ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 戦いの都
- 日時: 2011/11/07 23:31
- 名前: レッドラム (ID: 1qauGher)
みなさん、はじめまして。
以前、「エキストリーム・エキセキューション」という小説をこのサイトで投稿していましたレッドラム(林 大介)です。
今回、また新しい小説出来ましたので投稿します。
これからお世話になりますので、よろしくお願いします。
- Re: 戦いの都 ( No.9 )
- 日時: 2011/12/01 22:30
- 名前: レッドラム (ID: 1qauGher)
コンコン。
ノックする音が聞こえた。
「失礼します。」
黒スーツの男が部屋に入り、コーヒーをテーブルに置いた。
俺は調査書を読みながら今までを振り返った。
東首相は早急にマルコの裁判を終わらして欲しいと言った。
この意味は間違いなく友好関係を結んでいるアメリカに何かしら圧力をかけられたということ。
つまり、適当に裁判し、適当にマルコを処刑し世の中から消してしまええ、とアメリカから指示されたということ。
しかし、それは逆に言えば早急に裁判と処刑実施を終わらせなければいけない理由がアメリカ側にあるということ。
その理由とは何か?
もしこの理由が明るみになればマルコを無罪に出来るかもしれない。
かなりリスクは大きいが...
「武呂さん...武呂さん?」
東は問いかける。
「あ!すっすみません。なんか...まだ頭が真っ白で...」
俺は心境を悟られないよう誤魔化した。
「フフ。これで分かったでしょう。マルコ元帥は有罪だ。確固たる証拠の資料がここにある。これでマルコ国家元帥は死刑だ...これだけ事実に基づいた資料を持って裁判に臨めば君は間違いなく検察側に負ける。しかし、それでいい!負けて当然だ!完璧な資料だからな!これで日本国も当面は安心だ...」
この一言に俺は東に対して恐怖心を覚えた。
東はどれだけエリートかは分からないがこんな薄っぺらい資料を鵜呑みにはしてないだろう。恐らくアメリカに凄まじいほどの脅迫を受けたに違いない。だから、一般人の俺に対してこれほどまでに資料の事実を訴える。まるでマインドコントロールするように!
しかし、俺は冷静だった。
そして、マインドコントロールされたフリをしてみようと咄嗟に思った。それは、久々に舞い込んだ仕事がかつてないほどの大掛かりで、危険で、弁護士冥利に尽きる代物だったからだ。
そして、これほどの仕事を夢中で出来るならば、きっと当分は妻のことは忘れることが出来るだろう。
あの言葉を聞かずに済む。
俺は苦しみから抜け出したいが為にマルコの弁護を了承した。
- Re: 戦いの都 ( No.10 )
- 日時: 2011/12/02 12:10
- 名前: レッドラム (ID: 1qauGher)
「マルコの弁護を引き受けます。しかし、気になることがあります。なぜ、私なのでしょうか?他にもたくさん弁護士はいるのに。」
俺は東に尋ねた。
「君の輝かしい経歴だよ。とは言っても、君からすれば皮肉にも聞こえるかもしれないが...4年前アメリカの大手金融会社ロイズを破綻させた張本人と君は一部のマスコミに名指しされた。しかし、その真相は数日で闇の中へと消えた。なぜか?政府がロイズを潰したからだ。
政府側からロイズを破綻させるよう君に要請があったと聞いた。そしてロイズを弁護しながらも、多額の債務の内訳が賄賂や許可のない個人融資であるという会社情報を検察側にリークしていた。その手段があまりにも巧妙すぎて、メディアは成るべくしてロイズは潰れたと勘違いした。
その情報収集力と巧妙な裏づけ手段を是非今回の裁判でも振るってもらいたい。だから、君を選んだ。」
やはり、政府は俺を利用しようとしていた。
ロイズの一件を持ち出したところを見ると、アメリカ政府のご指名ということが分かる。
しかし、今回の裁判はそうはいかない。
現在の俺はあの時と全然違う。失うものなど何もない。
最後は弁護士らしく、一人で死...
「あなた...行ってらっしゃい」
「ああ。行ってくる。1年後には戻れそうだ。戻ったら、またあのゲーセンで勝負な、達也!」
「絶対負けないからな!だから、早く帰ってきてよ!」
「ああ。」
く!何を思い出している!
昔のことだ...何でもない...昔のことだ。
「よく私のことをお調べで。そんなどうしようもない経歴の私でよければ喜んで引き受けさせてもらいます。」
「とんでもない!君は立派な弁護士だ!国の為に忠を尽くすことは、たとえどんな事情があるにせよ大切なことだ。だから、今度は日本国の為に忠を尽くしてくれ!よろしく頼むよ。」
東は再び手を差し伸べた。
俺は東と固い握手を交わした。
- Re: 戦いの都 ( No.11 )
- 日時: 2011/12/02 18:36
- 名前: レッドラム (ID: 1qauGher)
第2章 いざ!都へ!
「これから君はイベリア共和国に入国し、国際協定が選出した弁護団と合流する。しかし、現在のイベリアの情勢は実に危険極まりない。協定が定めた世界情勢危険度ランキングでいうと最高のSランクだ。その理由は簡単だ。未だにマルコ派の残党兵や民間人がゲリラ化してアメリカ軍と戦っている。毎日、自爆テロや銃撃戦が街で行われている始末だ。」
さらりと東は説明するが、実際は1日生き残ることすら難しい程危険な場所であろう。もしかしたら弁護団と合流する前に攻撃される可能性もある。そんなことをされたらまったく無意味な話だが...
「そこでだ。君にパートナーを用意した。」
東は手を俺の背後に差し伸べて紹介する。
俺は初めてその気配を感じ後ろを振り向く。
そこにはスラッと長身で白のレザージャケットとパンツに身を包んだ銀髪の青年が立っていた。
見た感じ白人のようだが、どこかアジア人っぽさを感じた。
「はじめマシテ。ブラックと申しマス。」
見た感じはホワイトだけどね...俺は思った。
「いっいつから私の背後に?」
「あなたは確かに頼みマシタ。ブラックをって。その時からイマシタ。」
「え?」
思い出した。コーヒーを頼んだあの時だ。ということは、東と俺が色々話しこんでいる時もずっと俺の背後に立っていたということか!
マジで!?全然気がつかなかった...
「アハハハハ。オドロイテますね〜。」
「ふふ。ブラック...武呂さんをからかうな。すみません。彼の力量を是非知ってもらうために、あえて今まで黙ってました。とは言え、私からはずっとブラックが見えるので、あなたに悟られないように目のやり場に困りましたが...いや、失礼しました。」
東は俺に頭を下げる。
「彼が私のパートナーですか?」
「その通りです。これからあなたの護衛をこのブラックに任せたいと思います。見た目はきゃしゃな男ですが、こう見えて世界指名手配の殺し屋です。」
「こっ殺し屋!?」
「アハハハハ。オドロイテますね〜。」
「まぁ、厳密に言うと世界指名手配はポーズの肩書きのようなもので、ボディーガードとして各国の要人たちは彼を利用してます。そのへんのSPや特殊部隊よりかは全然役に立てる存在だと思いますが。」
本当かよ...俺は思った。
こんな銀髪でイケメンでモデルのような男が世界の殺し屋!?
出来すぎてる話だろう...映画じゃないんだから...
「疑ってマスね?」
「へ?」
「Mrムロは私を疑っている。オソラクハ、私の実力を疑っている。こんなイケメンが殺し屋だなんて、エイガじゃないんだからと思ってる。」
すげー...そこまで分かるのか。
「だから、証明シマス☆私のスーパーパワーを!!」
急に前かがみになったブラックは目を瞑り、拳を握り、歯を食いしばって力を入れた。
「うっうっうっ」
うなり声を出すブラック。
俺はあまりの展開に笑うことすら出来なかった。ただ、ただ彼のパフォーマンスを見ていた。
そして意を決したかのごとく目を開き
「ウォリャー!!!」
と、突然大きな声を張り上げた。
室内は静まり返る。
「はぁ、はぁ、はぁ、どうでスカ?何だかいつもより顔が赤くなったデショ?」
これはきつい!ブラックが何人が知らないが、彼の国なら爆笑をとれるネタなのだろうが、そもそもいつものお前の顔色知らないし!それに今日初対面だし!
なんだか先行きが不安になってきた...
- Re: 戦いの都 ( No.12 )
- 日時: 2012/02/19 14:07
- 名前: レッドラム (ID: 1qauGher)
これから一週間後、俺はイベリアに向けて旅立つ。
日本政府はマルコの裁判を早急に終わらし、マルコの死刑を望んでいる。それはアメリカ政府の要求であり、何らかの思惑の下そのように日本側に指示を与えているのだろう。
その思惑が表沙汰になったとき、マルコの裁判の結果は大きく変わると思う。
俺は今まで何も考えず、ただひたすら酒を煽り、体たらくな生活をおくっていた。しかし、ここにきてとうとう自分の身を埋める場所が出来た。この度の裁判に隠されている真実を暴いたときが俺の最期。
俺はきっと生きてないだろう。
これであの声を聞かなくて済む...
「ナニヲ考えているのデスか?」
ブラックが俺に問いかける。
彼はあれから俺のボディーガードとなり、事務所で共同に生活している。別にいっしょにいて苦ではないが、時々何を考えているのか分からない不思議な雰囲気があった。
まぁ、しかし彼からしても俺が何を考えてるのか分からないだろう。
「いや、別に。」
俺は答えた。
「今回のシゴトの事デスか?それなら、シンパイご無用デス。ワタシガいる。あなたのイノチはホショウされています。アナタハただ自分の仕事をすればイイダケデス☆」
笑みを浮かべながらウインクするブラック。
「随分、自信があるんだな。しかし、俺は君の腕前を知らない。そりゃ、君に本当にスーパーパワーがあるのなら俺は安心するけど、実際はそんな冗談も通用しない場所に行く。戦場だ。そこにたった一人ボディーガードを付けたところで何にもならないと俺は思う。
君を責めているのではなく、あまりにも政府の主旨が楽観的というか、何というか、命はもう少し大切にしたほうがいいと思う。降りるなら今のうちだ。」
「...優しいですネ。でも、そんなコトすれば、アナタは一人で戦場に向かわなければイケナイ。ソレコソ、命を大切にしてないのではナイデスカ?」
「...君は若い。歳は知らないが、その若さで命を危険にさらすことはないと言っているんだ。」
「ブっHAHAHAHAHA!!☆」
「なっ何がおかしい!」
「はっはっふ〜、はぁ、はぁ、すっ少なくともアナタよりかは命を危険にさらしてマスので、お気遣いナク、HAHAHAHA!」
ふざけてる...俺はそう思った。
しかし、いまここで馬鹿笑いをしているこの青年の本性が明らかになった時、俺は初めて死に対して戦慄が走ることになる。
- Re: 戦いの都 ( No.13 )
- 日時: 2013/05/27 16:52
- 名前: レッドラム (ID: LGQcbbGL)
イベリア共和国は近隣国にて特別ビザが発行され、初めて入国が許される。直近まで戦闘状態だったイベリアは入国に対して軍隊や政府関係者以外は立ち入り不可の状態だった。その現状は今も変わらない。
ただ、その特別ビザを入手したメディア関係者やボランティア団体、医師団体は入国していた。
そして俺とブラックもそのビザを取得し、今イベリアに降り立とうとしている。
イベリア共和国は人口8000万人。国土は日本の3倍。その3分の1が砂漠であり、油田の宝庫であった。戦前は油田バブルに国中が栄えていた。一部企業や投資家はこぞってイベリアに金を流し、政府はその金で軍事拡大を進めた。
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