ダーク・ファンタジー小説
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- 「血相契約」〜【小説大会銅賞&参照1000大感謝!】〜
- 日時: 2016/11/14 22:48
- 名前: 黒hana ◆JEhW0nJ.FE (ID: 7WYO6DME)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v=bV4vcr8E4HU
【投稿板移動のお知らせ】>>65
…………———
Day of the opening…——2014-4-4——
————————
————
「わかってる。わかってるっつぅの……。」
どうあがいたって手遅れだったことも——。
——わかってる。わかってるさ——。
「×」をあいつの手から解放するためなら、僕はなんだってする。
たとえ…………————。
『×を犠牲にしても……』———。
※注意※
●安定の駄文
●駄文、駄文、駄文、
●面白くない
●ときにギャグまざるかもしれない
●っていうかギャグ4割 シリアス6割
●亀更新
●作者の趣味いっぱいつめてるからおかしい。
●戦闘・死亡シーン・血 あったりする。
●面白くない※2回目
●作者はキモイです。
↑の中でひとつでも嫌だと思うものがあったらプラウザバック。
※作者は気分屋です。ころころイメソン変えたりなんだりします。ふらふら変えんじゃねぇよと思っている方もいらっしゃると思いますがご了承お願いします。
まだまだオリキャラ募集中です!!
ご協力お願いします!
※いただいたオリキャラはキャラ・口調・性格すべてご希望通りになるとは限りません(要するに作者の実力不足)
募集用紙>>5
*「血相契約」ラジオ企画!*
*第一回>>58
お題・質問募集用紙>>50
【祝☆冬の小説大会・銅賞!】>>45
【お詫びとこれからの更新予定】>>34
【更新再開のお知らせ】>>53
いただいたオリキャラ様のまとめは→>>10
彼岸様!お待たせいたしました!碧ちゃん&景都くん登場です!>>31
六様!お待たせいたしました!空人くん&響くん登場です!>>36
Fressia様!お待たせいたしました!零慈君&穿くん登場です!>>38
登場人物>>4
細かな設定>>35
第一章「契約もどきという名の序章」
第1話>>1第2話>>2第3話>>3第4話>>9第5話>>19
第6話>>25第7話>>28第8話>>29第9話>>30第10話>>31
第11話>>36第12話>>37第13話>>38
第一章 Ending>>39
第二章「彼らの世界」
第13話>>40第14話>>46第15話>>55第16話>>57
第17話>>61第18話>>6219話>>63第20話>>64
第21話>>66
〜*きてくださったお客様*〜
*彼岸様*(初めてのお客様です!ありがとうございます!)
*六様*(彼岸様と同じくオリキャラを恵んでくださいました!)
*ヒント様*(私が『一番!』好きな作品の作者様です。憧れの方です←)
*黒猫だいすきひろにい様*(題名にひかれたといってくださいましたありがとうございます!)
*Freesia様*(作者がほしかったキャラを応募してくださいました!)
*雪菜様*(作者と同じ(は?)グロいのが好きといってくださった心優しい方です!)
*kkk様*(こんなクソ小説を面白いといってくださいました!ありがとうございます!)
*みーこ様*(小説大会のお祝い言葉を頂きました!ありがとうございます!)
*あずき@あんこ様*(初めてラジオのお題を頂きました!とってもうれしいです!)
*緋狼様*(こんな拙い小説をほめてくださいました!本当に嬉しいです!)
*嘘つきマコト様*(ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。)
PS:2014冬の小説大会・銅賞!本当にありがとうございます!!
- Re: 「血相契約」〜小説大会【小説大会銅賞&更新再開!】〜 ( No.57 )
- 日時: 2016/05/30 00:36
- 名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: wGslLelu)
第16話(??目線)
「あなたに何がわかるっていうの!?!?」
無駄に響く怒声が頭にこだました瞬間、ガチャンという何かが割れ砕けた音と仄かに甘く香る茶葉の匂いが自分の鼻腔をくすぐる。目線を下に下ろすとさっき自分がわざわざ目の前で喚き続けている少女のために入れてあげた紅茶が床に投げ捨てられていた。高価であろう柔らかい絨毯が茶色く甘い香りを漂わせた液体によって使い物にならなくなってしまったことに僕は内心で大きなため息をついてしまう。ああ、また"主"に怒られる。
「物を乱雑に扱うのは感心しませんねえ。」
目線を足元から顔を上げて目の前に移すと少女は悔しいような悲しいような怒っているような、よくわからない表情を浮かべていた。そんな顔をされても僕は君の気持ちなんてわからない。わかろうともしていないのだから当然といえば当然だ。僕は彼女が"この城"から出て行かないように見張っているのと彼女が変な行動を起こして己を傷つけないように危険事を回避することだけが仕事なのだから。
僕はその場に立膝を立て、自分の足元でもう使い物にならなくなった豪華な装飾が施さていたこれもまた高価だったであろうティーカップの割れクズを一つ一つ指で拾い上げていく。
「こんな風に陶器を投げつけたりして……怪我をしたらどうするおつもりで?」
目線だけを目の前の少女に向けると少女は唇を噛みしめて小さく呟いた。
「怪我なんかしても貴方達には関係ないわ。」
私のチカラの事しか見ていない貴方達に。少女はそう言って椅子から立ち上がり早足気味に部屋を出ていった。扉がパタンと音をたてた瞬間に"俺"はまたため息をつく。どうしてああ反抗的な態度ばかりをとられるのか、イマイチよくわからない。確かに俺たちはあの少女のチカラにしか興味がないと言えば無いが決して彼女を手荒には扱っているつもりは無いし逆に比較的俺の性格には合わない仕事を引き受けているというのによくできている方だと思っている。俺は再度ため息をついたあと踵を返し部屋を後にした。
絵画や花瓶など生活感の一切ない、白すぎるえらく飾り気のない殺風景な廊下に出ると窓の向こうの景色に目が行く。久しぶり過ぎる空とのご対面に俺は少し驚いた。
「珍しいな……。」
いつもは思わずため息が出るほどの汚く濁った曇り空な物だからこんな澄んだ真っ黒な夜空に加えて星一粒一粒がこれほどまでに自己主張をしている美しい空があるものなのかと思わず疑ってしまった。こんな美しい空を拝むのはいつぶりだろうか。俺はずっとこの世界にいたので昔はよくこの空を目に焼き付けたものだが恐らくあの少女にとっては初めてのことだろう。今頃城の何処かで俺と同様に空を拝んでいるに違いない。
「おやおや〜?珍しー。アルファナス君がお空を見てるぞー?」
ふと己の思考の波を乱す声が聞こえた。はっと意識を取り戻し声がした方へ顔を向けると先程の少女ではない別の少女がニヤニヤと面白い物を見つけたかのような笑みで此方に歩み寄ってきた。俺はその少女の姿を捉えると本日何度目かのため息を心の中でつく。
「何の用だ……。クソガキ。」
「わぁぁー!!ひどー!クソガキじゃないしー!」
皆の可愛いいアイドル、レミエルちゃんだしー!とクソガキ、もといレミエルは己の一つ結びにした長い髪の毛をユラユラ揺らしながらけたたましい声で抗議してきた。
「はいはいうるせぇ。……今日はあのクソもふ娘は一緒じゃねえのか。」
「えー?なんかねー、メルは主に呼び出されたみたい。」
「また何か壊したのか?」
「えー、わかんなーい。最近あの"SPH"の子のチカラについてうんぬん言ってたからそれじゃないの?」
レミそこまで聞いてないからわかんなーい。と言ってレミエルは腕を頭の後ろに回してぶーぶー言っていた。
"SPH"
「あとっ!クソもふ娘じゃないし!メルにはメルシエって名前がちゃんとあるんだからー!」
俺は後ろでけたたましく抗議するレミエルを放置して一人思考回路に浸っていた。"SPH"……。失われた存在の欠片と記憶の塊に命が宿ったモノ。存在することを許されないモノ。SPHとは言わば精密なコピーそのものだった。持ち主の記憶と心を写し出しコピーしてできたものがSPHである。だがSPHは決して自然には生まれることは無く人の手によって作り出され無理矢理命を与えられ完全なる姿、もとい"ホンモノ"になることすらできない。そんな哀れな人口劣化コピーをSPHと呼ぶ。そしてその名称を着せられているあの先程の少女を思い浮かべる。
あの哀れな少女には名前が無い。正式に言えば"無かった"。SPHという偽物として作られたのだから名なんてものは無い。でも今は違う、我が主があの少女を無理矢理さらいここに幽閉した後に主は彼女に名前を授けた。彼女のホンモノの存在……すなわち彼女の大元となる存在から名前を取ってきたと言われている彼女の名は…………。
__「ミキ」……_____。
- Re: 「血相契約」〜小説大会【小説大会銅賞&更新再開!】〜 ( No.58 )
- 日時: 2015/06/29 02:39
- 名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: CFE7lDA5)
第一回〜「血相契約ラジオ」!!〜
〜☆〜
美紀(以下"美")「さあさあさあ!始まりました〜!」
樹(変わらず)「第いっかーい。」
黒夜(以下"黒")「『血相契約』ー。」
美・樹・黒『ラージオーー!!』
美「司会と言うなのDJは!本作の主人公!蘭山 美紀と……。」
樹「主人公の幼馴染ポジのクセに今現在出番が少なすぎる野田 樹と。」
黒「特に何もいうことは無い銀月 黒夜でお送りしまーす。」
美「このラジオは本小説に寄せられた読者様からの質問やお題を元に登場人物達でただグダグダ雑談するだけ、といういかにも作者のやる気の無さが伺えるラジオとなっておりまーす!」
樹(雑くね……?)
美「さて、記念すべき第一回という事ですがいやー、やっと始められましたね!」
黒「だな。作者後回しにしすぎだろ。お便り貰ったの何ヶ月前だよふざけんな。」
樹「改めて遅くなってしまったこと、ここで謝罪させて頂きます。申し訳ございませんでした。」
美・黒『申し訳ございませんでしたー。』
美「さあ!作者のホラ吹きっぷりが世に知れ渡った所で早速お便り行きましょう!」
樹「やっとこれから本題……。長かった……。」
黒「お便りおーけい。んじゃ行くぞ。えーとPN、anko*さんから、サンキューな。」
【好きな食べ物&物は?】
樹(ツッコミどころが無いくらい無難な質問来た……。)
美「ん〜?好きな食べ物?私は"チーちく"かな?」
黒(おっさんかよ……。)
樹「チーちく?」
美「あれ?樹に言ってなかったけ?"チーズちくわ"のことだよー。」
樹「初耳だわっ!!!」ビシィ
黒「はいはいうるせえ。俺は……梓が作る微妙に上手い炒飯が好きだな。」
美「なにその曖昧な回答。」
樹「新婚夫婦かよ。」
美「まだ新婚ホヤホヤでお料理拙目な奥さんが作る料理に対するコメント的な。」
黒「あ゛?」
美・樹『何でもありません。』
黒「まあーでもそう言われても仕方ないんだよなあ。ホントに微妙だからどう言えばいいのかわからねえんだよ。ご飯はパラパラでも無ければグチャグチャな訳では無いし……。味付けも濃く無ければ薄いわけでもないしな。」
美「うわー。ホントに微妙。」
黒「非常に形容しがたいお味です。」
樹(今度作ってもらおう。)
樹「最後は俺か……。俺は、チョ……コかね……?」
美・黒「…………。」
樹「……なんだよ。甘い物好きなんだよ悪いか。」
美・黒(女子力っっっっ!!!!)
黒(乙女かっっ!)
美(樹可愛いすぎかっっ!)
樹「…………。」
美「え……えーと、まあこんな感じです!anko*さん、如何だったでしょうか?ご満足いく回答出来てませんでしたら申し訳ありません!お便りありが……黒「ちょっと待て。」…………ん?」
黒「ここ、ここ。」
【好きな食べ物&物&(美紀ちゃんの3サイズ)←ココ】
!!『美紀ちゃんの3サイズ』!!
美「」
樹「キャラへの一言欄も……。」
キャラクターになにか言いたいことは?【美紀ちゃんかわいいよかわいいよかわいいよかわいいよかわいいよかわいいよ(((*´艸`*)】
黒「漂う美紀厨ェ……。」
樹(読者様とてマジ許さん。)
美「」
黒「まあでも、読者様からのお願いだし答えないわけにはいかないよなぁ?」
美「はっ!?!?あ……。え、えとー。そのー。ご好意は嬉しいんですけどー……。」
樹(…………イライラ)
黒「んんー?どうしたどうしたー??」
美(ヤバイ黒夜のサディスティックスイッチ入ってもうた……!)
樹「…………。」
美「あ、あえあ……う…………。その…………。」
黒「んー?早く言えよー。」
美「そ、そ、そ、そーゆー質問は!受け付けてないといいますか!!!!」
黒「あれー?読者様からのお願い聞けないん…………樹「テメエこのゴキブリ野郎おおお!いい加減にしやがれえええええ!!ピーーーーーー【自主規制】にしてやろうかあああ!!」
ぁぁぁぁ……ぁぁぁ…………ぁぁ……(エコー)
〜しばらくお待ちください〜
黒【反省中】
美「と、と言う訳で!anko*さん!ご好意は嬉しいんですけど質問はもう少し優しい物でお願いしまーす!!」
樹「よろしくお願いじま゛あ゛ーず……。(殺気)」
美「で、では何か収集つかなくなってきたので今日はここまで!また次回!機会があればラジオでお会いしましょう!!本編もよろしくね!さよならー。」
樹「さよならー。」
黒「じゃーな。」
美「お前はもっと反省せんかぁっ!!!」
【終わり】
- Re: 「血相契約」〜小説大会【小説大会銅賞&更新再開!】〜 ( No.60 )
- 日時: 2015/07/02 02:42
- 名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: CFE7lDA5)
〉〉嘘つきマコト様
この様な時間帯に返信申し訳ありません。
貴方様のおっしゃるとおりだと思われます。
この様な場所に小説を設けさせて頂いてるのにも関わらず不定期に更新&急な再開。皆様にも多大なご迷惑をお掛けしていると存じております。ですので貴方様がその様に思われるのも仕方がない事だと思っております故今一度深く謝罪させて頂きます。申し訳ございませんでした。しかし、失礼ながらの発言ではございますが私は賞を頂こうと思い小説を書いているのではないという事だけはご理解して頂ける様よろしくお願いします。
- Re: 「血相契約」〜【小説大会銅賞&更新再開!】〜 ( No.61 )
- 日時: 2015/07/05 04:14
- 名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: CFE7lDA5)
第17話(美紀目線)
————————————————————………………。
——————————…………き………………。
何も考えられなくなった頭の片隅で微かに声が聞こえる。
—————……み…………き………………。
その声はとても小さくて、音として確認できるのかすら難しいほどに掠れていて。とても何を言っているのか聞き取れない。
————……あなたは…………ちゃ……ない…………。
わからない。わからないよ。貴方が私に何を伝えたいのか、そんな小さな言葉じゃここまで届かないよ。もっと大きな言葉で、音で私のところにまで来てよ。
——……あなたは……なくちゃいけない……。
わからない。ワカラナイ。ワカラナイよ。
ああ、ああ、誰だろう。
——あなたは知らなくちゃいけない…………。————
私に語りかける"貴方"は……………………。
…………………………
………………
……
——————み————……。
——みき——……。
「美紀!!!!」
「どぉわあ!!!??」
ドスンッ
いきなり耳の中をかき乱すかの様な大声で私の体は反射的に跳ねそのままベッドから転げ落ちたのであろう、私の体は無機質なコンクリートの地面に仰向けのまま叩きつけられていた。一瞬遅れて背中から体中に鈍い痛みが駆け巡る。何が起きたのかわけのわからないまま覚醒していない目で周りをキョロキョロと見渡しているとふと自分の倒れた体に影がさしかかった。
「………………ん?」
目線を目の前に向けるとそこには私のものであろう白いシーツを掴んだ碧が腕を組みながら私を見下ろしていた。碧は呆れているのか怒っているのか、どちらとも取れないような表情で私を見つめていて。これほどまでかと溢れ出す険悪なオーラに押され気味になりそうだ。
「おはよう。」
バサッ。
「うわぁ!?」
碧は一言そう言うと倒れる私に取り上げたシーツを放り投げてきた。一瞬にして視界が白に染まって私は驚きの声をあげ、起きかかっていた体はまた硬い無機質な床に逆戻りしてしまった。
「早く起きな。朝寝坊だよ。」
「うへぇ〜……。相変わらず容赦ない……。」
シーツをどかしながら小さく苦笑いしながら呟くと碧はむっとした顔で睨みつけてきた。さっきよりも負のオーラが増す。私はどうも最初の方から彼女の威圧感に押されっぱなしだ。
「おぉ……。お顔が怖いよ碧さん。」
「美紀がずっと寝こけてるからでしょーが。」
さっさと着替えて準備しな。とわざわざ私の乱れたベッドを手際よく整えながら碧は言う。さっきまでヘラヘラ寝ぼけていた自分だがその言葉にふと違和感と疑問を覚える。準備……?今日は何か外出予定でもあるのだろうか。いや、そんな予定は無いはず。ならば一体何の準備を…………?私がボーッと立ちながらそんな事を考えているとヒュンッと風を切りながら目の前から何か大きな物が飛んでくる。勢いのついた謎の物体は瞬く間に私の目前にまで迫ってきていた。中々のサイズ、当たったらひとたまりもなさそうだ。
「ほげぇっ!?!?」
バシッ!
私は声をあげながらギュッと目をつむってソレを寸前でキャッチする。中々のサイズのうえに質量もあるらしく受け止めた手が微かに痛み手首にまでビリビリと伝わってきた。
「あっ?え?なに……?」
目を開け、自らの手中にある物に視線を移すとそこには赤ん坊一人くらいならつめれそうな大きめのカバンがあった。コレを投げつけてきた碧は窓を開けていてこちらには見向きもしていない。
「……………………あ。」
ふと己の口から声が漏れそこで私は今日の予定が何かを思い出す。それと同時に碧がこちらを向いて私が握りしめているカバンを指差して言った。
「必要最低限の物だけつめとけだって。新しい拠点って言って荷物一杯持っていっても余分なヤツはどうせ捨てなくちゃいけなくなるからだってさ。」
そうだ。思い出した。今日は皆で新しい拠点に移るって話をしてたんだった。ここより安全面はどうなのかは詳しくは知らないが比較的綺麗な場所に移れると聞いて一人テンション上がってたのは自分ではないか。何で忘れてたんだろう。
「もうみんな用意して下で待ってるから、美紀も早く用意して降りてきて。」
んじゃ先下行っとく。碧はそう告げたあとご丁寧に扉まで閉めて部屋から出ていってしまった。残された私は1人黙々と着替え始め、その後また黙々とさっき渡されたカバンの中に必要最低限の荷物をつめていく。服やら小物やらポイポイつめているうちにふと"アレ"を忘れていた事に気づく。
「あれ?どこ置いたっけ?」
キョロキョロと付近を探していると己の服のポケットからキラっと光り輝いた何かがこぼれ落ちる。それはカチャンと小さく鎖の音を鳴らしながら冷たい床に落ちた。
「あ、あったあった。こんな所にあったんだ。」
私はソレを手に取るとまじまじと朝日の光に照らされてキラキラと光るそれを見つめた。幼い時から何も変わっていない輝き。
「お母さん……。」
愛する母がいつもつけていたお守りの青い石のネックレス。不思議な事にその青い石は一度も光を失ったことはなく今も昔も変わらぬ輝きで私を導いてくれる。その輝きは幼い頃の幸せだった頃の記憶と重なっていくように思えてこのネックレスだけが今はもう遠い所に逝ってしまった母と私を繋いでくれる一つの架け橋となっている。私はソレを胸元でギュッと握りしめ、その後失くさないようにしっかりと己の首に通す。
「お母さん、どうか今日も私を守ってください。」
小さな声でその輝き続ける青い石を見つめながら私は呟いた。その瞬間よく聞き慣れた声が下から反響するかのように響く。
「おーい美紀ーー!いけるかー?」
と樹の私を呼ぶ声が聞こえてフッと現実に引き戻される。
「はーい!」
私はネックレスを服の中に仕舞うとカバンを閉じ、急いで下の階にまで駆け下りた。
- Re: 「血相契約」〜【小説大会銅賞&更新再開!】〜 ( No.62 )
- 日時: 2015/07/07 01:44
- 名前: 黒hana ◆tr.t4dJfuU (ID: CFE7lDA5)
第18話
「きゃー!もう、ホントかわいいー!お人形さんみたいねぇ〜。」
私は今自分がどういう状況下に置かれているのかイマイチ理解できなかった。何故私は見知らぬお姉さんに抱きつかれているんだろう。何故頭を髪の毛が乱れるほど撫でられているんだろう。何故お姉さんの大きな胸に埋もれているんだろう。目ぐるぐる回しながら目の前を見ると黒夜や景都さんが呆れたように深いため息をついていて。その隣の梓さんなんて珍しく苦笑いを浮かべている。三人の素振りからしてどうやらこのお姉さんは三人の知り合いらしいが一体なにがどうなってこうなったのか。私は混乱する頭の中でつい数時間前の自分達の回想シーンを流し始めた。
数時間前————————————————………………。
以前の拠点からどれほど歩いたのだろう。私は脳内でそんなことを考えながらもう動かないと訴え始めている右足を無理矢理前に押しやって何とか歩を進めていた。空模様は朝までは良かったものの昼になった瞬間いつも通りといった感じの灰色の雲が空を覆い始めあっという間に白い雲一つもないどんより気味の曇天へと早変わりしてしまった。その上朝の気温の高さは変わらず、見事な程の最悪な天気になってしまった事に全員のテンションが一気に下がったことは馬鹿な私でもわかった。歩けば歩くほど体から流れ出る汗が止まらない上に肌にねっとりとまとわりつくような高い気温と湿気がその汗が流れ出るスピードを速めていた。これはいくらなんでも酷すぎる。出発した時は各自会話を楽しんでいたものだが今はもう誰一人として喋る気力を持ち合わせていない。精神と共に皆の気力が目にも止まらぬ速さでゴリゴリ削られていった。
「はぁ……。」
重苦しい空気の中に響いたそのため息は一体誰のものだったか。
「………………着いたぞ。」
いつもの不機嫌そうな声にもっと拍車をかけられたような黒夜の声が耳に届いた時にはもう皆何がなんだかわからなくなっていた。記憶もあまり無い。ただ無心に足を進めていたような気がするけどそれも覚えてない。だが、己の足の感覚がほぼ無いに等しい所から自分たちは相当な距離を歩いたのだと推測される。足が棒になるとはうまい事言ったものだと私は昔の人々の語彙力に感激した。
拠点はあまり目立たない場所にある上に、外も中もコンクリートと鉄壁だけで出来ていた。まさに拠点という役割を果たしていると言っても過言ではないようなそんな見た目と場所。以前の拠点よりは綺麗だし大きめな感じがする所から以前行っていた不自由な生活から開放される事に気付いた私は少しだけテンションが上がったりするがそんな喜びも体で表現できないほど私の体は疲れ切っている。早く休みたい精神が今一番よく働いてくれている気がする。安全面はどうなのかも疑問に思ったりしたが扉はナンバーロック式だったり色々な場所に監視カメラが仕掛けてあったりなどまあ問題なさそうだった。これはますますここでの生活が楽しみなりそうだ。
「おーいー紫苑……。来たぞー。」
黒夜が開けた部屋は長い廊下を突き進んだ先の突き当りにあった。部屋の中はどうやら大広間らしく冷たい冷房の空気が部屋の中から流れ込んできて私はやっと飛びかけていた意識を引き戻す。元々この拠点からコンクリートと鉄壁だけで作られているものだからその空気は冷えに冷えて体の中に入ってきた。
「お、お邪魔しまーす……。」
黒夜の入れサインと共に私達は部屋の中に足を踏み入れた。ああ涼しい。エアコンが出す冷気特有のあの匂いを肺いっぱいに吸い込みながら前を向いた瞬間だった。
「あっ!おい!しお…………〈ボフン!!〉
焦り気味の黒夜の声が聞こえたかと思うと突如目の前が暗転しなぜかぬるい温かみが体にしみてきた。それはまるで人の体温の様な温かみで私は一瞬で誰かに抱きつかれたのだと理解した。
「!?!?」
驚きで声も出ない、抱きしめられているせいで見動きが取れない。いきなりの状況にフリーズしていると上から高い声が聞こえた。
「ひゃ〜〜!かーわーいーいー!会いたかったわぁ!」
美紀ちゃん!!
そして冒頭へ………………————————————。
「いきなり抱きついちゃってごめんなさいねぇ。私可愛い物をみちゃうとついつい抱きついちゃうのよねえ。」
長年の癖なんだけど中々治せなくてね。と目の前にこやかな笑顔を浮かべながらでみんなの分のお茶を注ぐこの女性は紫苑さんというらしい。紫苑さんはお茶を注ぎ終わると器用にお盆に乗せて私達の目の前に置いて私の方を向いてまたニコリと笑った。初めて顔を見た時から綺麗、という率直なフレーズが頭に浮かんだものだが決して間違ってはいないという事を今一度確認させられる。それほどまでに紫苑さんは綺麗だった。
「紫苑……、世月や美織達はどこだ?」
景都さんがふと口を開く。その隣では黒夜が茶菓子として出されたクッキーを器用に口の中にポイッと放り込み梓さんに行儀が悪いと脳天に一発拳骨をくらいそのままテーブルにダウンするという茶番劇をくりだしていた。
「あぁ、世月君は今出掛けてるみたいだけど美織ちゃん達はいつもの所よ。折角新しい同居人達が増えることだし挨拶させないとね。」
紫苑さんはそう言うとちょっと待っててね。と一言付け加え美織ちゃんや他にもいるであろう人達を呼びに廊下へと出ていった。その後ろ姿がドアの向こうに消えた後再度黒夜へ目を向ける。彼は未だに机に突っ伏したままだった。
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