ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 空響 −VOICE−
- 日時: 2011/12/16 13:30
- 名前: 栗鼠隊長 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
- 参照: 元:旬です。『りすたいちょー』と読みます。
まあここでは初めましての方が多いでしょう,きっと。
では! 初めまして,栗鼠隊長です。〈りすたいちょー〉と読みますw
馴染みの無い名前だって? 当り前でしょう……。元:旬。え,これでも?
では完全に初めましてですね(´・ω・)
僕の作品,目の裏に焼きつくくらいに読んで帰ってくださいね!
……などと贅沢はいいません,はい。
ちょっとでも読んでいただければ嬉しいですw
では! 本編をお楽しみあれ!(——ん? 楽しいのかな、これ……)
プロローグ >>1】
第一章 一話 >>2】 一・五話 >>3】 二話>>4】 >>5】 >>6】
第二章 一話 >>7】 >>8】 >>9】 二話 >>14】 >>15】
■まろうと■
・玖龍様(勉強できると踏んでいます。文才すごいよ)
・凛様 (報告ありがとうございます。お疲れ様でした^^また次回もよろしくお願いしますねっ)
- Re: 空響 −VOICE− ( No.13 )
- 日時: 2011/11/29 16:21
- 名前: 栗鼠隊長 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
- 参照: 旬 だけど 。
>>凛さん
まじですか,ありがとうございます^^
いきますね!
へいやい,頑張りますおbb
- Re: 空響 −VOICE− ( No.14 )
- 日時: 2011/12/03 09:30
- 名前: 栗鼠隊長 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
- 参照: 旬 だけど 。
館内での石灰色とは別の、白い色をした外壁。ジュリオの目の前にあるのはその白い石壁だけで、中から見たのと同様、窓など一つもなかった。
「ジュリオ・ミ・ザーズン。おまえの名前はこれで合っているか?」
「は、はい」
「そうか、では入れ」
そう言われ、ジュリオは目の前で開いた扉を潜った。
「——え?」
天井からは煌々と、太陽の如く輝くなにか。その下にはスクスクと育っている……や、野菜!?
「あの。こ、これは……?」
どこからどう見ても自家栽培に見えてしまうこの部屋は、きっとお偉いさんの司令室なのだろう。中央には立派な椅子に座った威張り姿の若い男がいた。
「自家栽培兼、司令室だ。食の有難味を兵士どもに分からせてやるためという目的の上だ」
「へえー、そうなんですか」
軍事施設でこのような対策が行われるのはよいことだろう。
「そしてあちらに座られているお方こそ、ゼビラ航空基地の総司令官、マッカーシー総司令官だ」
ジュリオを連れてきた男が示した方向には、立派な椅子に腰掛けた若男が。
「ジュピタ君、ここまで連れて来たまえ」
「はっ」
ジュリオの両手を雁字搦めにすると、ジュピタ君と呼ばれた男は若男の前まで歩み寄った。
「よい、下れ」
「はっ」
ジュピタは踵を鳴らして敬礼したあと、そのまま退室した。
「ジュリオ・ミ・サーズン。君はアニュメンダ浮遊島に住んでいる者かね?」
「……は、はい。しかし我々はそれをアニュメンダと称さず、プロンダ空島と……」
「あぁ、そういえばナタリが言ってたな」
うーん、と若い仕草で淡い栗色の髪を撫でつけ、総司令官は続けた。
「まあよい。とりあえず、自己紹介がまだだったな?」
「は、はい」
「私はセビラ航空基地の総司令部総司令官をしている、マッカーシーだ。ここの最高指揮を任されている。よろしく」
総司令部総司令官、更にはセビラ航空基地の最高指揮を任されているときたもんだ。ジュリオは半分腰が抜け、逃げ腰になった。
「あ、はい。よろしく……です」
「まあ堅くなんなって、こっち来いよ」
マッカーシーは傍らの小テーブルからグラスを手に取り、何やら怪しげな紅の液体を中に注いだ。
「飲め。カプタールを代表するワイン、徒琴だ」
「わ、わいん……?」
「なんと、ワインを知らないやつがいたとはなあ。わはははははははははッ」
ワインのことを知らないようすのジュリオを見て、マッカーシーは盛大に笑った。
「す、すみませんっ、すみませんっ」
「いいのだよ。さ、それよりも早く飲め飲め!」
気前がいいのか、大口を開け、楽しそうにジュリオにワインを勧めた。
「はぃう……では」
「んむ。乾杯っ」
「か、かん……ぃ」
腕を盛大に振り上げ、ワインが飛び散るほどに勢いよく乾杯をした。
腕につけられた無数のリングがジャラジャラと鳴る。
「こぷこぷ……」
仄かな香りが鼻腔いっぱいに広がる。
「……ふんむぅ」
初めて飲むアルコールの味、初めて嗅ぐアルコールの匂い。目が廻るような感覚と共に押し寄せるのは、睡魔。
——眠い。
「ははは、ジュリオ君。美味いかね? そうだ、君に確認したいことが幾つかあるんだよ」
無意識に視界が暗転しそうな強烈な眠気。ジュリオの視界は次第に狭まり、意識もはっきりとしなくなってきた。
「あ、のぅ……。眠いんれふけろ……」
呂律も上手く回らない状態。
パリーンッ——
手から滑り落ちたグラスが、儚く砕け散る。
「……ちょっと効きすぎだったか。まあいい。ジュリオ君、相談だ。いや、取引をしよう」
——取引?
「交渉、とでも言おうか。君の残してきたお姉さんたちには一切手出しをしない。その代わり、君の身体をくれるかね?」
——僕の、身体。それは……、
「ら……らめれふ……」
「ほう……。断る、とな。しかしジュリオ君、あれだぞ? 君が断れば、我々は他の、君のお姉さんなんかにも手を出そうかと考えているんだ。それでも断ると言うのかね?」
——いきなりなんなんだこの人は。卑怯なこと言い出して……。
「不条理……ら……」
——。
重力をいつもより強く感じたあと、ジュリオの意識は飛んだ。
「まあ、交渉成立でいいよな」
ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべたマッカーシーは、ジュリオの身体を蹴り飛ばした。
「連れて行け。今夜中にも人種の特定を急げ」
「はっ」
傍らに棒立ちしていた数名の部下が踵を鳴らし敬礼をしたあと、ジュリオを引きずり部屋を出て行った。
あとに残ったのはマッカーシー一人と、割れたグラスが一つ……二つ?
- Re: 空響 −VOICE− ( No.15 )
- 日時: 2011/12/09 20:48
- 名前: 栗鼠隊長 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
- 参照: 旬 だけど 。
小さな窓の脇にある花瓶を、ベッドの上から眺めていた。
部屋の明かりはない。
月明かりに照らされた一輪の花は、月明かりを跳ね返し、自ら輝く花の如く煌々としていた。
——これは確か……。
【太陽の花】。正式名称、サンフラワー。ジュリオが尻餅をついた際に踏み潰してしまった花である。
この花はアニュメンダ浮遊島……いや、プロンダ空島からやってきたと思われる幻の品種だった。そう、まえまでは。
いまではこの太陽の花が幻とも珍しいとも言われなくなっていた。とある学者が人口受粉を行い、繁殖させたのだとか。もう街を歩いただけで道端にでも生えているような花になってしまっていた。
「ナタリは太陽の花、好き?」
「——え? えぇ、好きよ」
誰もいないと思っていたすぐ隣から、聞き慣れた声がした。同じ部屋を使わせてもらっているアユミンだ。
アユミン・カスパード・ナオニ。
歳はナタリより一つか二つ下の彼は流民であり、一生踏みつけられて生きてゆかなければいけない身分、存在であった。軽いウェーブのかかった栗色の髪に、澄んだ碧眼。おそらくテルマリア市国の民なのだろう。ナタリも相手の詮索などしないタチなので、詳しくは知らない。
「そう、よかったっ。それね、僕が摘んできたんだよ。ナタリきっと喜ぶと思って!」
嬉しそうに目を輝かせるアユミン。
窓から差し込む月明かりに、栗色の髪がクリンと揺れた。
「アユミンが?」
「うんっ」
目をきゅっと三日月型に細め、微笑むアユミンは本当に無邪気だ。
「ありがとう、嬉しいよ」
「うんっ」
部屋の明かりをつけていないせいか、少し暗い室内だったけれど、その闇にアユミンの髪はよく映えた。
「……でね?」
話すスピードが遅くなり、声から伝わるアユミンの考えていることが分かる気がした。
——また何か言われたのかな。
アユミンはとても心が弱く、流民だと馬鹿にされてはよくナタリに相談を持ちかけていた。
「ん、どうしたの?」
それから少し間をおいて、アユミンは潤んだ瞳をナタリへと向けた。
「僕ね……、好きな人ができたの」
——え?
——アユミンに好きな人?
——誰も信用できないって私以外信用できないって言ってた、あのアユミンが?
——まさか。
そんなことってあるのかと、ナタリは目を見開いた。
「信じられないよね。うん、僕も信じられないんだ。だけど……」
あのアユミンにも想えるような優しい女性が現れたというのだろうか。
「ど、どんな人なの??」
「え……っとね、色黒で」
「うんうん」
「それで、ほっそいの!」
「ほう、ほっそくて?」
「強くて〜」
——つ、強い!?
「筋肉がすごいの!」
「……ぇ。細いんじゃなかったの?」
「筋肉があって引き締まってるってことだよ! あとは背が高い!」
——……もうだめだ。
色黒で筋肉があって引き締まった身体を持つ、背が高くて強い女性……。
「アユミン、それ止めた方がいい。絶対に止めた方がいい!」
「ど、どうして?」
「どうしてもなにもないでしょう!? なんでアユミンに限ってそんな女の人……」
絶望にくれかかったナタリ。
アユミンに限って、どうしてこう、そんな女性を選んでしまったのか。ナタリには思い当たることが一つだけあった。
——アユミンは、私と同じで女の子っぽいから、恋愛対象が男性らしい人になってしまったのかもしれない。
男でありながら女性のように振舞うナタリとして、同じ部類のアユミンはそうしたことからこんなことになってしまったのだとしか考えられなかった。いや、同じ部類だからこそこんなように考えてしまうのかもしれなかった。
「え? やだなぁナタリ、僕が好きなのは……」
コンコン——
もう少しでアユミンがカミングアウトしようとしていた矢先、ドアが叩かれた。
「……? はい」
部屋を訪ねてくる人などめったにいないので、ナタリは訝しい表情でドアを開けた。
「悪いな、こんな時間に」
部屋を訪ねて来たのは編隊長のカイオン中尉だった。
サラリと横に流した金髪が、美しく風もない空中を棚引いている。その綺麗な髪といい、華奢で色白で女々しい容姿といい、ナタリの欲しい要素だらけだった。
「いえ、大丈夫です。ところで中尉、珍しいですね? 訪ねて来られるなんて」
「……あぁ」
頭に乗っけていた軍帽を静かに退け、中尉は髪を乱雑に掻き上げた。
「ちょっと、いいか? ここじゃまずい話だ。俺の部屋に来ないか」
「はっ、では」
中尉の部屋には、あまり行ったことがなかった。故にナタリは興奮と緊張を抑えるのに精一杯で、歪むアユミンの表情など気にかけていられなかった。
「ちょっと行ってくるね、アユミン」
軽く手を振って、部屋を後にした。
- Re: 空響 −VOICE− ( No.16 )
- 日時: 2011/12/26 11:20
- 名前: 旬 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
兵舎にも、一応という程度の屋上はついている。とくに意味をなしたものではないが、夜になると満点の星空がすごく綺麗に見えるのだ。だが、常時は人など来るはずもない。
そんな兵舎の屋上なのだが、今日は珍しく人影があった。
「これはその……ちらっと耳に挟んだ話なのだがな……」
「はい、中尉。なんでしょうか?」
今日も変わらず綺麗な星空を目の前にして、二つの影は感嘆の息も漏らさずに深刻な表情をしている。
「君が連れてきたジュリオ君のことだがね……」
静寂を破り言葉を発したのは、カイオン中尉だった。
「は、はぁ……。ジュリオがどうかしたのですか?」
「いや、どうと言うよりも、その……ナタリ。君は彼を実験台にすることをどう思う?」
——は、実験台?
ナタリは一瞬、ふざけるな、と言いそうになった。だがカイオン中尉は、一応にもナタリの上司だ。下手な口を利くわけにはいくまい。
「それは……、彼が実験台にされるということは、もちろん好ましい事実だと受け止めることの方が難しいのではないでしょうか」
するとカイオン中尉は額に手をあて、眉間にシワを寄せて深いため息を一つついた。
そして、静かに向こう側に見える建物を指差した。
「ナタリ。君にはあの部屋の中で行われていることが分かるか?」
さほど距離のあるところでもなかったので、肉眼で部屋の中で行われていることがボンヤリと分かる。
「あれは、ジュリオ?? 一体何を……って、え……? え!?」
窓の外から、しかもこの距離からでも分かる、狂ったように暴れるジュリオの裸体。それに加え、暴れ狂うジュリオと奮闘する白装束の取り押さえ隊。
「カ、カイオン中尉! ジュリオをどうしようと……!」
「彼は今、人種確認を行っている最中なのだが……。どうやらうまくいっていならしい。これでは今日中にはできなさそうだから、もしかしたら麻酔でもして強行……」
「中尉、何故彼の人種など特定しようとするのですかっ。どこからどう見ても彼はエルフ族なのですよ。確認する必要など、どこにもありません!」
誰が見ても分かる通り、彼の……ジュリオの、耳は長い。それだけで有無を言わさずにエルフ族だと一目で判断がつくだろう。
「誰が人種の特定をさせるように言ったのですか! まさか……あのお莫迦総司令官ですかっ?」
「まあまあ、莫迦呼ばわりするな」
「違うのですかっ? では誰なのですか、カイオン中尉ですか!?」
一気にまくし立てるナタリに、あまりお喋りでないカイオン自身、気が参って呆れた溜息しか出てこない。
「はぁ……、違う。俺は何も言っていない」
「では誰が! 誰がジュリオを!」
「まあ落ち着け」
「落ち着けですって!? これが落ち着ける状況だと言うのですかっ?」
ジュリオのいる部屋の窓を指し、ナタリは講義する。
彼女は——否、彼は、必死のあまり女言葉が自然に出てしまった。ナタリが女性になりたいと密かなる願望を抱えて日々を過ごしていたことなど知る由もない中尉は、その言葉を自然に、しかもさり気なく使いこなしたナタリには目を見張った。
「え? あ、あぁ。そうだとは言わないが、落ち着かないとまともに話も……」
「中尉!!」
「はっ!」
大声で中尉、と叫んだナタリの勢いに乗せられ、誤って敬礼をしてしまった。
「違います! なに呑気に敬礼などしておられるのですか」
「お、お前が意味の分からない言動をするからだ」
「関係ありません。ところで、彼は今後どのようにされるのですかっ?」
兵舎の屋上で喚くのはこれが初めてではない。
ナタリはつい先月も、ここで無能な上官とやり合ったばかりだったのだ。その無能な上官は口喧嘩だけは得意らしく、尽く惨めなまでに負かされた記憶だけが残っている。
「中尉、詳しくお話を聞かせてください」
するとカイオンは、なにやら難しげに眉を顰めてみせた。
「うむ……、話してやっても差し支えはないのだろうが、ナタリ、君に言っていいものかはこちらでは判断しかねる」
「はい? なにを言っているのですか。彼は私が連れてきたのですよ? 私にも知る権利くらいはあります」
事知らずして始まらずと言いたげな剣幕で迫った。
「……そうだな。付いて来るといい。見てぶっ倒れないように覚悟でもしておくんだな」
思わず心構えしてしまう、最後の言葉。
覚悟しろなんて言われるようなくらい、衝撃的なことなのだろうか。
「さて、と。行くなら早いほうがいい。また日が昇れば、監視兵の巡回でも来るだろうからなあ」
「え、は、はい? 監視兵が見回りに行くようなところって……まさか、上官?」
巡回は守られるべき最低限の箇所しか回らないはず。その最低限のところに踏み入れるという意味ではないだろう……と、思いたい。
「まあ、ついて来ればわかること」
- Re: 空響 −VOICE− ( No.17 )
- 日時: 2012/02/23 15:20
- 名前: 旬 ◆Q6yanCao8s (ID: aza868x/)
なんだよー俺 去年のクリスマス明けから更新してないじゃん……
うっわ最悪ー小説のストックあるのに最悪ーさっそく更新……とはいかず
立ち回り挨拶にきました
今はいないだろう読んでくれていた方々や
まあ読んでいない方も含めてですが お知らせがあります
今回この小説をなろうに載せようかと思います
このスレは削除せずそのままにしておいて 更新も少しずつではありますが
しようと思います
という報告なだけなのですが……一応安芸兼報告の形をとらせていただきました
それではまた(*・ω・)ノどこかで!!
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