ダーク・ファンタジー小説

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ココロ 【オリキャラ募集中】
日時: 2013/10/22 20:36
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: T3UB3n3H)

第一章 始まりの幕

第一話 “ボク” >>01 
第二話 検査 >>02
第三話 私 >>04
第四話 確信 >>09
第五話 〝出来損ない〟 >>10
第六話 声 >>13
第七話 すがりつく >>19
第八話 魔女の住む館 >>22
第九話 どうして >>23
第十話 実験体 >>24
第十一話 夢 >>27
第十二話 遅れ >>28
第十三話 褒め言葉 >>29
第十四話 わがまま >>41
第十五話 将棋 >>42
第十六話 表情 >>43
第十七話 使命 >>44
第十八話 飴 >>45
第十九話 研究成果報告 >>46
第二十話 存在 >>47
第二十一話 今は・・・ >>49
第二十二話 命令 >>54
第二十三話 願わくば >>57
第二十四話 あぁ、そうか >>62
第二十五話 かつての同房 >>63
第二十六話 僕たち >>66
第二十七話 私の話 >>69
第二十八話 報告会終了 >>73
第二十九話 移動 >>74
第三十話 初めての日 >>79
第三十一話 温もり >>81
第三十二話 呼び起こす >>89
 (凪過去編)
第三十三話 その時 >>90
第三十四話 千年樹 >>91
 (終)
第三十五話 “外” >>92
第三十六話 情けは一回 >>93
第三十七話 見張り役 >>96
第三十八話 ため息 >>99
第三十九話 「ありがとう」 >>102
第四十話 望むもの >>105
第四十一話 先輩、後輩、同房 >>106
第四十二話 プレゼント >>107
第四十三話 生きている >>108
第四十四話 イベント? >>109
第四十五話 私の後輩 >>110
第四十六話 改造 >>113


第二章 放たれる悪

第一話 ガラスケース >>114
第二話 イタイ >>115
第三話 ただいま >>118
第四話 誕生日 >>119
第五話 笑み >>124
第六話 悲鳴 >>125
第七話 あぁいう女が・・・ >>129
第八話 不意打ちの遭遇 >>130
第九話 オネーサン >>131
第十話 切られた >>132
第十一話 私はな・・・ >>133
第十二話 行くぞ >>134
第十三話 追っている理由 >>135
第十四話 後輩の伝言 >>136
第十五話 保護対象 >>137
第十六話 ここにはいない >>138
第十七話 同盟 共闘 援助 >>139
第十八話 それでも赦さない >>142
第十九話 防御 >>143
第二十話 退化 >>144
第二十一話 長年の候 >>145
 (ニコラス過去編)
第二十二話 小宮 >>146
第二十三話 一緒に行こうよ! >>149
第二十四話 退場願う >>150
第二十五話 鍵と『俺』 >>153
第二十六話 馬鹿だな >>154
 (終)
第二十七話 道具じゃない >>158
第二十八話 二人の間柄 >>160
第二十九話 待つ >>165
第三十話 参加 >>166
第三十一話 たまには >>167
第三十二話 博士になった理由 >>173
第三十五話 温厚 >>188
第三十六話 精進 >>189
第三十七話 博士見習い >>190
第三十八話 多すぎ >>191
第三十九話 痛い視線 >>196
第四十話 探り >>199
第四十一話 兄弟とか? >>200
第四十二話 付き合う >>201
第四十三話 集まり  >>204
第四十四話 もうすぐ >>210
第四十五話 戦の準備 >>211
第四十六話 心配 >>212
第四十七話 可愛いなぁ >>213
 (朽葉過去編)
第四十八話 何で >>214
第四十九話 ガッカリ >>216
第五十話 探しにおいで >>217
第五十一話 必要? >>218
第五十二話 探していました >>219
第五十三話 尊敬する人 >>223
 (終)
第五十四話 いつも通り >>230
第五十五話 開幕のベル >>237
第五十六話 誰かいる >>238
第五十七話 協力 >>239
第五十八話 眠り >>242


第三章 はじめまして、こんにちは

第一話 一緒に… >>245





*番外編*
ごちゃまぜなんでも大会☆” >>82 >>85 >>103 >>104


オリキャラ応募用紙 >>03

キャラクター

(応募オリキャラ)

扇 綾音(夏蜜柑さんのオリキャラ) >>05
魔神 彩女(秋さんのオリキャラ) >>07
亜寫夢 凪(サファイアのオリキャラ) >>11
白狐(さゑさんのオリキャラ) >>14
夢星朱亜(霧アリスさんのオリキャラ) >>30
神埼 桜(桜さんオリキャラ) >>32
手李拏(友達のオリキャラ) >>39
ブロック(つむきさんのオリキャラ) >>50
ニコラス・フラメル(akariさんのオリキャラ) >>59
神宇 アリス(アリスさんのオリキャラ) >>60
神条 柩(妃鞠さんのオリキャラ) >>64
守谷 泡沫(ルゥさんのオリキャラ) >>67
 イラスト(ルゥさん) >>177
霜下 梅雨(〃) >>77
叶幸 奇跡(〃) >>183


(オリキャラ)

「人間兵器」
舞異舞異 >>100
歌音言霊 >>155
紫羅季 >>48

「博士」
ニィーア・ブレート >>101
新羅幽 >>159
蓮印遥 >>83
ヒストラ・レイス >>168



お知らせ

オリキャラ“博士” 募集終了 >>34
オリキャラ“人間兵器”募集終了 >>80

Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.129 )
日時: 2012/12/19 22:39
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第七話 あぁいう女が・・・



懐かしい後輩との再会。
シェーミは今、研究所に修理をしていた。
大抵は<能力>でどうにかなったが、やはり初期の人間兵器。
最高の博士とその研究チームが作り上げた最高傑作の四体。
その中でこの研究所を破壊した二体。
しかも一体は攻撃に優れている。

シェーミはため息をついた。


「おい、ため息をしていないでお前も働け」


声を掛けられて面倒くさそうに眉をひそめる。


「・・・私は先ほどまで修復をしていたんだ。もうクタクタだ」
「年かよ・・」


ボソリとつぶやかれた言葉だが、十分に聞こえている。
赤と紫色のピアスが光る。


「遥、蹴り飛ばすぞ」


低い声で唸るが、遥は肩をすくめただけだった。
遥の後ろからダンボールをかかえる少女の姿が見えた。
か細い少女とは思えないほど、大量のダンボールをかかえている。
しかし、それも当然だろう。
彼女は人間兵器なのだから。

白い髪が光を浴びてキラキラと銀色に輝いて見える。


「おい、これは何処に運べばいいのだ?」


可憐な声が面の下から発せられた。
シェーミはそこに・・と指示を出す。


「はぁー・・・。昔のよしみだから手伝ってやってんだけど・・・さすがにこれはひどくねぇか?」


これみよがしにため息を深々とつく。
しかし、シェーミは鼻をフンと鳴らした。


「どうせ囲碁とか将棋とか縁側でやっていたのだろう。報告会に出ずに、大方その人間兵器とイチャイチャしたいのだろうが」
「・・・なんで知ってんだよ」


低い声でつぶやく遥。


「何だ・・ひどい怪我ではないか・・・もうダメなんじゃないか?」


近くから楽しそうな声がする。
人の不幸をみて嬉しそうにするのは、今のところ二人しか見当たらない。
そして良く知っている可憐な猫撫で声・・・。
白狐だ。


「フフッ・・・。私ならその怪我を治せるが・・・懇願するか??ほら・・地面にはいつくばって・・・」


趣味の世界へと走っている白狐。
遥は頭をかかえた。


「おい、止めろ。あれはうちの研究員だ。私を慕っているものをみすみす見殺しにはできまい」
「・・・分かってたならさっさと止めにいけばよかったじゃないか」


憎々しげにみるが、シェーミはケロッとした顔で言った。


「お前お気に入りの人間兵器の性格を見たくてな・・。しかし、お前はあぁいう女が好みだったのか・・」
「あぁ、もう・・。白狐、それくらいにしてやれ」


遥にストップを掛けられて白狐はこちらを向く。
面をかけていても分かる。
不満たらたらだ。


「何故止めるのだ遥」
「うちの研究員に悪さをしないで頂きたいものだな」


シェーミが腕を組みながら言う。
白狐が遥の腕に自分の腕を絡ませながら可憐な声を出す。


「私は性格や趣味が少しばかり悪いだけだのになぁ。別に、悪いことなぞしてはいない!」


開き直るというのか、見方を変えるというのか・・・。
シェーミは頭が痛くなった。


「おい・・・遥」
「何だ?」


白狐を振り払うわけでもそのままにしている遥にシェーミはため息をついた。


「こんな女辞めておいた方が良くないか?」
「何だと!貴様、私を愚弄する気か!」
「私が言うのもあれだが・・こいつは少々危ないぞ。私が紹介してやるから」
「遥には私がいるではないか!」


食って掛かる白狐。
腕に力がこもっているため、遥の左腕がミシミシと不気味な音を立てている。


「お前じゃダメだ」
「何故他人の貴様に言われなければいけない!?」
「お前も他人だろうが!」
「私は遥を信頼していおるわ。そこいらの小娘と同じに見るでない!小娘!」
「何だと!?私は遥がこーんなに小さいころから知っているのだ!」


そういって自分の腰くらいまでを示す。


「ソレが何だ!幼少のときから一緒にいただけではないか」
「私はお前より年上だ!敬え!」
「人間兵器は兵器になったときの年齢を維持するのだ。この姿は数年前のものだ!」


徐々に話の路線がズレていく。


「(つーか、研究所片付けなくていいのか?)」


そんな疑問を浮かべながら、左腕の痛みに必死に耐える遥であった。

Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.130 )
日時: 2012/12/29 19:10
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第八話 不意打ちの遭遇


凪は森をただただ進んだ。
何も考えずに進んでいくと、彩女の私有地内から出てしまった。
しまった、と思ったが別にいいか、と思いなおした。
今あそこには帰りにくい。

彩女は変わってしまったのだろうか。

そんな疑問が頭に浮かぶ。


いつになく自分がおかしいことに気付く。
自嘲気味に笑うと、空気が震えた。

考え事をしていたからだろう。



不覚。



首に赤い線が走った。
そこから血が垂れる。
痛くはない。
気持ち悪い。

眉をひそめると、今度は左手が血にまみれた。

誰かが、何かが、こちらを攻撃している。


凪は自分の周りに氷の壁を張る。


「誰・・・」


応答は無い。
誰が、何が、何の為に。

私を、狙う。

いや、理由なんて。


無いのではないだろうか。



凪は薄く笑う。


「そう・・・」


瞳が冷たく輝いた。


「答えないなら・・・あぶりだすまで・・・」


ヒュウゥーと辺りの温度が下がった。
森にまでは届いていない。

凪の能力。
温度を操る能力。

温度がどんどん下がっていく。

凪は兵器だが、これがもし人間なら既に息をすることさえ困難だろう。

殺すつもりは無い。
ただ、あぶりだすまで。

人の呼吸の音。
かすかに震える音。
白い息。


「・・・そこっ!」


氷を瞬時に作り出して、見つけた場所へと向かって突き刺す。



よけられた。


凪は小さくしたうちをする。
しかし、人がいることは分かった。


「何者だ・・・」


低い声で尋ねる。


「姿を・・・・・見せなさいっ!」


氷を大量に作って全体に降らせる。
鋭くとがった氷が降り注ぐ。
それは、氷の矢。


ガサッ


音がした。

Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.131 )
日時: 2013/01/03 20:57
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第九話 オネーサン


「っ!ごめんなさい!」
「!!?」


バッと飛び出してきたのは自分と似たような年齢の少年。
謝りながら飛び出してきたので、凪は驚いた。
それと共に氷を止める。

改めて彼を見つめる。
銀色の髪。
赤い瞳。


「・・何者」


低い声で尋ねる。
まだ警戒は解いていない。

凪の声に少年は慌てたように両手を振った。


「ぼ、僕はニコラス・フラメル。ちょっと道に迷っちゃって・・・」
「道に迷った?」


そんな言い訳が通用するとでも?

そう冷めた瞳で問いかけると、ニコラスはあからさまに怯えを見せた。


「(本当か?)」


凪は疑いを持つ。


「あ・・あの・・。この森にいちゃダメでしたか・・・?」


恐る恐る問いかけてくるニコラス。
凪はうなづいた。


「じゃあ、僕出て行きますよ。えっと、どっちに行けば出られますか?」
「・・・あっちだ」


右側を指差す。
ニコラスはそちらを向いて、ホッと安心の色を見せた。


「じゃ、じゃあ・・・。騒がせてすみません」


ニコラスはそういって去ろうとする。


しかし。




「ダメですよ、凪」


枯葉がが落ちる。
ハッと凪は顔を上げた。


「妖しいものは簡単に逃してはいけません」




キィー・・ン


金属同士が奏でる音。


「ほらね。危険人物でしょう」


ニコリと笑う青年。
その笑みは、不気味なものだった。
青年の手には刀が握られている。

アレは確か・・日本刀。

銀色の光る刃がニコラスの首筋に当てられている。
しかし、それは左手に持たれた刀。
右手の刀ははじかれた。

何に?

ニコラスがはじいたのだ。


「急に喧嘩吹っかけんのか?その笑みは仮面なのかよ」


先ほどとはまったく別の口調で喋るニコラス。
凪は呆然とその様子を見ていた。

先ほどまではなかったはずの武器。
拳銃が二丁。
ニコラスの右と左の手に握られていた。
右手の銃は青年のこめかみに。
左手の銃は青年の刀をはじき、それを押さえ込んでいる。

つまり。

彼は。

危険分子だったというのか。


彩女にとって。


凪の頭をグルグルと回る。
あのまま逃がしていたら、もし彩女が散歩にでも出かけていたら、二人が出会ってしまっていたら、彼は彼女に牙を剥いていたかもしれない。
彼女は死んでいたかもしれない。


「何を一人で思考してるんですか。冷静さが欠けてきていますよ」


ニコリと青年は言い放った。
その言葉には思いやりの色はまったくない。


「・・・分かっている」


凪の瞳に冷たさが戻った。


「先ほどまで持っていなかったその拳銃。どこにしまっていた?」


ニコラスに質問をかける。
凪に対してニコラスはニッと笑う。


「オネーサンはいい人だなぁ。それに比べてお前は急に刀で切りかかりやがってさぁ」


凪のことをオネーサンと呼び、青年のことをお前と呼ぶ。
青年は微笑みながら刀を強く首筋に押し当てる。
それでもニコラスは平然としている。
引き金にかけられた指が少し引かれた。


「質問には答えてくださいね」
「そーだなぁ・・・。オネーサンは俺を信じてくれたし答えてやるよ」


凪に向かってニコリと微笑む。


「この拳銃はどこにもしまってないぜ。俺がたった今作り出したんだ」
「・・つまり、お前は人間兵器か?」
「その通り。・・不服だがな」


その瞬間に顔をゆがめる。
しかし、コロッと表情を変えて唇をなめる。


「なぁ、人間兵器って頭潰したら死ぬのか?」


引き金が更に引かれる。


「モデルによりますね」


ニコニコと答えながら青年の刀が首筋に食い込む。


「俺の首落ちる前にお前の頭が潰れるんじゃねぇか?」
「どうでしょう。あなたとわたしのモデル、どちらが対応しているかによりますね」
「自信あるんだなぁ・・。お前も人間兵器だろ?」
「そうですよ。博士から造られましたから」


博士という単語を聞いてニコラスはまた顔をゆがめた。


「俺はな、博士が大嫌いなんだよ」
「それはそれは。知りませんでした」
「・・・とりあえず・・」


グッと引き金が・・・。



「死ね」


引かれた。




パアァンッ

Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.132 )
日時: 2013/01/11 18:53
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第十話 切られた


音が響いた。
それによって鳥たちが一斉に羽ばたく。

凪はゆっくりと顔を動かした。

拳銃から確かに弾は飛び出した。
けれども、それはあの、ニコラスが持っているものではなくて・・。


「何をしてるのよ・・。私の敷地内で勝手な行動は許さない」


その声はいつもと違って冷静で。


凪の瞳に写ったのは銀色の髪を揺らし、紫色の瞳を憎々しげに細めている彩女だった。
その手には拳銃が握られている。
彩女愛用の拳銃だ。
射程距離と銃弾数をリスクに、発射速度を倍以上に上げた彩女特性の拳銃だ。


「・・・彩女・・・」
「魔神彩女博士」


凪と青年から声が漏れた。


「痛いなぁ・・博士って・・・ふぅーん・・」


ニコラスは手を見て、彩女に目を向ける。
持っていたはずの拳銃は地に落ちており、両手からは血が流れている。
それを服にすりつける。


「博士のオネーサンすごいね。一発で俺の手を貫いちゃって・・」
「私は二発撃った」
「・・何だって?」


彩女の言葉にニコラスは眉を寄せた。


「私の改造した拳銃は発射速度が倍以上に跳ね上がっている。音が重なって聞こえたのだろう」
「・・ふぅーん」


ニコラスは彩女を睨みつける。
凪と青年はすぐさま彩女の前に移動した。
もちろん、守るために。

その様子を見て、ニコラスは舌打ちをした。


「あぁ・・」


そうつぶやくと、ゴキゴキと不気味な音がした。
気付くとニコラスの下に落ちていた拳銃の形が変化している。


「やっぱり・・・うん」


一人で納得するようにつぶやいている。


「!彩女、下がれ!!」


「全部・・・ぶっ壊してやるよ」



ゴォッと風を切る音がした。
そして、何かが切れる音がした。


そう。


なにか・・・が。


「______________!」


彩女の顔が視界の隅に見える。

あぁ、何を言っているの?

彩女、どうしたの?


____エラー

__エラー


______接続ダウン

______運動機能低下

______エラー





________機能停止




なぜ。

そんなにも哀しそうな顔をするのか。


分かった。


既に私が。



切られたからか。


Re: ココロ 【オリキャラ募集中】 ( No.133 )
日時: 2013/01/11 19:11
名前: 優音 ◆XuYU1tsir. (ID: TQfzOaw7)

第十一話 私はな・・・



目の前で凪の体がゆっくりと倒れこむ。
その姿はまるで、スローモーションの、蝶が地に落ちる姿で。


「ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!」
「!博士、いけません!!」


止める人間兵器の言葉を無視して彩女は駆け出す。
狙うは一人。
ニコラスという人間兵器。


「オネーサン・・・僕はオネーサンを傷つけたくはなかったんだよ」


何も写さない瞳を覗き込んでニコラスは言う。

ニコラスは凪を切った。
胸に大きな傷跡があり、中身が損傷している。
それによってエラーが生じて機能停止状態。


「よくも凪を!!貴様ぁぁぁぁっ!」
「!!なんだよっ!」


彩女は白衣のポケットからナイフを取り出す。
ニコラスは突っ込んでくる彩女に応戦するために鎌を構えた。


「なんでそんなに怒ってるんだよ!たかだか人間兵器!しかもこれくらいで機能停止とか古いじゃねぇかよ!!」


そう。
たかだか人間兵器。

そういってアイツらも自分と友達を傷つけた。


「代わりなんていくらでもいるじゃねえか!!」


ニコラスは鎌を振り下ろす。
しかし、それを彩女は見切って上へと飛ぶ。


「う・・嘘だろ!?」


人間とは思えない飛躍力に、ニコラスは驚きの声を上げる。


「博士は幼い頃から辛い現実を目の当たりにしてきているんだ」


いつの間にか凪の体を抱きかかえている青年がつぶやいた。


「幼い頃から生きる術を潜在的に知っている。魔神彩女博士は素晴らしい博士なんだ」


尊敬するようなまなざしで青年は彩女を見ている。


「凪をよくもやってくれたな!」
「何だよ!!一つの人間兵器くらいいいじゃねぇかよ!何なんだよ、お前は!」


彩女の紫色の瞳がニコラスを射抜く。


「私はな・・・」


シュンッと頬を鎌が切る。
それでも彩女は怖気づかない。


「なんだよ・・・!」




「凪の親友だよ」



ゴォッと鋭い風が辺りを覆う。
彩女とニコラスの間を止めるようにその風は存在した。



「あかんよ、魔神さん」


その風の中から現れた手によってナイフは彩女の手から奪われる。

聞き覚えのある声。


「なっ!?」


彩女は普段とは打って変わって取り乱す。


「この子は僕が追ってきた子やねん」


_____せやから。

形のいい唇が笑った。



「壊さんといて?」


黒いフードから水色の綺麗な瞳が彩女の紫の瞳を見据えていた。
ニコリと愛想よく微笑む顔は、どこまでも柔らかい。


「何故貴様が・・・今更ここにいる・・・!」


ギリと、先ほどよりも憎しみのこもった瞳でフードの青年を睨みつける。
整った顔立ちが、いっそう彼女の苛立ちをあらわしている。
しかし、それでも彩女の美しさはそのままだ。


フードの青年はもう一度微笑んだ。


「久しぶりの挨拶はなしなんか?魔神さん」



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