ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Cheap 最終話更新 12/7 堂々完結!!!!
- 日時: 2011/12/08 08:41
- 名前: 風猫(元:秋空&風 ◆jU80AwU6/. (ID: rR8PsEnv)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=17301
________
_________
__________prologue
あぁ……
何で? 何で、俺と君は離れ離れになってしまったのだろう?
君と俺は、愛し合っていた。 愛し合っていた筈なんだ。
君の匂いを君の温度を君の鳴らす音を……淡い唇を瞳を細い指を白い肌を長く綺麗な髪を…………
愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛……愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛…………愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛
愛してる! 全てを……俺の目に映るお前の全てを……全て統べて全てすべて全て!
本当に本当に本当に、本気で愛して居たんだ。
アイツに、お前は取られていないだろうか? 昔は、無邪気に川の辺や裏山をかけて鬼ごっこしたり虫取りしたりしたあいつ。
お前は気付いていないかも知れないけど……あいつもお前を愛していたんだぜ?
だから、俺は親父が転勤するって時、絶望したんだ。 俺の愛が途絶えた瞬間だと思ったんだ。
永遠に、この俺達の生まれ育った街と別れるような感覚に襲われて……君の存在自体無くなってしまった様な気がして……
抵抗したさ。 俺の愛は、こんな所で潰えるべきじゃ無いんだって……転勤の原因になった親父に殴りかかって……
当時小学生の非力な俺じゃ逆に叩き伏せられて……
あぁ、絶望したね。 絶望した……俺の世界から初恋の人が霧散して消えたんだ。
そして、俺の幼稚園の頃からの相棒に俺の愛した女は奪われた。
奪われた。 奪われた。 奪われた。 あいつも彼女の事を愛して居たのは明確だった。
確信めいた感覚が俺の中に有る。 いっつもアイツは、俺の横を虎視眈々と狙ってた。
小学生の頃のクラスの連中も言ってた。 彼女は、可憐で優しくて儚くて皆の羨望の的だった。
あいつは、彼女と逸早く親しい関係を作った俺に、ゴマを擦って……俺の愛を横取りしようと……
「だが、まぁ、そんな事はもう、どうでも良いんだ。 お前が、彼女を独占していられる時間ももう、終るんだ。
なぁ……紅木咲レオ。 俺が、転校しなけりゃ永遠に愛を手に入れられなかった銀メダリスト」
だが、もう、そんな事はどうでも良い。
俺は、還って来た。 あいつ等の居る街に……親父は、こんな遠くに、行かせられないと五月蝿かったが構わない。
俺は、是から生まれ故郷で一人暮らしをして……奪われた愛を取り戻す。
もう、そいつと彼女が別れている可能性が有るだろうだって?
あぁ……有るかもな? だが、俺は、この故郷から離れてもあいつ等と常にメールを送りあい相互連絡を取ってきた。
分るさ……分るんだよ? 俺には……
あの野郎の笑っている顔が、気に食わない!
〜The end〜
___________________________________________
初めましての方は、初めまして。
お久し振りの方は、お久し振り。
常連の方は何時も有難う御座います^^
此度は、短編小説を書こうと思い立ち立てさせて貰いました。
短編小説は書き慣れていないので何かと不備も有ると思いますが、暖かい眼で見てもらえれば幸いです。
=====お客様=====
朝倉疾風様
玖龍様
生死騎士様
黎様
夕凪旋風様
野宮詩織様
狒牙様
今の所、7名のお客様が着てくださりました!
======目次======
第一話「再開」
>>6
第二話「偽りの平穏」
>>7
第三話「迫り来る死」
>>15
第四話「悪夢の空、地獄の大地」
>>21
第五話「阿鼻叫喚」
Part1 >>26 Part2 >>31 Part3 >>36
第六話「失った命の意味」
>>42
第七話「戦うしか無い……」
>>45
第八話「迷走……迷走! 迷走する意思」
>>50
第九話「明日夢」
>>52
最終話「チープ」
>>53
キャラクタ紹介 >>8
=====注意事項=====
一、更新は速くはないと思います。
二、グロ描写が多く入ると思います。 苦手な方はリターン。
三、チェンメや荒し、宣伝などは出来れば止めて頂きたいです。
- Re: Cheap 第五話エンド 9/25 コメ求む! ( No.40 )
- 日時: 2011/09/27 22:59
- 名前: 風猫(元:風 ◆jU80AwU6/. (ID: z8eW1f9u)
コメント下さり本当に有難う御座います。
朝倉疾風様へ
五人で大したことないのですか?
世代が変ったのか……泣けるですね。
私なんて大学卒業してるのに七人位しか……(笑
私は、細かく造らない部類の積りです。 唯、チープは、真面目に造っているのですがね。
ほら、パラノイア辺りと比べてみると綿密に見えると思うです(苦笑
私は、全部脳内で終らせていますね(汗
残された人間の方が辛い……あぁ、次回の題名の件かな?
あぁ、あれは……題名だけです。 春水の狂い具合を見せるだけの話になると思う。
エグい描写……私、大嫌いなんです。 正直、書いていて吐き気がするんです(涙
ノリノリで書いてるとか思ってるかもですがノリノリ★
すみません最後テンション可笑しい(汗
野宮詩織様へ
読んでいてくださったのですね(涙
有難う御座います!
え? 京楽さんから取ったのです♪ あのおっさん飄々としていて強くて渋くて遊び心あるけどシビアで大人って感じが最高です^^
他には、修兵とか喜助とか竜弦とかという候補も有ったのです★
虫のセーフアウトは、問題ですよねvv イニシャルGは……極悪です。
そう言えば、イニシャルGな能力を持った美人さんが出る漫画が有った気がするです(苦笑
そう言う話を聞くと君を女の子らしいと思えるよ♪
頑張るです!
- Re: Cheap 第六話更新 9/29 コメ求む! ( No.42 )
- 日時: 2011/09/29 22:55
- 名前: 風猫(元:風 ◆jU80AwU6/. (ID: z8eW1f9u)
Cheap(チープ) 〜第六話「失った命の意味」〜
た。
した。
ろした。
ころした。
俺が、ころした……
殺……した!?
俺が、れ……れれ、俺……が、ががが、ころした。 ろした。 殺した殺したころした……ころ、ころころころ殺した!
俺が、戒に命じて人の命を奪った。 奪った。 奪った。 奪った。 奪ったウバッタ奪ったうばったウバッタ奪っタ!
奪った。 ウばった命を……奪った! 俺が……コロシタ。
罪……俺は、罪を背負った? いや、おい……でもよ。 でもでもでも……
だって、考えろよ? どうせ、あいつ等助けたって疾風って餓鬼みてぇに拒絶して逃げ出すに違いねぇぜ?
そもそも、あんな数、戒の中に搭載できるはずもない。
あぁ、そうさ。 良い盾を手に入れた。 そもそも、護るべき人は……俺には一人だけだ。
刹那……刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那! 俺の魔法の言葉の持ち主は俺の近くにいる!
あぁ、疲れたな。 いや、疲れてる。 何年分かドッとさ。
「疲れた。 寝るから……ついたら教えろ」
「分った」
俺は、アイツの背中に向かって話し掛ける。 本当に疲れた。 吐き出したら分った。
俺が、気を張っていたこと。 恐怖に絶望に……あの現実感の無い阿鼻叫喚の地獄絵図に……思考が追い付いていなかったこと。
疲れた。 休む暇があるなら休ませてくれ。 願いは叶った。 余り寝心地は良く無さそうだが……
安全な場所とやらに到着したら教えてやると戒は……言った。
安心して眠れる。 会の歩くたびに起こる振動も今は慣れた。 護るべき人はこの堅牢な鎧の中だ。
良いじゃないか? 休んでも……あぁ、永遠のように休みたいよ俺は……
目を閉じる。
少しずつ虚ろの狭間へと堕ちていく。
適度な暗さが心地よくすぐ眠れそうだ……
あぁ、そう言えば戒かぁ……
俺達が夏休みの朝、蜜を縫ったクヌギの木だったかな? そこで捕まえたんだ。 オオクワガタと雌のカブトムシもいたっけ?
こいつは、覚えているだろうか?
覚えてなくても覚えてても良いや。 こいつは、一応は命の恩人だ。
俺達の大事な存在に変りはない。 まぁ、俺としては、利用価値のある道具とか思ってる面も有るが……
こんな困窮とした状況だぜ。 それも仕方ないだろ?
ちなみに、レオの奴が一番最初に手に取ったんだっけか。 あの時のアイツ、餓鬼みたいに目を丸くしてさ。
餓鬼か……小学四年生だもんな餓鬼だよな。
名前付けたり挨拶したり……人間以外の生物に言葉を理解する機能なんてねぇのに。
親しくなりたかったんだろうな。 今、こうやって言葉が通じるってのはなんだかスゲェ嬉しい気がするんだ。
いや、気がするじゃなくて実際、すげぇ嬉しい。
心地良い響きが、眠りへのいざないを助長する。 おれは、いつの間にか深い眠りの深淵へと至り……
「群青原君! もうすぐつくよ!」
ん?
もう、朝か……あぁ、いや……ついただけか。 戒の声ってよ。 妙に低いよなぁ。 小山力也とか中田譲二とかみたいな?
俺より餓鬼のくせに……あぁ、分ってる。 虫の成長速度と俺等の成長速度を一緒にするなって。
そもそも、コイツは未だに生きているってことのほうが不思議だしな。
月が綺麗だな。 外の様子を見るに山中のどこかか。
どうやら、山中に空洞を空けて造られた地下施設みたいなもののようだ。
ん? あれは……あのマークは、どこかで。
見覚えのあるマーク。 円の中に十字架、陳腐などこにでもありそうなマークだが……色が紫って言うと少ない気がする。
だめだ。 思い出せない。 まぁ、良いや。 唯、マークだけは記憶しておくか。
そんなことを考えているとシャッターが開かれる音。 監視のカメラがどこかについていて戒を視認したってところか。
戒は、シャッターが開くと中へと入っていった。
「うわぁ、見たことない機械が一杯だよ春水。 何かの実験施設みたいだね?」
「あぁ……って言うか昆虫の標本がそこかしこに有るんだが……」
内部は、まるで戒が歩くことを想定されているかのように整然としていて広い通路が多かい。
周りを見回すと何かとフラスコやら実験機材が多くここが何かの研究施設であることは遠めにも分る。
そして、各所にある節足動物の標本や模型から、実験している内容もある程度は理解できた気がする。
その瞬間、俺の脳裏にある疑念が浮ぶ。
この研究施設の実験の何らかの失敗が、俺たちの町のあの惨状に関わっていたりするのか?
だとしたら俺たちは渦中に身を投じられたようなもの? いや、待て。 待て待て待て待て!
なぜ、俺達をそんな特別扱いする必要が有る!?
俺等は、所詮はただの子供だ。 何か特別な力を持っているわけでも知識があるわけでもない!
ありえないだろ!? ありえないありえないありえない! 馬鹿な……そんな馬鹿なことが……
「なっなぁ、ここは、一体何の研究を?」
「昆虫の巨大化はここの実験の結果だ……隠す意味もないからな。 正直に言うがな」
あぁ……あぁ、やっぱり俺は選択を失敗した。 最悪だ。 こんな。
俺達は、たまたま戒を名乗るカブトムシに捕まって状況判断力の鈍った頭で勝手にコイツを仲間と判断して……
れれ? れれれれれれ……じゃぁ、何でコイツ、レオのことや俺のこととか知ったんだ。
分らない。 何か、組織の陰謀だ。 そうだ。 そうに違い……分らない。 何が何だか……
そんな訳の分らないと逡巡する俺をどう言う目で彼女は見ているのだろう。
心配そうにしているのだろうか。 自身もこの違和感に悩まされているのだろうか?
分らない。 分らない。 分らない。 分らない。 分らない! これからどうする?
あぁ、戒の装甲が開かれた音が、思索の糸を切る。 ここで降りろってことだ。
考えても答えも出ない。
ん? あれは、あそこに置いてあるのは銃? 大口径……の?
待て、あの目の前にいるのは……俺の親父?
「あれ? 春水のお父さんじゃないですか!? えっと、ここで働いていらしたのですか!?」
「あぁ、虹林さんの所のお嬢ちゃんだね? お久し振りだよ。 そう言えば紅木咲君がいないがどうしたんだい?」
やっぱり、親父なのか?
長身痩躯に表情が抜け落ちたようなあの顔立ち……俺と母を苦しませた元凶。
こんな所で何を!?
「親父……」
「ん、春水か。 随分でかくなったなぁ。 所で紅木咲君は……」
同じことを何度も何度も……知りたいなら教えてやるさ。
お前の作った化け物が……あいつの命を奪ったんだってよ!
そうさ、お前の罪を懺悔しろ! そう、思って俺は……あいつに洗い浚い真実を伝えた。
なのにアイツ……
「そうか……悪かったな。 だが、私は、お前等の愛慕の情を気付いていたから……彼が消えて少し安堵している」
「な…………に!?」
震えた。
少しは、足元を崩せると思っていたのに。 野郎、全く無感動な声音で言いやがる。
そうか。 俺と刹那の関係……親父は見抜いてたのか。
だからって、死んだことを喜べるか? 俺は、あぁ、俺は……生涯が消えて喜んだ口だが……なぁ?
おい、そんなのは、俺の虫の良い幻想だったってのか?
悪魔め。 何で、こんな大量虐殺が起こるようなことをした!? こんな結果になるような実験、検証段階で想定できるはずだ!
「お前は、昔から巨大な昆虫が世界を闊歩することに憧れていたよな。 俺は、お前のあの真っ直ぐな目が好きだった。
昔からな。 だが、親として研究のせで何もできなかった。 だから、せめてお前の夢が叶う様に実験し続けた。
論文は、全て失笑の的だったが……お前が俺を……嫌わないでくれると信じていた。
お前の求む世界を造るのが俺の使命だと思っていた」
「ふざけるな……あの時、お前が夏休み帰ってきて戒を奪っていったのは……
戒を長寿にしコミュニケーション機能を備えさせる実験のためだったんだな!
馬鹿かよ……いつまでも成長しないわけじゃないんだぞ? 成長して道徳を学んでモラルを身に着けて……
親ならそう言うことに思いを馳せないのか?」
ふざけてる。
こんなのふざけてるだろ?
ろくに家に帰ってきもしないで家族を苦しませて……心配ばかり掛けて研究で罪償いだと!?
ふざけるな。 ふざけるなフザけるなふざけるナふざケるなフざケルなふザケるナ! ふざけるな!
認めたくない。
非現実に憧れるとかそれは、そりゃぁ、したさ。
だがよ。 その渦中に何でアンタがいるんだ。
俺の家族が……信頼も信用も理想も何もかも瓦解させてくれやがって!
お前、一体なんなんだ!
家族面して何も分らないくせに! いつまでも昔の戯言にしがみ付いて!
馬鹿かよ!
「悪い。 格好良いって言われて浮ついてたんだ。 我が息子よ。 久し振りに……」
久し振りに出会った家族の抱擁でもするかのような仕草。
俺がそれを許すと思うか。 あんたのせいで母親は、あんなにやつれて……
やつれ、お母さん、何をやってるんだ? いや、今の状況に集中しろ。
ふざけるな。 お前の下に生まれた子供だと言う事を俺は糾弾する!
何で……ここに銃があるか? それは、天の思し召しだ。 理解した……
「俺は、お前を許さない!」
「何を言う春水? お前は人を殺しては……いけっ!」
俺は、気付くと銃握っていた。
意外なほどに重い。 重量感が凄い。 あんなちっぽけな物で人の命を容易く奪う……非難の的だが。
案外、重みがあるんだな。 そう、少しだけ安心した。
そして、目の前の畜生が、至極当たり前の常識を口にする。 反吐を出させてくれるぜ。
お前は、そんな良識的なことを言って良い立場じゃないんだよ。
死ね。 脳漿をぶちまけて……死ね!
乾いた音が響く。 壁が厚いのだろう。 反響音が凄まじい。 耳に残る。
頭部に穴をあけた親父の死体が崩れ落ちる。
何故だか知らないが、親父と深いはずの刹那も戒も止めようとも何も言おうともしない。
「ははっ……殺した。 俺が! コロ……した! ころした殺したコロシタ殺したころしタ! 親父を……罪が、痛いよ」
崩れ落ちる。
どうやら、思った以上に重い命だったらしい。
直接手にかけた。 人命を奪った。 俺が……罪人? 罪人になった……幾ら悪行の首謀者でも人は人だ。
罪悪感。 空から巨大な鉄槌が下されたかのような重圧。 あぁ、俺は……普通じゃない。
崩れ落ちる俺。 俺を支える女。
刹那……なんで、こんな俺を支えてくれる?
「俺は……狂っている?」
俺は、涙声で言葉を発した。
あぁ、適度な汗と香水の混ざり合う臭いが欲情をそそる。
今や俺は、犯罪者。 親殺しの大罪人。 あぁ、そうさ。 もう、恐れる事などない。
ならば、いっそこの愛する女をこの冷たそうな無機質の床に叩きつけて抱いてやろう……
いや、だめだ。 俺が俺じゃなくなる。 その境界線が壊れるのは嫌だ。
許されない……いや、俺は、もうすでにとっくにとっくの昔に崩壊している?
いやだ……壊れていない。 俺は、群青原春水だ!
脳内で怨嗟の響きが反響し続ける。
そんな中、聖母のようなやさしげな声……刹那の声。
「大丈夫だよ。 春水は、殺すべき人を殺しただけ。 それを重圧に思う必要はないよ。
大丈夫……あたし達は、貴方とあたしと戒がいれば……大丈夫だから」
「…………刹那……俺の刹那! 放さないッッッッ!」
俺は、唯強く彼女を抱き締めた。
一瞬にして俺の脳内からは、親父の姿は消えていた……俺にとっての親父の命は、そんなものだった。
そして、町の人々の命もおそらくはそんなものだ。
刹那……刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那刹那! あぁ、何て心地良い俺の魔法の言葉。
「刹那……」
>>END
NEXT⇒第七話「戦うしか無い……」
- Re: Cheap 第六話更新 9/29 コメ求む! ( No.45 )
- 日時: 2011/10/24 18:47
- 名前: 風猫(元:風 ◆jU80AwU6/. (ID: rR8PsEnv)
Cheap(チープ) 〜第七話「戦うしか無い……」〜
「ねぇ、パパ」
「なんだい春水?」
細身の頼りない父の肩に担がれている小さなころの俺。
何の疑いも無くただ、家族として信頼と愛情を感じる存在として話しかける姿。
過去の断片。
昔は、純粋に父親を信じて背中を追っていたな。
何で……何で!
“こうなっちまったんだ?”
自問自答しても答えは出ない。
頭を抱えても悲鳴を上げても……刹那に抱えられてから少し経って俺はじょじょに正気を戻して俺のやったことを理解して。
目の前には地だまりがあって俺の身内が倒れてて……銃弾一個が重く感じたとか勘違いしてた引き金を引いたときを思い出して。
嫌悪して過去の俺を憎悪して……罪悪感と言い知れぬ虚無感とに支配されて俺の体は、熱くて冷たくて痛くて悲しくて……
体中をサソリが這いずり回って俺の体の全てをつらぬいて千時間くらいかけて殺してくれ!
絶対に死ぬほどの痛みを感じるのに死ねない恐怖を感じながら絶対に解毒できない毒に犯される恐怖を感じながら。
苦悶と絶叫と反省の縁で死なせてくれ!
懺悔。 どうしようもない懺悔が、俺の中を駆け巡る。 意味は無い。 厳然とある結果が赦さない。
嫌だ……嫌だ嫌だいやだいやだ嫌だイヤダ厭だ! 許して……
取りとめもなく許しを請う俺の耳に異音……カツーンと言う硬質な足音。 ハイヒールとかで歩くときに出るような音。
「誰だ!?」
「あら……いきなり誰だ? とは、ご挨拶じゃないのかしら春水君?」
聞き覚えのある声。
それなりに馴染みのある声だ。 中学に入ってからは父とも疎遠になってその人とも自然、付き合わなくなったがな。
勝気な顔立ちで浅黒い肌。 左目の下にある泣きボクロがチャームポイントの白根明日夢と言う女。
父の研究に常に付き従ってきた女性だ。 今の俺が十五だで彼女はたしか二十九。
結構覚えているぞ? 彼女は、十九でアメリカで博士号をとってそれ以来、うちの親父と仕事を友にしている。
親父の研究に心酔していた気がする。
その親父の死骸が転がってんだがどうしよう? っていうか確実に銃声聞いて来たよな?
「あーぁ、やっぱ死んだんですかぁ? さて、息子さんに撃たれたのか自分で撃ったのか? この傷の付き方に焼け具合からするに……
春水君が撃ったのかなぁ。 まぁ、君はもともと、気が短かったしねぇ?」
俺が、父の死をどう、ごまかそうかと逡巡していると見透かしたように怜悧な目を向け彼女は俺に言葉を投げかける。
過去を懐かしむかのような物言い。 まるでこの展開の全てを予測していたような冷静さ。
妙な寒気が背筋を襲う。
「一体、何なんだ……アンタ、一体、何者だ?」
「あたし? 白根明日夢よ? 忘れてしまったの? 悲しいわぁ……でも、一つ私言いたいの?
博士は、反省していたのよ? だから、貴方に土下座して懺悔の言葉を残して死ぬつもりだったのに?
貴方ったら途中で自分で撃ち殺してしまうなんて……うふっ、最高!」
分っている。
お前が、白根明日夢だと言うことは分っている! だが、なんなんだ?
なんなんだ……この妙な感覚は……? 俺の知る彼女じゃない。 彼女は真面目で直向きで……割と冗談も言えて。
こんな馬鹿な。 俺の知っていた彼女はペルソナ!? もう、何がなんだか……何もかも理解できない。
「春水……」
「ははっ、俺は……」
俺は声にならない慟哭を放ちガクリと膝を落とした。
刹那の言葉が届かない。 俺の心の氷壁を甘く溶かしてくれた暖かい優しい日溜りのような声が……届かない。
世界が揺れる。 瓦解する。 崩壊する。 滅亡する感覚が、俺の脳内を洪水のように奔流する。
「ん? 良いわぁ。 そう言う何かを裏切られたって感じの表情。
あはは、揚羽博士は本当に良い人だったわ。 春水君が、喜んでくれるって言えば何にでも手を染めようとするの?
なんでもよ……これって端的に言えば私が全ての手綱を握ってる的なさ?」
「何言ってるんですか? それってまるであの巨大昆虫達は明日夢さんが……」
嘲笑の含んだ声。
明日夢さんは、目を細め愉悦に歪んだ表情でクルクルと手を大きく広げクルクルと周りなが言葉を続ける。
なんだ? こいつの言っていることは……まるで、他者を容易く甘言で誑かし切り捨てるそんな怪物の姿。
俺を出汁にして親父を操り戻れない所までこさせた張本人と言うこと。
俺の懸念を代弁するように刹那が明日夢さんに問い掛ける。 その後に、彼女が続ける言葉が俺達を奈落へ突き落とす。
「そうよぉ? どう考えても私の言葉から推論してそうでしょう?
色々と疑問もあるでしょうけど私の答えれる範囲で教えて上げましょうか?
何で戒が生きていて君達とコミュニケーションを取れるのかとか。
あの巨大な昆虫は今後、どこまで増えるのかとか……さ?」
彼女は、一瞬のよどみなく言い放ち左右非対称の狂人のような表情を造り続ける。
張本人たる彼女は、今回の一軒の全てを知っているということか。 細かいシュミレーションもしてきたと言うのが伺える。
やばい、やばいやばいやばいやばいやばいヤバイやばいヤバイヤバイ こいつは、本当にヤバイ。 親父より明らかに酷い。
猫を被って演技して全てを欺いて世界を地獄へ落とそうとする闇の化身みたいな……
俺は、無意識に拳銃を構えた。
こいつは、生かす価値が無い。 俺は瞬間、理解する。 俺の中の命の価値観がエスカレートで下っていっていること。
この女とそれ程違わない底辺に至っていること。 ならばこそ俺は、同質の悪を消し贖罪とせねば。
何を厨二染みた……でも、これは俺に関わりに有る事なら……
「悲痛な顔ね。 私も処理するのかしら。 肉親を殺したあんたなら大して辛くもないのでは?
でもやめておいた方が良いわよ? もし私を殺せても春水君も刹那ちゃんも両方死んじゃうから……」
銃口を向けられなお、明日夢さんは澄ました顔。
理由は簡単だった。 ここは、敵地と言ってよかったのだ。 彼女の手信号で彼女の部下達が銃を構えて現れた。
おいおい、日本じゃ手に入りそうも無いような強力な重火器のオンパレードじゃねぇか!?
こいつ等一体なんなんだ……口をついて出たその言葉に明日夢さんは、自慢げに説明する。
どうやら、彼らは、彼女が渡米して居た時からの知り合いらしい。
彼女のイカレタ考えを憧憬し絶賛しついていく末に、敵を封殺するために力を鍛えていくうちに軍隊染みたものになったらしい。
名を「サット」と言うそうだ。
つまり、この女は、この地獄を作り出すために人生を捧げてきたということか。
俺は、強く唇を噛締め彼女を一瞥し銃をおろす。
「それが正しい判断。 じゃぁ、色々とお姉さん語っちゃおうかなぁ?
歴史に残る悪行を誰も知らないじゃ悲しいもんねぇ?」
途中で遮られた言葉を思い出しながら彼女は、言葉を続ける。
彼女の言葉を聞くしか選択肢はないらしい。
戒を使って倒そうとも思ったがどうやら、戒は、彼女らを襲うことはできないように何らかの措置をされているらしい。
俺達の渋い顔を嘗め回すように交互に見ながら明日夢さんは、話し続ける。
戒は、世界で唯一大脳新皮質を持った本能を抑制できる昆虫であり脳には、シリコンが注入されているらしい。
それは、俺や刹那や明日夢さんにも入っているらしい。
いつ、どうやって脳内にシリコンを入れられたかは分らない。
だが、戒から発せられる声がぼやけて感じるのは脳内に直接伝わるかららしい。
次に、巨大昆虫。 これは、彼等のDNAに直接働きかける特殊ウィルスを考案したことに基づく。
排気ガスに流してそれを排出するというプロセスだ。
この研究所に入る時に見たあのマークは、この研究所が作った技術を使っているという証明のようだ。
あの煙突にそのウィルスが染みこまされていて煙突内がある物質と結合すると空に浮き空気中に散布される。
それは、どこにでも普通に存在する物質と非常に似ていて安全確認でも引っ掛からないらしい。
よくよく、考えられてやがる。
最初に、犠牲になったのは、沢渡町。 理由は、その煙突を最初に大量に購入したのがそこだから。
そして、他の購入地も程無くしてそのウィルスが基準値まで充満し巨大昆虫化が始まるとのことだ。
全国、千箇所を中心に日本全土をまきこむ。 日本列島が阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
それが、彼女の見立てだ。
ちなみに米軍などは、この未曾有のバイオハザードを解決しようとはしないだろうとの見解だ。
何故と聞けば、彼等を相手にしては犠牲が多すぎるということが第一。
次に、そのウィルスのある範囲内でしか巨大昆虫達は生きることができないから。
飛行機や船で避難することも今からでは難しいだろうと言う。
理由は、非難しても世界からは、怪物を生むウィルスに塗れていると認知され凶弾されるのがオチだから。
何という八方塞がり。 絶望的。
「何の救いも無いじゃないか?」
「確かに少し……救いが無いかもね? でも、私さ……救いのある物語って大嫌いなのよ?
最後には、皆、大往生しちゃうそんな話が好みなの。 でもさぁ、生延びたんだから少しでも長生きしたいよね?
君は、父の罪を清算するために戦うという理由をもらえたのだから少しは気楽にいこうよ?」
なんだ?
散々、親父を利用しておいて何をほざく!?
殺してやる! 殺してやりたい! でも、今、やりあったら全滅するのはこっちだ。
イカレタこの女の物語に俺は付き合うしかないのか!?
これが世界か……
俺は、俺の脳内はもう、訳が分らなくなっている。
目の前の女の言葉全てを嘘だと否定して命などもう、要らないと東部を打ち抜いて脳髄をぶちまけて死にたい衝動。
「春水君……だめ! 生きよう。
明日夢さんの言っていることに間違えが有ってあたしたちが楽しく生きられる未来があることを信じよう!」
思うや速く俺は、こめかみの辺りに銃口を押し当てていた。
でも、どうしても世界への未練が山ほどあって……刹那との間に生まれる家族とか考えると撃ち抜けなくて……
少し冷たい刹那の指が俺の腕に添えられると力が抜けてしまって……
「アアアアアああああアアアアアアアアああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああアアああアアああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああアアアアああアアアアアアアアああッッッッッッッッ————————」
無力で情けなくて全てがどうでも良いのに何も放せない。
理不尽で、脳も心も感情も世界も神も刹那も何もかも理不尽で俺は……………………
こわれそう
「壊れそう」
こわれそう壊れそうコワれそうコワレそう壊れソウコワレソウ壊れそうこわれそう————
「大丈夫だよ春水君。 日本と言う君達の世界は壊れてしまうのだから君達も壊れてしまえば良いの」
あぁ、うざい。 明日夢うざい……まじでうっざい!
でも、あんたのお陰だ。 なにがなんでもこの世界を生延びてやる。
明日夢とも世界とも化物共とも戦ってやるさ。
戦うしか無いのなら!
「良いんだよ。 希望なんて無いような小さな物ですがっていけるから」
>>END
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- Re: Cheap 第七話更新 10/20 コメ求む! ( No.46 )
- 日時: 2011/10/20 20:49
- 名前: 狒牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: GIxrqpJQ)
明日夢さん怖い・・・
はい、例の通りほとんどの話を情報の時間に読みました。
やっぱり文章素晴らしくて面白いですね。
虫ははっきり言って好きなやつとそうでないやつに分かれます。
刺す奴嫌い、遅い奴は別にいっか、みたいな。
更新頑張ってください。
- Re: Cheap 第七話更新 10/20 コメ求む! ( No.47 )
- 日時: 2011/10/26 19:20
- 名前: 風猫(元:風 ◆jU80AwU6/. (ID: rR8PsEnv)
狒牙様へ
こちらでは初めまして!
明日夢さん怖いといってくれて有難う御座います♪ 凄い重要キャラっぽいですが……です(苦笑
私も虫は好き嫌い分かれますね。
普通の女子は全部嫌い……って言うのだけどね(笑
頑張ります!
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