ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 兵士の休暇
- 日時: 2011/05/25 16:07
- 名前: 比泉 (ID: ID28wqen)
一士官の日常を描きます。
軽い戦争物というジャンルに分けられます。
敢えて世界観を作るため、現実の世界とは多少異なる設定で進めていこうと思います。
では、行きます。
登場人物
神山 劉眼(かみやま りゅうげん)
主人公。名は恩師である君島に貰った。一農民出で士官候補生。たびたび問題を起こす。
朝日奈 新道(あさひな しんどう)
神山の同期。同じ村の出身で恩師の君島に名を授かった士官候補生。根っからの陸軍精神が入っている。
問題は起こすが、神山とは微妙に気合の入り方が違う。
君島 蒋大(きみじま しょうだい)
神山が暮らしていた村で唯一学問の心得のあった人物。若年で、僅かながら時折影を見せることがある。陸軍省と海軍省、空軍省を行き来する人物。
本職は役人かと思われる。
朝霧 真(あさぎり まこと)
陸軍士官学校で教官を務める。
部隊の育成には信念を持って接している。
精悍な顔つきで女にモテるが、その裏腹に鉄拳制裁の酷さは極上。
- Re: 兵士の休暇 ( No.5 )
- 日時: 2011/05/24 19:53
- 名前: 比泉 (ID: ID28wqen)
がっちり縛られたロープを解くのに時間はさほど掛からなかった。
俺はよくこうやって巻き添えを喰らって縛られていることがあるからだ。
教官もそろそろ俺たちが耐性を付け始めたことに気付いたことだろうか。
背中に伝う大量の汗に不快感を覚えながらも達成感と開放感を喜び分かち合い、暑苦しいことに気づき吐き気が差して、朝日奈と俺は教官室の前を通りかかる。
また何か言われるような気がして目をできる限り伏せて通ろうと合図して静かに、そして平然とわたる。
が、つい、連絡板に目が言ってしまった。
連絡板とは基本的に教職員から生徒に対する伝言や呼び出し、そのほかの要件(主に外禁)を伝えるために設置されているものだ。
そこにデカデカと外禁と一筆書きのような感じで塗りたくられた紙一枚が押しピンでとめられていたのだ。
迷惑なことこの上なかった。
外禁とは外出禁止のこと。
期間は・・・・・一か月・・・。
さらに追記でこんなことが。
『今度やったらシャバの空気は吸わせんぞ。あー期間は半年くらい』
恐ろしい事態の発生だ。
- Re: 兵士の休暇 ( No.6 )
- 日時: 2011/05/24 21:25
- 名前: 比泉 (ID: ID28wqen)
2
夕暮れ。
外禁を喰らい、空を見つめることしかできなくなった俺たちは二人さびしく、校舎の屋上で佇んでいた。
目を輝かせたいところだが生憎涙しか浮かばない。
「夢に燃え、希望に燃え、誇りに燃え・・・・どこにいったんだ俺達・・・・?」
「知らん」
朝日奈が絶望の淵に佇んでいるように見える。
やつは背中を向けたまま五メーター感覚を保っているがそこからが別次元のようだ。
とても人間が近寄れたものじゃない。
まさに正気じゃねえ。
そして当の俺は落ち込み半分、明日からの脱走計画も兼ねて考えている。
最近自分がどうしようもなく懲りない男のような気がしてくる。
「ハハハ、まさに完璧な計画か?」
我ながら分析は得意な方だ。
夜間の教官たちの徘徊の時間帯を上手く巧妙に調べ上げまとめたのだ。
だが、だからといってこれで安心はできない。
問題は実行までのプロセスと決行の実力だ。
いいか。
鉄柵を昇るまではいい。
しかし、そこから、警備の人に見つかってみろ。
場合によっちゃ侵入者とみなされ銃殺だ。
これはなんとしてでも避けたい事態だ。
だって本末転倒だろ。
それよりは我慢してでも確実な脱出方法を手探りするしかない。
もう少しだ。
粘り強く脱走を決行するんだよ。
そうすれば昼も脱走できるかもしれない。
昼のシャバの空気が吸えるなんてなんて幸せなことか。
この学校に入学するまではそうおもっていた。
- Re: 兵士の休暇 ( No.7 )
- 日時: 2011/05/24 21:59
- 名前: 比泉 (ID: ID28wqen)
逃走戦〜
終了後———
「第二級逃走犯重罪人確保!!」
警備兵の甲高い声が響く。
「いやぁ、これであと三回であいつら行きだなぁ、なぁ?神山?」
朝霧 真 教官。
精悍な顔つきを持つ18歳の青年教官。
その容貌の裏腹に鉄拳制裁で有名な顔も持っている。
ちなみにあいつらというのはすぐそばでガムテープで口をふさがれ鉄の鎖で腕を椅子に拘束された先輩たち。
第一級逃走犯のことだ。
- Re: 兵士の休暇 ( No.8 )
- 日時: 2011/05/25 15:53
- 名前: 比泉 (ID: ID28wqen)
この部屋は生徒指導室と言う名の拷問部屋だ。
いや、描写的にはお仕置き部屋が正しいだろうか。
どちらにしても、どうでもいい。
俺は生徒指導室にいると言っていいだろう。
三階から飛び降りるまでは成功した。
まだいい。
だが、それからだ。
綺麗に、いや華麗に受け身を取りダッシュして鉄柵に頑丈なワイヤーに金具を取り付けたやつを投げて引っかけて上がろうとしたが丁度、真後ろから朝霧教官からの鉄拳が飛んできて、つまずいたところを鼻フックでぶっとばされた。
本当に情けないのと不甲斐ないのと、
誠に遺憾である。
いや、まあ、結局は規則を違反したのだ。
罰せられて当然のことだ。
だが理不尽すぎないか?
部屋の中は薄暗くうっすらと血の跡すらうかがえる。
ハッキリ言ってそんなところに拘束されていると言う感覚を再認識するたびに冷や汗が吹き出る。
椅子は何十年か前は木製だったんだろう。
奥の方にチラホラ見える。
現在は鉄製か。立派なことだ。
というかケツがさっきから痛い。
近くにいるのは上級生五人。
俺と同じくメッカを求めて旅立とうとする翼のない天使だ。
「何が『翼のない天使』だ。このバカ者が」
思いっきり持っていたこん棒で小突かれた。
地味に痛い。
「教官!外禁には納得いきません!!!どうして我々を束縛しようとするのですか!?」
思い切って声を張り上げてみた。
だが、あっさり交わされる。
「中で問題を起こすやつが外で問題を起こさないわけがないだろう。そんなやつを士官学校から抜けださせるわけにはいかん。せいぜい、この陸軍士官学校でじっとしていることだな」
最悪の通告をされた。
クソ!
これじゃもう絶対逃げれないじゃないか!!てか、もしかして一生拘束!?
「というかガムテープで口をふさいでいると言うのに随分と威勢がいいな」
塞がれた口を無理やり開き、大声を張り上げる俺に対して朝霧教官は余裕の表情を浮かべる。
教官の軍服の着こなしや無駄のない姿勢は軍人らしい好きの無さを窺わせてくれるが今では俺たちにとって邪魔者以外の何物でもない。
- Re: 兵士の休暇 ( No.9 )
- 日時: 2011/05/25 22:55
- 名前: 比泉 (ID: ID28wqen)
反抗の手立てを何とか考えながら周りの上級生にアイコンタクトする。
が、そこへ。
「まぁ・・・・・いいだろう。お前らには反省の印として・・・・再び受けてもらうとするか・・・」
意味深なセリフを吐きながら朝霧教官はそこらへんを行ったり来たりした。
何がしたいのか大方察することができた。
「お前ら・・・『兵士の休暇』に戻るか・・・?」
最悪な、最低な、宣言を突き付けられた。
その日、偉く立派な士官学校は酷く静かに見えた。
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