ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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死に向かう僕らの。
日時: 2011/09/02 16:27
名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)

初めましてこんにちは、忍足と申します^^


今回、なんとなくちょこちょこと書いた短い話を上げさせてもらおうと思ってます。
なんと原稿用紙40枚にも満たない短さ。自分でも驚きの短さでした。
ですが書いてる自分は楽しかったので自己満足……といった感じで。


自分で言うのもあれですが、内容は極めて普通……です。
奇妙な思考の人物は出てきますが全くグロテスクな要素などはありません。
場違いでしたらすいませんorz


軽く注意書きをば。
・文章力に自信はありません。文法にもまるで自信がありません。無理な方ブラウザバック推奨です。
・上記のとおりとりあえず短いです。つまり内容も薄いと思われます。
・内容を要約すると→死にたい死にたい連呼する小学5年生の話
 この時点で無理だと思った方もブラウザバックを推奨。


上記okな方は、宜しければお付き合いください^^

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Re: 死に向かう僕らの。 ( No.8 )
日時: 2011/09/02 16:26
名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)




 俺とイリエが知り合ってから一年半ほどが経った、5月半ばの金曜日の事。俺は初めて、イリエに、家に来ないかと言われた。
 今まで友達がいたことがなかったので、とてもためらったが、同時に、とても嬉しかった。イリエの、とても大切に思っている人達——つまり、イリエの両親に会うことを許されたのだ。何だかとても、誇らしい気分になった。

 イリエに誘われたその日、早速イリエの家にお邪魔した。
 彼の家は、ベージュや茶色などの暖色を基調とした、とても綺麗な外観だった。

 イリエが家に入ったのに続き、俺も家に入った。

「ただいま」
「お邪魔、します……」

 人の家に行った事はなかったが、なんとなく礼儀だけは理解していた。初めはお邪魔します、帰りはお邪魔しました、ありがとうございました。まさか、本で得ただけのこの知識を使用する日が来るとは思わなかった。何だか得した気分だ。

 イリエの家は、外観だけでなく内装もとてもシンプルで綺麗だった。玄関に無駄なものは何一つとして置かれず、埃の一つもないんじゃないかと思うほどに清潔感があった。

 俺が玄関を見回していると、イリエの声に反応したイリエのお母さんがリビングと思しき場所から姿を現した。
 茶色の髪を後ろで緩く縛り、エプロンを着用していたその人はナツカと名乗った。彼女の綺麗な茶髪を見て、イリエの茶髪はナツカさん譲りなんだろうなと思った。

 イリエの後をついていくと、とりあえずリビングへあげられた。父さんはまだ帰ってないんだ、と言ってイリエは少し悲しげに微笑んだ。
 イリエは家族の写真を俺にたくさん見せてくれた。イリエは一人っ子らしく、父さんと母さんと僕で色んなところに行ったんだよ、と笑った。写真のイリエは、俺にもほんの数回しか見せたことのないような、とても素適な笑顔を見せていた。

 ふと、リビングと繋がったキッチンでナツカさんが何かやっているなと思い、そちらを見た。すると、夕飯の支度をしているらしかった。ああもうそんな時間か、と小さく呟き、帰り支度を始めた。と、ナツカさんがこちらにやってきて、微笑んで言った。

「ミカサ君、もしよかったら夕飯、一緒に食べていかない? あ、ご両親が心配するかしら」

 イリエは俺に両親がいない事をナツカさんに話していなかったらしい。だからと言って、どうとも思わないが。

 確か今日は叔母さんの帰りが遅い日だったはずだ。
 だけど一応許可を取るため、ナツカさんに電話を借り、叔母さんに電話をかけた。友達の家で夕飯を食べてきてもいいか、と問うと叔母さんはあんたにそこまで仲のいい友達がいたんだ、というような感じの事を嬉しそうにいい、快諾してくれた。その後で別に泊まってきたっていいのよ、と冗談めかして言っていた。それが出来たら楽しいだろうな、と思った。

 夕飯をご馳走になるんだから、と夕飯の支度をイリエと一緒に手伝った。
 ナツカさんはとても優しく、少々ミスをしても笑って見逃してくれた。

 夕飯の支度がもうすぐ終わる、というところで、イリエの父さんが帰宅した。俺を見ると一瞬目を見張ったが、イリエの方を一度見て、納得したように頷いた。

「君が、ミカサ君かな? 僕はイリエコウタっていうんだ。いつも息子と仲良くしてくれてるみたいで、ありがとう」

 そういってコウタさんは微笑した。笑い方がイリエにとても似ていた。特に目元がそっくりだなと思った。

 夕飯の支度が終わったころ、コウタさんも着替えなどを済ませて食卓に着いた。机には四人分の食事が用意され、俺はイリエの隣の席に着いた。

 食事中、コウタさんとナツカさんは俺の知らないイリエの色々な話をしてくれた。前まで飼っていたペット、とイリエが一番仲が良かっただとか、去年の夏外国に旅行に行っただとか、そんな他愛もない話ばかりだった。だけど俺は、それが楽しかった。

 イリエは少し恥ずかしそうに「その話はやめてよ」なんて時々言いながら、それでもとても楽しそうだった。
 俺といる時よりもいい笑顔、家族がいる事に安心しきっているというような笑顔。そんな笑顔を見せてイリエは笑っていた。ずっと、だ。
俺はその話を、笑いながら聞いていた。ときどき相槌を打ちながら、本心からの笑顔で会話できた。

『家族といる時のイリエ』をたくさん知ることができ、何だかとても嬉しかった。
 食事後、ナツカさんは叔母さんと同じように冗談めかしてなんなら泊まっていってもいいわよ、と言った。俺がそれに対し本当ですか、と問うと、ナツカさんは一瞬目を見張ったが、微笑んでええ、いいわよ、と言ってくれた。

今日はずっとイリエと一緒だった。楽しかった。

Re: 死に向かう僕らの。 ( No.9 )
日時: 2011/09/03 14:40
名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)




「——……!」
「……。……」
「——、——……ッ」
「…………、——」

 そんな、内容の聞き取れない、言い争いのようなものが微かに聞こえ、俺は目を覚ました。
 辺りを見回し、見慣れない風景に一瞬戸惑う。ああ、そういえばここはイリエの家だった。

 食事後、風呂に入ったりイリエと少し雑談を交わしたりしてから、イリエの部屋で寝た。イリエは一人っ子だったので、広い一人部屋を持っていた。俺も一人部屋を持ってないわけじゃないけど、イリエの部屋程広くはなかった。

 部屋の中は暗い。カーテンが閉まっているとはいえこれだけ暗いとなるとまだ深夜だろう。
 俺の耳にとまった言い争いは、部屋の外の方から微かに聞こえた。イリエにそれは何の音か聞こうと思い、イリエの寝ている筈の布団の方を見た。と、そこには、誰もいなかった。
 言い争いの正体を突き止めるのとイリエがどこに行ったのかを探るため、イリエの部屋を出た。

 深夜なので足元はすごく見えにくい。イリエの部屋を出てすぐの廊下は、横に一直線に続いている。その廊下の先を見ると、イリエの部屋から三つ先の部屋から明かりが漏れていた。言い争いもそこから聞こえているようだった。
 その部屋に近づこうとしたとき、言い争いの聞こえる部屋の扉の前に人が立っていることに気付いた。俺よりも少し小さいくらいの背丈の。多分、イリエだ。言い争いに耳を傾けながら、その顔は無表情だった。ただその場に立って、ただその会話を聞いている、というような。

 イリエの方に、足音を立てないようにしながら近づいていった。精一杯静かに歩くよう注意したけどイリエは途中でこちらに気付き、こちらを見て微笑んだ。とても悲しそうで、笑みと言っていいのかわからない程に寂しげな表情だったが。

 イリエの隣に立つと、イリエは小さな声で話し出した。

「父さんと母さん、夜中によくこうして喧嘩してるんだ……」

 独り言のようにそう呟いた。俺は無言で立っていた。
 扉の前に立つと、ナツカさんとコウタさんの声だと鮮明に分かった。二人の、互いを罵り合う声がきこえた。

「イリエ。戻って寝よう」

 特に意味のない行為だろう。が、無意識にイリエの手を握り、引っ張った。
 今更だとは思ったが、イリエにこれ以上そんな寂しげな表情をさせたくなかった。本当に意味のないことだ。

 イリエの体には殆ど力が入っていなかったので、引っ張って部屋まで連れて行くのは造作もないことだった。その時少し足音を立ててしまったが、二人はあれだけ激しく言い争っていたんだ。あんな些細な音は聞こえていないだろう。

 イリエの言っていた、仲のいい時の父さんと母さんが好き、という言葉の真意を理解した気がした。

Re: 死に向かう僕らの。 ( No.10 )
日時: 2011/09/04 19:56
名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)




 次の日の朝、十時ごろに俺はイリエの家を出た。
 コウタさんは、土曜日にも仕事があるらしく既に家にいなかった。見送ってくれたナツカさんは目の下にクマを作っていた。
 昨日のあの口喧嘩はそんなに長く続いたんだな、と思った。イリエを連れて部屋に戻ったのはいい事だったかもしれない。

Re: 死に向かう僕らの。 ( No.11 )
日時: 2011/09/04 19:58
名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)

10


 あの日から数日が経った、ある日曜日。何をする訳でもなく、家の近くの公園に出かけた。イリエとも、結構な頻度で遊びに、というか溜まって雑談をしに行っていた。

 そこはずいぶんと小さな公園で、他に人はいなかった。だからこそ溜まって雑談するのにちょうどよかったのだけれど。
 その静かな公園で、よくブランコに座って会話をした。ブランコが俺たちの定位置だった。

 イリエがいないか少し期待しながら公園に向かったが、一見、イリエどころか人ひとり見受けられなかった。
 少し残念な気持ちもあるにはあったが、特にどうするでもなく、いつものようにブランコに座った。

 特に何をしに来たわけでもない。ただボーっとしながら、ブランコを少しだけ揺らしていた。キイ、キイと音を立ててブランコは揺れた。
 ブランコに座ってから数分が経って、そこでやっと。やっと、誰かの声が聞こえるのに気が付いた。すすり泣くような、とても小さな声。無理やり声を押し殺そうとしているようにも聞こえた。

 改めて辺りを見回してみると、公園の片隅に、木の陰に隠れるようにしてうずくまっている人物を発見した。泣き声はその人物のものらしかった。そこで泣いていたのは、

「イリエ……?」

 泣き声を押し殺そうとしながらそれでも涙を止められないでいる、いつもよりも寂しげに見えた、イリエがそこにいた。

 俺はほとんど反射的に、イリエの方に駆け寄って、隣に腰を下ろした。
 イリエは俺の姿を見止めると、無理やり微笑んで、無理やり声を出してくれた。

Re: 死に向かう僕らの。 ( No.12 )
日時: 2011/09/05 21:01
名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)

11


 ……リビングの机にね、離婚届が置いてあったんだ。母さんの名前とはんこが押してあったよ。

 ……そっか。

 母さんの名前の隣にね、父さんの名前も書いてあったんだ。はんこも押してあったんだよ。

 …………そっか。

 僕が今まで生きていたのって、何だかんだ言って父さんと母さんがいたからだと思うんだ。僕と世界をつないでたのって、結局ほとんどそれだけ。

 ……。

 でももう、三人一緒に会うことはないんだって。なんかもう、全部どうでもよくなっちゃったんだ。僕は父さんと母さんのいない世界にいて一体何がしたいんだろうって思った。そう思うくらい、依存してた。もうここにいたらダメなんじゃないかなって、思うんだ……。

 俺は今、イリエがいたから生きてるよ。俺と世界をつないでるのは、今、ほとんどお前だけだ。

 そうなの?

 ああ。だから、イリエが父さんと母さんがいないから死ぬっていうなら、それで俺も死ねるな。これでもう、何も心残りなく死ねると思うよ。イリエがいなくなったら、イリエが先に死んでるんなら、多分死ぬのも怖くなくなる。

 僕なんかで死ぬかどうかなんて決めちゃったら、きっと後悔しちゃうよ……?

 死んだ後に後悔なんかあるかっての。でも、イリエが生きてる世界から離れるとしたら、それはちょっと後悔するかもな。お前がいる世界ならまだ生きててもいいか、と思ってるだけだから。イリエが死ぬなら俺もやっと死ねるよ。早くも生涯の目標達成……ってとこか。

 僕はもう、今すぐにでも死ねるかなあ。

 そっか。じゃあお前、死ぬのか?

 ……。
 ……。
 ……。
 ……。
 ……。
 ……。



 ……もう、色々どうでもよくなっちゃったなあ。


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