ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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月の夜 -Moon Night-
日時: 2011/10/02 14:45
名前: 海底2m (ID: aadvXTau)

ベタな題名ですみません。心よりお詫び申し上げます。

注意事項は殆どありません。
*この小説、本当にシリアス・ダークに入れていいのか分かりません

ご協力よろしくお願いしますm_ _m


PS
複雑ファジーで「神々の戦争記」を執筆してます。
更新が週一程度の可能性があるのでご理解のほどを。



目次

プロローグ                                  >>1
第一章 第一話 「変わり果てた世界に生きること」
  Page.1 「運命」                             >>2
  Page.2 「ようこそ月の世界へ」                    >>3
  Page.3 「月市」                             >>4
  Page.4 「綺麗事並べられる時代はもう終わってんだよ」      >>5

Page:1 2 3



Re: 月の夜 -Moon Night- ( No.1 )
日時: 2011/09/22 00:23
名前: 海底2m (ID: NMs2Ng.a)

プロローグ




ある日突然太陽は

恐ろしい牙をむき出して、

次から次へと人は死ぬ

理解しがたいその光景

もう陽の下では生きられぬ

もしもそれが神様の

気まぐれだとでも言うのなら













——僕は何をすればいいのだろうか

Re: 月の夜 -Moon Night- ( No.2 )
日時: 2011/09/22 00:57
名前: 海底2m (ID: NMs2Ng.a)

第一章 第一話  「変わり果てた世界に生きること」

Page.1 「運命」




「あ゛—————っ、暑い」
煌々と照る日差しの中で、少年、黒部唯月は熱を存分に吸収しているアスファルトの上に倒れた。
しかし、その熱がもう温度計で測れるものではなくなっていることに一瞬で気づき、慌てて体を持ち上げる。
道路からは湯気が出ているようだった。
唯月は背負っているリュックからスポーツドリンクを一本取りだした。
全世界に広がっている謎の熱中症に、スポーツドリンクが予防に繋がるという研究結果がいつだったか出た。
「それにしても…」
唯月は辺りを見回した。結構大きな道なのにもかかわらず車と言う車は全くない。
少しは楽になると期待して上京したら、このありさまだ。
「全く、こんな太陽一個がそんなに怖いのか?」
家を出てから三日目。
もう既に体力は底を尽きかけているが、まだ宿すらも見つけていない。
あー、俺はここで飢え死にか。
などと思いを馳せていると、数百メートル先にアパートらしき建物が見えた。
その時である、何か運命を感じたのは。
根拠はない。今までだって人が住んでそうな建物は見かけてきた。
しかし何か出会いがあるような気がして
「っこいしょっと・・・」
と、唯月は気合いで立ちあがると、そこを目指して歩みを進めた。

近くに来てみると凄いことが分かった。
——玄関にあるポストに苗字が書いてあるのはたった一つだけ。
『石崎』と手描きの、しかも消えかけそうな殴り書きで、そう書いてあった。
隣の壁に目を移すと、ボタンがずらりと並んでいた。
おそらくピーンポーンとでも鳴るのだろう。しかし、これにも『石崎』以外の名は記されていなかった。
恐る恐るその名前に指を当て、キュキ、という音とともに名前を押す。
脇にはカメラらしきレンズと、スピーカーがついているようだったが、それから声がすることはなく、
『ガチャ』とドアが勝手に開いた。と言っても数センチほどだけ。
再び閉まりそうになるのを慌てて抑えつけながら、唯月は恐る恐る中に入った。

ボタンの配列からして『石崎』という名の持ち主は二階に住んでいるように思われた。
暗い中、コンクリート製の階段をぺたぺたと登って行くと、ギーッという音とともに木製のドアが少しだけ開いた。
ギクリと肩を強張らせると、中からヒョイと二十代の男性が顔だけ覗かせた。
……はっきり言ってお化け屋敷のようだ。
足を竦めて動かない唯月を見て、男性は一言だけ、こうつぶやいた。
「お前さん、よく生きてたな」

Re: 月の夜 -Moon Night- ( No.3 )
日時: 2011/09/23 05:23
名前: 海底2m (ID: OpTb07uC)

Page.2 「ようこそ月の世界へ」

「え、あの、その」
「とにかく入んな」
完全に行動が停止している唯月を、別にどうすることもなく男性はまた部屋の中に戻っていった。ドアが数センチほどだけあいている。
唯月は固まる足をゴキゴキとならしながら残りの数段を駆け上がり、恐る恐る部屋の中に入った。

部屋は簡素な作りだった。ドアからは一本の廊下が延び、玄関左脇にはトイレが、右脇には脱衣所へと繋がっている細い廊下があった。風呂場はどうやらその先だ。
そして、中央の廊下の右には台所と小さ作業部屋があり、左には唯一少し広めの居間があった。
「ドア閉めな」
そうやら居間にいると思われる見えない男性にそういわれて、唯月はあわててドアを閉める。
初めて気づいたが、こんな昼間なのにも関わらずブラインド、というよりは光を遮断する木の板が、窓という窓に釘づけられている。
部屋の中の光源は電気白く光る数本の蛍光灯だけだ。
居間に入るとそこには、
部屋の中央にポツンと置かれた卓袱台ともいえる丸テーブルと、座布団が一枚。
部屋の四つ角には段ボールが積み上げられ、窓にはごつい木の板。時代おくれのブラウン管のテレビにはファミコンが接続されていた。
いやまさにこれこそが殺風景。
とりあえず、とどこから引っ張ってきたのか、座布団をもう一枚出すと、男性は座るよう促した。
唯月は素直にそれに従う。
男性は170ある唯月より10cmほど背が高く、顔もなるほどイケメンだ。年は20代後半というところか。
いやしかし、と男性は口を開いた。
「本当にお前さん、よくあんな日の下で生き延びてこられたな。どっから来た?」
男性はプラスティックのコップに麦茶を注いでもってきた。
軽く頭を下げてちびりと一口。まさか毒でも入ってるんじゃ…などと頭を回転させながら
「北の方から」
と一言だけ答えた。
都内か県外かを聞かれたので「茨城」とこれも一言で答える。そろそろこちらも情報を得る権利があるはずだ。
「あなたは…?」
「俺か?俺は…そうだな…」
男性はしばらく考え込む素振りをして顔を上げた。
「水戸部ぇー…毅だ」
「いや、あの明らかに偽名臭いんですけど」
「あぁ、偽名だ」
認めるのかよ!と胸の奥で毒づきながら『石井』と書かれた札のことを聞いてみた。
水戸部(偽名)は、あー…と思い出すような仕草を見せると口を開いた。
「あれはこの部屋の持ち主だった人間だ。俺が代わりに住んでる」
「代わり…?」
あぁ、と水戸部は席を立った。
「とりあえず夜になればわかるさ」

そうしてファミコンをしながら長い長い夜を待った。とりあえず身を預けることは問題なさそうだ。
そして——

突然、教会の鐘のような低い響きが一回、二回、三回——
水戸部はニッと笑って立ち上がる。
「外に出るぞ」
唯月は水戸部の後を追って階段を下り、そして数時間前通った玄関を再びくぐった。そこには…

大きな、大きな月。ただそれだけだった。
通常の30倍はあろうか。接近しているのか、それとも大きくなっているのか——





「ようこそ、月の世界へ」


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