ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 禁断の箱
- 日時: 2012/08/05 21:03
- 名前: メゾ (ID: vKymDq2V)
こんにちわ。メゾです。
何個目になるのかはわかりませんが、なんだか軽ーいノリでこれを書こうと思い、書かせていただくことにしました。
よくわからない部分が多いと思いますが、読んでいただけると幸いです。
それでは、『禁断の箱』、始まります。
*人物紹介*
〜アイリス〜
イヴァン 16歳
「時」の「禁断の箱」保持者。母親が自殺、父親が行方不明のため、叔父と叔母に引き取られた。右目を母親に潰され、眼帯をしている。周りの人々に危害を与えないようにするため、アイリスに入ることとなる。また、己の目的の「過去を知る」ためにアイリスに居座ることを決めた。禁断の箱の別名、「王」と呼ばれる。本人はまだ知らない。叔父から銃や体術、剣術などを教わっていた過去があり、戦力になると期待されている。
リザ 13歳
兄、イヴァンに付き添い、アイリスに入ることとなった。「擬似核」と契約を行い、核によって強化された「ランドル」と名付けられた狼を召喚する能力を手に入れる。母親により視力を失った。通常の核からもらう能力とは異なり、分身を作るため、「赤目」ではないかと疑われている。
カーフェク 45歳
アイリスの一員。虚空からあらゆる武器を取り出すことができる能力を持つ。イヴァンとはなかなか肌が合わず、良く腹を立たせる。左顔を隠している。こう見えて、アイリス内では最強らしい。見た目は契約当時の28歳。
シャネット 28歳
アイリスの一員。相手の心を読むこと、自身の心を相手に送ることができる能力を持つ。おとなしそうな外見であるが、怒ると相当怖いらしい。見た目は契約当時の20歳。
レイチェル 18歳
アイリスの一員。超加速、超運動神経を持つ。右手右足、左のひじから下が義手義足。明るい性格で、カーフェクのことを「兄さん」と呼ぶ。見た目は契約当時の16歳。
アーネスト 16歳
「影」の「禁断の箱」所持者。一見硬そうな顔をしているが、実は仲間思いの優しい男の子。世話を焼くのが好きらしい。禁断の箱の別名、「死神」と呼ばれる。
ツィエン 16歳
「空間」の「禁断の箱」所持者。すぐさま能力を使えるようになった別の意味で恐ろしい少年。思いやりのある、優しい子。最近、前の「空間」の禁断の箱によく話しかけられている。禁断の箱の別名、「断罪者」と呼ばれる。
リエラ 11歳
「命」の「禁断の箱」所持者。生まれつき声が出ない。少し控え目な性格。少し人見知りらしいが、イヴァンにはすぐになついた。赤目のについて知っており、アイにある提案をされ、彼女の器となることを決める。禁断の箱の別名、「創造主」と呼ばれる。
ファニエル 35歳
アイリスの一員。責任感が強く、周りから慕われている。まだ能力に関しては不明。見た目は契約当時の25歳。
キル 年齢不明
アイリスの一員で、研究員。噂では百年以上生きているという。能力に関しては不明。赤い瞳を持っているが、赤目とは呼ばれていない。見た目は20代。
少年 15歳
アイリスを率いるボス。能力は不明。名については何かある問題を抱えているようで、知りえることができない。見た目は契約当時の10歳。
アイ 年齢不明
リエラに器になることを求めてきた女性。リエラの条件をのみ、彼女の体に宿っている。「弟」の目的を阻止するのが目的らしい。弟の目的に関してはまだ不明。百年前にいきていたらしく、「影」の前の禁断の箱。「死神」の力を利用し、魂をこの世に残した、と本人は言っている。赤い瞳を持っているが、赤目のように恩恵は受けていない。
〜リスリアン〜
ルカ 百二十三歳(見た目は二十歳)
リスリアンの一員。百年前に一度この世を去ったが、再び蘇る。能力は不明。
スネリ 百九歳 (見た目は九歳)
リスリアンの一員。百年前にこの世を去る。ルカと同様、蘇った。能力は不明。
ミラ・ヴィンセント
ルカとスネリの会話に出てきた人物達。リスリアンと何らかの関わりがあると見える。会話の内容からして、しばらくリスリアンの方に帰ってきていない。
- Re: 禁断の箱 ( No.1 )
- 日時: 2012/01/18 16:21
- 名前: メゾ (ID: UruhQZnK)
第一話 「謎の出会い」
眼帯を右目につけた少年が薄暗い道を歩いている。藍色の髪、身長は高く、華奢で、濃い紫色の目をしている。
彼はしばらくすると歩くのをやめ、たくさん建っている家の中でひときわ目立つ家の扉を開けた。その家は西洋風の大きな家で、いかにも金持ちの住むような、という言葉がふさわしいたたずまいだった。キィ、と扉が開くと中の光が漏れ、道を照らす。
「お兄ちゃん、おかえりなさい!」
彼が中に入ると、大きくはないが、良く通る、可愛らしい声が聞こえた。そして、その声の主であろう少女が奥から姿を現した。その少女は目が見えないらしく、手で部屋の中にある障害物の様子を確認しながら歩み寄ってくる。
「ただいま」
そう一言返し、少女の手を握る。すると彼女はほっとしたようににこりと笑い、
「おじ様とおば様が待っているの。夕食ですって」
と言った。彼女は手を引いて、己が出てきた部屋のドアを開ける。その部屋にはすでに二人の中年夫婦が座っており、残りの二席が用意されていた。夫人の方がにこりと微笑み、「おかえりなさい」と言い、目で椅子の方を見る。彼らが座ると、さっそく食事が始まった。
眼帯をつけた彼の名は、イヴァン。幼いころに母親を亡くし、父親が行方不明になったため、父親の兄弟で、貴族であるおじ、おばに預けられた。同じく、イヴァンの妹、リザも同様その二人によって育てられた。
彼らの母親の名は、「アリア」。二人の記憶の中では、いくつかの人格を持ち、時には優しく、穏やかな人格を持ち、時には子供に暴力をふるう恐ろしい人格を持つなど、少し変わった母親であった。そのような彼女に、さんざん父親も手を焼かされていたらしい。
そんな彼女がある日、いつものように人格が変わったときに、ふと目に入ったイヴァンとリザに対し、暴力をふるった。その時にリザは目にアリアが投げた物の破片が入り、失明し、そしてイヴァンは、右目を彼女によって抉られ、失った。
このことがきっかけで、母親は自殺したと、父親に伝えられ、その父親はその自殺した次の日に、行方知れずとなった。
一人は片目がない眼帯少年、一人は目の見えない少女。そんな二人を預かったのが、スサニエル夫妻だった。
「イヴァン、何をボーっとしているのです?食事中ですよ?」
ふと、話しかけられた。過去の事を思い出したため、いつの間にか手が止まっていたらしい。すぐに
「すみません」
と謝り、また食事を続ける。
「イヴァン、今日もあの場所へ行ったのかい?」
おじが今度は話しかける。
あの場所とは、イヴァンとリザがまだここへ来て間もないころに見つけた、人が全く来ない一つの小さい家のことである。その家は、古臭く、あまりきれいとは言えないが、静かで、周りに森が広がっているため、非常に二人が気に行っている場所だった。
おじとおばは二人がそのような場所へ行っていることに初めは保護者として心配していた。しかし、二人のお気に入りの場所を奪うのも良くないと思い、通うことを許可したのである。
「はい。今日は勉強をしていました。暇だったので」
淡々と言った。すると、リザが
「お兄ちゃん、今日は一緒に行けなくてごめんね」
と突然謝ってきた。
今朝、いつもの場所へ行こうと彼女を誘うと、「ごめんなさい、今日は、少し体調が良くないから」そう言って断られた。無理して一緒に行く理由もないし、ただ自分が面倒を見なくてはいけないと思っていたから常に一緒にいるわけで、別に家で何か動くようなこともしそうになかったので、特別に何か思ったわけではなかった。
リザには見えないが、笑って
「構わないよ。今日は体調が悪かったんだろ?」
と優しく言った。少し憂いを含んだように彼女は笑い返す。
「ごちそうさま」
そう言って席を立った。そしてリザが立つのを支え、まだ席に座っている夫妻に「おやすみなさい」と声をかける。その後に「おやすみなさい」と可愛らしい声が続いた。
*
「お兄ちゃん、おはよう」
目を開けると、前にはすでに起きていたリザがいた。「おはよう」と挨拶を返し、手を引いて洗面所へと向かう。
一通り身だしなみを整え、朝食を取った後に「あの場所」へ行った。今日はリザも一緒で、イヴァンは勉強を、リザは手芸をする道具を持って向かった。
キィ、と小さな音を立て、リザが扉をあける。
いつもなら先にイヴァンが部屋にはいるが、今日は「私がお兄ちゃんのためにドア開けてあげる!」と言ってきたので、お願いしたのだ。
先に入り、荷物をテーブルの上に置く。リザも歩いてこちらへやってき出した。テーブルの上が少し汚かったので、整理していると、
「お邪魔しています」
と、聞いたことのない声がドアの方からした。
振り返ると、青年が立っていた。その青年は、金髪の長い髪を左側で結び、そして左側の顔を髪で隠していた。長身で、細い体をしているが、ある程度の筋肉はついていそうだ。
青年は、うっすらと笑みを浮かべリザの細い腕をつかんでいる。そして彼女の首に長い剣をあてていた。
「私、カーフェクと申します。どうぞ、よろしくおねがいしますね。少々、あなた様に用がありますので、ご一緒に来ていただいても構いませんか?」
自分の身に何が起こっているのか分からないままだが、ただならぬ空気を感じ取ったのか、眉間にしわを寄せている。
イヴァンは彼を睨みつけ、
「汚いな。そんな手を使うような奴らのもとには行きたくないな」
と言い放った。すると、その言葉を待っていたかのようににこりと微笑み、
「そうでしょうとも。しかし、これはあくまで理由を聞かせる手間を省かせるための一つに過ぎません。来ていただければ傷をつかせずに済みますが、どうしても行きたくないとおっしゃるのなら、腕の一本や二本では済みませんよ?」
話し方から、相手は本気であるということが分かる。イヴァンの顔には緊張が走るが、カーフェクはニコニコと笑ったまま、表情を変えない。
脅える妹の表情を見る。関係ない彼女を巻き込むわけにはいかない、そう思った。
「どうします?私もあまり時間がないのですが」
すっ、と剣をさらに首に近づける。相手は手短に終わらせたいらしい。
意を決して言い放った。
「分かった。その代わりに、しっかりと後で訳を説明してもらうぞ」
その言葉を聞いた途端、カーフェクはパッとつかんでいた手を放し、首から剣を遠ざけた。そして
「分かりました。場合によっては二度とここへは帰ってくることはできませんが、よろしいですか?」
と改めて聞いていた。二度と、という言葉に少し違和感があったため、
「殺すのか?」
と聞く。すると、彼は一瞬キョトン、と顔をさせた後、ケラケラと笑いだした。
「殺すわけなんてありませんよ。だって、主も、私もそしてあなたも、まったくお互いのことなんてしらないのに」
そして、
「わけもなく人を殺すなんてことは、我々の組織の中では絶対にあり得ない。何らかの目的あって動くのです。それに、あなたを殺すつもりだったら、すでにこの場で殺しています。妹さんも一緒にね」
と言った。最後の方は、表情は笑っているものの、目は笑っていなかった。
「さて、ご一緒願えますかネ?」
わざとらしく言う彼に、警戒心はあるものの、この場で従わなくてはならないという思いがあり、仕方なく部屋から出て行く。いつの間にか馬車が止まっており、その前には一人の女性が立っていた。
振り返ると、茫然と立ち尽くすリザがいた。彼女は兄の方を見つめ、何も言わずにただ立っていた。
イヴァンは何も言わずに馬車へと乗り込む。それに続いてカーフェクも乗ってきたが、あの女性は乗ってこなかった。
馬車が動き出す。何が起こるのか分からないまま、やりきれない思いも乗せ、動き出す。
目の前に座るこの男は自分のいったい何を知っていて、このような行動を起こしたのか、組織とは何なのか、主とは一体誰なのか、膨らんでいく疑問は聞けず、ただ時間だけがその空間の中で過ぎて行った。
*後書き*
なんか長くなったような気がします。
とても疲れました。軽いノリで書いているはずが……
さてさて、今回は変な感じに終わってしまいました。こんな風にする予定ではなかったのですが。
まあ、軽いノリで書いているので、軽い心で読んでいただけると嬉しいです。また、間違えているところが何箇所かあると思います。(年代が今とは違っているので)そんなところは、言っていただけると幸いです。「間違えていやがる、バカじゃないの?」と思っていただいても構いませんが。
でわでわ、今回はこの辺で。第一話、読んでくださりありがとうございました。
メゾ
- Re: 禁断の箱 ( No.2 )
- 日時: 2012/02/08 17:43
- 名前: メゾ (ID: yOB.1d3z)
第二話 「組織」
どのくらい馬車の中にいたのだろう。気がつくと外はもう赤く染まっていた。さっきまで朝だったのに、今は夕日が痛いくらいに眩しく感じる。
いつの間にか眠っていたらしい。目の前には誘拐犯がいるというのについ隙を見せてしまった。その犯人はまるで小さな子供を見ているかのような和やかな表情でこちらを見ていて、逆に気味悪くなっていた。
「よく眠っていましたね。いや〜。ここまで緊張感のない方は初めて見ましたよ?関心関心」
誘拐されたうえ、こんな風に馬鹿にされ、イラッとする。眉間に思いっきりしわを寄せ、睨みつけながら聞く。
「ここはどこだ?かなり長く走っているようだが」
カーフェクは、ああ!という表情をする。そしてまたにこやかな表情に戻し、言い放った。
「ここは首都のローエルですよ。我々の組織はここにあります」
イヴァンは絶句した。自分やリザの住んでいた場所は首都とはかなり離れている。そのため一度も二人はこの場所へ来たことはなかった。ローエルについては、かなり人口の集中した町で、毎日が祭りのように盛り上がっている、とうい話しか聞いたことがなかった。
「驚いていますね〜。いやいや、反応が面白いです。まるで『ガキ』みたいで。ヒヒッ」
面白がられた。さらに腹が立つ。話をそらそうと、
「その組織とは何だ?俺には知る権利があるはずだが」
と聞いた。答えはすぐに帰ってくる。
「国家治安組織って聞いたことあります?私はその一人です。といってもまあ、表向きは治安組織を名乗っていますが、裏向きは『アイリス』という名の秘密組織なんです」
「そのアイリスとやらは知っている。国に認められた人間が入ることのできる所だろう?」
『アイリス』。国によって認められ、長い間この国の治安を守ってきた有名な組織である。この内部に入るためには、厳しい試験などがあり、生半可な気持ちでうけると半殺しにされるとか。
「う〜ん。やはり表向きはそのようなんですね〜。イヴァン君、裏という言葉が出てきた時点で思い出す言葉とかはないのかね?」
「はぁ?」
裏、と言われると、裏取引や、裏金、麻薬などだろうか、とは考えた。しかし、そのような組織を国が認めるわけがないし、第一そのような野蛮なところが国を守るはずがない。
しかしこのような男が入るような組織だ。こんなことは当たり前か、と思い、次の言葉を待った。
「我々の組織は、『リスリアン』そして『ムーラスト』と呼ばれる一族と敵対するものです」
心臓が跳ね上がるそうになった。全く思っていたことと違うことにではなく、『リスリアン』という言葉にである。
『リスリアン』とは、『核』と呼ばれる特殊な力の集合体を代々守っていく一族。その内部の人間は、有無を言わせずにその『核』から非現実的な能力を得て、外部の敵から自分たちの守るべき存在を守っている。
しかし、その一族が皆殺しにされた、『リスリアンの虐殺事件』という名の悲劇が百年前に起こった。その真相はいまだにわかってはいないが、内部の人間が起こした事件だったと噂されている。
何故恐れられているのかというと、殺されたであろう人間の遺体がすべて消えているからである。確かに駆けつけた時には血ですべてが埋め尽くされていて、あらゆるところに遺体が転がり、とても見られるような様子ではなかった。しばらくして落ち着いたころに埋葬しようともう一度中に入ってみると、すでにその遺体はなく、血もすべてなくなっていた。言い伝えでは、「その殺された一族の血や肉を核の源にし、中心人物がより強い力を手に入れた」とある。
その一族には左の頬に力を手に入れた証拠として刺青が入っている。その人間を見たときには恐ろしい力を持っているため、すぐにその場からたちさるように、とも教えられた。
しかし、『ムーラスト』という名の組織については聞いたことがない。
「まあ今はそういう組織だということだけ教えときます。リスリアンは、最近ひそかに行動しているんですよ。下手してあなた達を誘拐されても困りますからこのようにこちらから出向かせていただきました」
カーフェクが意味のわからないことを言った。
「誘拐だと?」
「ハイ。まあ、詳しくはシャネットの方がお話しするとは思いますがね。あなたはこのままあそこにいたらいまごろ連れ去られて八つ裂きにされるところだったんですよ?」
意味が分からなくなってくる。こいつは一体何の話をしているんだ?と心の中で呆れる。
馬車が止まった。
「おや。着いたようですね。では、降りましょうか」
促され、彼に続いて馬車を降りる。
目の前には大きな屋敷が建っていた。豪華で、とてもきれいな作りである。このような屋敷は今まで一度も見たことがない。少し眺めていると、後ろから声が聞こえた。
「お兄ちゃん」
その声には聞きおぼえがあり、振り返ると——リザが立っていた。
隣には来るときに馬車の隣に立っていた女性がいた。その女性に手をひかれ、リザは目の前にやってくる。
「無理を言って一緒に連れてきてもらったの。おじ様とおば様には言ってあるから」
そう言って、うっすら微笑む。イヴァンは、とにかく別れを言えなかったことに対し少し後悔していたので、言わずに済んでよかったと安堵した。
「それは違いますわ。リザ様。こちらが無理を言ったのです。申し訳ありません。このような所に無理やり連れてきてしまって。カーフェクはまるで脅迫のような行動をしてあなた様方を納得させたようですわね。彼の代わりにお詫びを申し上げます」
ふかぶかと頭を下げる女性。身長はそれほど高くはなく、かなりきれいな顔立ちをしている。いわゆる、美人で、薄桃色のさらさらした髪を後ろで束ねていた。お団子にしたそれをさらに三つ編みで巻いている。少しその束ねた髪から下ろしているのはお洒落だろうか。ドレスもよく似合っていて、このような人までもあの変人(カーフェク)がいる組織に入っているのかと思った。
「ああ、申し遅れました。私、シャネットと申します。どうぞ、よろしくお願い致します。イヴァン様」
にっこりとほほ笑み挨拶をする。続けて
「さあ、中にどうぞ。お体が冷えますわ。中でゆっくりと私たちのことについて、あなた様が連れてこられた理由もお話します」
イヴァンはシャネットからリザの手を渡される。彼女の手を引き、シャネットの後をついていく。
ふと思い出し、
「あの変人はどこに行ったんだ?」
と尋ねた。シャネットは振り返り、変人と聞いても悩むことなくすぐに
「カーフェクでしたらすでに中にいます。ボスから呼び出しをうけましたの。私ではなく、彼の方が良かったですか?」
いたずらっぽく笑って聞いてくる。イヴァンはそれ聞くなりすぐに首を横に振り、
「いや。いい」
と言った。そうですか、とシャネットは言い、また正面を向いて歩きだした。
「お兄ちゃん。これからどうなるんだろうね」
小さくリザが尋ねてきた。イヴァンは少し握る手に力を込める。
「聞いたらね、お姉さんにはあなたを危険に巻きこむようなことはしません、って言われたの。それって、お兄ちゃんは巻き込まれちゃうかもしれないってことだよね?」
不安そうな妹を安心させるために
「大丈夫。そんな時はすぐにおじさんたちの所に変えればいい話だよ」
と明るく言った。
空はすでに暗く、風は冷たくなっていた。
*後書き*
はい、非常に長くなったような気がします。
いまだにイヴァン君の性格があいまいです。
早く決めなくては……。
でわでわ、今回はこの辺で。ありがとうございました〜。
メゾ
- Re: 禁断の箱 ( No.3 )
- 日時: 2012/02/15 17:11
- 名前: メゾ (ID: Xr//JkA7)
第三話 「内部の様子」
中は外見と同じく豪華で美しかった。天井にはシャンデリア、床には大理石である。周りにはたくさんの扉があり、その扉にも細かな細工が施されていた。
「すごい…。こんなにきれいなのか…」
つい言葉をもらすと、リザが
「お兄ちゃんが感動するくらいきれいなんだね。私も見てみたいなぁ」
うらやましそうに言ってきた。その会話を前で聞いていたシャネットはくすっと微笑んで、
「ありがとうございます。そんなに感動していただけるとは幸いですわ。でも、驚くのはまだ早いですよ。イヴァン様、リザ様」
と言う。そして、自分の右手にあった扉のノブに手をかける。ガチャッと音がして開いた。
「どうぞ。中へ。お話いたしますわ」
と、促される。中へ入ると、大きなテーブルが部屋の真ん中に置いてあり、その周りにはたくさんの椅子が置いてあった。その椅子の一つに一人の少女が座っているのが見える。
その少女は二人を見るなりがたっと席を立ち、大きな声で
「わぁ、あなたが『禁断の箱』の持ち主?意外とカッコいいね。よろしくね」
と言った。
「誰?」
と聞き返すと、隣に立っていたシャネットが困ったように笑い、
「申し訳ありません。あの子の名前はレイチェルですわ。この組織の一員で、それなりに強いんですの。まぁ、私とカーフェクの妹のようなものですわ。私からもよろしくおねがいしますね」
と言った。とりあえずイヴァンも
「イヴァンだ。こっちは妹のリザ」
と自己紹介をする。妹、と言ったとたんにレイチェルの眉が少し動いたのが見えた。そして首をかしげ、不思議そうな顔をする。
彼女は髪がだいだい色で、長髪だった。前髪を一つにまとめ、後ろに持って言っている。個性的な髪型だ。目は大きく、きれいな青色で、光の加減では水色や緑のような色にも見える。服は何ともシャネットとのようなファッションとは違い、真っ赤なリボンのついた藍色の短いパンツをはき、白のお洒落なシャツに丈の短い黒色の上着を着ていた。足は露出するのではなく、長い黒のソックスをはいていた。茶色のブーツは少し汚れている。彼女らしいと言えば彼女らしい。
「へえ、兄弟なんだ。いいな〜」
そう言ってにっと笑う。笑顔が似合う少女だった。お座りください、と言われ、近くにあった椅子に適当に座る。シャネットも少し間隔をあけて座った。
「では、本題に入らせていただきます。まずは、あなた様のことについてです。このことは私たちがあなた様をここに連れてきた理由にあたります」
*
「あなた様は、『禁断の箱』と呼ばれる人間の理から離れた異能者です。その中でも、『時』にかかわる能力の持ち主です」
シャネットが冗談とは思えない口調で言ってくる。これがカーフェクだったりしたら冗談として受け取れたが、彼女だと冗談とは思えない。口をはさんではいけない、という表情でレイチェルに見られているため、黙っている。
「と言っても、イヴァン様は「なんだそれ?俺にはそんな能力はない」とお考えのようですから、まずは『禁断の箱』についてお話いたします」
思いっきり考えていたことを当てられる。ついさっきも「変人」と言ってそれがカーフェクであると分かっていた。シャネットは何かその能力に関係するものを持っているのだろうか。
「はい。その通りです。私やレイチェル、この組織にいる皆様はイヴァン様とは異なりますが、能力を手にしています。私は人の心を読む、また人の心に干渉することができます。さっきのあなた様の変人はたいへんおもしろかったですよ。頭の中には彼の顔が映っているのですから」
くすくすと笑われる。この際もう気にしないふりである。
「話がそれてしまいましたね。それで、『禁断の箱』とは、リスリアンが守っている『核』の分身みたいなものです。核の一部を人間の体におさめた、それが『禁断の箱』です。それにも種類があり、時の他に、空間、影、命の三種類があります」
さらに続ける。
「すでにここにはその残りの保持者達も集めてあります。そしてここに連れてきた理由ですが…」
シャネットが続きを喋ろうとした時、
「ファニエルだ。入ってもいいかい?」
と、扉がノックされ、低い男らしい声がした。
*後書き*
はい、最初は保留にしていましたがもうここまで書いてしまっていたので、一度切ることにしました。
読み返してみて少し禁断の箱についての説明が不足していたなと思います。ですので、また次回もこの続きとしたいと思っているところです。
でわでわ今回はこの辺で。ありがとうございましたー。
メゾ
- Re: 禁断の箱 ( No.4 )
- 日時: 2012/02/15 18:11
- 名前: メゾ (ID: Xr//JkA7)
第四話 「リザの覚悟」
男らしい声がし、その声にシャネットが返事をする。
「どうぞ。お入りくださいな」
その声がかかるとファニエル、と名乗った男が扉を開け、姿を現した。
ファニエルは薄黄緑色の髪を短く切っていて、左側の一部だけ伸ばしていた。ここでは何となく不思議な髪型がはやっているものだと思ったが、にっこりとシャネットに微笑まれたため、考えることはやめなければならなくなる。彼はかなり体型がしっかりしていて、腰には剣がさしてあった。緑色の目はあまり大きくなく、かといって小さくもなかった。耳にはピアスがたくさんついていて、彼なりのお洒落なのだろうと思う。身長はかなり高かった。華奢なイヴァンは彼と並んだら女の子とも受け取れるかもしれない。
「はじめまして。俺はファニエルだ、よろしく。君がイヴァン君で、禁断の箱の持ち主か。思っていたよりも華奢だね」
率直に感想を述べる。華奢、と言われ、少しむかっとしたが、あえて顔には出さず、よろしく、と言う。隣ではリザが首をかしげ、様子をうかがっていた。
「ああ、君が妹のリザちゃんか。俺は君を迎えに来たんだ。君がここに残るためにしてもらわなければならないことがあるからね。じゃ、一緒に来てもらってもいいかい?」
リザに気付いたファニエルが言う。イヴァンはすぐに
「待て。いったい何をさせる気なんだ。リザは目が見えない、お前たちがの望むようなことはできないぞ」
と、すぐに尋ねる。すると口を開いたのは
「お兄ちゃん、大丈夫だよ。能力をもらいに行くだけだから」
妹だった。何故リザが知っていたのか、困惑する。今度はレイチェルが言った。
「私やシャネット、ここにいる組織の皆はね、『擬似核』っていう、『核』のコピーみたいなものから能力をもらうの。じゃないとあんな人から外れた人たちと戦えるわけないからね。で、リザちゃんもここに入る以上、自分の身は自分で守れるようにするために儀式をしてもらうってわけ。別に危険とかはないけど、儀式に失敗したら悪いけどここから出て行ってもらう」
出て行ってもらう、その言葉を聞いて、少し動揺したイヴァン。リザはそのことは聞いていたようで、さして驚いた様子ではなかったが、顔がこわばっているのを見ると、緊張しているのが分かった。
「じゃぁ、お兄ちゃん。行ってきます」
沈黙を破るように言った。どうせそれをしなければここから追い出されるので、止めるわけにはいけない。分かっていたので、あえて何も言わず、ただ頷くだけだった。
ファニエルが彼女の手を引いて部屋を出て行く。完全に扉が閉まると、さらに室内は静かになった。
「大丈夫ですわ。あの子なら。あなた様の妹さんですもの。お話してみて、なかなかの覚悟を持っていたことは分かっていますから」
*
「じゃぁ、リザちゃん。一つだけ、守っていほしいことがある」
そう言って、ファニエルはリザの手を両手で握る。彼女は先ほどのような表情ではなく、少し不安そうにしていた。そんな少女を励ますように握る手に力を込める。
「あの空間の中で、絶対に後ろ向きなことは考えてはいけない。考えてしまったら、君はその時点で儀式に失敗してしまう。だから、絶対にそんなことは考えたりしないでね」
そう言うと、しばらく間を置いた後に手を握ったまま廊下の奥にある巨大な扉の前に連れてくる。
その扉はイヴァンたちがいた部屋からかなり離れた建物にあった。そこはあの場所とは違い、かなり薄暗く、全く違う雰囲気だった。しかし、扉だけは美しく、豪華な装飾が施されている。いかに組織の人間がこの扉を大切にしているかが分かった。
ギイィ、古く錆びた鉄が軋む音がする。扉が開かれた。中には黒一色で、何もない。ただ闇が広がっているだけで、入ったら出れなくなりそうな空間だった。その様子は見えなくても伝わってくるようで、リザも顔をしかめる。
「では、儀式を始める」
その声が響き、リザは足を踏み入れた。彼女が足を出した瞬間に扉は勢いよく閉まり、中に一人、閉じ込められる。
「私の名前は、リザ!あなたに能力をもらいに来たの!」
大声を張り上げ、緊張を少しでも和らげようとした。この空間に壁が存在しているのならば、声は反響し、後から自分の方に帰ってくるのではないかと思っていたが、まるで闇に吸いこまれたかのように声は消えた。
〈貴様、どのような能力を求める?〉
突然、闇の中から声が聞こえる。その声は反響し、何度も聞こえてきた。そして、その声が聞こえた途端、目が見えないはずのリザにも、周りの様子が見えるようになった。一面の闇と、一人ここに立っている心細さがリザを襲う。
「?!」
突然見えたその景色に驚きを隠せないでいると、再び声が聞こえた。
〈質問に答えるがいい。お前は、周りを守れる強い力を求めるか、それとも己だけを守れる小さな力を望むか、さあ、答えるがいい〉
「私は、お兄ちゃんに守られてきたから…。だから、なるべくお兄ちゃんの迷惑にならないような能力が欲しいの。私はこんなふうに、目が見えないから、戦うのとかは無理だろうけど…」
少し間をおいて、今度は大きく言う。いままで思っていたことを、すべて誰かも分からない人にぶつける。
「私は、大きな力は望まない。別に強くなりたいとも思わない。ただ、自分の身は自分で守れるように、自分のことは自分でできるようにしたいと思ってた。小さいときから目が見えなくなって、お兄ちゃんにはたくさんの迷惑をかけてきたの。だから、その恩返しがしたい」
〈………〉
返事はない。しかし、まだ言い足りないので、続ける。
「あなたに頼って力を手に入れることは、間違っているかもしれない。だって、私自身の力じゃないから。でも、そうだったとしても私はみんなの役に立てるなら何だってする。間違ってても、どんなに自分が痛い目に合おうとも、絶対に」
最後に、思い切り息を吸って言い放った。
「大きな力なんて、いらない!だから、私に能力を与えて!もう、人に迷惑をかけるのは嫌なの!だから……」
最後は言葉にならなくなってしまった。しばらく沈黙があり、空間から静かに声がする。
〈面白い。皆だいたい強い能力を手にしたがるものだ。お前は違うんだな。なるほど、少し興味がある。皆とは少し異なるが、お前に向いている能力は分かった。いいだろう〉
その言葉は最後までは聞こえなかった。真っ暗な空間が、突然明るくなり始める。見えていた景色はもう見えなくなり、やはり空間が見せいてた一部なのだと自覚する。
(儀式は、成功したのかな……)
そんなことを意識が飛ぶ前に考えた。空間が白くなるのと同時に、リザの意識はなくなった。
*後書き*
とっても長くなりました。疲れたー。
なんか嘘ついたような気もしますが、気にしないで頂けると嬉しいです^^
でわでわ、疲れたので今回もこの辺で。ありがとうございましたー。
メゾ
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