ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

「血相契約」〜【小説大会銅賞&参照1000大感謝!】〜
日時: 2016/11/14 22:48
名前: 黒hana ◆JEhW0nJ.FE (ID: 7WYO6DME)
参照: http://www.youtube.com/watch?v=bV4vcr8E4HU

【投稿板移動のお知らせ】>>65


…………———


Day of the opening…——2014-4-4——


————————
————


「わかってる。わかってるっつぅの……。」
どうあがいたって手遅れだったことも——。 



 
——わかってる。わかってるさ——。






「×」をあいつの手から解放するためなら、僕はなんだってする。
たとえ…………————。






『×を犠牲にしても……』———。



















※注意※

●安定の駄文
●駄文、駄文、駄文、
●面白くない
●ときにギャグまざるかもしれない
●っていうかギャグ4割 シリアス6割
●亀更新
●作者の趣味いっぱいつめてるからおかしい。
●戦闘・死亡シーン・血 あったりする。
●面白くない※2回目
●作者はキモイです。

↑の中でひとつでも嫌だと思うものがあったらプラウザバック。

※作者は気分屋です。ころころイメソン変えたりなんだりします。ふらふら変えんじゃねぇよと思っている方もいらっしゃると思いますがご了承お願いします。

まだまだオリキャラ募集中です!!
ご協力お願いします!

※いただいたオリキャラはキャラ・口調・性格すべてご希望通りになるとは限りません(要するに作者の実力不足)

募集用紙>>5

*「血相契約」ラジオ企画!*
*第一回>>58

お題・質問募集用紙>>50


【祝☆冬の小説大会・銅賞!】>>45
【お詫びとこれからの更新予定】>>34
【更新再開のお知らせ】>>53


いただいたオリキャラ様のまとめは→>>10

彼岸様!お待たせいたしました!碧ちゃん&景都くん登場です!>>31
六様!お待たせいたしました!空人くん&響くん登場です!>>36
Fressia様!お待たせいたしました!零慈君&穿くん登場です!>>38


登場人物>>4

細かな設定>>35

第一章「契約もどきという名の序章」

第1話>>1第2話>>2第3話>>3第4話>>9第5話>>19
第6話>>25第7話>>28第8話>>29第9話>>30第10話>>31
第11話>>36第12話>>37第13話>>38
第一章 Ending>>39

第二章「彼らの世界」

第13話>>40第14話>>46第15話>>55第16話>>57
第17話>>61第18話>>6219>>63第20話>>64
第21話>>66



〜*きてくださったお客様*〜

*彼岸様*(初めてのお客様です!ありがとうございます!)
*六様*(彼岸様と同じくオリキャラを恵んでくださいました!)
*ヒント様*(私が『一番!』好きな作品の作者様です。憧れの方です←)
*黒猫だいすきひろにい様*(題名にひかれたといってくださいましたありがとうございます!)
*Freesia様*(作者がほしかったキャラを応募してくださいました!)
*雪菜様*(作者と同じ(は?)グロいのが好きといってくださった心優しい方です!)
*kkk様*(こんなクソ小説を面白いといってくださいました!ありがとうございます!)
*みーこ様*(小説大会のお祝い言葉を頂きました!ありがとうございます!)
*あずき@あんこ様*(初めてラジオのお題を頂きました!とってもうれしいです!)
*緋狼様*(こんな拙い小説をほめてくださいました!本当に嬉しいです!)
*嘘つきマコト様*(ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。)


PS:2014冬の小説大会・銅賞!本当にありがとうございます!!

Re: 「血相契約」〜【小説大会銅賞&参照1000大感謝!】〜 ( No.63 )
日時: 2016/05/29 23:35
名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: wGslLelu)

第19話


紫苑さんは思ったよりもずっと早く戻ってきた。ガチャリと扉が開く音がし自然と皆の視線は音がした扉の方へ集まる。私は新しい同居人達がどんな人達なのか微かに期待を膨らませながらみんなと同じ様に扉へと視線を移すがそこにいるのは困ったように苦笑いを浮かべる紫苑さんただ一人。後ろにも横にも誰もいないということは要するに新しい同居人達は今ここにいない。その瞬間私の中で膨らみかけていた期待が音をたてて萎んでいくのがわかった。期待して損したとはこの事を言うのだろう。皆も私と同じ様に期待をしていたかのかは分からないが少なくともそこにいるべき人たちがいない事に落胆はしているのが空気でわかった。コップの中の氷がカランと涼しげに音を立てる。

「どうした紫苑……?美織達は?」

誰もが思った事を代表して言うかの様に景都さんが口を開く。質問を投げられた紫苑さんは一つ小さなため息をつくと再度苦笑いを浮かべた。

「なんかねぇ美織ちゃん達、いま手が離せないから行けないって言って動こうとしないのよ。」

ごめんなさいね、と紫苑さんはその動きたがらない美織ちゃんに変わって謝ってきた。そしてそのあとすぐにどうしましょうと小さく呟きながら悩む素振りを見せる。それを聞いて私達は自然とお互いの顔を見合わせる。珍しく皆の意見が一致した証拠瞬間だった。じゃあ、と私は代表するかの様に口を開く。

「私達がその美織ちゃん?達の所に行きましょうか?別に強制的に動いてもらう必要性もありませんし。」

私の意見は予想通り満場一致で賛成を貰った。


————————————————————…………。


歩くたびにコンクリートの床によって作り出された心地の良い靴音を聞き流しながら私達は涼しくも暗い廊下を歩き続けた。この拠点は見た目よりも相当大きそうで現に今歩いている廊下も沢山の部屋へと通じている。慣れるまで何回迷子になるか今度数えてみよう、そんなどうでもいい事を頭の片隅で考えながら私はみんなの後ろについてまわった。ふと先頭を歩いていた紫苑さんがとある部屋の前で足を止め一度チラリとこちらを確認したあと目の前の鉄製の扉をリズム良くノックし部屋の中にいる美織ちゃん達に向かって声をかける。

「美織ちゃーん、あと直也くんもー入るわよう。」

どうやら美織ちゃんの他にも直也君という人もいるらしい。紫苑さんは返事も聞かずに躊躇なく扉を開けた。扉の先の部屋はどうやら電気がついてないらしく暗めだと言われる廊下よりも暗かった。しかし、なにやら青白い光が沢山さしこんできていて十分なほど照明の役割を果たしていた。なんだこれと思っているとふと隣にいる樹が小さく「モニターか……。」と呟いた。 

紫苑さんは一度中を確認するかの様にドアの隙間に上半身を入れた。中の人達に一言二言何か言葉を交わしたあと私達を部屋の中に招き入れるかのようにドアを大きく開けた。私は生唾をごくりと飲み込んだあと先頭を切って一歩踏み出す。謎の緊張が後ろの皆にも伝わったのか最後尾の景都さんの「まるで兵士が戦地に向かうような背中だな……。」という呟きが小さく聞こえた。

「あんた達が紫苑姉が言っていた駒達??」

踏み込み一発で駒という名の罵倒を受けた瞬間であった。

「…………え……。」

流石に困惑する。己の目の前にうつった光景は大きな普通の人間の何倍もある巨大なモニターの青白い逆光によって黒く染まった小さな存在。その黒い小さな塊はこちらにてくてくと歩み寄ってくる。足音と黒い存在が同時に近寄ってくるとともにその存在の姿形がはっきり見えるようになる。その姿は己の予想していた以上に……。   

「………………可愛い……。ちっさい……。」

可愛らしい、世間一般用語で言えば少女であった。少女は私のぼやきを聞いた瞬間、白餅のようなほっぺをぷくーと膨らませた。彼女の黒いおかっぱの髪の毛が光に照らされツヤツヤと光り本体に合わせて揺れる。

「ちっさくないわよ!レディーに向かって失礼ね!!」

なんなのこの女!と少女は私を指差し紫苑さんに向かって声を荒げる。どうやら彼女は見た目に合わないほどおませさんらしい。紫苑さんも流石に対応しづらいのか彼女に向かって苦笑いをするしかなかった。

「落ち着け、美織。」

ふと横から低めのハスキーな声が聞こえた。モニターの照射位置から離れている暗がりからこちらへ向かってくる足音が聞こえる。その姿は少しずつ露わになった。

「……い、いけめんだ……。」

目の前に現れたのは、その名の通りのイケメンだった。スレンダーな細身かつ引き締まった体。髪の毛は肩まであるが、それもまた彼の魅力を引き出している。顔の影から徐々に覗く目は綺麗な金色をしていた。まさにイケメンである。もちろん黒夜含む他の男性陣もイケメンだが彼も負けず劣らずの美形だった。 

「直也!!酷いの!この女がわたしの事をちっさいとか言うのよ!」

少女は現れた男性に泣きつくかのように声を上げ、男性の足にしがみついた。直也と呼ばれた男性は一つため息をついたあと少女の頭に手をのせ、ポンポンと少女の頭を撫でた。そして私を見る。

「……美紀と言ったか。」

「あ、はい。」

「気持ちはわかるが、こいつは周りから子供扱いされるのが嫌いでな。」

できればあまり小さいなどと言うのは控えてやってくれ。……気持ちはわかるが。彼はなぜか二度も同じフレーズを繰り返した。やはり彼も私と同じ印象を彼女に抱いてるようだが彼女にその台詞は地雷らしい。見事に地雷を踏み抜いちゃったな、と少女が男性に抗議を上げる姿をボーッと眺めながら私は頭の片隅で思った。

Re: 「血相契約」〜【小説大会銅賞&参照1000大感謝!】〜 ( No.64 )
日時: 2016/09/11 00:40
名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: 7WYO6DME)

第20話


なんやかんやで私達は美織ちゃんの機嫌をなんとか直すことに成功したのはいいもののまだ少々不満が残っているのか美織ちゃんはその大きな目をキッと細めて私を見つめてきた。その視線に私は一瞬背筋が伸びる。これはなかなか根性のあるレディだと見た。人は年齢や見た目によらないとはこの事を言うのだろう。

「…………まあ良いわ。本題に入りましょ!」

彼女はくるりと体をモニターの方に向け歩み出す。隣の直也さんから「大丈夫だろうか……」という声と小さなため息が聞こえてきたのは気にしないでおくが、なんだかとても申し訳ない気分になった。

美織ちゃんはモニターについているキーボードを操作し始める。カタカタと無機質な音だけが暗い部屋に響きその音だけしか響いてないからなのかやけに大きな音に聞こえた。しばらくすると画面に青白い光と共に大きな地図のようなものがかび上がった。

「まず、この世界のことを教えてあげるわ。」

美織ちゃんは一瞬口元を緩め話始める。

「もう知ってるだろうけどこの世界はね、貴方達がいた世界とは全く違う言わば異世界、別次元の世界って感じね。」

私達からしたら貴方達の世界がそうなんだけど。

「この世界には2つの人種が存在していた。一つは悪魔、もう一つは"血約者"。悪魔と契約するためだけに産まれたといっても、過言ではない存在よ。そして蘭山 美紀、あなたにはこの血約者の血が流れている。知ってるわね?」

「う、うん……。初めて知らされた時は驚いたし訳わかんなかったけど。でも、どうして私にだけ?」

私がそう問いただすと美織ちゃんは斜め下を見つめ小さくため息をついた。

「わからないわ。私達もずっと不思議に思ってるのよ。あなたはあちら側の世界の人間なのにどうして血約者の血が流れているのかとね。」

わからないことばかりなのよ。
そう呟く美織ちゃんに私は何も言えなくなった。彼女が少し弱っている姿を見るのは初めてだった。その姿はいくら大人びているからといって、そこにいるのはれっきとした幼い少女であり、彼女もまた年相応の寂しさを感じているのだと思った。

「まあいいわ。じゃあ次はこの世界に何があったのか教えてあげる。」

美織ちゃんは顔をあげてキーボードを操作する。すると今度はモニターの地図の上にいくつもの赤い斑点のようなものが浮かび上がった。

「これはね、今よりずっと前のこの世界の地図って感じのものね。この赤い斑点は村や国があった場所を示しているの。……今はもうないけどね。」

樹が口を開く。

「ここに出てるやつ全部がか?」

「そうよ。元々この世界はとても平和でなにも争いや危険なことなんてなかった。悪魔と血約者は仲良く暮らしていたし今はこんな瓦礫だらけだけど昔は緑や森、川や海、全てが綺麗な素晴らしい世界だったわ。…………あんなことが起きなければ、ね……。」

美織ちゃんは悲しげに目を伏せるその姿は暗い部屋というのもあいまって小さく泣いているように見えた。直也さんも少し下を向いて何かから目をそらす。私は彼女達にとって昔の世界がどれだけ彼女達の中で大きく、美しいものだったのかがわかった気がした。すると美織ちゃんは気を取り直したようにまた再びモニターの画面とキーボードを操作し始める。空元気なのは見え見えだったが。

「じゃあ次、貴方達がこれから戦うであろう敵とそいつらがした事を説明するわね。」

"敵"というフレーズが出てきた瞬間場の空気が一瞬ピリッとした。この話はとても大切だからしっかり聞いておけと黒夜に言われたことを思い出す。画面に数枚の画像が浮かび上がる。

「……これは?」

そこには元は人だったのだろうか、一部に機械のようなものを埋め込まれている人や全身が機械の人、明らかに生まれつきではない羽が生えている人、様々な改造のようなものを施された人達の画像が浮かび上がっていた。皆、目が虚ろで虚空を見つめていて明らかに意識がハッキリしていない、そんな姿があった。胸がとても苦しめられ息が一瞬ヒュッと詰まった。

「"Dans la mort mondiale"、通称"M"によって改造されてしまった元血約者達よ。こいつらは急に現れたかと思えばいきなり大量の血約者達を誘拐して様々な人達を実験や研究材料にし、自分達の言いなりを聞くだけの改造人間に作り替えた。子供大人動物関係なしにね。」

「大人だけでなく子供も……。」

「……そして、そいつらが作り上げた改造人間達によって沢山の村や国が襲われた。悪魔達は殺され、血約者達は誘拐されみんなみんな崩壊していった……。」

"Dans la mort mondiale"──……。"世界に死を"という意味だ。

「ハッ、けったいな名前だねぇ。"世界に死を"、なんてさ!」

零慈君が腕を組ながら鼻で笑う。

「しかし、事実コイツらの馬鹿な改造計画のせいでこの世界は壊れてしまった……。そう思ったら事実こいつらは着実に世界を死というものに向けているのかもしれない……。」

めったに喋らない響さんが小さく呟いた。その場にいる全員が黙り部屋には沈黙と静寂が流れた。

「…………確かにこのMは恐ろしい組織よ。こいつらのせいで血約者は減り悪魔達は皆タイムリミットという名の寿命で死ぬか、こいつらの改造人間達に殺されてしまった。……一番恐ろしいのはこいつらの目的や計画、基地の場所や組織がどんなものなのかすらハッキリしないこと。」

なにも情報がない、正体不明なのよ。美織ちゃんは一瞬下を向くがすぐに顔をあげて先程よりももっとキツい目で改造人間達の画像を見つめた。その顔は彼女の硬い決意を示すには十分だった。

「でも、戦わなくちゃいけないの。闘わないと私の、私達の大切なこの世界が存在ごと消されてしまうかもしれない。そんなの、絶対嫌よ……!」

美織ちゃんはそっとモニターに触れて再び寂しげに目を伏せる。

「それに……こんな姿になってしまった皆を、元に戻してあげたいの。大切な、大切な世界の仲間だから……。」

また、皆で美しいあの頃の世界を造りあげられるように──。

Re: 「血相契約」〜【小説大会銅賞&参照1000大感謝!】〜 ( No.65 )
日時: 2016/09/16 23:51
名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: 7WYO6DME)

【投稿板移動のお知らせ】

皆様こんにちは、作者の黒hanaです。
いつもこんな拙い小説を見ていただきありがとうございます。

今回一枠設けた理由は上記に記してある通り、投稿板を近々変更しようと思いそれをお知らせするために今回このような形でお知らせさせていただくこととなりました。
なぜ変更するのかと言いますとハッキリ言ってこれから先のこの小説の内容・先の展開はこのシリアス・ダーク小説板には少々合わない気がしたからです。
恐らく、これから先書くと思われる戦闘シーンや様々な場面などでの残酷描写・過激な内容がこの板に合うのかと言われれば少し首をかしげる程度になると思われます故今回このような形をとらしていただくことになりました。

移動は今の第二章が終わって、第三章部分から『複雑・ファジー小説板』にて書かせていただこうと思っております。
作者の身勝手で皆様にご迷惑をお掛けいたしますことを心よりお詫び申し上げます。

今後とも作者共々今作品をよろしくお願いいたします。



黒hana

Re: 「血相契約」〜【小説大会銅賞&参照1000大感謝!】〜 ( No.66 )
日時: 2016/11/04 17:01
名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: 7WYO6DME)

第21話(アルファナス視点)


「欲しい。」

外の大粒の雨が城内を湿気と僅かな不快感で包み始めた頃、ぬるくなった紅茶を口の中に流し入れている俺の隣で己の容姿と瓜二つの弟がふと口を開く。その声は雨の中で大きく反響したかの如く俺の耳にすんなりと入ってくる。

「何がだ。」

何となく予想できる回答を隣でひたすら無心に窓の外を見つめるアンビシャス、他の物達からはアンと呼ばれている男に視線も投げずに問う。アンはその言葉を聞くと待ってましたと言わんばかりの口調で俺の目の前に立ち口元を僅かに緩めて答える。

「決まってるだろ。あの"血約者"ちゃん。」

やっぱりか。その回答が出た瞬間から俺は心の中で自己完結したがアンはそんな俺の様子に気付いてるのか気付いてないのかわからないが嬉々として話を続ける。俺は無視して紅茶を啜り続けた。

「良いよなぁ、あんな変わった血約力持ってる奴滅多にいねぇ。」

おまけに可愛いしなぁ。

スッと目を細めアンの方に視線を移すと口角はつり上がり目は大きく開かれていた。その目には雨に打たれそれと同様の大粒の雫が滴っている窓が彼の黄色い瞳に彩られながら写っている。しかしその中は黒く大きな欲望と感じとれぬ程の僅かな嫉妬で埋め尽くされているのを俺は既に知っている。

「あんな可愛い子、黒夜の野郎にはもったいないとは思わねぇか?」

俺なら全部全部、可愛がってやるのに。

その言葉を聞いた瞬間俺はカップから口を離し皿の上に音を立てずに置く。ぬるく冷めきっていた紅茶はまだ微かに残っており皿の上に置いただけで僅かに残った香りをこちらにまで運んできた。

「なんだお前、あの女をそういう目的で狙ってるのか?」

アンは欲望にまみれた瞳をチラリとこちらに向ける。

「さぁ?想像にまかせる。まあ俺が言いたいのはそういうの関係なしにあの子自体が黒夜のモノだってのがもったいないって事だ。」

「ふうん……。」

勿体ない等かどうかは余り考える必要は無いだろうが少なくともあの強力な魔力を持つ黒夜と血約者が手を組んでいるとなれば俺達のほうからしたら脅威になることに代わりはない。脅威は可能な限り減らしておきたいのが組織としても俺個人の意見としても正しいだろう。

「なあ。」

アンはニヤニヤと口角を上げながらゆっくり俺の目の前に立つ。その笑みは俺が今考えていたこと全部が奴の頭の中に流れ込んでいるのではないのかと思うような余裕を浮かべた笑みだった。俺は無意識にもその笑みを睨み付ける。

「何だ。」

「とぼけんなよ、兄貴だってわかってるんだろ?」

「……。」

こいつがこんな笑みを浮かべているということはこいつの頭の中はろくな考えを持っていないと思っていたが、どうやら当たりらしい。俺はまたしても無意識の内に足を組み替えていた。

「……お前、やるつもりか?」

「そうした方が兄貴にとっても良いことづくしなんじゃねえの?」

「んなこといって俺をダシにして自分がやりたいだけだろーが。」

さらに睨みをきつくして目の前の弟を視界にとらえる、が奴は一瞬怯むようなフリをしたもののすぐにくるりと身を翻して目の前の窓辺に戻っていく。アンの笑みが暗闇を縁取る窓に写る。

「どうせ、主もあの子を手中に収めたいと思ってるだろうしな。俺は契約者手に入れられるし、兄貴も得するし、一石三鳥じゃねえか。」

「もし捕らえられたとしてもあの娘がそう易々と言うことを聞くとは思えないぞ。お前、アイツが抵抗してきたらどうするつもりだ?」

アンは俺の問を軽く蹴り飛ばすような嘲笑を浮かべる。

「させなきゃいいんだよ。俺の魔法の得意分野だ。」

アンは急に体の方向を転換させたかと思えば俺の隣を素通りし扉へと歩みを進める。フッとアンから硝煙と血が混ざった匂いが微かに漂い俺はその匂いに一瞬顔をしかめる。

「……もういくのか?」

「ん?あぁ。善は急げって言うだろ?」

「お前が今からやろうとしていることはたとえ百歩譲っても善とは言えないぞ。」

「だろうな。まぁそんなこと無理矢理にでも善に変えてやれば良いだけの話だろ。」

アンが金の小さな装飾が施されたドアノブをひねると扉はガチャリと音をたてて開いた。無機質な廊下の冷たい空気が部屋に入り込んでくる。アンは歩みを止め閉まりかけのドアの隙間から狂気を潜ませた目線だけをこちらに向けた。

「一度ほしいと思っちまったもんはしょうがねぇ。必ず手にいれてやるさ。」

たとえあの、黒夜から奪うことになったとしても。

アンの姿が見えなくなった瞬間扉がバタンと音をたてて俺とアンとの間に隔たりを作る。部屋の中は再び静寂に包まれた。足音が少しずつ遠のいていく。

「……はあ。アンも困った奴だ。」

俺は小さくため息をつくと、傍らにあったティーカップを手に取る。そして微かに残っていた最後の紅茶が喉に流し込まれた。

「アンは一度決めたら必ずやる奴だが……、さて、どうなるのかねぇ。」

ゆっくりとティーカップをテーブルに戻し目線を上にあげると、目の前の窓には先ほどよりも大粒となった雨が強く打ち付けられ無限に滴となってつたっていく。心なしか外の雨風の音も強くなっているようだ。


————嵐の予感がする。

Re: 「血相契約」〜【小説大会銅賞&参照1000大感謝!】〜 ( No.67 )
日時: 2016/11/14 23:08
名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: 7WYO6DME)

第2章 Ending









定められた運命だから、とか












こうなる結末だった、とか












そんなものはもうどこかに捨てて歩き出した方がいいのかなって











柄にもなく思ってしまった。












どれだけ辛いことがあっても











どれだけ心が痛め付けられても












もう進み出した











足は 時間は












もう、二度と止まることはない。











>>……『To Chapter 3』


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。