ダーク・ファンタジー小説

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ノードゥス・ゲーム
日時: 2021/02/03 23:15
名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=11928

こちら近未来デスゲーム小説になっております。近未来の近がどれだけ近いのかは知りませんが近未来です。
そこまでグロ描写などはないですが、人が死にます。デスゲームなので。
よろしくお願いします。
登場キャラクター一覧
鷹城準也(たかしろ じゅんや)18歳 主人公 初登場>>1
山中雪(やまなか せつ)16歳 初登場>>2
鈴堂光一(りんどう こういち)18歳 初登場>>8
矢沢勘助(やざわ かんすけ)19歳 初登場>>8

Re: ノードゥス・ゲーム ( No.13 )
日時: 2021/02/02 17:42
名前: sol (ID: qgqJnAGY)

十一話

「でも、なんでツリーハウスにしたんだ?」
「生活にそこまで不自由しないと言っていたからだ。籠城にしろ打って出るにしろ、いつまでこのゲームが続くかわからないからな」
光一の案内で木々や草の影に隠れながらまず村に向かう。
「逃げ場がない、って側面をちゃんと考えて決めたの?そもそも勝手に決められた事自体納得できてない。私はあなたの部下でもなんでもない。横暴が過ぎる」
「小さい体でよく吠えるな。考えたに決まっているだろう。そういえば話は変わるが、弱い犬ほど......と昔からよくいうな」
「ふーん、それにしてもよく吠えるもやしだこと」
勘助が眉間にしわを寄せて目線をずらす。二人の煽りはなかなか高度だが絶対に今やるべきことじゃないし後ろから俺にとても悪い空気が降りかかる。
「あ、抜けた!こっちだよー!」
遠く前方から声が聞こえる。どう仲裁したものかと思案していたがどうやら煽り合いから解放されそうだ。......いつのまにか頼まれてもいないのに自ら仲裁役をかってでようとしている自分がいた。ちょっと納得いかない。
急に辿っていた草がなくなって視界が開ける。
村、たしかに村だ。歴史の教科書に載っていそうな村という言葉のイメージそのものだ。舗装もされてない道にペンキも塗られていない平屋の木造建築が建ち並び、家の総面積より田畑が広い。テーマパークにでも行かないと一生拝むことのないだろう光景、不覚にも少し、いや結構興奮した。
「すごいよなこれ!俺あれやりたい!土ざくざくやるやつ!」
道の真ん中でこっちに手を振りながら畑を指差して叫んでくる。
「とりあえず隠れよう、あと二人を待とう?」
何がやりたいのか一切わからない件には触れないでおく。結構素直に小走りで戻ってきてくれた。
「あっち居た」
「......幽霊?」
戻ってくるなり身をかがめて報告してくる。
「うん。こっち来てた」
少々つまらなさそうな、楽しかったのに邪魔しないでほしいと言わんばかりの顔で茂みの奥を見ている。
「ね、もうそろそろ行ったかな?行ったよね?」
「俺に聞かないで......一応もうちょっと様子見しよう」
「あそこが村か?随分急に様相が変わるな」
二人が追いついてきた。隠れているところを見て察してくれたのかすぐに身を屈めて、
「どれぐらいいるの?」
と尋ねられた。実際に目撃した光一にちらっと視線を送るもののなにも考えていなさそうな顔をして茂みの向こうを見ていた。
「光一、幽霊どれぐらいいた?」
「なに?あ、幽霊?えっと......一匹だけ!」
にぱっとした笑顔で返事が来た。きっとそんな笑顔で答える事象じゃない。雪はふうん、とだけ言って自分の作業に戻っている。
「いた!あいつだよ多分!」
少し小声で指差す先を見ると確かにいる。特別見つかっているような様子もなくただ徘徊しているだけのように見える。
幸いこちらに気づく事なく、やがて去って行った。
「なあなあ、あいつに捕まったらどうなるんだろうな」
「え?......やっぱり、死ぬとか?」
全員そろそろと茂みから出て村の探索をしている時光一がそういえば考えた事ない、というより考える事なく死ぬだろうとぼんやり思っていた事を指摘した。
「そんなに単純かしらね。幽霊に捕まってすぐに死ぬというのなら死体はどこ?まさか、食べたり消したりしてるとでも?
ま、人を消す技術があるのは確認済みだけど、デスゲームの運営がそんな気の利いた事する?」
「鋭い話してるねえ君たち。私も混ぜてよ」
唐突に窓から黒髪の女性が顔を乗り出して会話に混ざってきた。その人は続ける。
「私だよ。庄本悠里。迎えに来てくれたんでしょ?幽霊は居ないよね?すぐそっちにいくよ」
家の窓が閉まり、扉が開いて大学生ぐらいの女性、庄本さんが出てくる。
「そちらから来てくれて嬉しい限りだ。次はどこだ。案内しろ光一」
「やあ、さっきぶりだね鈴くん。はじめまして、茶髪くんと天才ちゃん。後、ドライな眼鏡くん。よろしく」
「庄ちゃんさっきぶり!よろしく!次多分川!」
「鷹城凖也です。よろしくお願いします、庄本さん」
挨拶もそこそこに済まされ、雪が何よ天才って......とため息混じりにぼやいている間に軽く駆け出す光一を見失わないように、なんとかついて行って川へ向かう。雪と勘助は小脇に抱えられている。
とはいえ、村エリアもなかなかに広い。のどかで平和な田園風景が遠く続いていて奥の木は霞んで見える。あまり進んでいる気がしない。
「ねえ、鷹城くんはさっきの話どう思う?」
いつのまにか隣に来ていた庄本さんに尋ねられた。
「さっきの話......幽霊に襲われた人はっていう?」
「そうそう。君はどう思う?やっぱり死んでる?それとも、それ以外の何か?」
どう、実際どうなんだろう。ものすごく綺麗好きか気がきく運営だったら死体がない理由にはなるけど偶然出くわしてないだけでも不思議はない。
「まだ......わからないです。捕まったら死ぬっていう思い込みも全部まっさらにした上だと、死体を見かけないのは不自然でも人数と幽霊の数次第では十分自然なので。あ、でもいいことはなさそうですよね、強いて言うなら、俺は死ぬ以外の何か派です」
「ふーん、じゃ次に一つ。
このカード、持ってる?」
ひらひらと俺の目の前ではためかせているそれには浄化と書いてあった。ありますよ、と答えて実体化カードを出す。
「お、私のと違う奴だ。使ったことある?」
「いえ、まだ......」
「へえ。何が起こるんだろうね、これ。
最後に一つ。鈴くんはどこ?」
まさかの、こんなに見晴らしのいいところで迷子になってしまった。

Re: ノードゥス・ゲーム ( No.14 )
日時: 2021/02/03 23:11
名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)

十二話

雪たち三人の連絡欄の反応を追いかけて村を抜け森、もう川エリアに入っているのかさっきまでとは少し様相の違う森の木々を分入って進む。
「君はさ、どうやってここに連れてこられたの?」
何気ない口調で聞かれた。隠し立てすることも特にない。
「夜道を歩いてたら、急にスタンガンでやられました。倒れて目が覚めたらもうあの大広間で」
「へえ、私と同じだ。運営も捻りがないね」
そう言って庄本さんが笑う。出会って間もなく、ただ獣道を歩くだけの時間の会話といえばこういう質問の受け答えしか無い。
「庄本さんは大学生ぐらいですか?」
「そうだよ。千繚乱大学外国語学部の二年。君は?」
「朝羽高校の三年です。住んでるところ、結構違いそうですね」
「どこの高校かは知らないけど、遠そうだね。追いつけそう?」
「はい、もうしばらく先で止まってます」
逸れたことに気付いてくれたのか反応は静止している。さっきまで歩いていた道よりもでこぼこで足場が悪いので追いつくのにもうしばらくかかりそうだ。
「君はさ、なんか変な子だよね」
しばらく黙って歩いてから急に切り出された。
「変......ですか?」
「そ、性格じゃなくてね。なんとなく警戒しにくいというか......気がついたら信頼しちゃいそうというか......無害そうな顔してるからかな?」
「無害そう......?」
「なんか違うな......小動物的な雰囲気かな?それとも腹の底が丸見えな感じ?」
「今俺貶されてます?」
「どうなんだろうね。褒めてるつもりじゃないけど、貶してるつもりでもないよ」
一呼吸空いてからどことなく雰囲気が変わって、庄本さんは続ける。
「ま、あたしはまだ誰のことも信頼はしてないけどね。あんただけは警戒が剥がされそうな感じが変だなぁって、それだけの話」
「そう......ですか」
「そうそう。お、なんか聞こえてこない?水の流れる音。次の川が近いんじゃないかな。ほら君、置いてっちゃうよ」
「はい、すぐ行きます!」
足に絡まった蔦を解いて、一瞬で雰囲気の戻った庄本さんに小走りでついていく。
それからまもなく、再び視界が開けて大きな清流が目に入る。水は透き通っていて本物の自然界の水でさえなければ飲み水に使えそうだ。勢いもあまりなく浅いので水難事故も起きないだろう。
「遅いぞ。ちゃんとついて来い」
川のほとりでは三人が待っていた。大きなハプニングなく合流できて何より。
「ごめん。気をつけるよ」
「鈴堂にももっとちゃんと周りを見てから走るように言っておいたから。足並みそろえて一刻も早くクリアしましょう」
「たっしー、庄ちゃん、置いてってゴメン!」
「行くぞ。山守とかいったか。どこにいる?」
返答する間も無く勘助が立ち上がり次へ行こうとする。少し疲れたので休んで行きたいのが本音だが、遅れてきたわけだしこんな開けた場所で休むのはあまりいいとはいえない。
「ゆうゆうは......あっち!行こーぜ!」
光一が下流に向かって走り出す。軽く走ってるつもりだろうが全力疾走しないととても追いつけない速さだ。本当に人間なのだろうか。
「光一!周りを見ろ!置いてくな!」
軽く走ってるだけな分はきっと見ていたんだろう。別に極端に足が長いわけでもないのに一歩がかなり大きいが故に早すぎただけで。
「矢沢もさっきは鈴堂に担がれてただけのくせに、随分偉そう。初めからずっと、何様のつもり?」
雪が不満を抑えきれないかのように呟いた。ちゃんとみんなに聞こえてる。
「お前はそうやって仲間内に不和を引き起こすのが好きなのか?どんなに協力したくなかろうがするなら足を引っ張るな。ところで足並み揃えるとはいつ誰が言っていた?」
苦々しげな顔をしながら雪は口をつぐんだ。ピリつく空気、静観する庄本さん、バチバチしてるとこに戻ってきてどうすればいいかわからない顔をする光一、雪のすぐ隣で蚊帳の外な俺。この蚊帳かなり入り辛い。頭で少しそう思ってもまるで本能のように俺はまた仲介役を買って出た。
「今言い争うのは意味ないって。一旦落ち着いてからにしよう?」
数秒間、二人の視線を一身に浴びた。膠着状態の数秒は異常に長いというのはどうも本当らしい。
「......そうだな。どうせこのゲームが終わればもう関わりなどない。話すだけ無駄だ」
「そうね。これ以上、お互い深く考えないようにしましょう。素直に駒になる気は無いけれど」
取り急ぎ大きな火になりそうな火花だけは取り除けたかもしれないが、一触即発であることにに変わりはない。この張り詰めた空気はもうどうにもできないのでとにかく状況を進展させることに尽力しよう。
「じゃあ、そろそろ迎えに行こう。ずっとここにいたら幽霊が来るかもしれないし」
「鷹城の言う通り。鈴堂、案内して。私たちを置いて行かないようにね」
「わかった!」
近づくまでは開けた川辺は避けて、時折後ろを振り向きながら意気揚々と先頭を行く光一の後ろを四人でついていく。下流の方に向かっているが、行き着く先にはちゃんと海か湖は作ってあるのだろうか。
進めば進むほど川幅は広く、流れは緩やかになっている。下流には確かに近づいているのに終点は一向に見えてこない。
「ここ!ここの向こう側にいるよ!」
光一が立ち止まって川の向こう側を指す。渡って行けそうな橋もなく、伝って行けそうな石もなく、飛び越えられるような川幅でもない。
「一応聞くが光一、何故さっき向こう側に渡ってから下流に来なかった......?」
「やめましょう、多分何も考えてない」
「......次からは先に居場所を教えてくれ。ルートは俺が考える」
「ん?うん、わかった!」
多分それが正しい。光一には悪いけどこれは多分無駄足といって過言じゃない。この川はいくらなんでも越えられない。今靴の中がずぶずぶになりでもしたら絶対ものすごく気持ち悪いし何より絶対数人流される。
「よし、川を越えられそうな辺りまで戻るぞ」
「え、なんで?」
「まさかとは思うけどあなたこの川越える気?とち狂ったの?」
「狂ってないよ!俺が向こう飛んで、ゆうゆう連れて戻ってくるだけだから!」
「光一......ほんとにそんなの出来るの?」
常識的に考えればどう考えても無理だ。でもできるって言ってる。すごい。
「もっちろん!たっしーもそこで見てろって!」
驚きのあまり誰一人として静止の言葉も出せない間に、光一は助走をつけて思いっきり川へ飛び出し、そのまま飛び越えていった。
「鈴くんほんとにやっちゃった......」
笑顔で向こう岸から手を振る光一に、とりあえず手を振り返しておいた。すぐに後ろの森に姿を消して行ったと思えば、さほど時間もかからないうちに帽子を目深に被った男性を抱えて姿を現し、難なく川を飛び越えこちらへ渡ってきた。
「な、余裕だろ!」
「......人間じゃないんじゃないの......?」
全力で呆れながら雪が呟いた。俺もそう思う。

Re: ノードゥス・ゲーム ( No.15 )
日時: 2022/02/11 01:35
名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)

十三話
「っと......山守裕司です。よろしくお願いします」
抱えられていた人は着地すると少し帽子をあげて自己紹介した。その帽子はすぐにおろされた。
「よろしくお願いします。俺は......」
「道中話せ。光一、次はどこだ」
「次?ひろさん?こっち!」
「待て。場所を教えろ。ここから近いか?」
「近いよ!すぐすぐ!」
続けて話そうとすると止められ、間も無く勘助の先導で歩き出した。
「合流するたびにいちいち自己紹介するなんてまどろっこしいことしないで。最後にまとめて話せば良いじゃない」
もっともな意見だ。最後尾なので先頭に遅れないようについていく。
「ねえ、さっき凖也くんにも聞いたんだけど、君は幽霊に捕まった人間はどうなると思う?」
「俺ですか......?
死ぬんじゃないですか。わかりませんよ」
山守さんは庄本さんの質問に答えるとすでに深い帽子をさらに深くかぶり直して目線を逸らした。質問をした当の庄本さんはふんふんとか言って前の方に歩を進める。
結果最後尾に二人、取り残されてしまった。
「山守さん、その......」
「ああ、えっと......名前......」
「鷹城凖也です。好きに呼んでください」
後からまとめてやればいい、とは納得しているものの、会話の流れとして自己紹介する分には差し支えないだろう。
「鷹城......さん?何ですか?」
「山守さんは、初めからこの川のエリアに居たんですか?」
「はい。俺がいたよりもっと上流の川辺で説明を聞きました」
「そこに幽霊が来て、そこにいた人たちと散っていった......って感じですか」
「ええ。多分そんな感じなんじゃないですかね」
どこか上の空という様子で不確定な返事を返される。
「前、良いんですか。遅れますよ」
「あっ......そうですね。走りましょうか」
どうもさっきから遅れてばかりの気がするが、指摘されて気が付いた遠くなった背中を追いかける。
左からずっと聞こえてきた川のせせらぎはやがて前から聞こえて来る轟音に飲み込まれた。街の入り口で何かを見下ろす四人の背中に追いついた俺と山守さんは、細い鉄柵に囲まれただけの大穴をみんなと同じように見下ろした。
その穴は深く、そこはないのではないかとすら錯覚する。中から水の音が響いてこなければ錯覚とも気づけないかもしれない。川の水は全てその大穴に吸い込まれていた。ほんのちょっとした事故があれば一緒に人も吸い込まれていきそうだ。とにかく柵が頼りない。
「これ、どこに繋がってんだろうね。案外出口だったりして」
「どうせ上流だろう。先を急ぐぞ」
庄本さんの希望的観測を勘助が適当にあしらい街へ、ビル群へ繰り出してゆく。光一は柵に体重をかけて覗き込んでいて見ているこっちがヒヤヒヤする。雪はさっさと前へ、一応ペアなのだからもうちょっと連れて行ってくれたりだとか待ってくれたりだとか、雪に限ってないだろうというのは短時間でよくわかった。
長く土の上ばかりを歩いてきたからかコンクリートの地面に懐かしささえ覚えた。車が通ることの無いであろう道路の真ん中を縦長に連れ立って先へ先へと進んでいく。ゴールはわからない。ふと広めの裏路地へ目線を向けると黒髪の青年と目が合った。おそらく俺より少し年上の大学生前後だろうその人はすぐに路地の奥へ身を隠してしまい、どうしようか話しかけようかなど考えてるうちにどうしようもなくなってしまった。
急いで前方へ歩を進める。一人で置いて行かれでもしたら俺は何もできない。とにかくついていかないと。
この足並み一つ揃わない行軍はある一つのオフィスビルの中に入っていった。この中に例の協力者達の一人がいるんだろう。エレベーターに乗り込み前40階中3階だけ上を目指す。あっという間に到着したエレベーターの扉が開かれると、机と椅子を除いた全てのものが存在しないシンプルを極めたかのようなフロアが姿を表した。俺もたまに事務所を覗くことがあるけどここまで片付いている......と言うより使用感のないものは今までに見た覚えもない。もしかしたらビル街のオフィスはこんなのが主流なのかもしれないけど俺の常識の中で考えるならばここは使われていない、そもそもこのゲームのために作られただけの場所に過ぎないだろう。目がちかちかしてきそうなぐらい全てにおいて白い。
そして、そこの机の一つに一人の男性が腰掛けていた。この部屋が一気に会社のオフィスのように見えてくる、決して若くはないけれど身綺麗でピシッとしたスーツを着こなすまさに大人の男性という表現の一番似合う人だ。ありもしないコーヒーさえ後から思い出してあったと言ってしまいそう。
「ひろさん!きたよー!」
「おお光一君、待っていたよ。そちらの皆さんが俺以外の協力者だね?」
「うん!それで、次はかまとうりょうき?って人?探しに行くんだよな?」
「そうだな。申し訳ないが頼むよ」
まるで親子、それか祖父と孫のように二人の間で和気藹々と話が進んでいく。内容はあまり和まない。
そんな二人に面白くなさそうに勘助が口を挟む。
「おい、勝手に話を進めるな。そいつをいつ探しに行くかは俺が決める」
さらりと飛び出した俺が決める発言に、今度は説が噛み付いた。
「随分偉そうじゃない。王様にでもなった気なの?何勝手に一人で決めることを前提にして話してるのよ。自惚れるのも大概にしなさい」
「ほう、自惚れときたか。ならばお前は俺などあっさりと凌ぐ実力があるのだろうな?」
「あるって言ってもないって言っても揚げ足を取るつもりでしょう。簡単に引っ掛かると思ったら大間違いよ。わかったらさっさと黙りなさい」
一見雪が制したようにも見える口喧嘩もまだまだ序章とばかりにヒートアップ。ここで俺は......もうちょっとばかり嫌になってきた。
「ひとまずさ......可児さんの話......聞かない?」
ひとまずこの場の矛だけは収めてくれた。どうして人と会うだけでこんなに消耗しているのだろうか。こんな調子で本当に生き残れるのだろうか。
「ありがとう......えー」
「鷹城凖也です。好きに呼んでもらって構いません」
「では、凖也君。ありがとう。
それで、俺の話なのだがね。鎌藤玲樹は同じ会社に勤める俺の部下なのだが、一緒に連れ去られてしまってな。お互いにペアを組んでこれからなんとか生き延びようと話していたのだが......どうも最初に逸れてしまってね。俺一人で探すのにはどうしても限界がある。どうか彼を探すのを手伝ってくれないか?当然、君達への協力は惜しまない」
「もちろん良いですよ。俺たちは今とにかく戦力が欲しいので、協力してくださると助かります。
「だから、勝手に決めるなと......ふん」
もう思い切って勘助はスルーした。俺と可児さんは握手を交わし、俺たちは再び外のビル街へと乗り出した。

Re: ノードゥス・ゲーム ( No.16 )
日時: 2022/02/11 01:32
名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)

十四話
ゾロゾロと連れだって無人の都市を歩く。車がないせいで余計に広く見える車道の真ん中を歩く機会などここに来なければ無かっただろう。だからって連れ去られて良かったとは思えないけど。
それはそれとして、闇雲に探していても見つかる人も見つからない。聞けそうなことだけは聞いておこう。
「その人とはどこで逸れたんですか?」
「ああ。この先にある大きなビルのエントランスでアナウンスを聞いた後、逃げている間に自然とだな。もっとよく目を配っておけばと後悔しているよ。時間が経っているから当てになるかはわからないが、逃げた方向だけは同じだったと記憶しているよ」
つまり今の俺たちの現在地から見た位置関係は、今向かっている奥にあるビルのエントランス、ついさっき出てきたオフィスビルが後ろ。鎌藤さんと可児さんの逸れた場所は大きいビルからオフィスビルまでの間の道。その間を今は探しているということだ。
ぞろぞろと間延びした一列になってビルへ向かっていた行きと違い、今は思い思いの場所を探し歩いている。出発前に聞いた特徴によると黒い短髪の若い男性で、半袖のワイシャツにスーツのズボンを着ているらしい。正直そんな人実際の街にはごまんといるとは思ったけど、そういえばここでは一度も見ていない。俺含めほとんどが高校から大学生っぽく、飛び抜けて年上の可児さんを抜くと唯一社会人らしき山守さんも私服だ。
本筋からそれた服装考察はまた後にして、俺も鎌藤さん探しに集中する。ビルの中は他のみんながよく調べてくれているので主に裏路地を中心に覗いていく。この街エリアは両脇にビルの立ち並ぶ大きな道路を中心として形作られていて、裏路地を抜けるとそのまま別のエリアへ繋がっている。普通の路地よりもだいぶ広く、換気扇などの室外機なども実用性を度外視した結果取り外されて、イメージよりもずっと解放感のある裏路地になっている。人二人ぐらいなら横並びで通れるんじゃなかろうか。
その広さと単純さのため奥の方を覗き込めばそれで別エリアまで一望できる造りで、まあ、路地を覗くだけというのは少し申し訳なくなるほど楽だ。
後で改めてビルの中の捜索にも参加しよう。そう思いながら路地を歩き回る作業に集中していた。しかし一、二回ほど幽霊は確認できたにもかかわらず人影らしきものは一切目には入らなかった。静かに隠れていてば幽霊は存外あっさりと突破できる。運営はデスゲームなんて銘打っているのに本当に俺たちを殺す気があるのか逆に不安にすらなってくる。
そんな思いを抱きながら路地を巡っていると、覗き込んだすぐそこに人影を発見した。
目があって数秒間。お互いびっくりして目の前の存在をなんとか理解しようとしている。
俺の方がほんの少しだけ早く立ち直り、意外と大声は出ず、意外と小さくうわっ、とだけこぼれた。
それでもなおフリーズを続けるその人は、短い黒髪に半袖ワイシャツのスーツの男性、聞いていた特徴とぴったり合致した。
鎌藤玲樹さんですか?と聞き出そうとしたところ、それよりもずっと大きい声にかき消されその言葉が届くことはなかった。
ようやくフリーズが解けた様子のこの人が叫びながら素早く後退りして、両手を拒絶する様に突き出しながら俺と距離をとった。
「死んじゃうっ、死んじゃうから!俺今危ないから!離れて!君が危険だから!俺のことは放っておいて!」
離れていてもよく聞こえる声でこういったことを繰り返す。
「落ち着いて、落ち着いてください!俺は大丈夫ですから!そんなに言うなら近づきませんから!そこからでもいいので話をさせてください!」
必死の説得が功を奏したのか少し冷静さを取り戻した様子で視線がこちらへ送られる。距離は相変わらず少しづつ離れているけど気にせずに続ける。
「お話、大丈夫ですか?」
「あ......うん。いやっ、はい!大丈夫......です」
「無理しないで大丈夫です。俺は鷹城凖也です。あなたが鎌藤玲樹さんですか?」
「う......うん。そうだけど......どうして俺の名前を?」
「可児寛也さんがあなたを探してます。俺たちは協力を受ける代わりに一緒にあなたを探していました」
「俺を......?」
さっきの叫び声を聞きつけたのか、ビル内を探していたみんなが続々とこの裏路地へ集まってくる。もちろん可児さんも。
その姿を見た鎌藤さんは再び少し取り乱したが、俺とバトンタッチした可児さんの聞き込みによってぽつぽつと状況説明をしてくれた。
まとめるとこうだ。
まず幽霊に襲われた時、遠くまで逃げることを優先した可児さんと隠れてやり過ごすことを優先した鎌藤さんは必然的に逸れてしまった。それだけであればチップを使って簡単に合流できたはずだった。
しかし、うまく隠れる場所を見つけられなかった鎌藤さんは幽霊に捕まってしまい、その幽霊は体の中に入り何事も無かったかのように消えてしまったと言う。
何が起こるかもわからず、自分の中の幽霊が自分の意思と関係なく誰かを傷つけることを考え、チップの機能も切り一人隠れ続けていたそうだ。
「なので危険なんです。俺が今どうなっているのか俺自身もわかりません。可児さん、道連れにしてしまって本当に申し訳ありません」
「捕まっても死ぬわけじゃないんだ。それで死体も何も見つからなかったんだね。外見は特に何も変化ナシか......」
俺の隣で庄本さんが聞こえるような小声で呟く。わざと俺に聞かせているように聞こえるのは考えすぎか自意識過剰だろうか。
「はあ......いいか鎌藤。お前が死ねば道連れだと言うのに、俺を遠ざけてなんの意味がある。一度本当に冷静になれ。上司として、人間としてお前は死なせない。今まだ生きているのなら、必ず手段はあるはずだ。諦めるな。いいな?」
「......はい。ありがとうございます」
「わかったらこっちに来い。彼らと協力して事を進める手筈になっている」
「はい......迷惑かけてすみません」
「もう気にするな。お前なりに考えたのはよくわかっているよ」
しおらしくなった鎌藤さんはおずおずとこちらへ歩いてきた。この場を一番引っ掻き回しそうな光一は勘助に首根っこを掴まれている。口を出すな。手も出すなという事だろう。もしさっき光一が介入していたらぐいぐいいく性格が仇となってしまっただろう事を考えると少し強引でも致し方ない......とは思わなくもない。雪はその辺で話の流れを傍観し、山守さんは遠巻きに眺めている。
一段落したところで周囲を眺めていた俺に鎌藤さんが話しかけてきた。
「探しに来てくれたのに取り乱してしまってごめん。凖也くん......だったよね。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします。鎌藤さん」
「俺、普通に話すからさ、凖也くんも普通に話してよ。ちょっとくすぐったいから、さん付けも無しが良いな」
「......うん。わかった。よろしく、玲樹」
こんな話をしている間に、最後の目的地へ向かう列の最前列は進み始めようとしていた。今度こそ置いていかれないようにちゃんとついていこう。

Re: ノードゥス・ゲーム ( No.17 )
日時: 2021/05/31 01:42
名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)

十五話
いよいよ次が最後の合流場所だ。こんなビル街があるんだからもうツリーハウスがあることに関しての驚きはない。
一団でまとまって移動していると流石に幽霊に見つかる可能性も上がり、隠れる頻度も初めよりずっと上がっている。少し広がって各々周囲を警戒しながら街を抜け今は再び森林の中を逸れないように進む。幸いそこまで深い森ではないので見通しもよく見失ったり逆に幽霊が気がついたらすぐ近くにいたなどの事態も起こっていない。
「鷹城くん、ちょっとこっちおいでー」
見回しながら先頭付近を雪と歩いていると少し離れたところから庄本さんに呼ばれる。
「私も行く。あなた、一応私のペアでしょう?裏切りでもされたらたまったものじゃない」
「しないよ......」
「どうだか......いえ、ひとまずあなたの事だけは少しぐらいは信用する。協力するのだからね。裏切りはメリットもなく、その可能性を考えるだけ不毛。そう考えて良いのよね?」
「うん、もちろんだよ」
そもそも裏切るメリットってなんだろう。ペアが不利になれば自分だって不利なんじゃないか。考えるだけ意味はない気がする。
「信用......するようにはするから。できるかどうかはわからないけど。
ああ、信じるならこれも言わないと」
思い出したように雪はこう続けた。
「変に疑ってしまってごめんなさい。これからは気をつける」
「大丈夫。気にしてない。じゃあ、そろそろ行こう。あ、俺も雪の事信頼してるから」
二人で庄本さんの所へ向かうと、そこではその庄本さんと玲樹の激戦が繰り広げられていた。具体的には追う庄本さん、逃げる玲樹。
「......何やってるんです?」
「鷹城くん遅かったね!ちょっと彼捕まえて!」
「助けて凖也くん!」
状況一つ飲み込めないままに両方から救援を求められてもどっちに加勢すればいいのかわからない。話から聞こう。
「えっと......まず庄本さんは何を?」
「彼が幽霊に捕まったっていうなら調べたいでしょ、だからちょっと協力をお願いしてたの」
「玲樹は......」
「逃げてる!あれがお願いなもんか!男だって全身触られるのは嫌なんだからな!どんなに相手が可愛かったとしても!」
「私の友達は触られたいって言ってたけど?」
「俺は嫌!」
俺は断りを入れてくれれば別にいい。いやそうじゃなくて、触られる話はどうでも良くて。
「はぁ......戻りましょう。時間の無駄」
雪は大きなため息をついて
「君も来てたんだ。雪ちゃんだっけ?」
「そうだけど。いちゃいけない?」
「ううん、別に。でも君も興味わくでしょ。幽霊に捕まった人間の末路」
「不吉な言い方しないで!ていうか置いて行かれるよ!」
「それもそうか......じゃあ、ツリーハウスについたらじっくり見せてね。鎌藤くん」
そう言い残すと庄本さんはさくさく前へ駆けて行く。結果その場には俺たち三人だけが残された。
「とりあえず......助けてくれてありがとう。凖也くん、と、えっと......」
「山中雪」
「雪ちゃんか。俺のことは知ってるんだっけ?」
「名前だけ話にはね。あとは何も。あの場で聞いた話以外は知らない」
「そっか。ツリー......ハウス?だっけ。今向かってるのは」
「そういえば玲樹は最初の話は聞いてないんだっけ」
あの通話の場にいなかったことをつい失念していた。それはそうだ。あの場にいなかったからこそああやって探しに行ったんだから。
「うん。大雑把には聞いたよ。今このゲームのクリアのために協力することになったって」
「その認識で大体合ってる。まあ、実情はあの矢沢っていうのがほとんど仕切ってるのだけれどね。ほんと、私たちを部下か何かと勘違いしてるんじゃないの?」
ぶつくさと愚痴り始める雪。仲が良さそうに見えたり悪そうに見えたり、人間関係って複雑だ。
気持ち早歩きをしながら前方で小さく見えるみんなを追いかける。
途中から急にまた木々の雰囲気が変わった。これまでよりも密集しているにもかかわらず明るい印象を受ける。そして、いくつかの木の上には家らしきものが確認できる。
まさかツリーハウスが住宅街並みにあるとは思っていなかった。この中のどれが正解なのだろう。一際大きいツリーハウスの麓に立つみんなとは合流できた。この大きいの目立っていい。
どのツリーハウスから反応が来ているのかの特定に随分手こずっているようだ。その様子をみんなでたまに口を出しつつ見守っていると、左奥の方から人一人が出てきた。その人はこっちを真っ直ぐに見るとこう叫んだ。
「おーい!光一!こっちだ!」
どうやらあの男性が通話で話した理秀桐一さんのようだ。しかし誰も気が付かない。
一応呼ばれているのが光一なので、俺は光一に近づいて向こうで呼んでるよ、と言った。言われた当の光一は周囲を数秒間きょろきょろと見回すと、彼を見つけた様子で
「きぃくん!今行くー!」
と言って走り出してしまった。俺たちもそれに続く。
理秀さんの案内で登り込んだツリーハウスは、まず高いところ、それも木の上にあるという事実だけでテンションが上がる。中は大きな一室で、木の匂いが部屋全体に広がっていた。中で待っていたゆるふわと言った感じの茶髪の女性がきっと秋ヶ瀬椛さんだ。
一室の壁にはいくつかの扉、それから上の伸びる梯子。本当に暮らしをするのに不便のなさそうな住居だ。


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