ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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【ペンは剣よりも強し】 
日時: 2012/02/17 17:55
名前: 清村 (ID: vgnz77PS)

  運命は我々を誘うものである
  理不尽とは我々の気をそそるものである




清村です!
へたくそですが、どうか暖かく見守ってください
アドバイス、感想、文句など待っています!!
泣いて喜びます!!


—基本用語解説—


筆人ヒツンド】…≪創造の神エリア≫が没する際に残した力を宿した人間
剣人ケンド】…≪破壊の神デグノ≫が没する際に残した力を宿した人間


—目次—

第1章 兆し

>>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>8 >>9

第2章 自覚

>>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17
>>18 >>19 >>20 >>21←NEW



—コメンツ—

>>7 風(元:秋空先輩


—登場人物—

墨川 沃哉(すみがわ よくや)  ヨーク

穂村 泰嗣(ほむら たいし)  アティ

ゲート

南月 莉緒(なつき りお)  リヴァ

門 留美(かど るみ) イェニチェリ

霜辻 途尋(しもつじ みちひろ) オルファ

エリア5アギン

エリア3ファラギン

斑鳩 爽太いかるがそうた

忌鋸 きのこみのる メフメト

窪崎 くぼさきゆう ティラ

デルガド

マスクル

プリニ

—用語解説—


*ネタバレ注意!!


—種族—

扉人ヒンド】…上の二者の狭間を行き来する謎の人間
剣奴ケンド】…剣人の使える雑魚どもで、いろんなタイプがある
【魔人】…主に魔法を使う種族 アッバースに住む人種の大半が魔人である
化身けしん】…筆人、剣人などに宿る力 自我を持っている
【ゼロの希族】…[氷]の属性を宿す化身



—剣奴の種類—


巨人型ギガンタ】…大きな巨体を持った剣奴。平均3m
人間型ヒューマノイド】…人間の形をした、ごく一般的な剣奴
【魔獣型(ビ—スタ)】…剣奴の中で、陸上で一番速い四足歩行の剣奴 平均全長2m


—その他—


【シンタ】…魔法、印、式を使うときに必要とされるエネルギー
【五大元素】…この世界を形成する主な元素を5つにまとめたもの。主に[炎][水][天][風][地]がある([天]は[雷][霧]などと細かく分けられる)
【非五大元素】…五大元素ではない属性
【接頭語】…魔法を唱える際、属性を付け足すための言葉。[アクア]=[水]、[フォゴ]=[炎]、[ヴェント]=[風]、[ソロ]=[大地]、[テラ]=[天]※[天]は細かく分類され、接頭語も細かくなる




—その他(地理)—


【アッバース】…架空の世界とされていた謎の世界。当たり前のように魔法を使う人種のいる世界
【オルデン国】…唯一剣人からの支配をのがれた独立国家、国の中央にそびえる城は筆人がたくさんいる

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Re: ペンは剣よりも強し ( No.7 )
日時: 2012/01/01 18:36
名前: 風猫(元:風  ◆Z1iQc90X/A (ID: Me0ud1Kf)

初めまして清村様。風猫と申します。
題名が凄く気になっていた作品です。

今、>>3まで読みました♪
筆人と剣人の設定が良い感じですね。理不尽に進んでいく物語が、好みです!
沃哉、哀れですな(苦笑

Re: ペンは剣よりも強し ( No.8 )
日時: 2012/01/02 00:46
名前: 清村 (ID: vgnz77PS)



授業中だった


『別に声に出さなくていいのですよ、心に想うだけでいいのです』
「はぁ!?なんでそれを早く言わないんだよ」


と、心の中で沃哉は想った


『あ、いや、すいません』
「あ、通じた」
『でも大丈夫です、心で想った事全てが自分に聞こえるわけではないので、プライバシーは守る義務でして』
「分かってるよ。で、さっき途尋のこと気になってたみたいだけど、どうしたんだ?」
『彼はもしかすると筆人です』
「え?」


授業中だったが、声が出てしまった


「どうしました、墨川君」
「いや、なんでもないです…」


莉緒だけが笑っていた





いつものように学校は終わり、沃哉は莉緒と下校しようとした
今日はなるべく大通りを行くことにした
それぐらいの学習能力はある
しかしやはりそうはいかない


「ちょ、ちょっと待って!!」
「霜辻君…」


途尋だった


「な、俺も一緒に帰っていいか?」
「途尋はあっちだろ、いいのか、バス遅れるぞ」
「いいんだ、ちょっと、話したいことがあるんだ」


沃哉は嫌な予感がした
俺、実は筆人なんだ、とか、昨夜剣を持った怪物に襲われたんだ、とか言ってくるかもしれない、そう思った
でも、良い意味で裏切ってほしかった


「なんで急に一緒に帰ろうなんて言い出したんだよ」
「だからな、その、話したいことが」


途尋は少し後ろめたい感じで、
自分から話したいと言いながら、
もじもじしている


「あのな、もしかしたら、沃哉に南月、最近周りで変なこと起きてないか」


あまりにもストレートしすぎた
その、何一つ遠回りしない質問は、あまりにも唐突過ぎた


「え、え?」
『やはり、彼は気付いてますね』
「(そうみたいだな、でももう少し様子見る)何言ってんだよ」
「霜辻君疲れてるんじゃない?」
「信じてくれよ!」


ズズズズズズズ


沃哉は頭を抱えた
この音はもしかして、
本当になんて悪いタイミングなんだ、と
その場を収拾するが如く剣奴が3体現れた


「あいつだろ?あいつあの剣もったやつ、こいつが教えてくれたんだよ」
「どいつだよ」


途尋の右手が淡蒼色に光り出した


『あの色は【五代元素】の光じゃないですね』
「五大元素?」
『その説明は後でします。彼はやはりタダものじゃないですね』
「…」
「リヴァ、私たちも!」
『うん!』


沃哉の右手が深蒼色に
莉緒の左手が緑色に光り出した


「やっぱりお前らも筆人だったんだな!!」
「まぁまぁ怒るなよ途尋、今は」
「目の前の敵を倒すのみだね」


3人は筆を構えた


『巨人型1体、人間型2体ですね。力を分散させるのは危険かと』
「わかった」


人間型2体が剣を振り回しながらまず走ってきた


「途尋、ここは1体1体を3人で倒す…」
「守護の印【氷塊】!!」
「え?」


人間型2体が凍りの塊に氷漬けにされた
身動きが取れない状態の人間型剣奴はオブジェの様だ
途尋はそのオブジェに向かって歩き出した


「俺はどっちかって言うと、『攻撃は最大の防御』派だから」
「お前、すげーな…」
『彼はやはり【非五代元素】の持ち主ですね』
「なんだそれ?」
『それもいずれ説明します』


巨人型剣奴が剣を振り下ろした
地面に刃がめり込み、衝撃波が途尋を襲う
途尋は避けたが
その衝撃波は、氷漬けにされたオブジェ諸共破壊した


「守護の印【氷塊】!!」


途尋はまたもや印を書く
巨人型剣人の右足が凍る
途尋はその右足に向かって筆を投げる
途尋の筆は先がとても鋭利になっていて
万年筆の様になっている


「いけぇ!」


巨人型の右足が粉々に砕けた


「な、何がおこってるの…」
『莉緒、今日は戦わなくて大丈夫の様ね』
「や、一応いつでも回復印書けるように待機しておく!」
『えらいわね』


こんなんが筆人のやり方なのだろうか
今でも自分が筆人だって、そんな自覚は持ちたくないが
筆人は誰かを守る者じゃないのか?
あんな戦い方はまるで、剣人じゃないのか?
途尋は剣人と同じじゃないのか?


「守護の印【止水】!」




Re: ペンは剣よりも強し+ ( No.9 )
日時: 2012/01/02 12:02
名前: 清村 (ID: vgnz77PS)



大量の水が巨人型と途尋を遮った


「おい、何すんだ沃哉!!」
「落ち着け途尋!!」
「待って2人とも!敵はまだ向こうにいるのよ!」


一時の沈黙が流れ
その沈黙を破るようにして巨人型剣奴が水を切った


グオォォォォ…


破壊された右足を引きずりながらこちらに向かってくる
剣を振り下ろす
地面が割れる
衝撃波は周りの民家を破壊していく


「守護の印【禁水】!!」


道路沿いにある民家は次々と水の箱に包まれていく


「莉緒、頼む!」
「分かった!回復印【再回】!!」


半壊していた民家が再生していく


「途尋、守らないとダメなんだ。途尋のやり方は、ちょっと違う…」
「うるさい!!守護の印【凍陣】!!」


途尋を周囲の気温がみるみるうちに下っていく
民家を包んでいた水の箱は凍りつき始めた
巨人がまた剣を振り下ろす
衝撃波は凝りついた民家を粉々にしていく


「……途尋ォォォ!!!」


沃哉は左手で途尋の胸ぐらをつかむ
途尋は冷めた顔をしている


「これがお前のやり方かよ!!見てみろよ、せっかく莉緒が再生してくれた家が粉々だ!!中には人がいたかもしれないんだぞ!!」


途尋は少し黙った


「うるせぇ…守るってのはないろいろ種類があるんだ。世界を守るって大きなこと言ってもいい、大切な人を守るって言ってもいい、でもな…結局は皆、自分の体が大事なんだよ!!」


途尋は胸ぐらを掴んだ沃哉の左手を振り払った


「俺は知ってんだ、もう誰も守れないって、昨日思い知ったんだ」


途尋は制服を脱いで脇腹を見せた
そこにはいくつもの傷が


「そ、それは…」
「門さんにやられた…」
「!!」
「昨日の帰り道、門さんとはち合わせた。でも俺がはち合わせたのは門さんじゃなかった。殺戮を生きがいとした剣人になっていたんだ」


沃哉と莉緒は知っていたから驚かなかった
驚いたのはそっちではなく、途尋が門と接触していたことだ


「何もできなかった。圧倒的に押されていた。守ってあげられなかった。つらかったと思う」
「つらい?」
「体を乗っ取られていたといって、その時の記憶が無いわけじゃない」


沃哉もヨークに体を預けていたから分かる


「護ってあげられなかったんだ…」
「…」
「お前らも、門さんと戦ったんだろ!?なぁ!!」
「あ、あぁ…」
「なんで守ってくれなかったんだよ…だから、おれは、」


途尋は地面に伏せて泣きだした


「じゃぁ、門を守れなかった分、他の人を守るんだ」
「へ?…」
「守るんだよ、剣人や剣奴から、みんなを」
「…グスッ」
「これは俺と莉緒とお前との約束だ」


途尋の涙は一瞬にして止まった


「守ってやるよ!!」


途尋の右手の光が大きくなった


「力を貸してくれ、オルファ!!」
『やっと名前よんでくれたな』
『彼の化身はオルファという名前の様ですね…でもおかしいですね』
「なんでだ?」
『後で話します』


巨人型剣奴は周りの建物や地面をドンドン破壊していく


「守護の印【風塊】!」
「守護の印【禁水】!途尋!」
「…わかった、守護の印【氷塊】!!」


沃哉の出現させた水の箱は巨人型剣奴の下半身は箱に包まれ
途尋の印でその下半身は凍りついた


「行け!途尋!」
「あぁ」


途尋は筆を投げた
今までとは違う、もっと、自信を持った投げ方だった


凍った肉が地面に転がり
流れ出した血はみるみるうちに凍りついた


「守護の印【止水】!!」


剣奴の足元から大量の水が噴き出す
上半身しかない巨人型は消えていった





筆人の正しい戦い方なんて分からなかったけど
途尋の戦い方は見ただけで間違ってることに気付いた
自信は無かった
自分の戦い方さえ正しいのか分からなかったけど
でも、莉緒は正しいって言ってくれた
守ることには変わりないって言ってくれて
安心した


剣人や剣奴は何のために人を殺すのだろう
人というより、筆人を狙うのだろう


俺は戦うよ、泰嗣
もし、お前が俺を殺そうとしても
俺はお前を守る
どうやってかは分からない
でも、アティっていうやつから絶対、守ってやる





『彼の属性は[氷]です。でも[氷]属性の化身には基本【ゼロ】という名前が付きます』
「ゼロ・オルファっていう名前なんじゃないのか?」
『おそらくそうだと思いますが、彼は危ないですね』
「…?」
『ほら、学校に送れますよ』
「やべっ」


また1日が始まった
でもどうせ、また剣奴が出てくるだろう
心の奥では、想っていた

Re: ペンは剣よりも強し+ ( No.10 )
日時: 2012/01/03 23:14
名前: 清村 (ID: vgnz77PS)



第2章 自覚





カツ…カツ…カツ…


足音が、冷たいコンクリートの様な物に反射する
音が響き渡る


ギイ…


扉が開く時の木材のきしむ音が足音を消した
白いフードの男、その男はゲートと言った


「調子はどうだ?アティ」
「体には慣れた」


その紅色の髪の毛をした青年は、姿かたちは穂村 泰嗣だった


「でも夢を見るんだ」
「夢?」
「あぁ、沃哉っていうやつが何時も出てくる。恋しいようだ、こいつの心は」
「壊しておくか?」
「いや…それはもったいない」
「そうだな…」





『あのオルファという途尋の化身、気になりますね…。おそらく【ゼロの希族ぜろのきぞく】だと思うんですよ』
「ぜろのきぞく?」
『非五大元素では無い[氷]の属性を宿した化身のことを言います。それ以外の情報は無いです。ですから、オルファという化身を接触を持ちたいのです』
「持てばいいじゃないか…」


沃哉は半分興味を示しているが、半分無関心な態度を見せる


『それが無理なのです…。化身同士は人間界ではコネクトできません』
「人間界では…ってあたかも他に世界があるような感じだな」
『…』


ヨークは返事をしなかった


「あー————!!!」


ド—————ン!!


コンクリートに何かが深くめり込んだ
さっきの声からして、おそらく人間が落ちてきたのであろう
沃哉はそういうことには慣れていた


「君、大丈夫?」


背丈、からして小学生高学年ぐらいであろう
でも服装は少し微妙だった


「いてててて…」


傷一つ付いていない
すこし土にまみれたいるだけだ


「もしかしたら君が墨川 沃哉?」


寛大的な沃哉でも、年下の人にタメ口を使われるのだけは許しがたい
でも今は登校中、無駄なトラブルを避けたいため
軽くあしらった


「俺は沃哉ですが」
「君は筆人だろ?」
「!?」
「図星だね…」


汚れた服を掌で払いながら、淡々としゃべりだす


「知ってるんだよね僕、この学校には筆人が3人いる」


いったい何者なんだ、そんな視線を謎の少年に浴びせる


「あとこの学校には3人いるでしょ?」
「はぁ?」


沃哉は驚いた
莉緒、途尋、そして沃哉、あと1人は誰なんだ…
そのことでいっぱいだった


「知ってるでしょ?ねぇ、その3人知ってるでしょ?僕、名前までは知らないんだ、連れてきてよ」


子供のくせに、何も言い返せない自分が少し情けなかった
ここで、莉緒ち途尋を連れてきてどうなるのかもわからないし
かといって、断るのも何か申し訳ない


「おっはよー沃哉」


一番出会いたくなかった声が背中から聞こえてきた
沃哉はしきりに無視し、他人を装った
莉緒にはとても申し訳ないと思った


「ねぇ沃哉、聞こえてないの?え?この子友達?」
「あぁ、俺のいとこなんだ」
「へぇ〜、私南月 莉緒っていうの、よろしく」
「よ、よろしく…」


莉緒は手を差し伸べて握手をした
その謎の少年と莉緒の手が触れた瞬間
莉緒の手が光り出した


「え!?」
「…2人目発見」


莉緒は手を振りほどいた


「沃哉、この子何者なの?」
「分からない…」
『その人には逆らわない方がいいです』
「何言ってんだヨーク、もしかして知ってるのか?」
『えぇ、この人はエリア5世様です』
「エリア5世?」


エリア5世という、ルイ14世みたいなニュアンスの、おそらく貴族かなんだろうか


『莉緒、この人はエリア5世様よ』
「エリア、5世?』
『筆人の先祖の末裔、創造の神エリアの末裔なの』
「……そう言われてもぱっとしない…ごめんリヴァ」
「お前、偉いのか?」
「口のきき方が悪いぞ!!」


でも見るからに年下
敬語なんて使いたくない


「君たちは筆人なんだ、一緒にきてもらう。他の二人には僕の使いに行かせる」
「ちょっと待ってくれ、行くってどこにだ」
「アッバース」
「あっばーす?」
「話は後!!時空印【エテモ】」


地面に不思議な色の印が広がった


「なっ…」


沃哉、莉緒、エリア5世という少年は
淡い光に包まれて消えた


朝っぱらから変な少年に絡まれ、筆人だとバレ
挙句の果てには名前も知らない世界へ連れて行かれる
もう常識は通用しない、俺はもう筆人なんだ
筆人という、異端の種族なんだ、そう自覚するしかなかった


もしかすると、今まで住んでいた世界が、月兎町が、ウソだったのかもしれない
筆人というメモリーが覚醒するまで、俺たちは飼育されていたのかもしれない
理不尽と言う名の神様に

Re: ペンは剣よりも強し+ ( No.11 )
日時: 2012/01/04 13:32
名前: 清村 (ID: vgnz77PS)



「?」
『どうした途尋』
「いや、何でもない…」


途尋は何かに気がついたように空を見上げた


「なぁ、沃哉と南月さん見なかったか?」
「いや、今日学校来てないよ」
「最近ウチの学校不登校増えてるよね〜…これでもう4人目だって?」
「物騒だよね、誘拐だったりして…」
「な、なぁ、その不登校の奴って分かるか?」
「職員室に行って見れば?」
「あ、ありがとう!!」


途尋は教室にいた女子Aと女子Bに礼をして職員室に向かった


「失礼します、斑鳩いかるが先生、出欠簿見せてもらえませんか…」


斑鳩 爽太(いかるが そうた)
担任の先生
いつも白衣を着ている、メガネ、若い


「どうしたんだいそんな血相書いて」
「…」


斑鳩先生の言葉も耳に入らないほど
途尋は出欠簿を食い入るように見続ける


(…沃哉は無断欠席、南月さんも無断欠席か。泰嗣は十二指腸潰瘍で入院5日前から…門さんは一昨日から感染性胃腸炎……ウチのクラスだけでも4人も欠席か)
「墨川君と南月君は無断欠席なんだよね、年頃なのかな?」
「わかりません…失礼します」


途尋の背中を
斑鳩は何かぼーっと眺めていた


「ん?」


職員室から出たその左側に全学年全クラスの出欠状況がホワイトボードに書いてあった
3年3組 
欠席2名 公欠(欠席扱いされないが学校側の公認の元欠席)2名
公欠になっているのはおそらく門と泰嗣であろう
…3年4組
…欠席2名 公欠0名


「3年4組だ!」
『何をそんなに焦っているんだ?』
「いや、何か嫌な予感がして…あ、君4組だよね?」
「う、うん」


通りかかった男子生徒に尋ねる


「今日欠席してた人って誰かわかる?」
「欠席?あ〜忌鋸きのこ君と窪崎くぼさきさんだったかな」
「普通の欠席?」
「いや、喪中とか入院とか」
「あ、ありがとう!!」


途尋は走っていった


『今の話を聞いても何も掴めなかったぞ…』
「いいんだ、みんな俺みたいな境遇なんだよきっと」
『筆人か?』
「あぁ…」


教室でバッグに教科書などを詰め込んでいた
すると


「?なんだ?この紙切れは」


不思議な模様の書かれた紙切れが机に入っていた


「親指でこすってね♪って書いてあるぞ。こすってみるか…」


途尋の右手が淡蒼色に光ると
すると紙切れが淡い光を放ちだした


「!?」


途尋はバッグを残したまま消えた





「…ここは?」
「ここはアッバースです」


体を起こす沃哉の目の前に美青年が立っていた
そのサラサラと風になびく髪の毛は深い蒼色をしていた
沃哉の手が光る時と同じ色の様な


「あ、あなたは?」
「私はヨークです」
「……へ?」


沃哉は少し固まった


「あの、ヨーク?」
「はいそうです。ヨークです」


沃哉は無意識のうちにヨークに抱きついていた


「なっ!?どうしたんです!?」
「…いや、本当に無意識に抱きついてた…ごめん」
「いいですよ」


雰囲気はふわふわしていたが
それもまもなく
あたりを見渡してみると
誰もいなかった


「エリア5世は?莉緒たちは?」
「はぐれてしまったようですね…」


ヨークは冷静に言った


「どうする?あのエリア5世って奴からも何も訊かされてないぞ」
「おそらくオルデン国に向かうんだと思います」
「オルデン国??」
「オルデン国というのは筆人の国です」
「筆人の国…そこに行ってどうなるんだ?」
「正式な筆人になるのです」


沃哉は複雑だった
突然体内に現れた力に導かれ、状況も十分に飲み込めぬまま
謎の種族、筆人になり、しかも正式に筆人になるなど、理不尽にも程があった


「…俺はそこに行って何を得るんだ」
「それは世界が決めることです。世界のために、沃哉は戦うのです」


沃哉は歩きだした
ヨークは少し斜め後ろから付いていく


「行こう、ただ、前に進むんだ…」
「そうですね…でもそっちじゃないです」
「…」


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