ダーク・ファンタジー小説
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- ノードゥス・ゲーム
- 日時: 2021/02/03 23:15
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=11928
こちら近未来デスゲーム小説になっております。近未来の近がどれだけ近いのかは知りませんが近未来です。
そこまでグロ描写などはないですが、人が死にます。デスゲームなので。
よろしくお願いします。
登場キャラクター一覧
鷹城準也(たかしろ じゅんや)18歳 主人公 初登場>>1
山中雪(やまなか せつ)16歳 初登場>>2
鈴堂光一(りんどう こういち)18歳 初登場>>8
矢沢勘助(やざわ かんすけ)19歳 初登場>>8
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.8 )
- 日時: 2020/08/18 00:36
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
7話
「行った...な」
奴らが過ぎ去ってある程度経ってから呟いた。
「そんじゃ!隠れながら自己紹介といきますか!俺、鈴堂光一!18歳!よろしくな!」
全体的に色素の薄い髪に真っ黒いあほ毛が垂れたこの人は一息にこう言って満面の笑みを浮かべた。
「えっと......鷹城凖也、同じく18です」
溢れ出る明るいオーラに少し圧倒されつつ言う。
「なんだ!同い年じゃん!んな敬語とかいいのに。気にしないしむしろやだ」
少し拗ねたように言われた。
「じゃ......まあそう言うことなら......よろしく。えっと......光一」
「おう!よろしく!で、そこの子は?」
「山中雪、16歳」
めんどくさいという気持ちを隠そうともせずに言っているのが丸わかりだった。
「矢沢勘助。19。光一とペアだ。敬語はいい」
最後の担がれてた微妙に長い気がする髪の人が赤い眼鏡をかけ直しつつ言い終わる。
「で......光一は雪を助けてくれたんだよな?」
「そおだよ!それ以外何があんだよ!たっしー!」
明るくハイテンションに言う。が。
「たっしー!?」
「そ!鷹城じゃん?だから!別のがいい?もっと候補はあるけど...」
「いやいい、それでいいよ」
おそらく俺のあだ名候補であろうものを指折り数えながら言っていたがどう考えてもこれが一番マシだった。
「助けてくれたこと自体は感謝してる。ありがとう。でもわたしは貴方達を信用はできない。何が目的でわたしを助けたの?鷹城、あなたはなんでそんな馴れ合ってるの?敵か味方かもわからないのに」
雪が口を開く。一息にそう言い切った。でも俺としては別に光一達を疑うなんて考えは一切なかった。
「目的も何もない。こいつひとりの気まぐれだ」
「信じられない」
勘助はそう言うが、間髪入れず雪は信じないと。
「じゃあさ!協力しよおぜ!四人全員で生き残るんだよ!」
光一はまるで代替え案を出すように言うがまったく代替え案になってないし名案出したぜ!って顔して雪と勘助に白い目で見られるのに一瞬と時間はいらなかった。
「お前は一旦黙っていろ。なんの解決にもならない。まあ......」
こっちを見て勘助は続ける。
「...お前達がそれでいいなら俺は別に構わない」
雪は相変わらず淡々と
「わたしは貴方達を信じる気にはなれない。でもその提案を一蹴するのは少し考えもの。だから鷹城。貴方に任せる」
雪がすぐに断らなかったことに少し驚きつつ、俺は別に断る気もしないし断ろうとも思わない。
「じゃあ......協力するってことで......よろしく、光一、勘助」
「よろしくな!たっしー!」
「......やっぱりね」
協力戦線が確立された。
どうやって戦うかはこれからだが。
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.9 )
- 日時: 2021/02/02 17:34
- 名前: sol (ID: qgqJnAGY)
八話
「とにかく、どうやって生き残るか何だけど私はほかのひとたちと合流した方がいいと思う。その方が戦術の幅も広まる」
意外にも雪が初めに口を出す。しかしその裏側から一刻も早く同盟関係を解除したいという感情がにじみ出るどころか溢れ出していた。
「成る程、一理あるな。ならどうやって合流するのか、具体的な案を教えてもらおうか」
「他人と連絡が取れるならそれがいいと思ったけどどうも自分のペアか、直接会って話した人同士じゃないとチップからの連絡は取れないみたい。その証拠に、私の連絡欄からはあなたたち三人しか入ってないわ。もともと少なかったけど。だから、移動して片っ端から探すしかないと思う」
確かめてみると確かに、そこそこ遠くにいる人でもチップ番号が表示され、それを押せば交信できる連絡欄に、登録していればどこにいても連絡できる登録欄もあるチップの標準アプリ[連絡]の中には登録は全部消え、代わりに登録した覚えのない雪や光一、勘助らが入っていた。そして連絡欄には一人もいない。
「もっと遠くにいるだけかも知んないしさ!それレーダーにして探すってのは!?」
「ほかの、つまりペアか直接会って話した人以外連絡欄にも登録欄にも入らないのはもっと人でいっぱいの時に確認済み」
「そっかあ......」
光一はしょぼんとした顔を見せる。感情表現豊かだな。
「ちびっこの割に結構調べているんだな」
「サイズの件か年齢の件かわからないけど、私は子供でもちびっこではないと思ってる。あとこういうのは私の得意分野だから」
「そうか。なら頼りにする。ちなみに両方の件についてだ」
「失礼ね。殴るわよ」
「上等だ。来い」
このやり取りを互いに目も合わせず、お互いの作業に没頭しながら無表情に淡々としていたのには少し戦慄する。
「なーたっしー、こいつら恐えよー頭良すぎてー」
「俺はお前の百面相が恐いよ光一」
正しくは運動神経もだが。
「決まり。とにかくどこかに移動して、別の生き残りの人を探す」
「いや、愚策だな。そんなことをしたら全滅がオチだ。この近くにネクロマンサーが来るのを待ち伏せる」
向こうでは何か戦略相談をしている。あいも変わらずお互いの作業に没頭しながら無表情に淡々としていた。怖い。
「じゃあさあ、俺が探してくる!」
光一がまたもや名案!という顔をして提案する。
「何を言っているんだ、お前が死んだら俺も死ぬ。そんなリスク負えるわけがない」
「大丈夫!俺は死なねえから!」
勘助はごもっともな事を言うが、満面の笑みで大丈夫を言い放つ。
「根拠は?そう簡単に死なないとか言うからには、それなりのものを用意しているんだろうな」
「いや?でも俺強いし!速いし!振り切れるし!」
まあ......あれを見た後では根拠にならなくもないが......
「......わかった。不安な事この上ないが、ひとまずは任せよう」
勘助はため息をつき、諦めたように言う。
「やりい!じゃあ、行ってくるわ!」
「待て!近くに奴らがいないのを確認して、帰ってくる時も見つからないように来い!人を見つけたら会話して登録欄に入れて来い。それからそいつらにいつでも連絡出来るように指示して、何かあったら報告するように言え。連絡と報告の件を拒否したやつは引き入れなくていい。わかったな?」
「おん!わかったわかった!行ってくる!」
相当傲慢な指示を出したが、こんな条件に同意する人いるのか?光一は光一でとてつもないスピードでどこか行くし。
「さて......ひとまずは待ちの時間だな」
勘助が眼鏡を外しつつ言う。ようやく息つく間ができたと言わんばかりにリラックスし始める。
「お前たちも、そんなに根を詰めて緊張してると、いざという時に最高のパフォーマンスを発揮できないぞ」
目を閉じたままこちらに声をかけてくる
「そう言ってるあなたこそ、眼鏡外しちゃいざという時の奇襲に対応できないんじゃないの?」
「それもそうだな。たしかに俺は目が相当悪い、だから外すとほとんど見えない。当然眼鏡の度は相当きつくしてある。よって目が疲れるんだ。休める時に休めないとそれこそいざという時の奇襲に対応できない。」
......この二人は意地でも目を合わせたくないようだ。というより顔すら合わせようとしない。
それと、眼鏡の度がきついと聞けば試したくなるのが人の性だ。
「度がきついってどれぐらい?ちょっとため......いやきっつ!?」
びっくりした......視界が無事に死亡した......今もまだちょっとくらくらする......
「貴様、人の眼鏡を勝手にかけるとはいい度胸だ。覚悟はできているんだろうな?」
「えっ......えっ?あっ......すいません......」
すごい怒られた。そこまで怒ることは無いと思うんだけどな......
「とにかく......返してもらおうか」
「はいこれ」
わざわざ困らせるつもりはないのですぐに渡す。
「お前......そんな鷲掴みにするな......」
めっちゃ狼狽えてる。何故だ。
「あー、えっと、何か悪いことした?ごめん」
眼鏡をかけてこっちを見て微妙に恨みのこもった目を向けて来た。怖い。
「......もうレンズには触るなよ。常識だろまったく」
そんなこと言われたって......今時眼鏡とかほとんど見ないし......
「......というよりなんで眼鏡なんだろ......」
「視力を治してもどうせまた落ちるからだ」
やばい、心の声が出た。
「あ......はい......」
まあ納得だ。視力治したからってもう落ちない訳じゃないし。
「完全にリラックスしてるわね。二人とも」
ちょっと呆れたように雪が口を挟む。
「......まあ、ずっとピリピリしてるよりましかもしれないけれど」
ホログラムをいじるのをやめ、こちらを見て言う。
......なぜか見つめ合う形になった。
特に変な考えもわかず、思ったことといえば黒髪ロングがさらさらしてて綺麗だなーということとやっぱ小さいなーってことぐらいだった。
「......なによ」
「あっ、いや、別になんでもない」
「そう」
やっぱぶっきらぼうだな。俺嫌われてんのかな。普通に雪の性格だといいな。
数時間の間、話しつつ、警戒しつつ、無言時間がありつつ、光一を待った。
そして、遂に待ち望んだ連絡がきた。
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.10 )
- 日時: 2019/03/10 21:55
- 名前: まりねこ (ID: ACjp5Dd4)
デスゲーム系の小説ですか!始めて読みました!
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.11 )
- 日時: 2021/02/02 17:33
- 名前: sol (ID: qgqJnAGY)
九話
勘助が何やらちょっと待ってろと言ったと思うと、通話メンバーに指定されましたという表示。すぐに承認すると声が聞こえる。
「あー、もしもーし、通じてるー?」
光一の声が聞こえてくる。何はともあれ無事なようで良かった。
「今時通じない電話があるわけないだろう。
で?調子はどうだ?」
「ああ、うん!とりあえず五人、さっきの条件のんでくれた人いたよ!」
明るく言う光一に、正直驚いた。
「のんだって......さっきの条件を......?
何か伝え忘れたとか......」
「ないない!大丈夫だよ多分!」
「いや......でも......」
困惑しつつどもっていると勘助からの横槍が入る。
「仮に、だ。もしお前が死と隣り合わせの状況になり、どうしようもない絶望感にのまれている時に自信満々で自分達についてこい、と言う奴がいたら縋りたくなるだろう?そいつらもなんの打開策もないという可能性など目に入らないだろう?そういうことだ」
勘助は冷静に言い放つ。ここまで沈黙を保ってきた雪もここで口を開く。
「藁にも縋る思い、ってことね。彼を行かせたのも身体能力だけじゃなくて、能天気で自信満々に交渉してくれると踏んだから?」
「ご名答だ。下手に深刻な顔で交渉するより、ああいうのの方がいい」
そんなところまで考えて行動させたのか。俺は今聞いて初めて想像が及んだ。
「なあーたっしー?俺ってもしかしてバカにされてるー?」
能天気だのああいうの扱いされた光一が不満げな声をだす。
「まあ、今回はプラスになってるんだからいいんじゃないか?多分二人は褒めてる意味合いも含めてると思う」
なんとかフォローする。
「いや、別に褒めてなんかいないけど」
「右に同じだ」
雪と勘助が俺の必死のフォローをかき消す。
......もうちょっとは気を使ってやってもいいんじゃないか。
「やっぱ俺二人にバカにされてる......!」
軽くショックを受けたような声で光一が落胆する。ただ、そこに本気の落胆は感じられない、あくまで雑談の一環のような雰囲気だ、俺にもしこうして話せる友達がいたらこんな感じなのか。
......なんというか、ただのペアとか同盟相手とかじゃなくって、友達になれたら楽しそうだな。
「で?どうするの?時間は無駄にできないでしょ、とりあえず早く帰ってきて、奴らには気をつけて」
「とりあえず、ここに奴らを連れてくるなよ。あと死んでもだめだ、わかったな?」
「わかってるよそれぐらい俺だって!信用ないなあ!」
......友達になりたいって願いはここまで前途多難に思えるものだったのか。
なんの宣言もなく勘助と雪が通話メンバーから抜ける。
「えっと......じゃあ、また後で」
そう言って俺も電話を切る。
しばらく待つと、光一が戻ってくる。
「おまたせぇ!待った?」
そう明るく言い放つと勘助はため息をついて聞く。
「......首尾はどうだ?」
「......なんでそんな怒ってんだよ」
むすっとしながら光一が言う。
「別に怒ってないし首尾はどうだと聞いているんだ」
「怒ってないならいいや!」
......もしかして光一はあほの子というやつではないのか。失礼すぎて絶対に口には出せないが。
「......で、結局首尾は」
「ああ!言った通り、5人増えた!」
「わかった。上々だな。すぐに連絡をとるぞ。光一、電話をかけろ。通話メンバーには俺たちとその五人を指定してくれ」
「わかった!」
勘助が指示を出し、光一が従う。完璧に見える構図だった。が、
「待って」
雪がストップを出す。
「そいつらが信用できるという確証はどこにあるの?なんでそんなあっさり協力しようとしてるの?怪しいでしょ?」
「雪......?急にどう......」
静止しようとしたが、雪は続ける。
「そもそも、私はあなた達だって信用してない。ペアの鷹城が信じるって言うから仕方なく、不本意に協力してるだけであって、私自身は元々は一人でやってくつもりだったの。それなのにこんな......」
「雪!今はそんな話してる場合じゃないよ!」
肩を掴んで制止する。すぐに振り払い一瞬憎しげな顔をした後は少し落ち着いた様子で、小さな声でごめんなさい、と謝っていた。
「要約すると、そいつらに信用に足る要素はあるかっていうこと」
雪は冷静に言い直す。
「ないな。だが信用しなくてはならない苦境に立たされている。不十分か?」
「......いいえ、少し考えればわかることね。私が悪かった。でも、裏切りっていう可能性は念頭に置いた作戦を立てて」
「わかった。任せておけ」
二人が会話している途中、光一はおろおろとして自分が電話をかけるべきかをこっちにしきりに聞いてきたが、確実に会話が終わったこのタイミングでかけるべきだと思う。
......無事にこのタイミングで電話をかけられ、作戦会議の幕が上がった。
ーーーー
まりねこさん!返事遅くなってすいません!デスゲーム系これ始めてですか!?面白いですよ!!!
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.12 )
- 日時: 2022/02/11 01:24
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
十話
「......もしもし?」
「お前たちが協力者か。俺は矢沢勘助。以降は俺の指示に従って動いてもらうことになるが、構わないな?」
「勿論だ。俺は何をすれば良い?」
落ち着いた中に焦りが見える声色で男性と思われる声の主が答えた。
「焦るな。まずは全員名を名乗れ。こっち側のお前たちもだ」
「はーい!俺、鈴堂光一!よろしく!」
「お前はいい」
二人のやりとりに少し笑みが溢れた。電話相手の協力者の人も少し緊張が抜けたようで、滞りなく自己紹介が続く。はじめに聞こえて来たのは少し不安げな男性の声だった。
「俺は山守祐司。ペアは、その......」
やまもりゆうじ、と名乗った男性がどもっている間に、凛とした清楚な雰囲気の声がする。
「庄本悠里。ペアはいません。よろしくお願いします」
小さくあっ......という声を出した裕司さんを気にも留めずしょうもとゆうりと清楚そうな声で女性は名乗った。
「秋ヶ瀬椛です。ペアは今一緒にいます」
「理秀桐一!椛さんのペアで、彼氏です!」
あきがせもみじとりしゅうきりかず。名前の雰囲気に似合って落ち着いた声の椛さんと名前の雰囲気に似合わず猪突猛進そうなイメージのわく声の桐一さん。......そろそろわからなくなってきた。
「可児寛也。ペアとは今逸れている」
この人はすごくわかりやすい。かじひろやさん。明らかに年代が上の......バイト先の社員さんと同じかそれ以上いってるんじゃないかという中年声。本当にわかりやすい有難い。
「あ、そうそう、伝えるの忘れてたんだけど可児さんのペアを探すの条件だったからよろしく!」
光一が口を挟む。勘助が一瞬驚いたような顔をしたが、軽くため息を吐いてそういうことは先に言えと小声で漏らす。
「それで、可児といったか。そのペアを探すという条件について詳しく教えてもらおう」
「ああ。俺のペア、鎌藤玲樹というんだが、このゲームが始まった直後に逸れてしまってな。電話をかけても繋がらない、俺一人だとろくに身動きも取れない。
そこで交換条件だ。俺のペアを一緒に探してくれ。代わりに協力は惜しまない。どうだ?」
「......いいだろう。条件を呑む。労力に見合うだけの働きは期待させてもらうぞ。かまとうりょうき、だな?そいつの名前は」
「そうだ」
「お前たちもそれでいいな?」
勘助がこちらを振り向いて確認を取る。
「うん」
俺は返事を返すが、雪は黙って頷くだけだった。
「さて、何よりまずは合流が最優先、作戦も人探しもそれからだ。誰か地図のようなものを持ってる奴はいないか?」
水を打ったように静まり返る。当然俺も持ってない。
「......まあ、予想はしていた。自分がいる場所を詳細に説明できる者は?」
「はい!はい!俺たちがツリーハウスにいます!」
おそらく桐一さんだろう声が聞こえてくる......
「ツリーハウス!?」
あまりに意外すぎる内容につい大きい声が出た。自然公園にツリーハウスなんて聞いたことない。もっと森林のど真ん中とかにあるものとかじゃないのか。
「ねえ、鈴堂に聞くのが一番早いんじゃない?みんなの場所知ってるんでしょ?」
雪の意見はもっともだ。何でもっと早く気づかなかったんだろう。
「確かに......でも場所なんてそんなにはっきりと覚えてる?」
「わかる範囲でいい。教えろ光一」
「うん!桐一さんと椛さんがツリーハウス、悠里さんが村、可児さんが街、裕司さんが川にいたと思う!」
「......ふざけているのか?」
ツリーハウス以上におかしい場所がポンポンと出てきた。勘助の反応は正直あまり間違っていない気がする。
「ふざけてなんかない!ほんとだって!」
「はい、本当です。僕は今川沿いで隠れてます」
裕司さん......かな?光一の発言を保証する。でもそうするとこのゲームの舞台が変わってくる。電話の方からの声もさっきの裕司さん以降聞こえてこなかった。
「え、気づいてなかったの?明らかに最初にいた人数が少なかったし、ルール説明もさっきまで立体映像じゃなくて上からのアナウンスだったし、みんなバラバラになってるっていうところまでは予想つくでしょ?で、わざわざバラバラにするならそれぞれエリアみたいなものがあってもおかしくはないんじゃない?」
そこまで一息に言い切ったのは雪だった。電話の方からへえ......という声が聞こえたが誰の声かは判らなかった。でもさっきも確かに人数が少ないのは感じたけどそれはさっきの騒動で減ったのかと思ってた。でもなんで、
「はいはーい!なんでアナウンスだとダメなんですかー!」
光一がまさに聞きたかったことを聴いてくれた。立体映像じゃなかったことがなんでそんなに重要なのか。
「アナウンスがダメなわけじゃなくて......まあ、今までずっと立体映像だったのに急にアナウンスになったとしたらそれには普通理由があるでしょ?人が散らばってるときなら上からアナウンスする方が簡単に全員に聞こえて効率的だろうって。休憩時間の終わりの時もそうだったしね」
「へー!」
聞いたら納得できた。
「かなりの観察眼と推理力だな。ただ気づいていたなら教えて欲しかった。
......それと光一、なんでお前はそんなに大事なことを報告しなかった......」
勘助はかなり呆れながら光一に話しかける。嫌な予感がする。
「......そんなに大事?」
「大事だ!エリアに分かれているなら想定していたより広いだろうことが予想できる!誰がどこにいるかの連絡もしやすくなる!当然合流も簡単になる!」
「勘助......一旦落ち着かないか?ほら、作戦たてないといけないし、結果的に知れたし......あんまり大声出すと奴らに聞こえるかもしれないし......」
嫌な予感が的中してこのゲームに参加させられる前からよくなる仲裁ポジションにまた就任し、勘助をなだめる。
「そう......だな。大声についてはあんまりお前には言われたくないが......たしかに今はこれよりも大事なことがある。
光一、全部見てきたお前に聞く。村と街とツリーハウス、どこが一番潜伏......敵に見つかりにくそうだと思った?それと協力者に聞く。プレイヤー以外の人間は見かけたかということ、お前たちから見た自分の居場所についての見解を述べてくれ」
すぐに普段の調子に戻ってくれた。仲裁した甲斐がある。
「プレイヤー以外の人......は見かけてないし近くにもいないです。ただ川辺だからいないってだけで街とか村とかは違うかもしれないですけど......」
「街にも人はいないな。人のいない街というのは不気味なものだが、大通り以外は見通しは効かず、逆に言えば隠れる場所は多い。潜伏するには隠れやすいが生活基盤は整っていない......といった感じか」
「村にも人は居ないですよ。家の構造が単純なので隠れるなら街の方がいいかもしれませんね。その分室内から敵を捕捉して攻める、とするなら先制は取りやすいかもしれないです」
「ツリーハウスの付近では人は見てないです。立地としては上からの監視になるので結構隠れやすいんじゃないでしょうか。広くてかなりの人数乗れそうですし、生活するにも同じくそこまで不自由はしないと思います。逃げ場はありませんが......」
協力者の皆さんが自分の居場所の分析と人について話している間、光一はずっと考え込んでいた。その隙をつくように雪が話し出す。
「声で気づかれるかどうかは大丈夫だと思う。鷹城が矢沢の眼鏡で大声を出した時ちょっと遠くにあいつがいたけど少しキョロキョロしただけで気づかれてなかったから。多分あいつら耳は悪い。よっぽど気づかれようと行動しない限り大丈夫でしょう」
「それもっと早く言ってよ......」
今更ながら背筋が凍る。知らないところで間一髪だった。
「......ツリーハウスにするか......」
勘助が呟く。
「えっ待って待って!今考えてるから!二択まで絞ったから!」
聞かれたのに先に答えを出されてしまった光一が悩みながら頼み込む。のを勘助がスルーして合流方法を話し始める。
「お前たちと話した光一の連絡欄ならある程度近づけば場所がわかる。それを頼りに俺たちが迎えに行く。合流次第ついてきてくれ。秋ヶ瀬と理秀はその場を死守して待機だ。最後に鎌藤を含めた全員を連れてそこへ行く。いいな?」
まだ悩んでいる光一を除いた全員が承諾する。そのあと勘助が抜けたのを皮切りに各々通話を抜けていく。
まだ待って待ってと言う光一を宥めて(結局また俺が)、周囲に奴らがいないのを確認して、出発した。