ダーク・ファンタジー小説
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- 怖色prism〈第一部〉
- 日時: 2017/08/24 14:25
- 名前: 柚乃華 (ID: W/M2HNwF)
彼女には、特別なチカラが“あった。”
─────人というのは、面白い。
チカラが自分たちを殺すと考え、彼女を塔に閉じ込めた。
而して、世の中は意外と狭い。
その塔に居たのは、チカラを持つ者たち。
「さぁ、自分たちを閉じ込めた奴らに復讐劇を見せてあげようか────」
永久にみる、醒めない劇に──────。
- Re: 怖色prism〈第一部〉 ( No.8 )
- 日時: 2017/08/27 20:32
- 名前: 柚乃華 (ID: W/M2HNwF)
『伊万里ちゃん』
そう言って、私を大事にしてくれたよね。
でも、今のこの国じゃダメなんだ。
不平等な世の中。
私も彼も、この世の中に殺されるんだろうな。
随分昔、日本は不平等条約を変えた。
けれど─────今は違う。
チカラある者は、忌み嫌われる。
- Re: 怖色prism〈第一部〉 ( No.9 )
- 日時: 2017/08/28 11:35
- 名前: 柚乃華 (ID: W/M2HNwF)
沈んでいくのなら、最期は綺麗に死ねるのかな。
視界はぼんやりと、薄い膜を張られたように、見えなくなっていく。
一瞬、金色の光が指したように、見えた。
と…。
「起きな、嬢ちゃん。風邪引くよ」
乱暴な感じの、それでいてどこか優しい声がした。
私は生きてるのか。
それとも神様が最後に見せた、幻か…。
私は瞼を開けた。
目の前に映ったのは、茶色の髪を乱暴に結った、金色の目の美しい男の人。
女っぽい顔立ちが、キリリとした眉毛で男と判断できる。
この人は、天使なのか、神様なのか。
「俺は、ゼン。嬢ちゃんの名は?」
ゼンは人間らしい…。
私は口を開いた。
「私は、伊万里」
- Re: 怖色prism〈第一部〉 ( No.10 )
- 日時: 2017/08/30 16:15
- 名前: 柚乃華 (ID: W/M2HNwF)
伊万里と言う忌まれた名は、この国では有名だ。
煉獄の罪人────ゼンは首を傾げた。
「ゼンは、どこの国の者なの?」
「フロラン王国、だ」
フロラン王国………。
この国の隣国だ。
ゼンの右頬には、不思議な紋様があって、傷のようにも見えた。
「その傷は?」
ゼンは微苦笑を浮かべて、
「聞きたいか?」
私は戸惑うことなくうなずいた。
- Re: 怖色prism〈第一部〉 ( No.11 )
- 日時: 2017/08/31 20:10
- 名前: 柚乃華 (ID: W/M2HNwF)
第二章 「清貴の秘密」 side 伊万里
ゼンは、表情をかき消して語り始めた。
「俺は、フロラン王国でごくふつうに暮らしていたが……。ある日、この国の警察のようなヤツが俺の家にきた。『追われている、助けて』とな。女々しい顔立ちだが何をしたか、予想がつかなかった。
翌日の事だったな。朝っぱらから拳銃をぶちかます音がした。戸を開ければ、警察等が居てな、『清貴を引き渡せ』と怒鳴られた。アイツだな、とアイツを呼びに行く前、ヤツは消えていた。そして俺は、警察に捕らえられ、此処に送り込まれた。
元々、俺にはチカラがあったしな」
「ふうん」
ゼンは苦笑して、私をみる。
薄い唇がつり上がって、こんな時に綺麗だな、と思ってしまう。
「それだけか」
期待していたにしろ、私はそれしか言えなかった。
私の贖罪に対すれば、柔なことだ。
- Re: 怖色prism〈第一部〉 ( No.12 )
- 日時: 2017/09/02 18:24
- 名前: 柚乃華 (ID: W/M2HNwF)
side 勇気
発泡酒をゴクゴクと飲む。
哀しいかな、清貴は用事があり、一人酒。
「あーらぁ、勇気クン。一人酒なんて寂しいわね。お付き合いしてあげる」
俺がこの世で聞きたくない声がした。
「ルージュか…」
「なによ、その態度。ひどいじゃなぁい。私と貴男の仲でしょう?」
どんな仲だ。
ブロンドの髪を肩にかかるくらいに垂れ流し、まつげが長く、琥珀色の瞳。
紅い口紅を塗った唇は、妖艶な雰囲気をまとっていた。
「………何の用だ」
ルージュは「フフフ」と笑みを浮かべて唇を吊り上げた。
「清貴の事なの。知りたくない?」
食堂の雰囲気が変わったのは、気のせいではない。