ダーク・ファンタジー小説

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【夢幻を喰らう者】※1-19更新
日時: 2013/04/01 07:52
名前: だいこん大魔法 (ID: uupAp8Xk)

今更ながら、初めての方は初めまして、そうでないかたはまた、よろしくお願いします^^だいこん大魔法です^^

以前書いていた小説がもう無理だああぁぁと投げ出して一年・・・気分を一転させて、新しく書くことにしました^^;


それでは、再びこのだいこん大魔法を、新しくなっただいこん大魔法を、どうかよろしくお願いします^^


作者現状【ファンタシースターオンライン2をガチプレイしてたら更新ペースがガクッと落ちた(´;ω;`)】





prologue〜終末〜>>0


第一話〜夢幻〜>>1 >>2 >>3 >>6 >>7 >>8 >>9
>>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19

第二話(一話が終わり次第更新)〜Those who eat the Phantom〜

主要キャラクター(現時点での登場人物のみ)

・織塚 冬夜(おりづか とうや)
年齢 17
性別 男
身長172
体重65
使用武器【ブラックフェザー】
夢幻喰【アマテラス】
『夢幻を喰らう者』
『ファンタズマ』所属



・神樹 鈴(かみき りん)
年齢 17
性別 女
身長148
体重「は、はずかしくて言えないよぅ」
使用武器【十六夜】
夢幻喰【未定】
『夢幻を喰らう者』
『ファンタズマ』所属



・中西 隆臣(なかにし たかおみ)
年齢 56
性別 男
身長175
体重76
『軍』
『ファンタズマ』所属


天美 ルリ(あまみ るり)
今現在年齢設定不確定
性別 女
身長145
体重「乙女の秘密ってやつだね」
使用武器【???】
夢幻喰【未定】
『夢幻を喰らう者』
『ファンタズマ支部長』


西岡 流地(にしおか りゅうじ)
年齢 18
性別 男
身長171
体重60
使用武器【ロングソード】
夢幻喰【未定】
『夢幻を喰らう者』
『ファンタズマ』所属



各設定

『夢幻』
夢幻菌、ファンタジーウイルスと言われる、災厄を齎す病原菌。人間以外のすべての動物に感染する力があり、感染した動物を例外なく自我を奪い、強制進化させる力をもつ。さらに、夢幻には不死性があり、菌そのものだけではなく、感染した動物すらも不死に変えてしまい、それだけではなく、すでに死んだ動物にも感染し、無理な強制進化をさせ、蘇らせる力をも持つ。発生原因は不明、しかし、発生した場所がすべて人里離れた辺境の地だという憶測が、人々の中では事実として成り立っている。

『キメラ』
夢幻に感染し、強制進化した後の状態の動物のことを指す。

『シェルター』
人類滅亡を信じきっていたとある政治家が各国に強要して作らせたもの。当時はその計画の無意味さが幾度となく議論されたらしいが、夢幻が生まれたことによって、その存在は認められ、人々はそこに逃げ込むことになる。

『夢幻喰』
夢幻、キメラの細胞、人の血。それらをあわせることにより生まれた人口の菌。それは不死性をもつ夢幻を唯一無力化させ、消滅させる力を持ち、さらに、夢幻に感染しない人間に宿らせることにより、自我を奪うことなく、五感強化という形で進化させることができる。

『ヴァジュラ』
夢幻喰を宿した武器。キメラをこの武器で傷付けることにより、内に宿る夢幻を消滅させることが可能。
強制進化の応用により、このヴァジュラにはブラッドアーツ、希にブラッディアーツという力が宿る。

『夢幻を喰らう者』
夢幻喰を体内に宿し、ヴァジュラの使用を許可された人間のことを指す。これらの人間はすべてファンタズマという組織によって管理される。

『ファンタズマ』
夢幻を喰らう者と、国の軍隊が連携して成り立つ組織。夢幻を喰らう者のメディカルチェックや、『ヴァジュラ』の整備、開発、さらに、シェルター内の生活に必要なものの開発など、さまざまなことを請け負う。昔でいうところの政治も担っている。

『夢幻魔術』
キメラの使う異能力。
メカニズムは、「夢幻」が体内にやどり、進化する過程でその個体に宿るもの、とされている。
ブラッドアーツは、この「夢幻魔術」の応用とされている。





prologue〜終末〜


賽は投げられた。
目の前ですべてが、壊れていく。
巨大な塔が、巨大なビルが、家が、人が、すべてが、目の前で、姿形を一瞬にして変えられていた。
瓦礫の山となる住宅、ビル、鉄塔。
屍となる人、人、人。
壊れた家に押しつぶされて死ぬ人、恐怖のあまりに狂い、自殺する人、同じく狂い、互いに殺し合う人。逃げる人・・・そして、それを追う、人ではない、「なにか」
その「なにか」は、人を喰らいつくす。逃げ惑う人を喰らい、屍になったものも喰らい、互いに殺し合っているものも同時に喰らう。
まさにその姿は獣そのものだった。ライオンのような胴体をもち、鳥のような翼を一対背に宿し、蛇のような先端をもつしっぽをぶら下げ、鰐のような顔をもつ・・・それらのもととなった生物よりもはるかに巨大な体躯をもつ「なにか」は、人を、街を、日常を喰らい尽くす。
目の前に見えるだけでも三十匹以上いるそれは、圧倒的なまでの力で、人々を蹂躙して、欲望を満たしていく。
悲鳴が上がる。絶望の声が、聞こえる。それの咆哮が、唸り声が、それらを打ち破り、鼓膜を震わせる。
混沌、という言葉は、今まさに使われるべき言葉なのだろうか、それとも、終末という表現が、今正しいのだろうか・・・そんなことを考えるのは、もうやめた。
目の前で人が死に、化物が欲望を満たす。・・・そんな光景、いやなほど見てきた。いやなほど、脳裏に焼き付かされてきた。
だからこそ・・・「俺」は果たそう。世界の意思をぶち壊し、自分の意思を貫くために。
右の手には自分の背丈と同じぐらいの長さをもつ、黒い剣。それは、太陽の光を不気味に反射する。
まだ倒壊されていないビルの屋上から、化物の集団を睨みつける。今すぐに飛び出したい気持ちもあった。人が殺されるのをもう見たくなかった。だけど・・・自分のことを、
今この場にいる、「喰らう者」をより安全なタイミングで出動させなければ・・・より一層の被害が辺り一帯を襲うことが、わかっているから、なにもできなかった。
耳に当てられた端末から、指示を待つ。・・・いまかいまかと・・・化物を・・・あいつらを殺せるのは・・・まだか、と。
そして———

「・・・さあ、存分に暴れろ。『夢幻を喰らう者』よ」

その声が・・・始まりの合図だった。








それは、世界各国の、人里離れた辺境の地に生まれた、菌が始まりだった。
発生原因は不明。だがしかし、それが必ず人が住んでおらず、野生の動物しかいないところで発現したということだけはわかっていた。
それは、その地の生命を蝕み、水を枯らし、動物に感染した。
動物は感染されると、狂犬病に似た症状を起し、周りにいるものを傷つけた。
その菌は、ただの動物には感染力が非常に高く、次々に、襲われた動物、死体に感染していったという。
そう、そこまでならまだ対策のほどこしようは、あったのだろう。
だが、その菌は留まることをしらなかった。
菌の特性は、感染した動物を狂わせることだけでなく・・・そう、次の過程に、強制的に進化させる、という異常なものだった。
当然、それは活動を停止したあとに感染した動物にも起こり得るものだった。生きている動物は、本能的に、自身が恐るほかの動物の姿を形取るようになり、そして、死んだ動物は、まるでゾンビのように、もとの姿を形取り始める。
人間がその異常を感知したのは、ついにそれが、一般家庭や動物園などといった、人間が住まう地域に現れるようになってきてからだった。
どういったわけか、人間はその菌の免疫を必ず、ほぼ100%にもっているために、感染のおそれはなかった。だがしかし、飼っていた犬や猫などは、そういうわけにはいかなく、最初は近所の犬同士で殺し合い、猫同士で殺し合い、動物園などでは、折などを突き破り、すべての動物が血で血を争った。
人間も当然の如く、その被害を受け始めた。
飼い犬が突然飼い主の指を引きちぎったり、腕をもいだり、猫が爪で目を潰したり、その事例は多数存在したが、共通して言えることは、必ず襲われた人間は死んでいたということだけだった。
後に軍隊が出動して、動物を殺すために動いた。けれども、その菌は死をも無意味にさせる。
死んだ動物は憎しみという心をもち、力をまし、軍隊は壊滅させられた。
世界各国は、すべての感染した動物を一つの国に集めて、核を投下して、国・・・大陸ごと、消してしまおうという本当の最終手段を、使わざるを得なくなってしまった。
各国の人々は、3分の1程度まで減らされてしまったが、生き残った人々は、その国ごとの首都に設置されていたシェルターの中になんとか避難させたが、そこからはどうしようもなかった。だから、もうそうするしかないと、代表たちは語り合った。
思い出をすべて喰らい尽くした、その菌を消すには、もうそれしかないと。
そんななかで、まだ強度の調整が終わっていなかったブラジルのシェルターが、その時には「キメラ」と名付けられていた、感染した動物によって壊された。
ブラジルからの救援要請が全世界へとむけられて放たれたが・・・ほかの国は、これがチャンスだといわんばかりに・・・ブラジルを犠牲にして、その一帯にいる「キメラ」を全滅させるべく、核の準備を始めたという。
すべての国がこれに許可をして、ブラジルの救援要請を無視し・・・もしかしたら、助かっていたかもしれない人々を見殺しにして————その作戦は、実行された。
無慈悲に放たれた核爆弾は、ブラジルの首都にむけてまっすぐととばされ・・・着弾した。
全世界を揺るがすほどの大きな地震とともに———ブラジルの大地は、消え去った。
「全て」の国の人々は、喜んだという。絶命するどころか、死してなおも蘇り、数を増やし続ける「キメラ」の数を、少しでも減らせたという、殺せたという状況に、喜び、酔いしれた。
—————だが・・・そんな簡単に物事は進むはずがなかった。
菌は核の影響をうけなかった・・・。そう。宿り、繁殖していた媒体がなくなってしまった菌は、大気中をさまよい———魚に、感染し始めた。
今まで海のなかには一切影響を与えてこなかった菌は、核の爆風によって海のなかに沈められ、その中の生物に乗り移り・・・再び暴れだした。
そしてそれを何ヶ月後に知った人間たちは絶望し、再び「キメラ」の存在に怯えることとなった。
シェルターが壊されれば、核を打ち込まれ、シェルターが壊れなければ、そのシェルターの不具合に生じて侵入してくるキメラに襲われるという恐怖に怯える・・・。誰かがいった
これは・・・「終末を迎えた」・・・と。






核がきかず、絶対に死に絶えることのないその菌・・・まるで夢、幻のような今の現状を用いて、「夢幻菌」「ファンタジーウイルス」と名付けられた。
当然、人間たちは必死になった動物の死体からなにからか、菌に感染していながらも、まだ発現していない存在すべてから、その菌を摂取することに成功した。
この菌に対して、なにか打開策はないのか、人間は、いろいろな薬やなにやらをすべて使い、さらに、別のウイルスとあわせ、相殺しないか、また、融合したりして、別の効果を得られないだろうかと、試行錯誤をくりひろげた。
そして完成する・・・その菌を「断ち切る」「喰らう」ことのできる、「ウイルス」を。
それは・・・人間の血と、その菌と・・・感染していた、動物の細胞を混ぜ合わせ完成した、対「夢幻」用ウイルス・・・「夢幻喰」。
だがそれだけでは、大気中に漂っている菌は消せなければ、すでに感染して、進化を遂げてしまっている「キメラ」には、手の施しようはなかった。だが・・・
「夢幻喰」は、人の血と動物の細胞、それらが「夢幻」に加わり、より力の強い「菌」になり、それは人体にも影響を及ぼしてしまうほどのものだった。
とはいうものの、それは人間に感染はせずに、大気中でも生きることもできず、さらに・・・それを体内に取り込んだ人間が、力の調整を、制御をできるところから、早速研究者の一人がそれを注射という形で摂取した。
「夢幻喰」を摂取したことによる人体への影響は二つ。一つは五感強化。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚をより鋭くすることによって、「キメラ」がどこにいるのかというのをすぐに探知できるようになる。そしてもう一つが、身体能力大幅な上昇だ。とはいうものの、外見には一切影響は与えず、このあたりは「夢幻」と異なるだろうが、極端にいってしまえば、間違いなくこれは「進化」の領域に値するものだった。
そうして、「夢幻喰」を体内に宿し、研究は次の段階にはいる。人体に摂取する、というところまではまだよかったのだが、その人間だけでは、「夢幻」を打ち消すことはできないからだ。まあそれもそうだろう、なにせ「夢幻喰」が「夢幻」に触れて、始めて打ち消すことができるのだろう、それでは意味がなかったのだ。
そこで、その「夢幻喰」を体内に宿した人間だけが振るうことのできる武器「ヴァジュラ」の開発が始まった。
「夢幻喰」が人体以外で拒絶反応を起こし、霧散してしまわずに、文字通り「宿る」金属を検討し、その特別な金属を加工する過程で「夢幻喰」を中に練り混ぜて、錬成したそれこそが・・・対「夢幻」対策でもっとも重要なものとなる。
「キメラ」に対抗するために、身体能力を大幅に上昇させて、相対することのできる人間が、「夢幻」を断ち切ることのできる「ヴァジュラ」を扱うことによって・・・始めて、「夢幻」を打ち消し、断ち切り・・・喰らう存在が、生まれた。



人はそれをこう呼んだ。



「夢幻を喰らう者」と。




Re: 【夢幻を喰らう者】 ( No.10 )
日時: 2013/01/08 19:02
名前: だいこん大魔法 (ID: Ex8RKlaC)

支部長室は、もっとも地上から近い、B1階にある。
けれども、一度、整備棟など、ほかの区画につながっているエレベーターにのり、そこにいって、また別のところにあるエレベーター、つまり、支部長室とつながっているエレベーターに乗らなければ、地下からその場所にいくことはできない。つまりだ、地上から近にいくエレベーターには支部長室、というボタンはなく、地下に降りて、べつのエレベーターに乗らなければ、そこにはたどりつけないということだ。まあ、カモフラージュてきな意味合いをもっているんだろうその工作は、それなりにめんどくさいのだ。
ゴオン・・・という派手な音を立てて、エレベーターが停止する。乗員数最大百名まで乗ることの可能なこのエレベーターに一人で乗っているっていうのはなかなか寂しいものだったが、扉が開き、シャッターが開くと、そんなことはどうでもよくなる。
支部長室があるこの棟は、支部長室しか存在していないため、短い廊下が前方にあるだけだった。そこには、ほかの階とは違い、レッドカーペットがしかれていたり、置物があったりと、仰々しい雰囲気をかもしだしている。
やがて、支部長室の目の前・・・これもまた、縦十メートルほどの、仰々しく、立派な扉が待ち構える。いかにもここが、「ボスの部屋」だというのを示すかの如くの出来栄えだ。

「・・・相変わらず、だな」

前に来たとき、というか一番最初にここに来たときは、この威圧感に若干ビビりもしたものの、何回かくるうちになれたし・・・というか、中にいる支部長と、この「威圧的」な扉とのギャップが強くて、もうなんかこの扉の意味を感じなくなってきている今日この頃だったりする。
一応ノックをするが、中からの返事はない。
ギイッという音をたてながらドアを開くと、そこはやぱり、社長、ボス・・・なんでもいい、お偉いさんの中のお偉いさんが使っていそうな仰々しい部屋があった。

「失礼します」

と一言だけいい、俺は中に入る。

「・・・まずは、入隊おめでとう、といっておこう」

ずっしりとした横ながの机、そこにはセットとして異常に背もたれが高い椅子がある。その背もたれは今俺の方向を向いていて、その声の人物を伺うことはできない・・・が、もう何度かきているので、気にしない。

「ま、おかげさまでな」

といいながら、俺はドアをしめる。
ガチャン・・・という音をたてて、ドアが重々しくしまるのを確認すると、俺は、次の言葉を待つ。

「今日来てもらった理由はだいたい察しがつくと思うが・・・」

といいながら、支部長は椅子をクルンと回転させる。そこには・・・

「・・・」

「む?なにを見ている?」

といいながら、首を小さくかしげる・・・外見年齢で言ってしまえば、俺よりも5歳ぐらい若いだろと言いたくなってしまうような・・・幼女が、いた。
長い金髪を片方で結んでいる、サイドテールという髪型。紫色の、強気というか、挑戦的な目。幼いながらも、かなり整っている顔立ち。座っているから今はわからないが、たしか身長は140cmあたりしかなかったなと、思い出す。
口調はかなり尊大なのに、この外見とのギャップは・・・前来た時に、そのことについて俺は触れたことがあった。まあ・・・最終的に本人に口止めされたのだが、正直に言うと、俺は最初にこのお子様が支部長なわけがないと勝手に解釈してしまい、怒らせてしまい・・・最終的には泣かれてしまった。
華奢な体つきは、どこか折れてしまいそうで、男心をくすぐり、守ってやりたいと思わせる。強気な瞳は、その華奢な体型と相まって、微笑ましくすら思える。
まあ、いってしまえば、「似合わない」

「・・・今、失礼なことを考えたね?」

「いえ、滅相もない」

心のうちを見透すような発言を、すぐに受け流す。ここには前・・・そうだな、だいたい4回ぐらい訪れたことがあるが、今のような会話は必ずされていたからもう耐性がつき、勝手に口が反応した。

「ん・・・しょっと」

といい、支部長は椅子から降りる。
どうやら足が地面に届いていなかったらしく、飛び降りる、という形になってしまったが・・・そこをしてきするのは野暮ってもんだろう。
そんなことを考えていると、また訝しむような視線をおくられるが、目をそらして回避させてもらった。

「まあいい、本題に戻すと、今日来てもらった理由は・・・冬夜、君の「夢幻喰」と、「ブラックフェザー」についてだ」

いいながら、支部長・・・「天美ルリ」は、机にある資料の山から、俺のことが書かれているであろうものをとりだし、パラパラとめくる。

「君自身ももう把握しているとは思うが、君の「夢幻喰」は、少々特殊だ」

そう・・・特殊な「夢幻喰」、それと奇跡的に適合した「特別事例」・・・それが、俺だった。

「日本で今現在観測されている究竟的な進化を遂げた「キメラ」・・・「識別名アマテラス」の細胞で作られた、「夢幻喰」・・・それが、君に宿る力だ」

そう言って、ルリは一枚の紙を俺に渡す。
そこには・・・俺が少し前に思い返した、ベテラン三十名が遠征を組んでも、勝てるという保証がない超大型種・・・そう、「龍」と言ってもいいような外見をした「キメラ」が、うつされていた。

Re: 【夢幻を喰らう者】 ( No.11 )
日時: 2013/01/30 17:15
名前: だいこん大魔法 (ID: b5YHse7e)

「やつは「夢幻」特有の闘争本能がない。だから、早いうちに対処しようと思って三十名の遠征を向かわせたのだが・・・生き残ったのはわずか五名だった」

・・・俺は今まで少し勘違いしていたようだった。
勝てる保証ではなく・・・それは、生きて帰れる保証が、ものすごく低いという、そういう意味だった。

「そのうちの一人がやつの「牙」の欠片と、「皮膚」を持ち帰ってきた」

そうして、そこから「アマテラス」と呼ばれている最強の「キメラ」の「夢幻喰」を作ることができるようになった・・・ということらしい。
けれども、それは簡単な話ではなかったという。
「夢幻」と「アマテラス」の細胞をくっつける行程まではまだ簡単なことだったが・・・その「夢幻」と、適合する人間が、なかなかあらわれなかったという。
でもそれは、しょうがないこととも言える。「最強」と謳われるものの「夢幻」は、相当に強い力を持っているはずだから。人を簡単に狂わせることなど造作でもないだろう。強制進化をするように、理性を、志向を誘導して、自ら発動させてしまうことも、防げないだろう。それにより、何人もの犠牲者が生まれ・・・「夢幻」ではなく、「アマテラス」の細胞も、底をつき始めた。

「そして、何人もの犠牲の上に・・・君は、適合した」

犠牲・・・という言葉が重く、のしかかる。一体、俺がこの力を得るまでに、何人が・・・「キメラ」を自分の手で倒せる、絶対に世界を救ってみせる、と志をもち、半場で死んでいったものが、何人いたのだろうか。それを考えるとぞっとする。なにせ、俺もその一員になっていたのかもしれないのだから。
ただの偶然か、あるいは・・・信じちゃいないが、運命か。それはわからない。だがしかし、俺はその「夢幻」と適合し、「夢幻喰」を得ることができた。

「何度かここに通ってもらっているのは、君が「強制進化」の症状を出しているか、狂ってはいまいか、それを確かめるためだったのは、もう理解しているな?」

あくまで事務的にいうルリだったが、彼女は、一体どれだけその一連の出来事で、心を蝕まれたのだろう。
自身の判断で遠征をむかわせたが、ほぼ壊滅。そこから「夢幻喰」を完成させるまでに、何人もの犠牲者をだし・・・彼女は一体、どれだけの重荷を背負ったのだろう。
もうそれは、過去の出来事なのかもしれない。彼女も、前にこのことをいったら犠牲が出るのは当たり前のことだと割り切っていた。・・・まあ、支部長という立場上、そう言うしかないのはわかるが・・・このことを、というか、誰かが死んだ、という話をするたびに震える手を見ると・・・心が痛む。
俺がもう少し早くでてきていれば、犠牲者が増えずに済み、痛みをちょっとでも和らげられたかもしれない。そんな罪悪感が、芽生えてしまう。
まあ、そんなのは俺のただの独りよがりってことはわかるのだが・・・まあ、知り合って間もない人に対して、こんなふうに考えてしまうのは、やはりおかしいか。

「君のその力はまさに『異常』そのものだ。君がその気になれば、一人で大型の「キメラ」を倒せるぐらいに」

「そりゃすごいな」

「まさに前代未聞の力といっても過言じゃない。だからこそ・・・わかるな?」

そういいながら、上目遣いで俺のことを見る。それに俺は、

「ちゃんと力を制御しろってことだろ?」

うむ、と頷かれる。

「君の力はあまりに強すぎる・・・だから、その力を使いすぎると君の体が耐えられなくなってしまう可能性が高い。だから、そのあたりをしっかりとわきまえるように」

「ああ」

そう頷くと、ルリは満足したように頷く。と思いきや、今までの手の震えやらなにやらはどこへいったのか、少しだけ怒った表情をして、俺のことを睨む

「・・・前々から言おう言おうとは思ってたのだが、その喋り方はどうなんだい?」

「・・・ん?」

「その舐めきった口の利き方・・・、上の立場の、それも、この場所でもっとも上の立場の人間に大しての口の利き方じゃないだりょ」

ガリッ・・・という音がふさわしいのだろうか、思い切り、噛んでいた。
とっさのできごとに目から涙がにじみ、肩が震えるが・・・何事もなかったかのような顔で、向き直る。

「・・・というわけで、君のその口の利き方は直したまへ」

それは無理な相談だろう。
見た目年下、明らかに大人ぶっている態度、そして、間抜けなところ。たしかに彼女は、この場所、つまり日本というこの場所で、もっとも頂点に立つ存在なのかもしれない。けれども、見た目相応の失敗とかを見ていると、どうしても彼女を敬うような態度はとれないのだ。
・・・まあ、とらなければならないところでとらないといった非常識人間ではないはずだから、そのあたりはちゃんとわきまえているけど

「そんくらい親しみやすいってことなんだ、俺もこっちのほうがいいんだけど・・・だめか?」

さっきの話の流れ上、彼女の重荷を考えるだけでも、吐き気がしてしまうぐらい苦しいし、彼女自身、その話題にはあまり触れて欲しくはないんだろう。そうでもしないと、割り切れないから。だから、俺はあえて、この話題に乗っかかることにした。

「む・・・そういわれると、弱いな」

と、彼女はそう呟く。

Re: 【夢幻を喰らう者】 ( No.12 )
日時: 2013/02/13 06:12
名前: だいこん大魔法 (ID: XTwzLzPc)

「まぁ、二人の時ぐらいは許可するが、公私は分けるように」

「了解」

そう言い放つと、彼女は今まで手にしていた資料を机におき、その隣に用意されていたであろう資料をとる。そこには、チラリとだけ見えたが、【BFの能力】について、と書かれていた。
「ヴァジュラ」には、ブラッドアーツ以外にも、その個体と、所有者との適合性により、もう一つ能力が生まれる場合がある。
それを意図的に作ることは、今現在の技術では75%可能になっているらしく、俺のブラックフェザーも、その例により、能力がひとつだけ存在する。

「さて、前来たときにも一度説明したと思うけど、君のブラックフェザー、略して「BF」の能力についてだ」

幼い顔を少しだけ苦い表情に変え、資料を手にする。

「君の「ヴァジュラ」、「BF」は、君自身の能力を持続的に封印させる力がある。つまり、君がその気にならなければ、本来の君の力の半分以下しかだせないということになる。」

「ああ」

「だがここで勘違いしてはいけないのが、これは、「劣化能力」ではない、ということだ」

一見すると、自分自身の能力を封印されてしまうと聞いたら、それはただの粗悪品としか思わないんだろう、だけど、大切なのは、そう、「俺がその気にならなければ」というところ。

「たしか・・・、本来の力を出すときに、蓄積していた能力が爆発して、一度だけ、「ブラッディアーツ」を使うことができるんだったな」

「・・・その通りだ。ブラディアーツについては、もう知っているか?」

「いや・・・言葉しか聞いたことはないな」

俺がそういうと、ルリは資料はめくり、そのブラッディアーツについて書かれている場所を読み上げる。

「ブラッディアーツ、まぁ簡単にいってしまえば、特定の「ヴァジュラ」にのみやどり、やどったなかでも、さらに特別の「夢幻喰」を宿した「夢幻を喰らう者」でなければ扱うことのできない、ブラッドアーツのフルバースト状態・・・そのことをさす」

そう言いながら、俺に資料の一部を渡してくる。そこに目を通すと、たしかに同じようなことが書かれているが、少しだけ気になることがある。

「でも、俺の場合はブラッディアーツは、一度しか使えないんだよな」

そういうと、ルリはこくりと肯き、続きをいう

「ブラッディアーツを使える「夢幻を喰らう者」は少ない。まずそれが条件を満たしていても発動しない場合があるから、プラッディアーツの圧力に負け、強制進化の恐れがあるから・・・と、今までブラッディアーツを使えるようになったファンタズマたちは、それが理由でブラッディアーツを使わない・・・つまりだ

「つまり、使いすぎるとやばいからっていうことか」

「そう、君の場合、ブラッディアーツはほぼ確実に発動する。けれども、それを何回も使うことは原則として禁止とさせてもらう・・・だから、一回だ」

一通り言い終えると、小さなため息をついて、ルリは資料を机の上にもどす。俺はもらった資料を折りたたみ、ズボンにポケットにしまうと、ルリのほうに向き直る。

「そういえば、次は実習だったかな?」

といい、彼女は壁にかけられている時計を見る。そこには、まだこの部屋にきてから十分程度しかたっていないということを知らせるには十分な時間の動きしかなかった。

「・・・まだ十分ぐらい余裕があるね、せっかくだから、お茶でもしてくかい?」

そういいながら、もう部屋の隅っこにある給水器にむけて歩いていく。これはお茶をして行けという合図なのだろう。俺は無言に客用のソファーに腰掛けて、ルリのその背中を見る。
ファンタズマの支部長であり・・・「夢幻を喰らう者」でもあるらしい、どう考えても俺より年下にしか見えない彼女の背中は、少しだけ、ウキウキしているようにも見えた。
それは・・・日本に、明るい兆しが見えたから?それとも、「アマテラス」の一連により、これ以上犠牲者が出なくなったため?・・・まぁ、このどっちかを考えてしまう時点で、俺は大いに自惚れているんだろうけど、少しでも彼女に安心してもらえるなら・・・今までがんばってきた彼女に安心を与えられるならば、それもいいものだろうと、一人うなずく

「・・・どうしたんだい?そんなニヤニヤして」

内心を見透かしたかのように、戻ってきたルリがそういう。それに俺は

「いやぁ、ルリはすごいなぁと」

「お世辞はいいよ、私は、やるべきことをやっているに過ぎない」

少しテレた感じでそういいながらも、口元は少しだけニヤついていた。

「それよりも、時間までまだ少し時間があるから、君の話を聞かせてくれないか」

目の前のテーブルにお茶を並べて、対面にルリが座ると、唐突にそんなことをいってくる。

「俺自身の話?」

わけがわからずそう言い返すが、ルリは興味津々といったふうに

「そう、今まで私と君は仕事の立場でしか話してなかったが、君を見ているとだんだんと興味が湧いてくるのだよ」

興奮気味にいうと、若干冷静にもどさったのか、一口お茶をすすり、仕切り直す。

「・・・実はね、君以外に歳の近そうなやつと話す機会があまりなくてね、私は昔から・・・それも子供の頃から「ファンタズマ」で過ごしてきたから、自分の年代の子供たちが、外でどんな暮らしをしているのかをしらないんだよ」

「へぇ、子供のころから「ファンタズマ」にいたんだな、ルリは」

「ん?まあそうだな、親が「ファンタズマ」の一員・・・って私のことはどうでもいい、君の話を聞かせてくれ」

親が「ファンタズマ」の一員・・・どうやら、かなり上層部に関わる親を持っているらしい。
日本はこの世界で今、危険度が5番目だ、「アマテラス」以外の個体は大したことがなく、比較的安全な国といってもいい、けれども、そんなところでも危険は確実にあり、死者が0人という日は存在しないほどだ。それなのに、俺と同じぐらいの、もしくは下の少女にまかせるというのは、その親と、そして昔から「ファンタズマ」の一員としてがんばってきたルリを信頼してこそなのだろうと、ようやく納得がいったところで

「俺の話か・・・聞いてもつまらんような話ばっかだぞ?」

俺は、ここに来る前のことを思い返しながら、そういう。

「かまわない、外の暮らしっていうのがどういうのかも気になるしな」

そうルリが言うのを聞いて、俺をお茶を飲む。まあ特別目立った出来事もなければ、この世界では至って普通な生活をしてきたはずだ。だから俺は、サラリという。


Re: 【夢幻を喰らう者】※ネタ不足につき一部修正 ( No.13 )
日時: 2013/02/13 06:49
名前: だいこん大魔法 (ID: XTwzLzPc)


「まあ・・・そうだな。至って普通の話なんだが・・・俺は、孤児院のでなんだ」

その言葉にルリは、若干驚いたかのような顔をして、

「へぇ・・・そうか、ご両親は———」

・・・その言葉の続きはない。ルリもなんとなく察しているのだろう。けれども、そのさきを言わないのは、雰囲気的に良くないからだ。
さきほども、人の死という話題をそらしているのだ。そこにもう一度戻してしまうのは酷というものだ。別に俺も不幸自慢がしたいってわけでもないし、そうだな

「まぁ俺の親のことはおいといて、孤児院での俺がどんなんだったか、知りたいか?」

少しそう、悪戯にいう。
察したのだろう。ルリは俺のノリに付き合い

「きかせてもらおうか」

とふんぞり返りながら言う。・・・ふんぞり返っても真っ平らなんだなとは思っても絶対に言わないでおこうと心に誓いながら、俺は口を開く。

「まあそこでの暮らしっていったら、大家族・・・って言えばいいのかな、とにかく、子供がたくさんいてさ」

孤児院には・・・わけあって、預けられた、それとも捨てられた・・・はたまた拾われた子供が集まってくる。その孤児院はシェルターの隅っこの方にあり、もっとも危険な区域に指定されているということから、捨てられた子供や、拾われた子供たちだけがそこに集まっていた。
俺は昔のことをあまり覚えてないから、どうして俺がそこにいたのか、そんなことはわからないが、集められた子供たちは次第に打ち解け合い、本当の家族のように、過ごしたのを今でも思い出せる。

「そこの孤児院運営してたのがさ、この世界ではなかなかめずらしい・・・70過ぎたばあちゃんなんだ」

その老婆の姿を思い出しながら、俺はいう。
この世界での平均寿命は男性が51、女性が58と、非常に短い。それは、やはり「キメラ」の存在と、環境のせいでもあるんだろうが、とにかく、そこの孤児院の経営者・・・俺の、唯一といってもいい『母親』は、76歳というこの世界では非常に長生きな人だった。
そこの孤児院は、最初は俺一人だった。
拾われたのか、捨てられたのか、それすらわからない餓鬼のころから、俺はばあちゃんに拾われて、そして、そこに捨てられる子供、ばあちゃんが拾ってくる子供たちの、めんどうを見て、いつしか俺は、みんなの兄貴、という位置になっていた。

「んでもって、俺の下にガキどもが十六人・・・その全員の頼れる兄貴が、俺ってことさ」

本当の家族とは言わない、だけど、たしかに俺たちは家族以上の絆で結ばれているはずだと俺は思っている。
そんな恥ずかしいことを言うと、ルリはくすりと笑い。

「そうだね・・・君のその話かたから、ほんとに幸せな場所なんだろうね」

「ああ、あそこは、俺にとって唯一といっていい・・・家だからな」

「でも、君がここにいるっていうことは、その子たちはどうしたんだい?」

若干暗い話を想像したのか、ルリが顔を伏せながら、申し訳なさそうに聞く。
・・・まあ、その質問はある程度くるってのはわかっていた。あらかじめ言うと、俺はその手の類でこの場所に来ているわけではない。けれども、たしかにこの世界には、【家族を殺されたことによる恨み】で入隊するものも少なくない。醜悪なこの世界は、恨みにより形成されているといっても過言ではない。
ファンタズマや軍に入隊するものの半数は、おそらくきっと恨みによるものだ。きっと今日入隊した俺たちの中にも、その恨みで入隊したやつもいたはずだ。そんな連中を見てきたルリだからこその質問なんだろうが・・・、俺はそこで安心させるように笑うと

「大丈夫、今もちゃんと健在だよ、ばあちゃんも餓鬼どもも、みんな元気だ」

というか、昨日しばらく帰れないってことをいったら泣きつかれたほどだし、危険区域はファンタズマの先輩の誰かが巡回しているはずだから、そうそう事件が起こるとは思えない。

「そうか・・・よかった」

そう、心から安堵したように言うルリ。

「そうだな・・・時間てきに最後の質問だ」

「ん・・・答えられることなら」

ルリは仕事をしている時とはまた別の方向に真剣な表情になり、俺のことを見据える。俺も、その瞳に応じるように見つめ返す。
やがて、彼女の口から出た質問は・・・

「また・・・、一緒にお茶してくれるか?」

「・・・もちろん、よろこんで」

そんな、わざわざ確認するまでもないことを口にした彼女に俺はそう頷く。

「ほ、ほんとか?・・・よかったぁ」

頬を染めて、嬉しそうに笑う彼女を見て、なぜだかおかしくて、俺も笑った。

Re: 【夢幻を喰らう者】※ネタ不足につき一部修正 ( No.14 )
日時: 2013/02/23 11:44
名前: だいこん大魔法 (ID: g5yX4cMd)

「よし、全員集まったようだな・・・それでは、かねてからの実戦訓練を始めようと思うが、訓練場に入る前に、ひとつだけ確認しておこう」

そういうおっさんのあとを歩きながら、俺たち新人は、思い思いに次の訓練にむけて話あっているところだった。
それは・・・そう

「今回の訓練は、新人、ということもあり、二人ひと組のチームでやってもらうことになる。本来訓練ならば、個の技量を測り、測定し、その個人一人がどの「キメラ」の個体まで対応できるか、というのを測ったりもするのだが、お前たちが単独で「キメラ」を討伐するのはまだまだ先の話だ。だから、安全も兼ねてチームでやってもらうことになる、ここまではいいな?」

そう確認するも、ほとんどのやつらはおっさんの話を聞いてなどいない。いや、聞いているんだろうけど、すでにチームを組んでいる奴らにとって、まあどうでもいい話だったりもするから聞き流してしまっているんだろう。

「今回の訓練に用意されているのは、「キメラ」の中でもっとも危険度が低いとされている「犬型」だ。だが、お前たちのなかでもしかしたらこの「犬型」の「キメラ」・・・いや、「キメラ」自体を見たことがなくて、実感が湧いてない奴もいると思う。だから、少しだけ訓練前に時間とり、外部の「キメラ」の資料と、映像を見せようと思う」

「せんせーい、ひとつ質問でーす」

「む・・・なんだね?」

おっさんの説明に、一人水を差すやつがいた。
妙に馴れ馴れしい声でおっさんに話かけるそいつは、どこで染めたのかは知らないが、短めの茶髪。耳にはピアスが何個もついていて、いかにもお調子者・・・あるいはチャラけてるという感じのやつだった。身長は俺とだいたいかわらないぐらいだが、妙にそいつの外見は目立つので、俺でも覚えていたぐらいだ。

「俺たちが戦う「キメラ」ってぇ、どんくらい強いんすか?」

その質問に、少しだけおっさんが首をかしげるが、なるほど、といったふうに頷く

「西岡流地くんだったね、なかなかいい質問だ」

そういうと、左腕に抱えていた資料の中から、一枚だけ抜き取ると、それを上にもっていき、全員が見えるようにしながら

「さっき俺が説明したように、お前たちに戦ってもらう「犬型」の「キメラ」は、危険度がもっとも低い・・・かといって、一般人が倒せるかといえばそうでもない。
表すのなら、死なない猛獣といったところか」

「死なない猛獣・・・?」

意味がわからないといったふうに、西岡流地、つまり質問をしたやつが首をかしげる。

「そうだ。普通の力を持たない人では対抗はできない、だが、君たちから見れば、ただの猛獣ということだ」

「そういうことかぁ・・・つまり、俺たちなら簡単に倒せるってことですか?」

「今からやる訓練の中でなら、確実とはいえないが倒せるレベルなのは間違いはない。だが・・・そうだな、これから実戦、つまり最前線の映像も見てもらうから、あとはそこで説明しよう」

そういいながら、おっさんが再び歩き出す。
それに続きながら、西岡は、隣にいたチームを組んだのであろう女子と話しながら、ケラケラと笑う。

「・・・なんかあの人、緊張感、ないね」

そういったのは、俺の隣にいた神樹だった。
おっさんの話を熱心に聞いているようなので話かけずらかったが、話が終わると突然そういってきた。

「そうだなぁ・・・でも、気を楽にしてたほうがいいこともある時もあるし、いいんじゃないか?」

そうはいったが、俺もあの男を見て、若干の不快感を覚えているのは確かだ。
神樹のように、真面目な性格ならば、ああいったタイプは苦手なんだろうけど、別に俺は真面目ではないとは言わないが、人をあまり毛嫌いするタイプではなかったはずだ。だけど・・・

「ん・・・ん、そうなんだけどね?」

神樹はなにか言いたそうにするが、言葉が見つからないらしく、肯定しているのかしていないのかわからない態度をとる。
そこで俺は

「さっきの口ぶりから見ると・・・たぶん、あいつは「キメラ」を見たことがないタイプだ」

そういいつつ、俺は少しだけ思い出す。
危険区域に住んでいたためか、何度か侵入してきた「キメラ」が、目の前で倒されるという場面を見てきた。そのために「キメラ」の恐ろしさを俺は理解している。けれども、このシェルターの中には、「軍直轄区域」というものがあり、そこには過去金持ちだった家庭や、シェルターにとっては欠かせない人たちが住まう区域がある。その中の人たちは、確実とはいえないが、「キメラ」を見る機会がない。
そう考えると、しっくりくる。あの外見や、あの性格。「キメラ」をもし間近で見たことがあるのならば、これから行う訓練ですらも、「死」というものが付き纏うことを理解できる。
だが・・・見たことがないのなら、戦闘中に怖気付き、硬直してしまう可能性がある。・・・まあ、それを防ぐための、実戦の映像を見せるんだろうが、それで理解できるのか?
若干俺がなにをいっているのかわからないといったふうな表情を見せる神樹だったが、それに

「神樹は「キメラ」を見たこと、あるか?」

というと

「うん、たしか・・・先生のいってた「犬型」ってやつなら何回か見たよ」

「そいつは怖いか?」

「・・・そっか、あの人は、実感が湧いてないってことなんだね」


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