ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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禁断の箱
日時: 2012/08/05 21:03
名前: メゾ (ID: vKymDq2V)

こんにちわ。メゾです。
何個目になるのかはわかりませんが、なんだか軽ーいノリでこれを書こうと思い、書かせていただくことにしました。

よくわからない部分が多いと思いますが、読んでいただけると幸いです。
それでは、『禁断の箱』、始まります。

*人物紹介*
〜アイリス〜
イヴァン 16歳
「時」の「禁断の箱」保持者。母親が自殺、父親が行方不明のため、叔父と叔母に引き取られた。右目を母親に潰され、眼帯をしている。周りの人々に危害を与えないようにするため、アイリスに入ることとなる。また、己の目的の「過去を知る」ためにアイリスに居座ることを決めた。禁断の箱の別名、「王」と呼ばれる。本人はまだ知らない。叔父から銃や体術、剣術などを教わっていた過去があり、戦力になると期待されている。
リザ   13歳
兄、イヴァンに付き添い、アイリスに入ることとなった。「擬似核」と契約を行い、核によって強化された「ランドル」と名付けられた狼を召喚する能力を手に入れる。母親により視力を失った。通常の核からもらう能力とは異なり、分身を作るため、「赤目」ではないかと疑われている。
カーフェク 45歳
アイリスの一員。虚空からあらゆる武器を取り出すことができる能力を持つ。イヴァンとはなかなか肌が合わず、良く腹を立たせる。左顔を隠している。こう見えて、アイリス内では最強らしい。見た目は契約当時の28歳。
シャネット 28歳
アイリスの一員。相手の心を読むこと、自身の心を相手に送ることができる能力を持つ。おとなしそうな外見であるが、怒ると相当怖いらしい。見た目は契約当時の20歳。
レイチェル 18歳
アイリスの一員。超加速、超運動神経を持つ。右手右足、左のひじから下が義手義足。明るい性格で、カーフェクのことを「兄さん」と呼ぶ。見た目は契約当時の16歳。
アーネスト 16歳
「影」の「禁断の箱」所持者。一見硬そうな顔をしているが、実は仲間思いの優しい男の子。世話を焼くのが好きらしい。禁断の箱の別名、「死神」と呼ばれる。
ツィエン  16歳
「空間」の「禁断の箱」所持者。すぐさま能力を使えるようになった別の意味で恐ろしい少年。思いやりのある、優しい子。最近、前の「空間」の禁断の箱によく話しかけられている。禁断の箱の別名、「断罪者」と呼ばれる。
リエラ   11歳
「命」の「禁断の箱」所持者。生まれつき声が出ない。少し控え目な性格。少し人見知りらしいが、イヴァンにはすぐになついた。赤目のについて知っており、アイにある提案をされ、彼女の器となることを決める。禁断の箱の別名、「創造主」と呼ばれる。
ファニエル 35歳
アイリスの一員。責任感が強く、周りから慕われている。まだ能力に関しては不明。見た目は契約当時の25歳。
キル   年齢不明 
アイリスの一員で、研究員。噂では百年以上生きているという。能力に関しては不明。赤い瞳を持っているが、赤目とは呼ばれていない。見た目は20代。
少年    15歳
アイリスを率いるボス。能力は不明。名については何かある問題を抱えているようで、知りえることができない。見た目は契約当時の10歳。
アイ    年齢不明
リエラに器になることを求めてきた女性。リエラの条件をのみ、彼女の体に宿っている。「弟」の目的を阻止するのが目的らしい。弟の目的に関してはまだ不明。百年前にいきていたらしく、「影」の前の禁断の箱。「死神」の力を利用し、魂をこの世に残した、と本人は言っている。赤い瞳を持っているが、赤目のように恩恵は受けていない。


〜リスリアン〜
ルカ    百二十三歳(見た目は二十歳)
リスリアンの一員。百年前に一度この世を去ったが、再び蘇る。能力は不明。
スネリ   百九歳  (見た目は九歳)
リスリアンの一員。百年前にこの世を去る。ルカと同様、蘇った。能力は不明。
ミラ・ヴィンセント
ルカとスネリの会話に出てきた人物達。リスリアンと何らかの関わりがあると見える。会話の内容からして、しばらくリスリアンの方に帰ってきていない。

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Re: 禁断の箱 ( No.10 )
日時: 2012/03/15 20:24
名前: メゾ (ID: .uCwXdh9)

第六話  「組織の人間」

何も、見えない。真っ暗で、光は一切差し込んだりしない。恐怖を感じる。
(どうしてここにいるんだろう)
不思議な感覚になった。隣には人影があり、目に涙をため、悲鳴を上げている。
(なんで泣いているんだ———?)
どろりとした液体が自分の頬をつたっていくのが分かった。まるで神経がないような体をゆっくりと動かし、それに触れる。
生温かく、少し鉄臭い。光がないので色彩は分からないが、血であることはだいたい分かった。しかも、己の血で、自分の「右目」から出ている。
「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!どこにいるの?リザ、何も見えないの!!助けて、お兄ちゃん———」
妹の声が聞こえた。朦朧とする意識の中、その「お兄ちゃん」という言葉だけが脳に響く。
リザもおそらく「あいつ」に目を奪われたのだろう。自分と同様に。だから隣にいるイヴァンが見えない。幼い少女は必死で小さな手を伸ばし、助けを求めていた。
助けは来ない。父親はどこかに行っていて、誰もこの家にはいないのだから。いるのはイヴァンと、リザ、そして恐ろしい表情で二人に暴力をふるう母親だけである。
母親は血だらけで二人の様子を茫然と見ている。突然彼女の人格は変わり、二人を襲った。まず、近くにいたリザの目に物を投げつけ、そのあとに彼女を庇ったイヴァンの目を抉った。無表情で襲いかかってくる母を見て、まるで自分たちを憎んでいるかのように思える。
「———もうやめてよ、お母さん」
途切れ途切れの意識の中、確か自分はそうつぶやいた。

*

ばっと、目が覚める。夢を見ていたようで、少し汗をかいていた。
「おはよう。おにいちゃん。よく眠ってたね」
目を開けると、にっこりと笑う妹の顔が目の前にあった。外はもう朝になっており、眩しい光が室内に差し込む。
ここはイヴァンとリザに用意された部屋である。昨日、しばらくあの場で休んだ後、役人に起こされ、ここにきた。部屋に入ったときにはすでにリザは寝ており、起こすのも悪いだろうと思ってそのまま自分も眠ったのだった。もちろん、そのまま眠っていたため、彼女がどのような能力を手に入れたのかは知らない。
「あ…。おはよう」
眼帯をつけながらあいさつを交わす。さっそく聞いてもいいのかと迷っていると、それを悟ったのか、リザ自身が口を開いた。
「お兄ちゃん、昨日の儀式のことなんだけどね、能力は手に入れたよ。ファニエルさんには「珍しい能力だね」って言われたけど」
「体とかに何か異常はないのか?負担とか、疲労とか感じていないのか?」
不安に思い、尋ねる。すると、少し苦笑しながら彼女は
「大丈夫。さっき検査も受けてきたし。問題ないって。私も、そんな負担を感じている部分もないしね」
と言った。そして、
「力、お兄ちゃんにも見せた方がいいよね…。少し珍しいって言われたから恥ずかしいけど。ランドル、おいで」
と、後ろを振り向いて誰かの名前を呼ぶ。すると、どこからともなく一つの影が現れる。その影は、人間の形をしてはいなかった。
それは、真っ黒な狼だった。
全身黒で包まれており、目だけ真っ赤に染まっている。目の下には金色の刺青が入っており、雷のような形をしていた。筋骨隆々しており、あれに突進でもされたらおそらく骨がバラバラに砕け散るだろう。
「これが、私の能力。簡単に言えば、私の代わりに彼が戦ってくれる。そして、同時に私の目となってくれるの」
リザが口を開き、説明をする。イヴァンはその狼に近寄り、触れてみた。ランドルは警戒することもなく、まるで前から知っていたかのような親しみを持つように撫でられる。恐ろしい表情とは裏腹に、人懐こい性格のようだった。
「つまり、こいつのおかげで、お前はいまこの景色が見えているのか?」
イヴァンは彼女の言葉に違和感を覚えたため、聞いてみる。すると、にっこりと笑われ、
「うん。お兄ちゃん、小さい時よりかっこよくなってるね。見えて嬉しいよ」
と言った。言葉通り、彼女は嬉しそうだった。もう二度と見えないだろうと医者に言われていたため、本人も嬉しいはずだ。それよりも、自分自身も嬉しかった。
「そうか、良かった」
安心し、微笑み返す。すると、まるで会話が終わったのを見計らったかのように、扉がノックされた。
「おはようございます。イヴァン様。宜しいですか?」
シャネットの声である。どうぞ、と声をかけると、扉が開き、シャネットとレイチェルが入ってきた。シャネットは昨日とは全く違ったコーディネートで、華やかな色合いのドレスを着ていた。レイチェルは昨日とほぼ一緒の服装だったが、ベルトの代わりに付けられていたリボンが代わっていた。
「おはようございます。リザ様からすでに能力のことはお話があったようですね。また後ほど、詳しくお話は聞かせていただきます。とりあえず、一緒に来ていただけますか?この組織内であなた様方と深くかかわり合うであろう者をご紹介しておこうと思うのですが」
にこりと微笑まれ、提案される。断る理由も、することもなかったので、ついていくことにした。
リザは役人に話を聞かされるようで、別行動となった。別れ際、「またね。面白い人がいっぱいいるから、楽しいと思うよ」と言われた。ずいぶん自分が眠っている間にたくさんの出来事があったんだなと実感させられる。いつまで眠っていたんだと、少し自分を責めた。
しばらく長い廊下を歩くと、一つの部屋の前で二人が止まる。今までの扉より一段と大きく、古びていた。また、装飾もそこまで派手ではなく、金でできていた部分は、少しはがれおちている。
(ここを使っている奴ってたぶん相当ガサツなんだろうな)
ふと、思う。すると、シャネットが振り返り、くすくすと笑った。読みとられたらしく、苦笑するしかない。
「失礼するよ〜。キルいる〜??」
いきなり扉を開けズカズカと中に入り込むレイチェル。それを止めることもなく続いて入って行く。イヴァンもそれに連れられて入った。
中はめちゃくちゃだった。お世辞にもきれいとは言えない。誰が見ても汚いと言うだろう。研究室らしく、ビーカー、試験管などが無造作に置いてある。どれも汚く、中にはそれの破片もあった。研究の内容が書かれた紙もそこらあたりに捨ててある。いったいここに人は入れるのだろうかと不安になった。
「いるよ。だって、ここがアタシの楽園だからね」
声がする。やはり、ここにいるのは変人だった。この空間のことを楽園と言えるのは、変人としか言いようがない。ため息をついた後、意を決してその方向を見る。
「おや、そこにいるのは「時」の禁断の箱の能力者か。少し細すぎやしないか?もっと太るがいい」
視線があったとたん、コンプレックスをずばりと言われる。ややイラッとしながらその女性を見た。
白いシャツの上にカーディガンを着ている。研究者らしく白衣も着ており、眼鏡もかけていた。赤色の瞳に肩まで伸ばされた紫色の髪。赤色のカチューシャをつけ、少しお洒落のようなものもしている。短いスカートをはき、長いニーハイソックスを身に着けていた。一見すればかなり狂っているファッションだったが、不思議と彼女には似合っている。体型は細くも太くもなく、胸がかなり存在を主張していた。身長はやや高めで、イヴァンと同じぐらい。目は小さめで、眼鏡の影響で小さく見えているのだろう。
「キル。ここの研究員だよ。色々な分野で研究を行っている。たまに君にも協力を依頼することもあるかもしれない。その時はどうぞよろしく頼むよ、なに、そんな恐ろしい実験はしないさ。血とか致死量ギリギリまではもらうかもしれないけどね」
さらりと恐ろしいことを口にするキル。思わず後ずさりすると、さらに近寄ってきた。そして、人差し指を勢いよくイヴァンの顔の前にもってきて、
「冗談さ。まあ、よろしく頼むよ。イヴァン君」
と言った。そして、くるりと踵を返しまたゴミの中に姿を消す。
「こえぇ。あいつ。なんなんだよ」
思わず体が震えた。冷汗をかきながらそう言うと、レイチェルがにやにや笑いながら、
「あの人少しおかしいからね。狂っているというか。仕方ないかもしれないけど、自分が死なないからね。目の前であんなにたくさんの人が自分より先に死んで行くんだ。悲しいだろうな。そりゃ、耐えられないよね」
そう言う。イヴァンはなんのことか分からず、「は?」と言って聞き返す。しかし、
「イヴァン様。そろそろ次に行きません?ここにいつまでもいても意味ないですわ」
と、シャネットにさえぎられた。少し最後の言葉と不自然な行動に疑問を覚える。上目づかいで二人を交互の見て、表情をうかがう。
『あなた様は、まだ知らなくてもよいことですわ』
この声が、脳内に直接響く。ちらりと横を見ると、シャネットが目を細めてこちらを見ていた。
「そうか」
納得はいかなかったが、今はそう言っておくことにした。
 





*後書き*
疲れた〜。
以上に長くなったような気がするよ〜。
手が笑ってるよ〜。
そういう訳で、今回はここまでにしておこうと思います。(じゃあ後書きなんて書くなよ!!)
でわでわ、ありがとうございました^^
                 メゾ
                          

Re: 禁断の箱 ( No.11 )
日時: 2012/03/21 17:42
名前: メゾ (ID: .uCwXdh9)

第七話  「他の禁断の箱」

「失礼いたします。リエラ様、アーネスト様、ツィエン様はいらっしゃいますでしょうか?」
丁寧な言葉で中に話しかけるシャネット。返事はなく、勝手に扉が開いた。扉を開けたのは幼い少女だった。
「リエラ様。皆さんいらっしゃいますか?」
リエラ、と呼ばれた少女はコクリと小さく頷き、中に入るように促す。中には二人の少年がいた。一人は少しおどおどした表情で椅子に腰掛けており、もう一人は全く違い、堂々とし落ち着いた表情で座っている。
先ほど扉を開けた少女は、身長が140cmほどで、かなり細身の体型をしていた。目は大きく、綺麗なオレンジ色をしている。中心はこい茶色で、コントラストも美しい。今は白色のワンピースを着ていて、落ち着いた感じを出している。薄茶色の髪は短く切りそろえられ、少しウェーブがかかっていて、可愛らしい。
おどおどした表情で座っている少年は、水色の髪をかなり短く切っており、少しファニエルと似ている。耳には小さなピアスも付いていた。顔立ちは綺麗に整っており、灰色の目が特徴的だった。身長は座っているため、分からないが、おそらくイヴァンと同じくらいだろう。ラインは細いが、少なくともイヴァンよりかは筋肉はあった。
逆に堂々としている少年は、金髪の髪を後ろで三つ編みにしており、周りの短いほうの髪は下ろしていた。ライトグリーンの目は光にあたると別の色にも変わり、澄んでいる。体格はしっかりとしており、座っていても身長が高いことは分かった。おどおどしている方の少年と同様ピアスなどのアクセサリーをたくさんつけている。
「イヴァン様、ご紹介いたしますね。この方々はあなた様と同じく、禁断の箱所持者でいらっしゃいます。自己紹介の方は、各自になさっていただきましょうか?」
シャネットがそういうと、まず金髪の少年が席を立ち、イヴァンの方を向いて、挨拶をしだした。
「俺はアーネスト。「影」の禁断の箱所持者だ。よろしくな、「時」の所持者」
にっと笑い、アーネストは言った。軽く頭を下げ、「よろしく」と言う。背格好からして、自分と同い年ぐらいだろうから、敬語は使わなくてもいいだろう。すると、先ほどの少女が近寄ってきて、イヴァンの手を取った。手のひらを自分の方に向け、指で文字を書いていく。
『リエラです。よろしく。喋れないので、このようにコミュニケーションをさせてもらいます』
書かれたのは、この言葉だった。シャネットの方を見ると、彼女は薄く微笑んで、「言葉の通りです」と言った。上目づかいでこちらを見ているリエラ。その仕草はとても愛らしい。リザより少し年下だろう。彼女と良い友達になれるのではないかと思った。
「僕は、ツィエンです。「空間」の所持者です。よろしくおねがいします。イヴァン君」
彼が「空間」で、アーネストが「影」ならリエラは「命」だろう。それらにどのような違いがあるのかは知らないが。
「禁断の箱の持ち主の皆さまがそろったところですし、お話があるんですヨ〜」
知らぬ間に、カーフェクが自分の背後にいた。全く気配はなかったため、気が付いていなかった。彼は不敵に笑いながら言う。
「やっと全員です。ここまで集めるのに苦労しましたよ?では、ここからはワタクシから、お話させていただきますネ?」
横目でちらりとシャネットとレイチェルを見るカーフェク。その視線に気づいた二人は、その場から立ち去る。レイチェルの方は、少しむくれて、「あとで相手してもらうよ、カーフェク」と言って怒って出て行った。
「さてさて、まずは『禁断の箱』の具体的能力に付いてでしょうかね。では、さっそく、お教えしましょうか。イヴァン君、右手を」
そう言われ、右手を上げる。こちらをじっと見て、ニヤッと笑いながらカーフェクがパチンと指を鳴らした。真似をしろ、というような顔をしたので、それに続いて指を鳴らす。

パチンッ

すると————時が止まった。自分以外の人が動かない。この空間の中で動いているのは一人だけ。誰もが止まっている。リエラも、アーネストも、ツィエンも、もちろんカーフェクも。思わず訳が分からなくなり、席を立って動き回る。ふと、見るとカーフェクの前に一つのメモが置いてあるのが目に見えた。内容は、
「時を止めることができる能力。動かす時は左手を鳴らす」
だった。
呼んだ途端、息が苦しくなり、汗をかきだす。気管が空気を通さなくなり、呼吸ができない。
「……っ。が……」
もがきながら書かれた通りに左手を鳴らす。

パチンッ

時が動き出した。すると、動き出した瞬間から、呼吸が楽になる。一気に肺に空気が入り込んできた。むせて、咳き込む。あまりにイヴァンが苦しそうなのを見て、リエラが駆け寄り、背中をさする。呼吸が安定すると、言われた。
「これがあなたの力です。時を止めることができ、己だけが自由に動き回ることができる。攻撃には最適の力ですネ。でも、使いすぎると体力の消費が激しくなり、下手すりゃ呼吸困難なんかに陥ります。気をつけてくださいね?」
それを先に言えよ、その時全員が思った。

「で、俺は何なんだよ?こいつが来るまで何にも聞かされていないんでね」
沈黙を破るように、アーネストが気を使って話題を斬り出す。イヴァンはリエラに礼を言って、席に座り直した。彼女も自分の席に戻る。
「あなたは影ですからね。イメージですよ、イメージ。影を大きくすることを考えてください」
ニコニコとさっきのことがなかったかのように話を返す。そのような彼をむかつくな、と思う。
すると、いきなり目の前が暗くなった。周りを見ると、リエラもツィエンも驚いている。しかし、一番驚いていたのはアーネストだった。
「なんだこれ?!ちょ、いきなり影が伸びて…」
「戻してください。小さくなることを考えれば元に戻るはずです。早く」
苛立ちの混ざった声が聞こえる。しばらくすると、影が小さくなり、次第に周りが明るくなった。
「最初のうちはこんなものです。失敗の方が多いでしょうネ?少しずつ操れるようになってください。あんまりにもひどいようでしたらこちらも考えさせていただきますが」
やはり苛立ちが隠し切れていない。なんで怒ったんだろう、と疑問に思う。最初のうちは分からないので、このような事態は想定内だったろうに。
「ツィエン君は、分かっていますね?一度誤って使ってしまったので」
ツィエンはコクリと頷く。
「使ったことがあるのか?」
聞くと、彼は少し照れた表情で、
「うん。一度、階段から落ちそうなことがあって。その時に手を前にのばしたら別の空間に出ちゃったんだ。落ちなくて済んだからよかったけどね。でも、そのあとに気絶しちゃったんだよ」
と言った。やはり能力を使いすぎると、体に負担がかかるということが分かる。あまり便利とはいえなさそうだ。
「お姫様の方は、まだ教えない方がいいかもね。こんなふうに体力を失いやすいなら彼女はまだ使わない方がいい。また今度のお預けと行きましょうカ?」
お姫様、とはおそらくリエラのことだろう。カーフェクは彼女の方を向いてにっこりとほほ笑んだ。少し表情を曇らせたが、やがて首を縦に振った。
「では、イヴァン君はまた組織内を回ってもらいましょう。他の皆さんは自由にしてもらって結構ですヨ」
くるりと方向転換をし、イヴァンを手招きする。それに続いて、部屋を出て行こうとした。すると、アーネストに肩を掴まれ、
「大丈夫だったのか?苦しかったら部屋に戻って休んだ方がいいんじゃないのか?」
と、心配そうに聞かれる。意外と仲間思いな発言に、驚く。返す言葉に迷っていると、ツィエンが近寄ってきて、アーネストに言った。
「心配しすぎだって。顔色もいいし。大丈夫だよ。ね、イヴァン君」
イヴァンは頷き、少し笑った。その様子を見て、アーネストはそうか、とつぶやき、肩から手を離す。
「まだですか?早くしてください。ワタクシも暇ではないのですよ?」
じゃあすんなよ、と思ったが、あえて言わない。ここで彼と言い争ってもいいことはないし、かえってめんどくさそうだったから。
「はいはい。すいませんね」
少しイライラした表情で言った。
 





*後書き*
はい、道のりが長かったです。
今回も疲れたので、ここら辺で。
ありがとうございました^^
                メゾ
                  

               

Re: 禁断の箱 ( No.12 )
日時: 2012/03/22 19:25
名前: メゾ (ID: .uCwXdh9)

第八話  「あり得ない人達」

「兄さんっ。話は終わったの?!さっき言った通り、今日こそは相手してもらうよ!!」
部屋を出た途端、このような大声が廊下にこだました。カーフェクの後ろから正面の方を見る。前にはレイチェルが立っており、その隣にシャネットがいた。ついでにリザも付いてきている。
「兄さん?誰のことだ?」
レイチェルに兄弟がいたことは聞いていない。しかし、この中には自分を除いて一人しか男はいなかった。おおよその見当はつく。
「レイチェル、今からイヴァン君の案内をしなくてはならないんですよ。お願いですからどいてもらえませんか?」
やはり彼だった。カーフェクはげんなりとした表情で、見返す。しかし、それはシャネットによってさえぎられた。
「あなたが悪いのですよ。勝手に人の仕事の邪魔をするから。はい、中庭の方を開けております。お使いくださいな」
にこりと意味ありげに微笑まれ、何も言えなくなる。たまに彼女は何とも言い難い恐ろしさがあった。仕方なく、と言った様子で、カーフェクは中庭に向かった。レイチェルはにやっと笑い、ピコピコと跳ねながら後をついていく。シャネットに促され、イヴァン、リザも行った。リザは一人でも余裕で歩いており、周りにランドルがいる様子はないのに、どうやって周りの情報を知りえているのだろうと思う。すると、
「お兄ちゃん、不思議でしょ?ランドルがいないのに周りが見えているのか。ランドルはね、嗅覚も優れているから、遠くから匂いを嗅ぎ取って教えてくれるの。すごいでしょ?」
自慢げに話してくれた。彼女が嬉しそうにしていたので、つい笑ってしまう。頭を撫でて、そうだな、と言った。

*

「じゃあ、両方とも準備の方は宜しいですか?」
その一声で、二人ともザッ、と音を立てて地面を踏みしめる。レイチェルの方は素手で、カーフェクの方はいつも身につけている刀を持っていた。特別にイヴァンとリザも見学させてもらうことになる。組織の中を見るのは後になり、イヴァンとしても誰がどのような実力を持っているのかは知りたかったので、好都合だ、と思っていた。
「では、始め!!」
この掛け声とともに、レイチェルの方が加速し、一気に突っ込んでいく。スピードは恐ろしく速く、見えないほどだった。
ガキンッ
金属音がし、見ると、レイチェルの蹴りをカーフェクが剣で受け止めていた。すぐさま彼女は体を反転させ、再び蹴りを入れる。今度は手でそれを抑え込み、手にからませた。どう考えても、彼女の方が不利な状態になる。しかし、今度はそれを利用し、レイチェルは上半身を起こすと、右手で顔めがけて拳を繰り出す。
「おっと」
そうつぶやいて、よけた。バランスが崩れた瞬間、手から逃れ、少し間を取る。両者とも、まだまだ余裕の笑みである。
次はカーフェクの方が向かってきた。レイチェルは剣の軌道を読み、それをよけた後、背後に回り込み、再び蹴りを入れる。しかし、抑え込むのではなく、ニヤッと笑って相手は思い切り足を斬ってきた。
「危ない!!」
叫んだが、お互い引かない。刃物と人間の生足である。血が飛び散るに決まっていた。
ガキィッ
あり得ない音がする。骨に当たってもそんな甲高い音はしないだろう。
見ると、剣は彼女の右足のソックスを貫通し、皮膚に刺さっていた。血は出ておらず、あれだけ思い切り振っていたのに、肉まで貫かれていないのが謎である。なお、皮膚がはがれており、その下から何か黒く光る金属のようなものがあった。
「…?!義足?」
思わずつぶやくと、シャネットがそれに答えた。
「はい。レイチェルは右足、右腕、左の肘から下を失っています。キル様によって義手、義足を作ってもらい、今はそれを利用して戦闘を行っています。義手と言ってもただの義手ではありません。金属でできており、あらゆる武器に対応できます。刀なんか全く歯が立ちませんわ」
「でも、はじめて会ったときは真っ黒い足じゃなかったです」
リザが異論を唱える。すると、シャネットは薄く微笑み、言った。
「普段は人工皮膚により隠しております。気付かなかったでしょう?あれもキル様が造ったものなのですよ」
何気にすごいんだな、と思う。あの見かけからしてロクなことしなさそうなのに。
少し目を離した間に、かなり二人は派手に戦っていたらしく、砂にまみれていた。レイチェルが再び突進し、筋やネジがあらわになった右足で上空からかかと落としをする。カーフェクは上を見ることなく剣でそれを受け流し、次の瞬間、拳を繰り出す。とっさのことに反応できず、また地面に足がついていなかったため、バランスを崩す。あっさりと殴られ、吹き飛ばされた。ドン、と大きな音がし、飛んで行った方に土ぼこりが舞う。
「終わりました?」
イヴァンやリザが慌てる中で冷静に聞く。あれほど大きな音をさせ吹っ飛んだんだ、無事なはずがない。そう思った刹那、

「まだだよ!!」

大声がし、煙の中を一つの影がすぎる。待っていましたとばかりにカーフェクは刀を構えなおし、衝撃を受け止めた。左手。刃の部分が当たったため、皮膚が破れる。彼女の口からは血が出ていた。
「しぶといね。いつからこんなに負けず嫌いになったんだい?妹」
「前からだったよ。ただ兄さんがまともに相手してくれてなかったから私も手を抜いていただけ。でも、イヴァンがいるからかな?今日はいつもより本気だ」
「当たり前だよ。なめられちゃたまらない。悪いけど、お前には負けてもらうよ」
「嫌だよ。兄」
小声で拳と剣を交えながら会話する。もちろん外野の三人には聞こえていない。
カーフェクは剣で拳をはらい、大きく振りかぶる。胴体がガラ空きになり、レイチェルがそれをねらう。回し蹴りをした。すると、
————何もないはずの空間からレイチェルの顔の正面に勢いよく一つの剣が突き出した。
彼女は驚き、ひるむ。ニヤッと彼は口の端を上げて笑った。
最初からそれを狙っていたようで、構えた剣を下ろし、ピタッと止まった状態の首に刃を当てる。
「はい。私の勝ちですね?」
イヴァンとリザは何も言えない。いきなり刀が突き出てきたのである。しかも刃の部分だけ。まるで壁を破ったかのように『それ』は現れた。
「驚かせてすみませんね?これが私の能力です。ありとあらゆるところから武器を出すことができます。使い手のイメージにより形は色々変わりますが、刀、銃、槍、その他もろもろ作ることはできますヨ?」
にこやかに言い放つ。レイチェルはむっとした表情で剣を押しのけ立ち上がり、
「ひどい、兄さん。いつもはその能力使わないのに。それ出してくるって知っていたら驚かなかったのに!!」
と叫んだ。彼女が地団駄を踏むたびに地面がへこむのが分かる。おそらく両足のバランスを保つため、靴に重りが入っているはずである。そのためだろうと思った。
「レイチェルの能力は、超身体能力。そして超加速。スピードに感じてはこの組織の中では一番です。動体視力も優れていますし。それに体に武器そのものをしこんでいますから、接近戦ではかなり活躍します」
なにより、レイチェルの体と、カーフェクの能力に驚いた。超身体能力に、武器を大量に空間から出すことのできる力。敵に回すと恐ろしく強いだろう。アイリスとは、このような人の領域を超えた人間がたくさんいるのだと、改めて思う。
「はい、もういいでしょう?付き合ってあげましたし。私はもう仕事に戻らせてもらいます」
カーフェクがレイチェルの方を向いて言い放つ。彼女はと言うと、
「むうぅー…、ムカつくなぁ。今度は絶対負けないから」
と、頬を膨らませて言葉を返した。
「はいはい。もうここまでにしておいてください。レイチェル、あなたはキル様の所へ行きなさい。皮膚をつけてもらわないと、こっちが困ります。それに、カーフェク、あなたも医務室に行った方がいいと思います。レイチェルの足蹴り、一発腹に食らって痛みがあるのでしょう?」
シャネットが会話に割り込んできて言う。でも、と言いかけたカーフェクの言葉をさえぎり、
「後は私が引き受けます。お任せください」
と言った。
結局、二人とも中に戻り、お互い治療することになった。イヴァンとリザはまた見学に戻ることとなった。





*後書き*
はい、途中で力尽き、「保留」も書かずに更新してしまいました。すいません。
今回も長くなってしまったと、反省しております。こんな長いの読めねぇよ!という方、ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
久しぶりにこんなに長く後書きも書いたような気がします。気のせいだったらすいません^^
はい、次回はどのような展開にするか迷っているところです。そろそろリスリアンの皆さん出すべきか、まだまだアイリスの皆さんについて書くか…。まぁ、書きやすい方から書かせていただきたいと思います。
さてさて、長いのにここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。次回もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。
でわでわ、この辺で。
                   メゾ       


Re: 禁断の箱 ( No.13 )
日時: 2012/03/30 16:08
名前: メゾ (ID: .uCwXdh9)

第九話  「主」

「シャネット!ボスがお呼びだ」
長い廊下を歩いていると、後ろから走ってくるファニエルに話しかけられた。シャネットは振り向き、
「私に用なのですか?いつもは呼び出すときは干渉して話しかけていらっしゃるのに」
と嘘だ、というように言った。その言葉を聞き、ファニエルは苦笑いし、
「その通り、お前と禁断の箱の皆さんをお呼びだよ。他の禁断の箱の持ち主はもうお部屋に向かったよ。後はイヴァン君とシャネットだ」
と返す。イヴァンは驚いた。ここのボスからお呼び出しというのは何か用件があるのであろう。しかし、自分は昨日ここに来たばかりで、何も知らないし、してもいない。一体なんだろう。
「リザ様。申し訳ありません。これからボスのお部屋の方に参りますから、お一人でお部屋に帰っていただけますか?」
「分かりました」
シャネットの言葉にリザは頷き、くるりと踵を返す。それほど気にしている様子はなかったが足取りはゆっくりだった。
「では、行きましょうか」
彼女を先頭にして、歩き出す。

*

「失礼いたします。シャネットです。イヴァン様をお連れいたしました」
そう言って目の前にある一際豪華な扉を開ける。見た目より質量はないらしく、大きな音も立てずに簡単に開いた。
「これで全員そろったな。禁断の箱達」
思っていたより、幼い声が聞こえる。中を見ると、中心にテーブル、その周りに椅子があり、すでに三人の人間が座っている。その奥に大きな机が置いてあり、そこに陣取っているのが一人の少年だった。彼の後ろにある窓から光が差し込み、逆光で顔は見えない。身長からして、おそらく十歳前半だろう。
「イヴァン。遅かったな」
アーネストがこちらの方を向いて話しかけてくる。リエラがすぐに席を立って手を引っ張ってきた。椅子に座るように促してくる。とりあえずリエラの隣に座った。シャネットは部屋に隅に立つだけで、座ろうとはしなかった。
「さっそく、お前たちに伝えたいことがある」
少年が席を立ち、テーブルの方に近づいてくる。光による邪魔がなくなり、顔が見えるようになった。
少年らしくない大人びた顔立ちをし、黒を帯びた茶色の瞳に黒に近い藍色の髪をしている。綺麗な顔をしており、体型を見ても、少女と間違えてしまう。服装は藍色のハーフパンツにシャツ、上にベストを着て、首元には黒色のリボンである。暗い色中心のコーディネートだった。
「まあ、口で言うよりも自分の目で見た方が早いだろう。シャネット、こいつらにかけている能力を解け」
可愛らしい外見とは裏腹に、口はかなり横暴である。折角の容姿が台無しだった。しかし、漂っている雰囲気はその横暴な口調にはしっかりと合っている。見た目よりも少し年をとっているのかもしれない。
「かしこまりました」
シャネットは少し低頭し、イヴァンたちの方を見やる。しばらく眺めた後、また彼の方に向き直り、
「解きました。おそらく、もう見えるかと」
と言った。すると、少年が、また上から目線の口調で命令してくる。指をさしながら、
「お前たち、右腕を見てみろ。僕の言っていた意味が分かるだろうよ」
と言い放つ。イヴァンは疑いながらも袖をまくり、右腕を露にした。
「?!」
ツィエンの息をのむ声が聞こえる。一体何事かと見たが、リエラがグイッとシャツをつかんできたので、あまり見ることができなかった。彼女も袖をめくっており、ツィエンとは違い、落ち着いていたが、イヴァンの方を見て、不安そうな顔をしている。
「え…?」
思わず何も言えなくなった。

そこには、今までなかったはずの、ある数字が刻まれていた。

昨日着替えたときにはそのような印はなかった。いつも通り、何も感じていなかったはずなのに。彼がシャネットに何か命じた途端に、「これ」が見えるようになった。
「なんなんだ、これは…」
心配になり、アーネストが全員を代表して聞いた。彼は普通の表情で、その答えを返す。
「禁断の箱の保持者には確実に刻まれる、リミットだ」
「……?!リミットだと?」
イヴァンが聞き返した。恐怖を隠し切れていない様子で、ツィエンも顔を上げて聞きだす。
話をまとめると、こうだった。
「禁断の箱」保持者は、次の保持者が誕生するまで命を落とすわけにはいかない。もし、一つでも禁断の箱の能力がこの世から一時的に消えてしまったら、この世界のバランスが崩れ、破滅の運命をたどるからである。そのため、「核」がリミット付きで保持者を永遠に生かすことでバランスを保とうとした。つまり、期限付きではあるが、その右腕に刻まれている時間までは、死ぬことはなく、逆にいえば、その刻印が刻んでいる時間になると、確実に死ぬことになる、ということである。
どんなに普通の人間が死ぬような傷を何度受けても、禁断の箱の持ち主は何度も再生し、寿命が縮まることはない。例え心臓や、目、臓器などが破壊されてしまっても、幾度なく再生する。

「ちょっと待ってくれ。それじゃあ、辻褄が合わない。俺は禁断の箱を持っているが、右目はつぶされたままだぞ」
イヴァンがすかさず聞いた。それには彼は答えず、代わりにシャネットが説明した。
「それは、まだ能力が目覚めていなかったからです。おそらく、イヴァン様がその傷を受けたときには、前の「時」の禁断の箱の持ち主がまだ生きていたのでしょう。覚醒する前に受けた傷は再生することはできません。これは付け足しですが、前の保持者が死ぬと同時に、新しい保持者は誕生します。また、覚醒する前の保持者が死亡した場合、前の保持者は寿命が延びることになるのです」
ようやく意味を飲むことができた。改めて右腕を見る。二の腕辺りに「XII」(12)と刻まれていた。リエラは「XX」(20)、アーネストは「VII」(7)、ツィエンは「XV」(15)と刻まれている。一番この中で残りの寿命が少ないのはアーネストだった。本人もそれに気づいたようで、表情が曇る。
「まあ、これだけがお前たちに話したかったことではないのだが、僕が想像した以上に貴様らが動揺していたからな。今日はここまでにしておいてやる。また明日来い。今日はゆっくりと休め。シャネット」
「はい」
彼が声をかけると、シャネットが壁から放れ、こちらに向かってくる。にこっと微笑んで、イヴァンたちに立つことを促した。まず初めにリエラが立ち上がり、そのあとにイヴァンとアーネスト、最後にツィエンだった。アーネスト以上に彼の方がショックが大きかったらしい。
「失礼致しました」
優雅に一礼し、部屋を出て行く。シャネットの背中を見ながら、とぼとぼと廊下を歩いた。
リエラはずっとイヴァンのシャツをつかんでおり、イヴァンはその様子を見て、小さく微笑む。こんなに小さいのに、すでに能力に目覚めて、そして己の寿命を目の前にしている。そのことを考えると、後ろ向きなことを考えるのが、ばかばかしくなった。
「そんなに重く考えるんじゃねえよ。ここで何らかの寿命を延ばす方法を考えようぜ。マイナスなこと考えているよりかはマシだろ?ほら!!」
一番動揺の激しかったツィエンの肩を組む。それをみて、少し驚いた顔をされたが、やがて彼も破顔し、「そうだね」と言った。
アーネストもにっと笑って足取りを軽くした。
「だいじょうぶだよな。どうにかなるって!!」
そういって、少し不安を抱えながら、お互いを励まし合い、自分の部屋に戻った。





*後書き*
なんか、終わり方微妙じゃね…?
はい、もう腰が痛いので、今回はこの辺で。もう疲れたよ、パトラッシュ…(なんちゃってww)
はい、次回は頑張ってリスリアンの皆さん出すよ!
もう忘れられているかもしれないけど、あの人たちも意外と頑張っているんだよ!
本当に今回はこの辺で、ありがとうございました〜。
                  メゾ


Re: 禁断の箱 ( No.14 )
日時: 2012/04/05 19:28
名前: メゾ (ID: MSa8mdRp)

第十話  「怪しげな一族の皆さん」

「ルカ〜。つまんな〜い。何か面白いことしようよぅ。ほら、例えば…大量虐殺とか」
「さらっと恐ろしいことを言わない。あなた、見た目は可愛い女の子なんだから、言動も可愛く!」
一人の少女と、一人の女性の会話。少女は色素の薄いオレンジ色の髪を下で二つに結び、またその結び目をリボンで留めていた。目は髪よりも少し濃いオレンジ。身長はそこまで高くはなく、さきほど女性が言った通り、可愛らしい。顔も綺麗に整っているし、肌もつやがあって美しかった。女性の方は大きなピンク色の瞳にそれと同じ少し紫がかった桃色の髪。肩まで伸びた髪は、下ろしている。身長は高く、ラインは細い。少女は可愛いが、その女性は美しいという言葉があっている。
ルカ、と呼ばれた女は言った。
「今はね、とっても大変なの。核様は今、深い眠りに付いていらっしゃるし、禁断の箱の奴らはアイリスに取られちゃったし。ヴィンセントもどこかに行っていて、行方知れずだから」
「むむぅ。なら、いっそのことアイリスの連中みんな殺そうよ!!そうしたら、わざわざ禁断の箱の奴ら奪還しなくて済むし」
「そういう訳にもいかないの。ムーラストも最近動き出しているっていう情報も流れてきているから。少しくらい落ち着いて頂戴。スネリ」
少女の名はスネリという。同じく、女性の名はルカ。二人ともリスリアンを示す刺青が左の頬に入っていた。
「ヴィンセント、ミラとどこかに行ってしばらく帰ってきてないもんね。今頃どうしてるのかな?」
スネリは言った。

リスリアンは、百年前にこの世から消え去った。実際、その当時に生きていたルカもスネリも、その他の一族のものも全員死亡した。その当時の記憶は誰もなく、何者かによって消されており、また何故蘇ったのかも不明である。普通の人間どもには自分たちの血と肉を使って核の力を強めたなどという変な風に噂が流れているが、実際核の力は強くなるどころか弱ってきている。何故核の力が弱っていているのかというと、九十年前に国の王に襲われ、無理矢理「擬似核」を作らされたからである。すっかり弱ってしまった核は今現在、深い眠りについて体力を回復させようとしていた。リスリアンが今すぐにアイリスと全面戦争を行わないのもこれが理由である。自分たちの力は百年前よりもはるかに劣っていた。おそらくアイリスの者と戦ったら、人手不足で簡単に負けてしまう。そのため、今はじっと機会を待ち、核が覚醒するのを待っているのである。

「スネリ、ヴィンセントとミラは今、あの忌まわしい国の様子を見に行っているの。あなたも、私たちの目的を忘れていないでしょう?」
ルカが言う。スネリは少し間を置き、ゆっくりと言った。
「分かってるよ。「禁断の箱」を手に入れ、「核」の力を再び強めること、同時に「呪われた血」を持つ者の抹殺。でしょう?」
彼女たちの目的、それは「核」の力を強め、己の一族に繁栄をもたらす事、また、「核」を脅かす「呪われた血」を持つ者を殺す事であった。
「呪われた血を持つ者を殺すことは、正直難しいけれど、きっとやり遂げてみせる。アイリスの連中の目が他に行ったところで確実に仕留めてみせるわ」
「呪われた血」と、リスリアンには深い関係がある。彼女たちはこの血を持つ者によって自由に動くことはできない。そのため、殺すのである。
「さぁ、どんな手を使ってアイリスの奴らを出し抜いてやろうかしら」
不敵に笑い、彼女は言い放つ。冷やかな目は冷たい大理石の床に移った自分に向かっていた。スネリはそれを一瞥し、にこっと屈託のない笑顔を浮かべ、「そうだね」と言った。






*後書き*
はい。非常に書くのが難しい回でした。
リスリアンの皆さんの設定はとっても入り組んでいて、こちらも理解するのが難しいときがあるんですが…何となく読んでいただけると嬉しいです。
でわでわ、今回はこの辺で。ありがとうございました〜^^
              メゾ


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