつれたシーツ。もういちど両手を見る。赤い赤い現実。溜息をついた。……夢じゃない。
この日から、俺の非日常は始まった。
この日から毎夜の攻防が始まり、
この日から、ヤマトと神楽坂は学校を休みはじめ、
この日から、俺は吐血を続けた。
それは一週間。
これが、すべての始まりだった。
—-----------------------------------------------—-------------------—--------
一週間後、〈序章〉に戻る。
- Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.9 )
- 日時: 2011/03/21 23:38
- 名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)
彼は言う、価値のないものは何一つないのだと。我は問う、それは何故かと。彼は穏やかに笑った。
「わからないのかい。この世に存在を与えられたものは、きっと誰かに望まれて生まれてきた。それは誰かにとって、何よりも価値のあるものなんだよ。君には、それが本当にわからないのかい……—------------------無価値の王よ」
いつの日のことだったか。もう思い出したくもない、到底知り得ぬ不快な話だ。
2話.理由
「…———!!…、…!」
何か、夢を見ていた気がする。ベッドに倒れていた俺は身体を激しく揺さぶられて、意識を取り戻した。目覚めた途端によみがえる壮絶な痛み。俺は反射的に呻いて、それでもなお、瞼をゆっくりと開く。そうだ。俺はなにをしているんだ。早く、早く逃げねえと、あいつが…あいつが俺を!応戦中だったことを思い出し、身体をおもいきり退く。
「うっ………触るな!離れろ、この野郎…!」
「落ちついてくれ!我々は敵ではない、よく見て」
よく響く凛とした声。俺はフッと我に返る。そこには、見知った顔があった。いや、勘違いなのかもしれない。駄目だ、まだ頭が混乱している。だって、そんなわけないだろ…俺の目の前に、神楽坂がいるはず、ない。これは幻覚だ。
「違うよ、幻でもなんでもない。久しぶりだね、村雨君。君が思っている通りで合ってる。おれは神楽坂巴だよ」
色素の薄い青銅色の髪に、銀縁の眼鏡。相変わらずの無表情。それは、一週間ぶりに見た神楽坂の顔だった。たしかに、彼だ。しかし、彼は制服姿ではなく、白いスーツに白のシャツ。全てを白で表したさまだった。俺はどういう状況なのかもわからず、ただ呆然とするように、一応落ち着きを取り戻した。なにがどうなってる。俺が困惑した目を彼に向けると、彼はそっと呟く。
「驚かせてしまってすまない。けれど、今、ゆっくりと説明している暇はないんだ。ほら、見て」
彼は視線を俺からはずし、後ろを振り返った。俺も促されるまま、その視線の先に目を遣る。驚愕した。そこには、漆黒と純白。二つの光が相反するように割れている。俺の部屋は、俺の倒れていたベッドを残して、別の異次元が混ざったように広がっていた。ちらほらと壁が残っている部分もあるし、部屋に置いていた物もいくつかは転がっているが、これは俺の知っている世界ではない。それはあきらかだった。
「なんだよ、これ………」
言葉にできない。俺はその光をじっと見続ける。そして、気づいた。黒と白の境目に2人、誰かが戦っている。バチリ、バチリと火花が散る。対立した光の元凶。俺はただ傍観した。なぜだろう、何か、胸騒ぎがする。
神楽坂が、俺の身体を支ええいる腕を片方離し、上空に片手をあげる。その瞬間、一瞬だけ、光が吹き飛ばされた。そのおかげではっきりと、衝突する二つの姿が見えた。
一人は、漆黒の主。予想はできていた。俺を毎夜襲っていたあの男。紅い瞳と黒の髪を持つ、奴だ。そいつは俺に突き付けた長剣を振るい、闇の光のなかで踊るように舞い戦っていた。
もう一人は、純白の主。神楽坂と同じような白のスーツを身に纏い、戦うのには不向きであるような木製の、それでも美しく仕立て上げられた杖を構えている。間髪をいれず迫ってくる闇の光を、動じずに跳ね返す。そいつは—-------------—---------……
嘘だ。
なんで…
「…………ヤマト?」
透き通る茶色の、天然パーマのように毛先が跳ねている髪。そして、朝焼けの空を映したように光る瞳。
まちがいなど、あるはずもない。俺の友人を、見間違えることなんてありえない。けれど、俺はこの目が信じられなかった。なんで、此処にいる。神楽坂と同じように、一週間前のあの日から姿を消した。その彼が、今ここにいる。
俺はいてもたってもいられず、傍にいた神楽坂の肩を掴んで叫んだ。
「どうなってんだ…!あれは、ヤマトだろ?なあ、なんでお前とヤマトが此処にいんだよ!ってか、あいつはいったい誰なんだよ!教えろ!」
そのまま彼を張り倒す勢いで問う俺に、神楽坂は物怖じせずに淡々と答言った。
「君は信じないかもしれない。でもこれが真実でもあり、現実でもある。君には知らなくてもいいことだった。聞いたからには、ちゃんと受け入れてもらう。…覚悟は、ある?」
「覚悟だと…?俺はただ、知りたいだけだ。毎夜毎夜、あいつは俺のところに訪れた。俺を殺しに、だぞ。それも一週間だ。あいつがもはや人間だとは思っちゃいねえよ!でも、俺はわけもわからずがむしゃらに戦った。それは、生きたいからだ。死にたくないからだよ。生きたいから、相手がどんな奴かも知らねえで戦ってきた。覚悟がいるっつーなら、もうできてんだよ!それを俺に訊くなんざ、お前は相当のノロマだ、このノロマ野郎!!」
言いきった。心に溜まってた鬱憤も、全部吐いた。神楽坂には悪いかもしれないけれど、少しすっきりした気分だった。俺はこの一週間、誰にも毎夜の攻防戦のことを話したことはない。ヤマトがいたなら、相談したかもしれないが。だから、誰かにこの思いを伝えたかった。そういう欲求が、さっきの暴言で満たされたからかもしれない。
神楽坂は、俺の言葉を聞いて唖然としていたが、しばらくして「ふっ…」と笑い始めた。
「そうだね。おれたちが来るのは遅すぎた。本当にすまない。…ふふ、面と向かってそんな暴言を吐かれたのは久しぶりだよ。ああ、じつに……懐かしいね」
何を思い返しているのだろう。俺は、はじめて神楽坂の笑った顔を見た。あの人形のような、感情のない顔が微笑んでいる。少し、戸惑った。いや、これではぐらかされてはいけない。俺は再度彼に聞く。
「それで、どうなってるんだ。神楽坂、お前とヤマトはなんなんだ。あいつも、なんで俺を襲いにくるんだ」
「…君は、天国や地獄を信じるかな」
「は?…いきなりなんだよ、それ」
「おれも、どう説明すればいいか…これは難しい話なんだ。いや、むしろ概念を無視すれば、ある意味簡単な話だともいえる」
「じゃあ、簡単に言ってくれ。急に難しい話されても困る」
神楽坂はふう、と息をついて、俺を見据えた。真剣な目。彼は答えた。
「わかった。…おれたちは神に仕えている。人間は[天使]と呼ぶよ。……そして、あの漆黒の貴公子は地獄に君臨する邪悪なモノの権化。[悪魔]と、呼ばれているね。彼の狙いは君の魂。…いや、正確に言えば、[今は]君の魂になっている、かの魔法王ソロモンの魂。輪廻転生、魂は巡り、君という器にソロモンの魂は受け継がれた。あの悪魔はそのことに気づいてしまった。だから、君を襲いに来たんだ。……理解、できた?」
理解。正直に言おう、理解などできるはずもなかった。
- Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.10 )
- 日時: 2011/03/20 21:56
- 名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)
「は?…いきなりなんだよ、それ」
「おれも、どう説明すればいいか…これは難しい話なんだ。いや、むしろ概念を無視すれば、ある意味簡単な話だともいえる」
「じゃあ、簡単に言ってくれ。急に難しい話されても困る」
神楽坂はふう、と息をついて、俺を見据えた。真剣な目。彼は答えた。
「わかった。…おれたちは神に仕えている。人間は[天使]と呼ぶよ。……そして、あの漆黒の貴公子は地獄に君臨する邪悪なモノの権化。[悪魔]と、呼ばれているね。彼の狙いは君の魂。…いや、正確に言えば、[今は]君の魂になっている、かの魔法王ソロモンの魂。輪廻転生、魂は巡り、君という器にソロモンの魂は受け継がれた。あの悪魔はそのことに気づいてしまった。だから、君を襲いに来たんだ。……理解、できた?」
「ちょっと、待ってくれよ。天使?悪魔?それ、本気…で言ってんだよな」
「信じられないのもわかる。本当は、[信じてはならない]ように、人間は造られているからね」
「信じてはならない…?」
「神は、学んだ。対抗する力を持たない人間は、おれたち天使や悪魔と共には暮らしていけないのだと。そのために天に国を創り、下界に悪魔を追いやった。そして人間が天使と悪魔に関わらぬよう、人間の意識の深い処に[神、天使、悪魔の存在を忘却するように]と暗示をかけている。たとえ目の前で起こったことが、人間界の常識を外れているものだとしても、おれたちの存在を信じないように。これは、人間を護るために神が架せた枷だ。…だから、仕方のないことだとも思う」
待て、もう俺の頭の許容量をとうに超えている。それに、神楽坂はさっきから普通に天使やら悪魔やら、それに加えて神など口走っているけれど、そんなの俺にどう信じろって言うんだ。まあ、俺がキリスト教徒とか、熱心な信者とかだったらすんなり受け入れられるんだと思うが。本当に、存在するのか。認めないと頑固になるつもりはない。これまで俺の身に起きたことが人間の範疇を超えていることに関しては、わかる。あいつが人間じゃなかったら、俺の部屋なんてカギがなくても入れるわけだし。急に消えたり現れたりすることもできるんだろしな。悪魔だったら。
それに…俺が狙われている理由。ソロモンって名前は聞いたことがある。どっかの王様だろ?でも、詳しいことは知らねえし。魂がどーのこーのって話はよくわかんなかった。魂、か。身体は心臓の鼓動によって動いてると思ってた。生物の授業で習ったからな。
つまりは、ソロモンの魂が俺の魂で、それをあいつが欲しがってるってことか。まとめにもなっちゃいねえけど、こんなもんだろう。
「村雨君…」
神楽坂が、俺を呼ぶ。心配そうな声だ。ああ、俺がずっと考え事して黙ってたせいか。すまないが、まだ頭の整理ができていないんだ。彼が極力わかりやすく説明していてくれたのは感じた。だから、余計に申し訳なく思う。俺の頭…というか思考は意外と硬いんだ。俺自身もそう思った。
「本当にいるんだな。…神様とか天使とか、悪魔とか」
「きっと、まだ実感が湧かないんだろうね。わかってもらうには見てもらったほうが早いと思って起こしたんだけど。…そういえば、身体は大丈夫…?」
「あ、忘れてた。…痛えけど、動ける」
腰をさすってみる。確かにまだ本調子ではないが、いざとなったら逃げれるくらいは回復している。でも、まだ無理はできねえかな。神楽坂は落ちついた声で嘆息した。
「そうか、良かった。ラファエルに治してもらえれば良かったんだろうけど、彼は結構向う見ずな性格でね。君を倒していた悪魔を見て、カッとなって戦いに行ってしまったよ。おれは治癒魔法は得意じゃないんだが」
「は?…ラファエル……って。戦ってる、って、それ…」
「うん。仁科大和、君の親友の本当の名だよ。言っただろう、[おれたちは]天使だと。彼は天使だよ。ちなみに、おれの本名はラジエル。もっとも、人間界で、人間として語る名は神楽坂巴だけれど」
ラファエルにラジエル…確かに、聞いたことがある。まぎれもない天使の名前だったと思う。ファンタジーゲームとか、小説によく出てくる名だ。俺はごくり、と息を飲む。本当、なんだな。それと同時にある思いが胸に過ぎる。神楽坂が天使なのは、なんとなく合致したような気がした。人間っぽくない、と言ったら変かもしれないけれど。神秘的なオーラを醸し出していたのは、今思えばそういうことだったのか、と納得した。でも、ヤマトは……
「ヤマトが天使って…ないわ」
「そう?」
「そうだろ。ってか全然わかんなかった。変な奴なのはたしかだけどさ……人間より人間っぽいぞ、あいつ」
「それは…人間界での暮らしに慣れているせいではないかな。ずっと昔から、暇があれば人間界に来ていたし。それに彼は人間が大好きだからな。一緒に旅をするのが楽しみなのだと言っていたよ」
「へえ…、それはそれは」
—----------------パシィィイン—----------——-—---
一段と大きな破裂音が響く。突然のことで、俺は耳を塞いだ。なんだこの音。片目を開け、神楽坂の様子をうかがう。彼は苦い顔をして「まずい…」と呟く。その時だった。
—----------—--—バシィイイ!!!-------------------
光の境目から何かが飛んでくる。あれは人だ。もしや…。
俺が叫ぶよりも早く、神楽坂は片手を前に突きだした。どこからともなく現れたのは、前に見たことのある、彼が学校に持ってきていたあの分厚い本。開かれたままの本は神楽坂の手におさまり、より一層強い光を放つ。その瞬間、開かれた本から次々にページが飛び去っていった。目にもとまらぬ速さ。手裏剣のようにシュッシュッと擦れる音。何百、何千もの紙が俺のベッドを円状に囲むようにして空に浮かんだ。
すると、グッドタイミングに光の境から飛んできたモノが、連なる紙をクッション代わりにして俺のベッドに着地。あはは、と笑うそいつに、グっと殴りたい気持ちを堪えた。
「あははは、気ぃ抜いたら吹っ飛ばされてしもうたわぁ!すまんなぁラジっちゃん!助かったわー…って、イオリン!おひさやなぁ、元気にしとったか?」
「……ヤマト」
「ほんま良かったわー、イオリンが倒れてるとこ見てもう手遅れかと思っとったんやけど…あ、ラジっちゃんから話は聞いた?実はな、わし、天使やねん」
「…何が…何が『わし、天使やねん』だ…。いいかげんにしやがれ!俺の気持も知らねえで…!」
「まあまあ、落ち着いて、村雨君。…ラファエル、君は空気読めてなさすぎ」
「へ?ラジエルは本以外に空気とかも読めるんか!凄いなぁ!」
「……そういう意味じゃないよ、ラファエル…」
神楽坂が肩を落とす。そりゃあそうだな。誰かこいつに緊張感とか臨場感を教えてやってほしいくらいだ。俺はさきほどまで真剣に、まじめにこの状況を考えてたんだ。深刻な話だろ?俺が死ぬか、生きるかの問題なのに、こいつは…こいつは…。俺はヤマトに向かって静かに言った。
「後で、一発殴らせろ」
- Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.11 )
- 日時: 2011/03/21 03:09
- 名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)
「…ソロモンじゃない…?お前は、誰だ…———」
目下で気を失っている青年を見て、我は呟く。こいつは、ソロモンではない。あいつじゃない。振りかぶろうとしていた長剣をゆっくりと下げる。誰だ。お前はいったい誰なんだ。
人間界で言う一週間前、我はソロモンの封印から解き放たれた。…この子供の手によって。
しかし解き放たれたと言っても、そう容易くソロモンの呪詛からは逃れることはできなかった。
あのビンに閉じ込められていた時からもそうだったが、我は聴力、視力、その他の五感と魔力を失っていた。
それでも感じたのだ。あいつの、ソロモンの魂を。
——————————……この子供の身体から。
だから我はこの一週間、その魂の力を辿ってむやみに攻撃し続けた。
あいつに復讐するため。あいつに今一度思い知らせてやるため。それだけのために。
だが、やっと視力を取り戻した今、この瞳に映るものはソロモンの姿ではない。
ソロモンの魂を持つ、ソロモンとは違う人間。
我は嘲笑った。ああ、そういうことか!なんと喜ばしいことだろう!
「ソロモンよ、お前は、死んだのか」
我が封印されていた歳月は思ったよりも長かったらしい。あいつは死んだ。我がこの手で殺すまでもなく、人間らしく、ちっぽけに死んだのだ。
だから、あいつの魂だけが[此処]にある。
けれども、何故だ。何故、我の心はこんなにも乾ききっている。満足できない。これは、飢えだ。何故、我は飢えている。
「そうか……」
我は
「この手で奴を殺したかったのだ。この手で、思い知らせてやりたかったのだ」
あの男に
「すべてのものに価値などない。儚い泡沫なのだと、あいつの前で証明するために——…」
不愉快だ。
そうなのだ。喜ぶべきではない。あいつを簡単に死なせたことを、喜ぶべきではない。
我がこの手で殺さなければ、意味などない。
「やはり、つくづくムカつく男だなソロモンよ。死してなお、我を苦しめるか…」
チッと舌打ちをして、気を失っている子供の頭を腹いせに踏みつけた。
そして気付く。ソロモンはまだ[死んではいない]。
身体が朽ち果てただけ。魂はちゃんと[此処]にあるではないか。
「…くッくくく…これは盲点」
我は長剣を投げ捨て、しゃがみ込んで子供の髪を掴み、持ち上げる。まだ大人と言うのは早い。あどけない顔。我は鼻で笑った。非力な人間。弱い人間。何の力も持たぬ人間。ソロモンという厄介な器ではない。
「ゆるせ。我はお前に何の恨みも興味もない。……だが、その魂は返してもらう」
我は片手に魔力を込めた。封印前は、魔力などいちいち集中して溜めずとも、簡単に魔術を使えたのだがな。仕方ない。我は病み上がり同然。長き封印から一週間で、ここまでの力を復活させたことに自画自賛したいくらいだ。
ああ、もうすこしで憎いソロモンを確実に殺すことが出来る。
いや…そうだな。魂は地獄に持ち帰り、思う存分蹂躙してやろう。屈辱の日々を永久に過ごすのだ。それがいい。
我が微笑んだ時だった。
——------ガシャン-------------
「その人間から離れろ、悪魔」
…はぁ、これは参った。厄介なソロモンがいなくなったと安心していたが、そうか、忘れていた。やはり封印の影響は大きかったな。感覚も記憶もボケてしまったようだ。
「ああ……これはこれは、上級天使がお二人も…何事ですかな」
「とぼけるんじゃねえよ。わしの言った事が聞こえなかったのか、この薄汚い低能の悪魔め」
「薄汚い低能…?それは我に対して言ったものか…?」
「他に誰がいるってんだよ」
「ほう、…おもしろい。安い喧嘩を我に売ったところで、我がこいつを手放すとでも思っておるのかのう。実にあわれな…っくっくっく」
「ムッカー…!!ラジっちゃん、わし頭きた。イオリンのこと頼んでええか?」
「…肯定しなくても、行くんだろう…?」
「すまんわ!」
片方の天使が我に杖を向け、もう片方の天使が子供に寄る。子供一人に天使2人が応戦するとは…。やはり、この子供にはソロモンの魂が入っているのだな。そこまでする必要があるから、彼らは我に牙をむくのであろう。
我は子供を離し、杖から放射される光に溜めておいた魔力で粉砕する。その瞬間、もう一人の天使が子供を庇い、我を押しのけた。ベッドのまわりに光がともる。チッ……結界を張ったか。難儀なものよ。
しかし、我は久しぶりにこの戦いを楽しんでいた。足りないのだ、何もかも。失いかけていたのだ。何かを求め、争い、狩ることの喜びを。
だから、ちょうどよい。これくらいが、ちょうどよいのだ。
多少手に入りにくいものほど、欲しくなる。そうだろう…?
待っていろ、ソロモンの魂よ。我が必ずともこの手中におさめてやる。
- Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.12 )
- 日時: 2011/03/22 02:58
- 名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)
俺がそう言ってわなわなと震える拳を構えると、神楽坂が止めに入る。ヤマトはあいかわらずヘラヘラしているし、なんなんだこの状況は。何度も言うが、これってフツーに危機的状況なんじゃないのか?俺たちはこんなことをしていていいのか?…いや、よくなかった。ヤマトが吹き飛ばされた光の原点から、深い声音の笑い声が聞こえる。俺たちは一斉に振り向き、そしてその声の元に集中した。
『…くッくく……我との戯れを差し置いて他の男と談笑とは、いささかデリカシーというものがないのではないか。我が女ならば、お前のような男とは生涯付き合いたくはないものだな、ラファエルよ』
姿を現す漆黒。ヤマトが戦っていた時、黒と白、半々に割れていた光は今や完全なる闇に移り変わっている。すべてを飲みこんでしまいそうなブラックホールの中から、奴はゆっくりと歩み出る。堂々とした風格、重い空気を引き連れて、一歩一歩。どこからともなくカツン、カツンと靴の音が聞こえる。ああ、こいつだ。確信した。
常闇の中でぎらりと輝く、おぞましい程に美しい、二つの赫。その視線は誰をも畏怖に陥れる。
「あの、目だ……あいつだ。あいつが、俺を襲ってきた奴……」
俺が意識を手放す前。短い間だったが、俺は目に焼き付けていた。その端麗な容姿も、その禍々しい瞳の色も。絶対に忘れられない。忘れることを[許されない]ような…その姿。
俺がそいつを凝視していると、彼はそれに気付いて、俺のほうに顔を向ける。そこには歪んだ笑みと——-------------……
揺らぐ、紅。
「………ッ……----------」
動か、ない。
俺の身体が…、動かない。息が…、できな、い。
くっそ、あいつ、何しやがった!
身体の内部からくる震えが止まらない。なんだよ、これ。金縛りか?駄目だ、目を瞑れ。あいつから視線をはずせ!これ以上は、無理だ。…チッ…瞼も動かせねえ。俺の身体なのに、…自由がきかねえ!
息が苦しい。
視界が、だんだん白くなる。
もう、ホントに、これ以上は………——------。
「おっとぉ……危ないなあ。やめてや、勝手にイオリンをたぶらかすんは」
ヤマト…?
俺とあいつの間に割って入ったヤマトはそう言って、彼らしくもないぎこちない笑みをつくる。俺の視界は彼の背中によって、遮られた。しばらくしてふっと身体の力が抜ける。指も、瞼も動かせる。そうか、あいつの瞳から目を離したから…。けれど、あのままヤマトが割って入ってくれていなければどうなっていたか…。考えただけでもぞっとする。
奴は、わずかに微笑んで、わざとらしい知らん顔をしながらそっぽを向いた。
『ああ、すまない。…そちらの子供が我に熱い視線を送ってきていたのでね、つい、反射で。悪気はなかった、…ゆるせ』
「…ほんま、油断も隙もない奴やな」
『悪かった、と言っている。…もとはと言えば、お前が我を放置してどこぞに浮気をしていたのが原因なのだ。、それに関してはお前の責任でもあろう。小さきことにぐたぐたと、根に持つでない。見苦しいぞ?』
「ぐたぐた言っとんのはアンタのほうやろ」
『ほう、斬新な解釈をお持ちのようで』
「まじムカツクわぁー……そこまで言うんなら相手になってやろーじゃないの。その代わり、イオリンには手ぇ出すなや。お前の相手は、わし一人。それでええよな」
『くくッ…強引な男だな。天使はいつからそこまで傲岸不遜になったのだ?せめて愛らしい小娘に言わせれば、可愛いわがままとして受け取ってやらんこともなかったのだが……』
「何が言いたい」
『わからんのか?お前では役不足だ、ということよ。我に命ずるは我自身のみ。誰が天使の言うことなどに簡単に従うものか。お前はなにか、勘違いでもしているのではないか。相手をしてやる、だと?笑わせるでない。我の望みはただひとつ…』
そいつはゆらりと片手を上げ、指差した。
『そこに在るソロモンの魂を頂くことよ。……お前らも、知っておるのだろう?』
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