ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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月の夜 -Moon Night-
日時: 2011/10/02 14:45
名前: 海底2m (ID: aadvXTau)

ベタな題名ですみません。心よりお詫び申し上げます。

注意事項は殆どありません。
*この小説、本当にシリアス・ダークに入れていいのか分かりません

ご協力よろしくお願いしますm_ _m


PS
複雑ファジーで「神々の戦争記」を執筆してます。
更新が週一程度の可能性があるのでご理解のほどを。



目次

プロローグ                                  >>1
第一章 第一話 「変わり果てた世界に生きること」
  Page.1 「運命」                             >>2
  Page.2 「ようこそ月の世界へ」                    >>3
  Page.3 「月市」                             >>4
  Page.4 「綺麗事並べられる時代はもう終わってんだよ」      >>5

Page:1 2 3



Re: 月の夜 -Moon Night- ( No.9 )
日時: 2011/11/05 15:16
名前: 海底2m (ID: jHk4FiMo)
参照: 第二条 月市には月市住民の個人情報を把握する権利はない

Page.8 「第二十六条に基づく施行権限を執行する」

「あそこだ」
水戸部は森の中にある光が漏れる小屋を指差しながら言った。
とは言っても、今現在二人はその小屋から見えないように茂みの中に身を潜めている。

「なんでこんな事しなきゃなんないんですか」
無声音で唯月が訪ねると、水戸部も同じく無声音で答えた。
「奇襲するためだ。下手に行って逃げられたら困る。大昔の警察だってこれぐらいするだろ?」
そういわれてみれば…と唯月は口をつぐんだが、そう考えている間に水戸部はジーンズのポケットから紙切れを取り出した。

「なんですか、それ」
「施行書。昔は印刷だったんだけどな。いちいち面倒くせぇから現地で手書きってことになった」
テンプレートとして何か印刷がされているが、水戸部は万年筆を取り出し、空所空所に何かを書き込んでいく。
途中で時計をちら見している様子を見ると、日付などを書き込んでいるようだった。

「一応説明しておく。今回のターゲットは原田閑蔵54歳、典型的なおっさんだ」
そこで一度唯月が噴き出すというワンアクションが入った。
「典型的ってグラフやらみたいな言い方は…」
一応言ってることはまともなのだが、笑っているため威力半減だ。
どっちにしろ水戸部にはきかない悟りなのだが。

「それで先月、憲法第十三条『安全保障の義務』を破った。具体的には人を傷害を与えたってことだが。
 今回の本来の目的は確保及び連行だが、俺の経験上100%殺し合いになる。お前さんはここで待ってろ、死n「嫌です」
水戸部が言い終わる前に唯月は抵抗した。水戸部は不服そうな顔になる。
「俺は水戸部さんの助手です」

先ほど、蘭三郎と別れる際に、水戸部の助手になることを勧められ、最終的にそれが職業として記録されたのだ。

「…あれだけ文句言ってたやつが助手とはな」
「別に賛同するわけじゃありません!」
唯月は強く否定した。
「ただ、それが俺の職業ですから」
あくまで憲法にのっとって、か…と水戸部が笑い、しずかに腰を浮かせた。

「行くぞ」
相槌をひとつ打つと、二人は一斉に走った。
小屋の前で水戸部が思いっきりそのドアを跳び蹴りすると、破壊音と共に上部の蝶番が外れ、ドアは室内に倒れた。

中にはターゲットと思われる原田が呑気に夕食をとっており、目を丸くしてこちらを見つめる。
水戸部はなにも戸惑うことなく施行書を原田の目の前に突き出した。


「我々は月市施行人だ! 本日二二○○を以て、貴様を月市憲法第十三条違反による罪人であるとする。
 これより、我々は第二十六条に基づく施行権限を執行する!」

Re: 月の夜 -Moon Night- ( No.10 )
日時: 2011/11/05 16:51
名前: 海底2m (ID: jHk4FiMo)
参照: 第三条 月市政府は、月市を守るべく最善の処置を行う

Page.9 「安全保障の義務があります」

「くっ……!」
原田は椅子から思いっきり立ち上がると、後ろの壁に背を付けた。もう逃げ場はない。

「か、確保…するんだろ… し、してみろよ……」
原田はビクビクと体を小刻みに震わしながら、精いっぱいの上から目線で言い放った。
水戸部はそれに逆らうことなく、ゆっくりと原田の方へと近づいていく。

「危ないですよ!」
「言っていることは間違いではない」
唯月は声を張り上げた。水戸部は唯月に振り返ることなく静かに答える。
でも……とつぶやいたとき、視界の傍にもう一つの人影が潜んでいることに気づいた。
隣の壁際に置いてあるサイドテーブルの下に潜り込んでいる男は、両手でカッターナイフを握りしめている。

が、目が合った時にはもう遅かった。
「うぉぉおおおぉぉ!!」
男は水戸部の後頭部めがけてカッターの刃を突き刺そうとする。水戸部は一瞬そちらの方を振り返ったが、
その隙に原田がポケットから拳銃を取り出していた。

「水戸ッ……」
名前を全部言い切らないうちに、唯月は走った。
男のカッターを持つ手首を思いっきりつかみ、上に持ち上げる。反動で男の重心が後ろに傾いた。
すかさず足を刈って思いっきり後ろに吹っ飛ばす。
「ちっ…!」
原田はそれを見て銃口を水戸部に向けると引き金を引いた。

『ズダンッ!!』——乾いた音が響く。

「水戸部さんッ!!」
だが、水戸部は間一髪でそれをかわして、長袖をまくっていた。

と、今まで気づかなかったが、水戸部の腕には折りたたまれた刃が装着されていた。
水戸部が思いっきり腕を振ると、刃が展開して、手の先までに刃が伸びた。

原田がうろたえた瞬間、水戸部は容赦なく、原田の心臓に突き刺していた。
原田は声も上げない。

水戸部はグイっと、腕を回転させると、心臓に空気を入れるようにして刃を抜いた。
抜いた刃先に赤黒い血痕が付着している。

原田はそのまま棒のように倒れた。

人が目の前で死ぬのを見るのは、これが初めてだった。
しかし、何年も前からそれが決まっていたかのように、唯月は特に何も感じなかった。

「一件、落着ですね」
唯月が水戸部に近寄った瞬間、水戸部はこちらを振り返って怒鳴った。
「まだだ!」
水戸部の視線は唯月の後ろに向けられていた。

振り返ると、先ほどまで倒れていた男が、カッターを取り落して殴りかかろうとしている。
そう考えている最中に、すでに男の拳は目の前にあった。

「ッ!」
水戸部の手が頭の上にのせられ、思いっきり潰される。唯月は床にどてっと手をついて倒れた。

『ドッ』
頭の上で鈍い音がした。
見上げると水戸部は、刃を男のわき腹から反対側の肩にかけて斬り上げた。
背中に生温かい感触が伝わる。

男はどさっと後ろに倒れた。

静寂が、森の中の一軒家を包んだ。水戸部の息切れする声だけが響いている。
水戸部は唯月の頭の位置まで腰を下ろすと、「大丈夫か」と一言聞いた。

静かに立ち上がると、水戸部はフラッと後ろに倒れそうになった。
「水戸部さん!」
あわてて背中を支えると、水戸部は片手で額を押さえつけた。

「あぁ、すまん。帰るぞ」
水戸部はフラフラと開き放たれたドアに向かって歩き出した。
「ま、待ってください!」
唯月は水戸部を支えるようにして一緒に歩く。

「そこらへんで休みましょう」
「駄目だ」
水戸部は強く否定し、支える唯月の手を振り払った。
が、唯月は水戸部の背中をドンと押し、強引に倒すと、そばに駆け寄った。


「俺には、水戸部さんの安全保障の義務があります」
倒れた水戸部は小さく笑い、激しい呼吸の合間に、それもそうだな、とつぶやいた。

Re: 月の夜 -Moon Night- ( No.11 )
日時: 2011/11/10 01:12
名前: 海底2m (ID: ftBQ6kxG)
参照: 第八条 月市は管理する月市住民の情報を守秘する義務を負う

Page.10 「月と共に起き、朝日と共に眠る」

目が覚めた時には見知らぬ部屋に寝ていた。というか、寝かされていた。
唯月はむくりと起き上がり、目をゴシゴシとこすった。
頑丈に日光遮断されている窓から、板の隙間からわずかにこぼれる日の光が差し込んでくる。

部屋を出ると、廊下を挟んで向かいが居間になっていた。
そして、ようやくここが水戸部の部屋であることを思い出す。

居間に隣接するキッチンでは、水戸部がジュージューと朝食らしきものを作っていた。

「おはようございます」
「ん、あぁ起きたか。シャワーでも浴びてくるか?朝だか夜だかわからねぇし」
え、と唯月は壁にかけてある時計に目を移した。短針は二と三の間をさしている。

「できたぞ、昼飯だ」
水戸部はそういって、目玉焼きとウィンナー、トーストが乗ってある皿を二枚持ってきた。
完全普通たる朝ごはんだが、時間的にはもう「おやつ」である。

「いつ帰ってきたんでしょうか」
唯月は座布団の上に座りこむと、出された割り箸をパキッと割った。
水戸部は目玉焼きをペラリと一枚舌で巻き取りながら答える。
「昨日の夜中だ。いつの間にかお前さんが寝てたからおぶって帰ったんだ」
「お、おぶッ!?」
唯月は目を丸くして、しくったと内心舌打ちした。「安全保障の義務があります」などとはどの口が言ったものか。

その様子を見て、ウィンナーをポポポンと口の中に放り込んだ水戸部は笑った。
「安心しろ、頭の怪我は大したことないし、それに比べたらお前さんのショックの方が格段に大きいはずだ」
「そんなことなかったです」
唯月はキッパリと断った。トースト一枚を四つ折りにして口の中に畳んだ水戸部は不思議そうな顔をする。

「なんか、ずっと前からこうなることが分かってたみたいな。それで、期待みたいなのが解けた感じがしました」

そうか……としばらく黙り込んでいた水戸部はコップに入った牛乳を飲み干した。
「だが、お前さんにはこの世界のマナーを見せなきゃならんしな」

えぇ、と答えかけて唯月は目を剥いた。

「み、水戸部さん食うの速ッ!まだ一分も経ってませんよ?!つーか普通に一口描写多すぎだし!」
「馬鹿野郎、これも月市のマナーだ」
「嘘だ、それ絶対嘘だ!」

ひとしきり笑った後、水戸部はさて、と立ち上がった。

「寝る」
「………は?」

唯月がぽかんと口をあけると水戸部はぐっと親指を立てた。


「月市住民には、月と共に起き、朝日と共に眠る義務を負う。
 なお、生命活動を健康的に行うための食事はこれを例外とする」
「かっこよく決めるな———!!」

Re: 月の夜 -Moon Night- ( No.12 )
日時: 2011/12/10 16:41
名前: はぜのき(元海底2m (ID: bgttHl.T)
参照: 第五章 価値と信頼

Page.11 「黒部唯月君、だろ?」

夜になって目が覚めた。
水戸部の言うことが間違っているとは決して言えないが、なんだかムカムカする。

居間に出るともう水戸部は外出の支度をしていた。唯月も着替えながら尋ねた。

「今日はどこへ行くんですか?」
水戸部はしばらく考え込む素振りを見せると、やがて口を開いた。
「……ボスのところだ」
「ボス?」

水戸部によると、水戸部達『施行人』は『マグナム』という組織の下で動いているらしく、
ボスというのはその組織のトップに当たる人物を言うらしい。

「施行人、てのは他の職業となんら変わらない。
 前も言ったが、魚を取るやつもいれば金を貸し借りする奴もいる。
 俺は人を追い出す奴ってわけだ」
「追い出すって言っても結局人殺しでしょう」

唯月の言葉に水戸部は一瞬眉間にしわを寄せたが、階段に続くドアを開け、玄関に降りた。


昨日の月は美しく輝いていたが、あいにく今日は曇りでよく見えない。
しかし、そこからぼんやりと映る月も、唯月は嫌いじゃない。

「こっちだ」
水戸部について歩いていくと、月市とは反対の方向に向かっていくのが分かった。

次第に明かりは消えてゆき、やがて完全な暗闇を歩くようになる。
懐中電灯の一つぐらいあってもいいのではないかと思うが、水戸部がそこまでするとは思えない。

しばらく歩いていると、大きな屋敷が目に入った。
廃れたビルに囲まれた一角で威厳を振るっているその屋敷が、施行組織マグナムの本拠地らしい。

「入るぞ」
頑丈な木の扉を押し開けた水戸部につられて中に入ると、外観とは違って洋風な雰囲気が漂っていた。
赤いじゅうたんに壁にかかったガス灯。なんだかタイムスリップしたようだ。

人気のない空気はどう考えても大組織の基地とは考えにくいが、水戸部はスタスタと勝手を知って歩いていく。

右に曲がって左に曲がり、階段を上ってまっすぐ進み、やがて廊下の突き当たりに小さなドアを見つけた。

『しゃちょう』と書かれた金色のプレートが掲げられているが、水戸部はノックすると返事がないままドアを開けた。

止める間もなく水戸部はズカズカと部屋に入る。
部屋の雰囲気は今までとは打って変わって、日本の学校の校長室のようだった。

奥に置いてある机の後ろに、一人の男が立派な椅子に座っていた。
水戸部が机の前で止まって一礼するのを見て、唯月もそれをまねる。

男は口を開いた。



「ようこそ、黒部唯月君、だろ?」

Re: 月の夜 -Moon Night- ( No.13 )
日時: 2011/12/10 21:14
名前: クリスタル (ID: RIMOjgnX)

はじめまして、クリスタルです♪

つ、月市って何なんだ!?
あと「唯月」て、どう読むんですか?ただつき?

この町の人は、皆夜行性・・・狼みたいだ。
そういえば、今日の11時くらいから、皆既月食があるそうです。

あ、ついでに
「鏡の国の君を捜して』という話を書いてます。
暇があったら、読んでみてください♪


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