ダーク・ファンタジー小説
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- ノードゥス・ゲーム
- 日時: 2021/02/03 23:15
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=11928
こちら近未来デスゲーム小説になっております。近未来の近がどれだけ近いのかは知りませんが近未来です。
そこまでグロ描写などはないですが、人が死にます。デスゲームなので。
よろしくお願いします。
登場キャラクター一覧
鷹城準也(たかしろ じゅんや)18歳 主人公 初登場>>1
山中雪(やまなか せつ)16歳 初登場>>2
鈴堂光一(りんどう こういち)18歳 初登場>>8
矢沢勘助(やざわ かんすけ)19歳 初登場>>8
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.2 )
- 日時: 2020/08/05 00:38
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
二話
「......組みましょう」
ふと下の方から声がした。最後の生存の希望に走馬灯は止まった。見ると小さな女の子がこちらを見上げて立っていた。間違いない。俺に言ったんだ。
「俺?大丈夫か?」
尋ねると
「もう周りにあなたしか残ってないからしょうがないじゃない。こんなとこで死ぬよりまし」
即答された。
しかしこの話をつき返すと行き着く先は2人とも死だ。だったら組む他ない
「良いのか?本当に?」
「初めから良いって言ってる」
互いの意思を確認するとすぐにペアを組む画面の指示通りに2人のマイクロチップをかざした。
すると最初の画面に戻って
【ペアが登録されました】
と表示されて、残りギリギリのタイマーは無くなっていた。
その後すぐゲームマスターの立体映像が復活し、
「五分過ぎたので組めてない人には消えていただく事になります」
と言うと同時にさっきと同じように人が消えていく。ペアを高望みしていた人も死んでいったのが遠目から見えた。そして
「これにてここには晴れて組めた方々のみが残っていることになりますね。でしたらまずはペア同士の交流の時間といたしましょう。さあ、これがあなた方の最後の憩いの時になるかもしれませんのでね。大切にいたしますよう。そこの扉から出て振られたペア番号の部屋に行って下さい」
そこの扉と指さされたのは木製の落ち着いた扉だった。
ドアに一番近い人達から入っていくとそこにはホテルのような光景が広がっていた。ペア番号というのはさっきまでタイマーがあったところに新しく出ている番号だろう。9054と書いてあった。木製の扉から入って行って女の子とは終始無言で探してやっと見つけたのが上の表札に9054と書いてある部屋だった。部屋に入ってすわると無言のプレッシャーが襲いかかって来る。
「ねえ、えっと、名前は?俺は鷹城凖也」
と聞くと、横目で見られ、ため息をつかれ、
「山中雪。雪と書いてせつ」
至って端的に教えてくれた。
そこからはもうずっとホログラムにつきっきり。
一旦諦め、俺もホログラムを見る。トップニュースになっていたのは第六感ついに解明!?異能を持つというAさんにインタビューなどという今心底どうでもいい内容だった。その下に一応という形で連続集団誘拐事件のニュース。おそらく俺たちの事だろう。集団誘拐より異能力かと思って深いため息をつく。
すると唐突に
「一応言っとくけど、あなたと慣れ合うつもりも進んで協力するつもりもさらさらないから」
ホログラムから目を離さず、ぶっきらぼうに言われたセリフにとんでもなく驚いた。
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.3 )
- 日時: 2020/08/05 00:40
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
三話
「協力しない......って?」
「あなたとペアになったのは仕方なく生きるためだから。よっぽどのことがない限り協力なんてしない。そもそも他人なんて信じられない。それとも何?あなたは出会ったばかりの人をホイホイ信用するの?詐欺には気をつけた方がいいと思うけど」
「でも......」
と反論しようと言い出したはいいけど具体的な反論が思い浮かばず引っ込めざるを得なかった。
しばらく無言の時間が無限のように続き、随分気まずくなって来たあたりで急に音が鳴り響いて放送が入った。放送の声はゲームマスター。
「プレイヤーは全員先ほどの大部屋へ集まりなさい。繰り返す。プレイヤーは全員大部屋へ集まりなさい」
気まずい無言のまま大部屋に集まると多くの人が不安そうな顔をしていた。こんなとこにいる限りいつ殺されるかわかったもんじゃない以上当たり前ではある。
「えーでは皆様、改めましてルール説明を致しましょう。なに!難しいことはございません。アプリを開き、ルールという場所が新しくある筈です。そこを読み上げるので開きながらお聞きください。
1,ここは巨大な地下である。階層ごとのルールに従い上がって行き、地上に出ればクリアとなります。その場合、もう二度と私達によってあなたの命が脅かされることはございません。また、クリア後のあなたの生活は私達で保証させていただきます。
2,ゲーム中の死亡条件は以下に挙げるものである。
(1)ゲームをクリアする過程での死亡(他プレイヤーに殺された場合を含む)
(2)各ゲームに付加された死亡条件を満たした時
(3)もう一つは最も重要な為後述
その3,第1階層は負け抜け制により、決められたゲーム数をクリアすれば次の階層へ進む
...以上になりますがルールは予告なく追加されることもあるので頻繁なチェックを推奨致します。
お気付きの方、いらっしゃいますよね?最後の最も重要な死亡条件、それは自分のペアが死ぬこと、となっております。
ペアが死ねば、自分も死ぬ、ということは確実に協力しなければいけなくなる......ということでは。
「......やっぱりね」
隣の雪が呟いた。
「え、わかって......いつから?」
「ペアを決めるって言われた時からに決まってるじゃない。そんなこともわからないの?」
即答で言われてちょっと驚いて後ずさる。が、雪は続ける。
「念のため協力しないって言ったけど意味なかったのは残念。外れて欲しかったけどね」
そう言い終わるあたりでゲームマスターが再び口を開く。
「しかし、これには一つ抜け道があります。ずばり、自分でペアを殺した場合あなたは死なずにすみます。武器は道具欄をご確認ください?ですが、この方法には一つ注意が......」
言い終わる前に、というより武器は道具欄に......のあたりで多くの人が手に武器を持ち、殺しあったり交渉したり、誰もゲームマスターの注意など聞いていなかった。実際俺も含めて耳には入っていたが意味なんてほとんど理解していなかった。(ちなみに道具欄というのはマイクロチップに初めから入っている実際の道具の持ち歩きが出来る便利アプリ。武器類などの危険物や違法なものは本来入れられない筈)生きることを必死に求めていた。心臓の鼓動は高ぶり、思考も精神状態も正常じゃなかった。俺も生きたいには生きたいが、この子を殺してまで生きたいかと自分に問いかける。
その結果はNOだった。
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.4 )
- 日時: 2020/08/05 00:42
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
四話
「どうしたの?殺さないの?怖気付いた?」
表情も何も変えないで雪は言った。まるで自分が殺されて当然というふうに。
「え?いや......そんなこと言ったら君だって......」
そう言っても表情一つ変えず、いや、表情は変えずとも目の奥に微かな憂いをたたえて
「人を殺してまで生きたいと思えないから、私。そもそも......」
その言葉を聞いた瞬間、考える暇もなく、言葉を最後まで聞く余裕もなく片肩を掴んで叫んでいた。
「なんでそんなこと言うんだよ!俺は生まれてからずっと、誰も興味も抱かれずに、ただ一人で生きてきただけのやつだから!居なくてもいいんだよ!そんな奴のために君が命を捨てる道理はない!君には生きる価値がある!」
ようやく表情を変え、腕を振り払って、さっきまでの冷静な顔はどこに行ったのかというほどに激昂して、さっき言いかけていたことさえ放り出して雪も叫び出す。
「うるさいわね!急に不幸自慢なんか始めて!それにっ」
一瞬の躊躇いがあったのち、
「それに、私だって私が死んで支障なんてない!ずっと誰ともまともに関わらず生きてる!親にも血縁者にも捨てられたし!義務以上に付き合いも会話もしたことない!私に生きる価値があるなんて、何も知らないくせに、軽々しく言わないで!」
一気にまくし立てて肩で息をしている。下から睨みつけるように見上げられながら、我ながら偽善にしか聞こえない反論が口をついて出てくる。
「だからと言って死んでいいことにはならない!」
「そんなことあんただって同じじゃない!」
互いに一歩も譲らず、数秒経ってようやく落ち着いた様子の雪が
「だったら、別にどちらも死ぬ必要ない。もともと50か0かが半々だったのが100か0かでちょっと0に傾くぐらいじゃないの。絶対に殺せ、なんて言われてないし、そもそもあいつの言葉には続きがある」
異論はなかった。譲られないし譲らないならこうするしか手はない。そして今になってようやくゲームマスターの言いかけていた続きの存在を思い出した。
「わかった。でもそうするなら......」
「絶対生き残る。当然でしょ」
でもさっき協力しないって言ってなかったっけ?というのが気になったのがばれたようで雪は少しばつが悪そうに
「念のため言っただけで協力しなきゃ死ぬぐらい予測できたし......それに、生き残るなら協力しなきゃ。だからあれは取り消し」
と言うだけいって雪はすぐまた無表情に戻りツンとして前を向いてしまった。
「えーっと皆さん。大盛り上がりのところすみませんが人の言葉は最後まで聞きましょうか」
ゲームマスターが声を出すと他の人たち、俺らのように0か100かを取った数組と血に濡れた武器を持つ大多数がそっちを向いた。いくつかのペアは相打ちで両方死んだようだった。すでにゲームマスター側によって確実に殺すためか、光に包まれて死体も血も消えていく。
「このゲームでペアを殺すということは死亡条件は減っても死亡確率はうなぎのぼりですけれども?」
その言葉を聞いた瞬間の大多数のブーイングは凄まじいものだった。もはやブーイングをする元気もない人間も結構な人数いた。
「いや、勝手に人の言葉を曲解しちゃった方が悪いんですよ?それに自分が生き残るために簡単に人を殺すような人間にかけてやる情けなんてあると思います?」
一理ある。とは思ったが大多数はまったく納得いかないようだった。もう何を言っているのかも聞き取れないほどの罵声を浴びながらゲームマスターは呆れたように
「はあ...殺人はいけない事です。それを見たら恐れます。怒ります。でも殺さなきゃ自分が死にます。じゃあ殺します。ここまではわかるんですよ?実は殺したら死ぬかもです。言おうとしてる人を遮って殺しました。で、ふざけるなですって?自分勝手もいい加減にしろ。
......人を殺すことがそんなに軽いとでもお思いで?」
それをデスゲーム開催側が言うかと言う台詞をゲームマスターが言い終わる頃にはすっかり綺麗な元の部屋に戻っていた。かなり人口密度は下がったが。
「ではこれより始めるのはデモンストレーションゲーム。第1階層の全5ゲームにはカウントされるのでご安心を。各階層第1ゲームのデモンストレーションゲームはここにいる全員でプレイします」
いまだおさまらない怒りの声をBGMにゲーム開始が宣言される。
「では気をとりなおしまして...
負け抜け制第1階層デモンストレーションゲーム。幽霊看破、開始です!」
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.5 )
- 日時: 2019/12/07 17:36
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
5話
「幽霊......看破?」
ゲーム名を言われただけではイマイチピンとこないネーミング。ぼそっと口に出しても何がなにやら。
「では、左側のドアにお入り下さい。そこがゲーム会場です」
促されるままにドアをくぐると、目に飛び込んできた白い光に思わず一瞬目を瞑った。目を開けるとそこには、
「......何ここ」
よくわからなかったが聞いたことがある。池や芝生、木などがひたすらに広がっているここはたしか......
「自然公園」
右下から落ち着いた声が聞こえ、そこを見るといたのは雪。すでに調子が戻り、さっきの言い合いが無かったかのようだった。
いきなりマイクロチップのノードゥスゲームアプリからの【アイテムが追加されました】という通知が来た。アプリを開きアイテムストレージを見ると、実体化カードと書かれたアイテムが一番上にあった。
タッチすると【取り出す】というコマンドが出て来たのでタッチすると、ヒュンッという効果音がつきそうな感じで目の前にカードが現れたので慌ててキャッチ。白地に実体化と黒文字で書かれたいたって普通のカード。
右下を見ると雪のカードもあまり自分のものと変わりはないが、黒文字で浄化と書かれていた。
「みなさんにはここでひとりのネクロマンサーを倒してもらいます」
空からゲームマスターの声が聞こえてくる。全員が一斉に空を見上げ、声に耳を傾ける。......周囲の人が少ない気がする。やっぱりさっきので一気に減ったのが広い場所に出ると顕著だ。
「ひとりに一つ、実体化カードと浄化カードを配布しました。ペアの方々は一つずつ、その他の方にはランダムに。二枚でワンセット。公園で遊ぶ子供は全員ネクロマンサーの召喚した幽霊。彼らはあなた方を狙ってきます。とり憑かれたが最後。死んだも同然」
一気に緊張感が高まるのが空気を通して伝わってくる。
「幽霊達には実体化カードを使い、その後浄化カードを当てることで倒すことができます。ネクロマンサーも同様」
幽霊とその元締めを看破する...だから幽霊看破。
「幽霊たちを倒して、ネクロマンサーを見分け、倒す。その時に生き残っていた者がゲームクリアです」
気持ちを引き締める。負ければ死という極限状態で、いかに生き残るかを考える。
「最後に一つ注意ですが、ネクロマンサーがほかの幽霊たちのように倒せると思わないよう。では、健闘を祈ります」
声が聞こえなくなる。周りで遊んでいた子供が一斉にこちらを向き、駆け出すが、足は動かず、影はない。
ゲームが、始まった。
- Re: ノードゥス・ゲーム ( No.7 )
- 日時: 2020/08/05 00:44
- 名前: sol (ID: q4Z4/6rJ)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=11928
六話
「全員!一旦逃げて体制を整えよう!そこの茂みに行くんだ!」
その時とれる最善手を誰かが叫んだ。たしかに迎撃手段があるといえ数が多すぎる。ここは逃げて各個撃破がいいい。
俺たちは広い茂みに各々飛び込んでいった。が、走って逃げているうち気付いた。
「雪!?もうちょっと早く走んないと...」
明らかに雪が遅れてる。ほぼ最後尾にも近い位置だ。
「うるさい。そんなに騒がないで」
なるほど作戦か。悪いことしたな。
「走るの苦手なの」
「ちょっ...ええ!?」
苦手はわかったけど!こんな時そんなこと言ってる場合じゃ...
俺自身特別運動が得意な訳ではないから雪を助けに行ったらほぼ間違いなく死ぬ。でもほっといても雪が追いつかれて死ぬ。
詰んだ。あれだけ二人で大口叩いておいて。
一か八か助けに行くか?まだそっちの方がいい。そう思い後ろを振り返る。
「雪!後ろ!」
幽霊が迫っている。もう避けようにないうえ、ここからは助けにも行けない。
俺はすでに諦めモードに入っていた。
「そおおっ......と!」
横から誰かが雪を抱き抱えて幽霊から避けた。そのまま横っ飛びになり、見事な着地。
一瞬のタイムラグもなくこちらへ走ってくる。
よく見るとその人は雪以外にもう一人肩に抱えていた。年齢は大体俺と同じ感じの高校生ぐらいだ。二人共。
「そこの人!なに見てんの?」
言われて気付いた。あまりのことに馬鹿みたいに呆けて走るスピードが急激に減速していた。
改めて加速してほぼ全力で走っていた。すると後ろから余裕の面持ちでさっきの人が隣に並んできた。
「なんかお人好しっぽい顔の人、この子のペアでしょ?」
左肩にだれかもう一人担いで右腕に雪を抱えるその人はまるで友達同士の雑談のように俺に話しかけてきた。なんかお人好しぽいって......とは思ったがこの際気にしないでおく。
「はい...えっと、あなたどういう...」
心の中は混乱でいっぱいだったがなんとか返事を返す。
「んー...また後で!逃げ切ってからな!」
「ああ、は、はい」
走り続けるといつしか周りには人が激減していた。すでに茂みに隠れている人もいる一方、後ろの方にいた人はもう幽霊に殺された人もいるだろう。確認している暇はないが。
「あそこだ。五秒以内にあの茂みへ隠れれば逃げ切れる。奴らが通り過ぎるまで息を殺すのを忘れるな」
不意に肩に担がれている人が言い出した。
「ってさ!行くぜ!」
そう言うと雪を抱えつつ器用に俺の腕を掴み茂みへ走り出した。
「あと三秒以内だぞ」
「余裕!」
猛加速して茂みに飛び込んだ。今までの倍近いスピードを余裕で出されて少し悔しかったがそんなことを考える前にまず言われた通り息を殺し奴らが通り過ぎるのを待った。