ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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俺と悪魔の百年戦争
日時: 2011/04/27 22:00
名前: 凡(ぼん) (ID: dB4i1UE/)


★お知らせ★

さきや殿にベリアル様を描いていただきました!!>>29



‡どうも、凡といいます。はじめましてだと思われます。よろしくっ!
ひとまずタイトルどおりの内容ですね(笑)いろんな悪魔が出てきます。たまに天使も出てきて、場合によっちゃあ神様とかフツーに出てきます。まさに神出鬼没な小説になりますが、暖かい目で見守ってやってくだせぇ!なにぶん、自分はまだまだ半人前の未熟者なんで…っっスマン!

‡ダーク・シリアス系小説にうpすると決めたものの、全然シリアスな雰囲気じゃないタイトルになってしまいました。ほんとに、他の書き手さんが神レヴェルに文才ありすぎな方ばっかりなのでこの時点で負けだと思ってます。凡の文章力はこの程度だと覚えておいてください!要注意!

‡基本、荒らしとか中傷コメとか…精神的に厳しすぎる鬼批評コメなどもお断りさせていただきます。スマン。自分がこんな立派な掲示板立てるほどの書き手ではないことは自分自身がよーくわかっておりますんで、そこんとこよろしくおねがいしやす。

‡ファンタジー嫌い。バトるの嫌い。グロいの嫌い。長編嫌い。うp主が嫌いな方はリターンすべき!読んでても不快にさせてしまいますので危険!
当てはまらなかった方は、よろしかったら気軽に読んでやってくだせぇ。こんな凡ですが、構ってやっても良いぜ!って方はコメくださるとありがたい。ファンタジー好きな友人も絶賛募集中です。

‡たまにオリキャラ募集とか、ある程度書き溜まったら人気投票なんかしてみたいと思う(←これ、一回やってみたかったw)お付き合いくださる方は、わたしの神です、イエスマイロード!

‡長ったらしい前置き、スミマセンっした。読んでくださった方、お疲れ様です。暇なときにでもまた、訪れてくださいな!このページには登場人物とか、物語の話数のリンクを貼るつもりです。アレですね、トップページというやつですね!更新通知も書いておきます。
最後に改めまして、よろしくお願いいたしますっ(・ω´・ 凡)ノ

-‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

‡現在ここに訪れてくださった神‡

朱音 ◆c9cgF1BWc. 様!

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2011/03/27 05:14   更新   2話.理由 >>14 
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序章.『憎悪の在り処』
>>1
…面影の残る彼に、すべてを重ねていた。ああ、所詮これはただの錯覚。

1話.ビンから始まる物語
>>4】【>>5】【>>6】【>>7】【>>8

2話.復讐のベリアル
【(>>1)】【>>9】【>>10】【>>12-13】【>>14

3話.


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†Side Story(ネタバレになるかもしれない危険物。本編に載せられないけど、凡がノリで創った小説。本編以上に手抜き&雑ですが、読んでいただけたら、ちょっと本編が楽しめる作品…だと思うw)

憎悪の在り処②
>>11
*2話のリンクページ9、10あたりから読んでいただければちょっとは面白くなるかも…。

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Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.3 )
日時: 2011/03/15 15:20
名前: 凡(ぼん) (ID: bzUOxLTb)

朱音殿はじめまして!

受験おつかれさんです。自分は去年経験しました。今でも思い出すとゾッとしますね!ギリギリまで勉強しなきゃならねえあの恐怖(笑)
まったくその通りでございますね。スマン。注意書きなんていらねえかなとか思ったんだけど、皆様がしっかり書いてるんでがんばってみたw
文章は塊に書いときゃ、ちょっとは凡の文章力のなさをカバーできっかなとか悪知恵が働いた所存です。自首します!ごめんなs>゜))))彡

バトル小説お好きですか!自分もです(>_<)うまくは書けねえですが…w
とりあえずイメージした光景を言葉にできないところがもうアカン。オワタ。
な…なん、だと…?朱音殿はかの有名な『絵師』でございましたか!?これまでの無礼をお許し下せぇッ!凡は絵が描ける人をスーパーデラックス尊敬しておりやすんで!!ほわああああ!!

まあ悪魔が登場するあたりソロモン様は出てきますな☆だがしかーし、自分はその72柱を把握しきれておらんっっ…。・゜・(´∀`*)゜・・

こんな凡ですがよろしく!応援ありがとうございやす!やる気が出ます!
長文こちらこそすみませぬっ

Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.4 )
日時: 2011/04/02 10:03
名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)

一週間前の話をしよう。すべては、俺の大好物であるマーマレードのジャムビンから始まった。


1話.ビンから始まる物語



俺の両親は2人とも、変わった職についている。母親は世界を駆け巡るスゴ腕のトレジャーハンター。父親は有名な遺跡発掘家だ。その多忙な仕事のせいで、俺が物心ついた時には、俺は一人暮らしを始めていた。まあ、金には困らないし、好き勝手出来るし、そこまで不自由な思いもしたことはない。しょっちゅう友人を呼んではお泊まり会なんてしたり、パーティーもやり放題だ。一戸建て2階つきの家でひとりで暮らすのは少々寂しくもあるが、充実した日々を過ごせていた。

今日も「ふわぁ〜…」と欠伸をしながら、2階の俺の部屋から1階の台所まで階段を降りていく。ちらりと時計を見ると7:30。俺の通う高校はかなり家から近いので、この時間でも余裕だ。
いつもどおり台所の棚を開け、ゴソゴソとあさり、買いだめしていたフランスパンを取り出して、そのままオーブンに入れ、こんがりと焼き目をつける。ほのかな香ばしい良い匂い。これに、例のモノを塗れば完璧。そう、ジャムだ。
俺はジャムをことごとく愛する男!とまではいかないが、やっぱり朝食にジャムはかかせない。苺、マーマレード、ブルーベリー…どれも好きだが、今のお気に入りはマーマレード。あの酸味と甘さときらきらと光るオレンジ色がたまらねえ。それをいろんな種類のパンにつけて食べるのが俺のお決まりだった。しかし------…

「ない。ない。ない。…どれも空っぽじゃねえか!?」

台所のありとあらゆる棚を調べるも、ない。パンと同じく買いだめしていたはずなのだが、見つかるのはどれも空ビン。まさか、な。切らせていたなんて思っても見なかった。どうすんだよ、俺。パンはジャムつけねえと食べれねえってのに!

「まさか、1個もないわけないだろ……んッー…どっかにある、ハズ…」

冷蔵庫の中、いつも溜めておいてある棚の中…意地になって探すも、やはり見つからない。床には、空ビンの山が溜まっていくだけ。俺はふうー…と溜め息をつく。ジャム食べなきゃ調子でねえよ、情けないけど。やっぱさっきの前言撤回。あんま認めたくはないが、俺はジャムをことごとく愛する男のようだ。ちっくしょー、諦めるしかないってか。仕方ない…。
俺は横目でテーブルに置いてあるホカホカのフランスパンを見ながら、もう一度溜息をついた。パンだけ食べるのは苦手なんだよ。甘くねえし、パサパサするし、フランスパンなら尚更だ。落ち込みながら、なにげなくやけになって、普段使わない調理台の上にある棚を開けてみる。もう調べていない場所はここだけだが、そう期待もできそうにない。なんたって、俺はこの棚を使ったことはねえから。ごくたま〜に突然帰ってくる母さんが何回か開けているのは見たことあるけど。

————パタン—----——

背伸びをして、腕を突っ込んだ。ビニールの手触りに、皿のようなものが手に当たる。やっぱないな。と仕方なく諦めようとした時だった。

——---キンッ——---——-

「………ん?」

なにかが爪に当たって甲高く響く音。俺はその音のほうに手を伸ばし、もう一回ごそごそとビニールをかき分ける。すると、滑らかな冷たい容器に指が当たった。もしや…?手のひらサイズのそれを掴むと、ぐいっと引っ張り出す。手の中には、外国製の高そうな深紅のガラス瓶があった。ラベルには[strawberry jam]の文字。

「嘘だろ?…………あった」

よく見ると、ラベルも高級そうだ。ゴシックな感じの、いかにもブランドものみたいな。嬉しくもあり、まだ半信半疑だった。ジャムだからそう簡単には腐らないはずだけれど、消費期限ヤバかったら、いくら俺でも食べるわけにはいかねえし。手の中で回転させるが、そのラベルにはジャムの名前以外書かれていない。小さいながらにかなりの重圧感があるビンは、まだ一度も開封されていないようだ。確かめてみるか…。
俺はきっちりと閉められたビンの栓をあけようとする、がなかなかに手強そうだ。こういう高そうなビンとかは結構開かないんだよな。品質管理がどーのこーので。でも、俺だって男だ。こんなビン、開けられなかったら男の恥だ。まかせとけ、俺の握力なめんなよ!
グッ……ググッ…——。コルクを力任せに引っ張る。



——------ッポン!-------------

密閉された空気が勢いよく飛び出す音。よっしゃ、さすが俺!よくやった、俺!テーブルに置いて蓋をくるくると回す。そしてようやく栓が完全に外れた、その瞬間。

「な、何だよコレ…おえッ…ぅ、…ゴホゴホッゴホッ…」


——------シュウウウウウウ—-----------

ビンの中から自動的に吐き出される煙。それも、黒煙だ。顔を近づけていた俺はいきなりのことで、その煙をおもいきり吸い込んでしまいそうになってむせる。ああ、喉がいてえ。いったいなんなんだよ、コレ!まさか有害物質とか…毒とかじゃないよな?しばらくするとその黒煙はしだいに薄れて消えていってしまった。やめてくれ、こんな冗談。本気で動揺する。俺は恐る恐る、もういちどビンを持ち上げると、それは何故か軽かった。先程までは鉛が入っているかのごとく、確かに重かったはずなのに—---…。気味悪い。俺はそのビンをもういちど、もとあった棚の奥にしまいこみ、何もなかったように閉ざす。そして、朝食を諦めると、さっさと制服のブレザーに着替えて、そそくさと家を出た。まだ喉に違和感がある。気持ち悪さを我慢して、学校に向かった。


俺は、この時はまだ気付いていなかった。
いや、知らず知らずのうちに、本能的に[気づかないようにしていた]…と言った方がいいだろうか。
あのビンを開け放ってしまったこと、そして、黒煙をわずかながらも吸ってしまったその瞬間が、俺のこれからの運命を大きく変えることになろうとは…。

Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.5 )
日時: 2011/03/16 14:38
名前: 凡(ぼん) (ID: g1CGXsHm)

朝食を食べずに来たせいもあってか、学校に着いた時間はいつもより比較的早い。教室に入ると、まだ誰も来ていないようだった。俺は校庭の見える隅の席に座り、ぼーっと外を眺めていた。今では、黒煙を吸って痛めた喉は落ちついていて、何事もなかったことにひと安心している。あの煙が毒か何かだったら大慌てするところだが。いったい、あのビンの中には何が入っていたのだろう。母さんに問いただしたいところだけれど、仕事で世界各国を飛び回っているので無理だ。わざわざ国際電話をかけるのも面倒だし、俺の身体にいまのところ異常はないし。もういいや、忘れよう。病は気から、って言うしな。

——-----ガララ…---------

教室の扉が開く音。入ってきたのは、男子の神楽坂巴[カグラザカ トモエ]。俺とは仲が良いわけでも悪いわけでもない関係。まあ、相手からしても俺のことは知り合い以上友達以下ってところだろうな。お互い、あんま喋ったことないし。でも一応クラスメイトとして、俺は「おはよーっす」と軽く挨拶し、視線を向ける。神楽坂は少し頭を下げた。普段から無口なのは知っているので、別に気にしない。
神楽坂は席に着くとすぐに分厚い本を取り出した。読むのかと思えば、何かを書いている。それも、今時めずらしい羽ペンで。俺は興味をそそられて、他にすることもなかったので彼の席に寄ってみた。思えば、彼に話しかけるのはこれが初めてかもしれない。

「なにやってんの?」

俺は神楽坂の前の席を借り、彼の正面に座った。自分で言うのもなんだけど、俺は親しみやすさがウリだ。友達作りはうまい。こうやって、笑顔で話しかければ相手も笑い返してくれる……はずだった。

「……」

沈黙。さらに、彼は羽ペンを机に置き、その分厚い本を閉じた。見せたくないものらしい。無口、無表情、愛想のない態度。俺は苦笑いした。なんだ、この空気…めっちゃ気まずいじゃねえか。それでも、俺はくじけずに話しかける。というか、何か話していないとこの空気に耐えられなかった。

「ゴメン、邪魔しちゃったみたいでさ。…それ、大事なものなんだ?結構分厚いし、持ってくるの大変そうだよな。俺、教科書だけでカバンいっぱいいっぱいだよ。凄いな」

俺は考えられる限りの話題をつらつらと並べた。人形に話しかけているようで、ちょっと気が引けるのだが。彼はそれでも何も言わず、しかし俺のほうを見て話を聞いていた。それだけが救いだな。完全に無視されてるわけじゃないみたいだし。俺は胸をなでおろす。でも、やっぱ会話になってないのは辛かった。開けている窓から、早朝独特の冷たい風が吹く。乾燥している季節。俺は急に咳き込んだ。

「ゴホッ……ゴホッゴホッ…」

何度目かの咳をした時。突然のことだった。神楽坂がいきなり立ち上がる。そして俺の顔を見て、驚愕に満ちたような表情でボソッと言った。

「…なんで君が…?」

「ゴホッ………え?」

それが今日、初めて聞いた彼の声だった。彼はしばらく俺を見定めるような目で見ていた。困惑と冷徹さが混じった視線。俺はただ固まってしまった。何を問われたのかもわからない。一方、彼はひととおり俺を観察し終えると再び椅子に座った。もう、先程の平然さを取り戻している。いや、何かを考えているのかもしれない。
なんだ今の。俺だけ話に置いていかれたような感覚。彼は俺の何に対してあんな反応をしたのだろう。

「なあ、さっきの何…」

「なんでもないよ、ごめん。気にしないで」

冷たくきっぱりと言い返される。これ以上は不可侵であると忠告されているようだ。本当に、今日はなんでこんなに意味分かんないイベントが盛りだくさんなんだ。それからはまた沈黙が続いた。今度は彼が気を遣ってくれたようで、「本を返しに行ってくる」と一言呟いて教室から出て行った。俺は教室にまたひとりきり。
何分か経って、他のクラスメイトたちがぞろぞろと登校してくると、俺はさっと自分の席に移動した。
1時間目に、神楽坂は出席しなかった。俺に本を返しに行くと言ったきり、そのまま早退したらしい。担任が言っていた。俺は心のなかにモヤモヤが溜まっていてなんだか嫌な予感がした。これから、何かとんでもないことが起こるような。授業中、ふと空を見ると、曇天。灰色の空。まるで俺の今の気分を表しているかのようだった。

「村雨ヰ織[ムラサメ イオリ]!ちゃんと授業を聞いとるのか!?教科書67ページの問い5の答えを言ってみろ」

「……うっげ」

まったく授業を聞いていなかった。というか、ぼーっとしていた。教科書もノートも開けていない。やばい。なんでこういう日に限って当たるんだよ——--…ああ、泣きてえ。
俺がおろおろしていると、先生の死角になっている斜め後ろから、雑につくられた紙ヒコーキが飛んできた。俺の机にスッ——-と静かに乗ったそれに、先生は気付いていない。俺はそれをすばやく開いた。式と答えの数字が書いてある。ありがてえ!

「答えは2分の1です」

「…いいだろう」

よっしゃ!俺は紙ヒコーキが飛んできた方向に視線を遣る。俺の何人か後ろの席にいる仁科大和[ニシナ ヤマト]がピースサインをしていた。ありがとう、ヤマト。と、俺もピースサインを返す。こういう時、友達とはいいものだなと実感する。俺の落ち込んでいた気分は、ちょっと良くなった。
ヤマトは俺の、高校での一番にできた親友だ。彼は帰国子女で、小さい頃から各国を旅しながら過ごしていたらしい。本当は日本生まれらしいが、詳しいことは俺にもわからない。だが、ものすごい旅好きであることは確かだ。それも、目的地が決まっていない方が燃えるのだと言う。変な奴だけど、それでも良い奴だ。
俺は今度はちゃんと真面目に授業を受けようと、窓を閉めた。
悪いことばかりじゃない。良いことだってあるんだ、と自分に言い聞かせながら。

Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.6 )
日時: 2011/03/18 01:50
名前: 凡(ぼん) (ID: /005aVGb)

「あれ?イオリン、風邪でもひいたん?」

昼休み、ヤマトと一緒に弁当を食べていた時だった。俺はまた咳き込んでしまって必死に口元を押さえる。ゴホッ…ゴホッ…と濁った音が連鎖する。いい加減止まらないものだからヤマトに心配されてしまった。

「や、風邪じゃねえよ。たぶん」

空気が乾燥しているせいだ。…と、思うようにしている。朝の、黒煙が原因だとは考えたくなかった。でも、これまで授業中にも何回も咳き込むことが何度かあった。そのたびに悪い方に思考がいってしまう。もしあの黒煙が変なもので、人体に有害なものだったんじゃないか…とか。大げさなのかもしれないけれど、なんとなく気になるのだ。あのジャムビンのなかにあったものが。考えすぎか?

「そうなん?せやったらええけど…—-----—---」

ヤマトが語尾を止める。俺が不思議に思ってヤマトを見ると、きょとんとした表情をしていた。なんだ?

「…?なんだよ、何か言いたいことでもあるのか?」

「----------------……」

「ヤマト?」

「—---------…え?何か言うた?」

「いや、だからさ。何か俺に言いたいことでも?さっき、何か言おうとしたじゃん」

「ああ、それか。いやぁ—---……うん、何でもないわ。ゴメンゴメン、ちょいフリーズしてもうたわ。はっはっは」

「?……変な奴」

俺はじっとヤマトを見ながらジュースの紙パックに差したストローを噛み締めた。なんだろう、この既視感。どこかで、同じような反応を見たことがある。俺が咳した後、変な態度だった奴……。神楽坂か!

「…神楽坂も、ヤマトも、俺の咳がそんなに珍しいのかよ」

「え?かぐっちゃん?」

「ああ。今朝さ、俺が話しかけた時に咳き込んじゃって。そしたらヤマトみたいに何か言いたそうにしてたよ。結局、『別になんでもない』みたいな返答されちゃって、聞けなかったけど」

「かぐっちゃんも…か」

「2人そろって、変な奴だな—---と」

「ははは、気のせいちゃう?わしは、馬鹿は風邪ひかんっちゅう諺はまっかなウソやったんやなぁーとか考えとっただけ—----------って痛たたたたた!!ゴメン!イオリンごめんって」

「へえ?ようするに、俺は馬鹿ってことか?」

「なんや冗談言っただけやん、って痛い痛いーっ耳つねんのやめてやーーー」

「チッ…今日はこのへんで許してやるよ」

「ははは…イオリンごめんってば」

俺はヤマトの耳から手を離した。彼の、俺につねられていた耳が若干赤くなっている。ヤマトは苦笑いで自分の耳をさすった。

「ホンマ、イオリンには冗談が効かんで困るわぁ。だから友達少ないんとちゃうか?」

「あぁ?ケンカ売ってんのか?」

「売ってないて。ホントの話、イオリンってフレンドリーなんやけど、それにしては一緒にいる友達って言えばわしだけやろ?」

「…………」

「なんちゅーか、イオリンって現代っ子にしては珍しいタイプな子やからだと思うんや。軽そうに見えて、案外ストイックなとこあるし。自分の信念曲げんとことか。まわりの流行とかに興味ないとことか。せやから他の奴としては、ちょい付き合いにくい感じなんやないかなって。まあ、そこがイオリンの良いところだって、わしは思うとるけどな」

ヤマトがにっこりと笑いかける。俺は呆然としていた。自分でも気付けなかった俺自身のことを、ヤマトは綺麗にきっぱりと言いのけたことに。いや、俺は驚いていたのかもしれない。いつもヘラヘラと笑って誤魔化しているような奴…ヤマトが、そこまで俺を見ていたことに。俺はむしょーにふてくされた。というか、気恥しくなった。

「………じゃあさ、そんな俺と一緒に居るヤマトも、結構ヘンな奴じゃん。やっぱり」

俺はわざとそうやって言い返す。すると、ヤマトは平然と「そうやなぁ」と笑ってのけた。本当に変なやつだ。親友としても、変な奴だ。

「…まあいいよ。俺、今はヤマトだけで満足してるし。そこまで他に友達欲しいとか思ってないし」

「なんやそれ、愛の告白?嬉しいなぁ、イオリンからそういうこと言ってくれるやなんて。一途でかっこええ彼氏持てて、わしは幸せモンや」

「殴るぞ?」

「またまたぁー、そういうツンデレなとこもカ・ワ・イ・イ—--——-……ってゴメンゴメンもう言わんて!ほんまにグーで殴らんといて!!パーで!!殴るならせめてパーで!!」

俺は鳥肌のたった腕をさすりながら、しぶしぶと振り上げそうになる拳を抑えた。こんなこと繰り返したって俺が疲れるだけだしな。無視だ無視。ああ、まだ寒気がする。気持ち悪いこと言わないでくれ、頼むから。そういう冗談はまじで無理なんだ。

「おまえ、まじ、キモい。ありえない。冗談に聞こえないところがキモさ倍増なんだけど」

「ひっどいなあ。わしは本当のこと言っただけやん。よく考えてみぃよ、別にウソひとつないて」

「言い方が、だ。やめてくれ、俺をこの歳で罪人にしないでくれよ。本気で殴りたくなっから」

「ははは……わかったわかった。わしが悪かったわ。まあ、アレやな。話を前に戻すとして、わしはイオリンのこと心配しとるってことや」

「俺の友達環境が?」

「いや、そっちじゃなくて。身体のほう」

「ああ、咳のことか」

「そうそう。無理しぃなや?……もしイオリンの身になんかあっても、わしは、すぐにはどうにもしてやれんのやから」

「………?」

「まあ、そういうこっちゃ」

一瞬、彼の瞳が暗くなった気がした。それを隠すように、再び笑顔を見せたけど。俺はちゃんと見逃さなかった。俺のことを心配しているのは本当なのだろうが、それ以外にも何かを隠しているような気がする。でも、それを問い詰めることはできなかった。彼が俺を思う気持ちに嘘はないと信じたかったからかもしれない。

—------------キーンコーンカーンコーン—----------——

昼休みの終わるチャイムがする。なぜだか、時間が短く感じた。ヤマトが「もう終わりかいな」と溜め息を吐いた。俺もふう、と息を吐く。午後の授業がかったるいのもあるけど、今日は疲れた。なにかと疑問が積み重なる日だとつくづく思う。考え事がやまない。俺は窓を開けて外を見ると「あー、はやく帰りてえ」と呟いた。

Re: ε=(‐ω‐;;)俺と悪魔щ(`Д´щ;)の百年戦争 ( No.7 )
日時: 2011/03/19 00:51
名前: 凡(ぼん) (ID: /005aVGb)

やっと放課後。午後の授業はまともに聞いてなかった。俺はにぎやかに帰っていくクラスメイトを見送って、そして溜め息をつく。ああ、俺も早く帰りてえ。けれど、すぐには帰れない用事が俺にはあった。夕焼けによってオレンジ色に染まった、空っぽの教室をぼーっと見回しながら、後ろの席で必死に日誌を書いているヤマトに視線が止まる。まだ終わらねえのか。まったく。

「まだ終わんねえの、それ。もう俺たちしかいないじゃん」

俺がかったるそうな声を出してせかすと、彼は「悪いなぁ」と、いかにも申し訳なさそうに言う。そんな風に言われたら、文句ひとつ言えねえじゃねえか。俺はまたひとつ溜息をつく。今日はヤマトが日直だというので、一緒に帰る俺まで居残りさせられている。いや、本当はこんな奴ほっといてすぐに帰って眠りたいのだが、やっぱりそうもいかない。なんたって親友だからな。俺の今現在唯一の。

「うっしゃあ終わったぁ!これで帰れるで。ごめんなイオリン、待たせてしもうて」

ヤマトが立ちあがって伸びをしている。俺は「やっとか…」と呟いて、その姿を横目で見ながらカバンをかるった。それから開け放っていた窓のカギを閉める。窓ガラス越しに見る外の風景。夕日が地表に乗っかるアイスの塊のように溶けきっている。もうこんな時間か。

「ほな、帰ろかイオリン!」

軽快な調子で歩んでいくヤマトの後に続いて、俺も教室を出る。廊下は教室よりも冷たく感じて身ぶるいした。やっぱ、朝と夜はまだまだ寒い。ガタン、と教室の扉を閉めた。

—-------------------------------------------—--------------------——-—---—---

それからは、ヤマトとたわいもない話をして帰った。クラスメイトのおかしな話だったり、先生の噂だったり、最近の変化とか。いつものように、何も変わらず、何の変哲もなく。俺は「ふわあ」と欠伸をして、ただ彼に並んで歩いていた。
すると、俺と彼とが分岐する道まで行った時、急にヤマトが立ち止まった。俺は数歩先に進んだところで、振り返る。何やってんだ。落し物か?しかし彼はただじっと動かずに——-その場所だけ時間が止まってしまったかのように、一歩も歩む気配がない。仕方なく俺が彼のところまで行って、「何やってんだ」と肩を叩く。ヤマトはその拍子で我に返ったように、身体をぴくりとさせた。

「ああ、ごめん」

「今日のお前、やっぱいつもより変だわ」

「いつもよりって何やねん。わしは全然フツーやわ!…—---って、言いたい所なんやけど……」

「何だ。なんか、あるのか」

「ははっ…情けないわ。うーん…イオリンには大暴露しちゃうけど。今な、わしめっちゃ重大な悩み抱えとんねん。でも、それがなぁ…突然なこと過ぎてわしもようわかっとらん。わけわからんわ、まったく……」

「…?何の話だよ」

「んー、こっちの話」

「はぁ?」

「まあ、そういうことでな。明日から、わし何日間か学校休むかもしれんわ。やっぱ、イオリンには言っとこ思うて」

彼はハハハと笑いながら、腕を頭の後ろに回して空を拝む。俺は眉をひそめた。彼は突拍子もない旅行計画で急に学校を休むことはあるけれど、今回は違う。彼の表情には、旅の出発前日のような楽しげな明るさはなく、ただ寂しげな雰囲気だけが残っていた。俺は、彼がもう二度と戻ってこないような気がして、すこし戸惑った。

「意味分かんねえのはこっちだっつの。というか、俺のこと完全無視して先に話進めんな。そんなに思いつめてるんなら、俺、相談のるし」

「それはありがたいわぁ。でも…どうかなぁ?イオリンにわしのお悩み相談しても、解決してくれそうにないしー」

「ふざけんな。そんなの相談内容によるだろ」

「…だからダメなんやって」

「なんだと?」

ヤマトが、急に走り切る。俺はふいをつかれて、結局彼を逃がしてしまった。本気を出せば追いつく距離ではあるが、俺の足は動かない。ヤマトが、彼の家のほうへの分岐した道路の真ん中で「おーい!イオリン」と、めいいっぱいの大声で叫ぶ。俺はその声のほうに彼を見据えた。彼は、続けて大音量で言い放つ。

「わしのことは心配いらへん!まあ、なんとかするわ!ってか、なんとかしてみせたる!せやけど、イオリンは無理しちゃアカン!それだけが、わしの悩みの種なんやからなー!」

彼はそう言うと、お得意のピースサインをした。それも、先程の変な表情なんかを吹っ飛ばすくらいの、満面の笑顔で。俺は、なんとなくその覇気に押されて、自然と右手でピースサインを返した。ああ、これ、俺も癖になちまったみたいだな。自分の右手を見ながら、苦笑する。それから、心配無用と言った親友の後ろ姿を見送る。背筋がピンとした、何かの決意を背負ったような、頼もしい背中なのだと思う。結局、彼が何に悩み考えつめていたのかはわからなかったが。たぶん、自己解決でもしたんだろう。まったく、ほんとうに人騒がせな奴。

俺はその後ろ姿が消えるまで、その場に留ってしまった。ああ、もうすぐ日が暮れるってのに、何してんだろ俺。俺は自分の家の方への道をゆっくりと歩んで行った。その時—------…。


—-------——チリンッ—--------—---


一瞬のおぞましい程の強烈な気配に、がばっと振り返る。今、風に混じって鈴の音が聞こえたような……?
俺の気のせいか?いや、でも確かに…。しかし、振り向いた先にはコンクリートの道路と鉄柱。殺風景な風景がただ続いている。俺は頭を掻いて、再び歩を進めた。俺も、疲れているのかもしれない。帰ったらすぐ寝よう。そうしよう。カバンを持ち上げなおす。生温かい、きもちわるい風が俺の後ろを吹いた。

—-------------------------------------------—--------------------——-—---—---

「おやおや、僕としたことが。もうすこしでバレてしまうところでした」

ひとりの少年が、その身に合わない大人しい声で、歌うように軽やかに呟く。緋色の髪を風になびかせ、首に巻き着けた鈴がリン…と鳴り響いた。彼はその首元の鈴を片手で握りしめ、帰路に着くあの高校生の姿を見降ろす。少年は、気にくわない。彼が自分の存在に気付かないことに。けれど、自分から姿はあらわさない。なぜなら、彼自身の力によって見つけ出してほしいから。これは、一種の駆け引き。

「…僕は早く貴方の力になりたい。けれど、まだ時が満ちていないのですね。僕が出るには、この舞台は早過ぎたようです」

ああ、哀しや。少年は目を閉じた。こんなにも近くに居るのに、こんなにも想っているのに。彼には、少年の声はいくら叫んでも届かない。ただ、代弁するかのように鈴が寂しく音を残すだけ。

「いつか、貴方がすべてを知ったとき。どうか[僕たち]を受け入れてほしい。誰もが、貴方に憎しみだけを想い抱いているわけではないのだと—----……」

旋風。少年はそれだけを言い残すと、その身を火で覆った。大気が一瞬にして温度を上げる。太古の霊鳥は翼を大きく広げ、灼熱の炎を巻き上げて、空高く飛び上がった。彼への懐かしさと恋しさを秘めた、哀しくも甲高い鳴き声と共に。


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