ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- REAL GNP
- 日時: 2011/12/12 12:29
- 名前: 瑠璃歌 (ID: Bf..vpS5)
憎しみ。
それは時に人を傷つけ、
時に人を変えてしまう。
罪。
それは決して許されず、
また 心を迷わせる。
笑って 泣いて 怒って 悩んで 助け合って・・・
たくさんの感情を抱えながら人は生きる。
でも もうそんな事できない。
真っすぐ懸命に生きることは無い。 一生。
それでも生きているのは
生かされているのは
きっと理由がある。
- Re: REAL GNP ( No.4 )
- 日時: 2011/12/13 08:12
- 名前: 瑠璃歌 (ID: Bf..vpS5)
-計画的犯行-
あの日以来、あたしたちは黒月彰を恨み続けた。 11年間も。
17歳になった今も。
そして今も心にあるのは
「絶対に復讐してみせる」 ただそれだけ。
ピンポーン..
突然チャイムが鳴った。
「は〜い」
明るい声で真輝が出る。
今日は日曜か。
白いカーテンから春の日差しが差し込む。
ガチャ。
「おっじゃましまーす」
やけにノリノリで入ってきたのは澤倉彼方。
あたしの会社の上司であり、真輝の彼氏でもある。
変に頑固だけど根は真面目・・・と信じたい。
小さなテーブルを3人で囲んであたしたちは話し始めた。
「お前ら高校から変わんないよな〜。 うんうん。」
彼方は勝手に1人でうなづきながら話すのが癖。 結構バカっぽい。
お前のその癖も高校の頃から変わらねーだろ。
あたしはひそかに心でつっこむ。
彼方は高校の時に出会った。
3年の先輩だったけど真輝の顔の広さで知り合った。
で、2人は付き合いだしたわけ。
根は真面目って信じてるから、あたしたちの過去は彼方だけが知っている。
絶対に復讐すると言ってくれた。
- Re: REAL GNP ( No.5 )
- 日時: 2011/12/13 10:16
- 名前: 瑠璃歌 (ID: Bf..vpS5)
「で、今日はなんでそんなにテンション高いの?」
さっきからずっと笑い続けてる彼方に言った。
「あ! もしかして・・・」
真輝の言葉に彼方は反応し、ニッと笑ってピースした。
「総理大臣のSPになりました!!」
彼方は自信満々に言ってえばる。
「すごいじゃん! おめでとー!」
真輝は大はしゃぎだ。
すごい・・・。
さすがのあたしもびっくり。
「だから...絶対復讐しような」
「・・・うん」
どこか寂しそうな、でもしっかり前を向いたその瞳は未来を見ているのだろうか。
あたしたち3人に“明るい未来”なんて無い。
待っているのは絶望にあふれる柵の中。
もしかしたら死刑台。
それがわかっていても、現実になっても、
あたしたちはこうして今を生きる。 生きていく。
これが生きる決心なのかもしれない。
- Re: REAL GNP ( No.6 )
- 日時: 2011/12/13 12:13
- 名前: 瑠璃歌 (ID: Bf..vpS5)
「彼方がSP合格って事はー...」
空気を入れ替えるようにして真輝が口を開いた。
「ここからだね。」
あたしの力強い決意に2人は同意した。
あたしたちの最後の決着をつける時。
3人で握り合った手はとても大きくて、温かくて、
“なんだってできる” そんな気がした。
その後あたしたち3人は警察並みの素早い調査で黒月の情報を捜した。
首相でもなればお金なんて余るぐらいだろう。
でも黒月は大してお金を持っていなかった。
ちょっと大きな会社の社長くらい。
彼方の意外と秀才な頭脳の推理で、黒月は過去の裁判や懲役、あたしと真輝の家族を殺した事を世間に出まわらないようにお金で食い止めたということになった。
十分あり得る話だ。
それに整形もしたよう。
とことん最悪な奴だ。
そんなこんなで彼方が帰ったのは夜中の2時。
静まり返った夜中にはうるさすぎるバイクで帰っていった。
「近所迷惑なやつ」 ってあたしが言うと
「かっこいいじゃん//」 とすかさず真輝に否定された。
双子でも恋愛は関係ないのか〜とのんきに思ったりもしてた。
- Re: REAL GNP ( No.7 )
- 日時: 2011/12/13 19:35
- 名前: 瑠璃歌 (ID: Bf..vpS5)
自分の部屋に戻ったあたしはとりあえずテレビをつけてみた。
付いたのは原色ばかりの派手なバラエティ。
面白いけどさっきまでと世界が違いすぎて、気づけばニュースに変えていた。
ちょうど今小学校などでイジメの被害者が増えているようで
国の問題として政治の偉そうな人たちがちょっとしたインタビューをされたりしていた。
その中にあたりまえのようにいるのは黒月彰。
周りに何人ものSPをひきつけて、高そうなスーツを身にまとい、
堂々と歩いていく。
いつ見ても憎たらしい。
そんな事を思っているうちに黒月はインタビューに答え始めた。
- Re: REAL GNP ( No.8 )
- 日時: 2011/12/13 20:21
- 名前: 瑠璃歌 (ID: Bf..vpS5)
「イジメのように人を軽蔑したり差別したりするのは決してしてはいけないことです」
“差別”と言う言葉に思わず反応してしまった。
そっからはテレビに釘付け。
「軽蔑は人をバカにすること。 これは人として最低な行為です。」
目がおかしくなるくらいのカメラのフラッシュが黒月を眩しく照らす。
「差別とは不公平に差をつけて人を扱うことです。 絶対にしてはいけない。 だから“無差別”と言う言葉がある」
どこかで・・・
いや、確かに聞いたことのある言葉だった。
そぅ。11年前のあの日と全く同じ言葉だ。
血の付いた包丁を不気味な笑みを浮かべながら眺める黒月が話した事と同じ。
こんなの周りの何も知らない国民から見ればイイ総理大臣。
そしたらきっと支持率は上がってく。
そうなったらあたしたちの復讐が不利になる。
突然あたしを襲った焦り。
早く・・・早く黒月を・・・!!
「真子!」
焦りに潰されそうだったあたしの意識を取り戻してくれるようにタイミング良く真輝があたしを呼ぶ声が聞こえた。
リビングで真輝も同じニュースを見ていたのかリビングからも黒月の声がした。
「この国から醜いイジメなんて無くそう!」
テレビの中の黒月は拳を空に向けて堂々とそう言った。
醜いイジメ? 無くそう?
お前がそんな事言う権利あるのかよ。
あたしの心は怒りであふれていた。
真輝も手に持っていたカフェオレを危うくこぼしそうになる。
さっきのあたしと同様、焦ったんだろう。
でも。
何があっても。
黒月に必ず復讐する。